WOWOWドラマ『MR-医薬情報担当者-』第4話では、タウロスの糖尿病治療薬「グリブ」をめぐる論文に、不正の疑惑が浮上。かつて八神と対立した堂之上が持ち込んだ証拠を手がかりに、紀尾中たちは韓国での調査を進めていきます。
一方、天保薬品の抗がん剤「ノベルマ」にも副作用の疑いが浮上。患者の命に関わる問題を前に、紀尾中は自社の対応にも疑問を抱くことになります。最終回を目前にして、2つの問題はどのような決着を迎えるのか?
最終回に残された問題を考察するとともに、紀尾中の行動から見えてきた「人を動かす信頼」についても振り返ります。
第4話あらすじ
天保薬品の抗がん剤「ノベルマ」をめぐる薬害訴訟が報道され、会社への批判が高まっていた。天保薬品は薬との因果関係を否定するものの、患者や医療現場には不安が広がっていく。
一方、ライバル会社タウロスでは、八神教授による糖尿病治療薬「グリブ」の研究論文の発表が進められていた。
そんな中、紀尾中のもとに思いがけない人物が現れ、事態は大きく動き始める。
第4話のネタバレ解説
ノベルマの副作用に新たな事実
天保薬品の抗がん剤「ノベルマ」をめぐる薬害訴訟が報道され、世間の批判が高まっていました。テレビ番組に出演した八神は、製薬会社には医薬品の情報を正しく伝える責任があると発言。ライバル会社の鮫島は、糖尿病治療薬のガイドライン改定を控えた時期に、天保薬品が問題を抱えたことを喜んでいました。
天保薬品では訴訟への対応が協議されていました。ノベルマは発売から約半年で60億円以上を売り上げ、多くの患者の命を救ってきた薬でもあります。五十川は根拠のない情報によって使用を控える患者が増えることを危惧し、栗林も裁判の勝敗だけでなく、会社の対応そのものが重要になると指摘しました。
一方、紀尾中は、肺がん患者の吉野咲子がノベルマによる治療を拒んでいることを知ります。父親の輝久は、咲子が肺炎になった原因もノベルマではないかと疑っていました。担当医の松井は薬との因果関係を断定していませんでしたが、治療を中断したままでは、がんが進行してしまいます。
紀尾中はメディカル部の菅井に連絡し、ノベルマとAPIの関連性について追加調査を依頼します。すると、器質化肺炎の報告が12件あり、そのすべてでノベルマとAPIが併用されていたことが判明しました。さらに、判明しているだけで10人が死亡しており、薬害訴訟の原告6人も全員が両剤を併用していました。
メディカル部でも、ノベルマによって活性化した免疫系にAPIが新たな炎症刺激を加え、重度の肺炎を引き起こした可能性を裏付ける十分な根拠があると判断していました。
紀尾中は、ノベルマとAPIの併用による新たな副作用が明らかになったと考え、速やかな情報公開と添付文書への追記を求めます。しかし、報告を受けた五十川は、この件を本社で預かると告げるだけでした。
今回問題になっているのは、APIとの併用という点。副作用の情報を正しく伝えることは、医師と患者が治療の危険性を判断するためにも重要。
堂之上が持ち込んだ論文不正の証拠
そんな中、紀尾中のもとを堂之上が訪ねてきます。堂之上は東都医大を辞め、長野にある父親の医院を継ぐことになったといいます。以前、紀尾中に言われたことで目が覚め、ようやく余計なことを考えずに患者と向き合えるようになったと話しました。
そして、八神が発表を予定している論文について、気になることがあると切り出します。以前、八神から韓国の病院と共同で進めている研究について相談され、資料を見せられたことがありました。その際、堂之上は研究データを写真に撮っていました。
ところが、今回発表される論文と写真を比較すると、グリブの心血管保護効果を示す数値が一致していませんでした。写真に残されたデータでは、グリブの効果に統計的な有意差は認められません。それにもかかわらず、論文では明確な効果があったとされていました。
堂之上は、韓国での治験データを解析する際、都合の悪い患者を除外して、グリブに有利な結果を出したのではないかと疑っていました。堂之上が残していた写真によって、八神の論文に不正が行われた可能性が浮上しました。
また、タウロスが韓国の団体を経由して研究費を提供しているらしいことも判明します。堂之上は、鮫島が不正に関与している可能性にも言及しました。
堂之上は、自分も不正を行った人間なので偉そうなことは言えないとしながらも、紀尾中に事実を伝えたかったといいます。長野に移ってからも薬のことで相談したいと話す堂之上に、紀尾中はいつでも連絡してほしいと答えました。
第2話で必要以上に追い詰めなかったため、堂之上が自ら証拠を持ってきたと考えられる。この点は後半のコラムで改めて取り上げる。
鮫島との対立、そしてカン院長の否定
堂之上から話を聞いた紀尾中は、タウロスにいる鮫島を訪ね、八神の論文について問いただします。
紀尾中は、グリブに心血管保護効果があるという研究結果が本当に正しいのかを確認します。しかし、鮫島は論文を書いたのは八神であり、自分は何も知らないと主張しました。紀尾中は、不正の疑いがある研究結果を発表すれば、誤った情報を信じた医師が薬を処方し、患者に不利益を与えることになると訴えます。
これに対し、鮫島はノベルマの薬害訴訟を持ち出し、根拠もなく薬を訴える患者もいると反論。紀尾中は、患者が亡くなっている以上、遺族には薬を疑う権利があると答えました。2人の対立は次第に激しくなり、鮫島は紀尾中が過去に患者を死なせた経験まで持ち出します。紀尾中は言葉に詰まり、それ以上の追及ができないままタウロスを後にしました。
その後、紀尾中は五十川たちに証拠写真を提示します。韓国で治験を担当したカン・ヨンジン院長も事情を知っている可能性があるとして、紀尾中たちはカン院長に直接話を聞くことにしました。
乾の協力によってカン院長たちと面会した紀尾中は、論文の数値に疑わしい点があると指摘します。池野も写真に残されたデータを示し、都合の悪い患者を解析から除外したのではないかと問いただしました。しかし、カン院長は不正を否定。自分たちが保管している正式なデータだとして、紀尾中たちが持つ写真とは異なる数値を提示しました。カン院長は、自分たちが示したデータこそ正しいと主張し、紀尾中たちの追及を退けました。
池野は納得できずに声を荒らげますが、紀尾中はそれを制止します。そして、誤った医薬品情報によって被害を受けるのは患者であり、命に関わる可能性もあると訴えました。それでもカン院長は、日本の製薬会社同士の争いに巻き込まれるつもりはないと告げ、席を立ってしまいます。
面会後、乾はカン院長の父親と八神がアメリカの大学でつながりを持っていたことを明かします。カン院長は父親との関係から、八神の頼みを断れなかったのかもしれないといいます。
韓国の研究員が見つけた手がかり
カン院長との面会は不調に終わったものの、池野たちは思わぬ形で韓国側の研究員と親しくなります。
居酒屋で飲んでいた池野たちの前に、カン院長に同行していたソンハとムンが現れました。池野は先ほどの無礼を謝り、2人を酒の席に誘います。最初は警戒していた2人も、次第に打ち解けていきました。
その中で、麻弥はソンハに論文のデータについて尋ねます。ソンハは研究チームに参加しており、論文の数値に違和感を覚えていたことを認めました。麻弥は、尊敬するカン院長が八神に利用されている可能性があると伝え、誤った情報によって患者が不利益を受けることを防ぎたいと訴えます。ソンハは研究データを調べてみると約束しました。
その後、ホテルでデータを確認したソンハは、紀尾中たちの疑いを裏付ける内容を発見します。しかし、麻弥に連絡しようとしたところでカン院長が現れ、止められてしまいました。
ソンハから届いたのは、データを見られなくなったという謝罪のメールだけでした。不正を証明する新たな手がかりをつかみかけたものの、紀尾中たちは再び行き詰まってしまいます。

公表されない副作用情報と悪化する咲子の病状
一方、ノベルマの副作用問題も深刻さを増していました。咲子の担当医である松井は、ノベルマにはがんに対する治療効果が認められていたことから、再び使用することを提案します。しかし、父親の輝久は薬害訴訟を理由に反対し、咲子自身も怖くて使いたくないと拒否しました。治療を中断した咲子の病状は悪化していきます。紀尾中は五十川に連絡し、ノベルマとAPIの併用による副作用について、いつ正式な通達が出されるのかを確認します。
しかし、五十川はデータが不足しているという理由で、現時点では公表しないことが会社の決定ですと告げました。
紀尾中は、会社から正式な情報が出されなければ、医療現場でノベルマの使用をためらう状況が続いてしまうと反論します。実際に、担当する病院にはノベルマによって命を救える可能性のある患者がいるのです。
それでも五十川は、情報を公表するかどうかはMRである紀尾中が決めることではないとして、電話を切ってしまいました。患者を守るための副作用情報が公表されないことで、必要な治療まで受けられなくなるという事態が起きていました。その間にも咲子の容体は悪化し、子どもたちへのメッセージカードを書くことさえつらくなっていました。
副作用の疑いを公表すれば、ノベルマへの不安が広がる可能性がある。現在は正確な情報がないため、結果として薬を使用できなくなっている。
考察|最終回に残された3つの問題
次回はいよいよ最終回です。八神の論文不正疑惑とノベルマの副作用問題、2つの問題はどのような決着を迎えるのでしょうか。第4話の時点で気になったことを整理してみます。
八神の論文不正をどう証明するのか?
堂之上が残していた写真と、カン院長が提示したデータは食い違っています。しかし、どちらが正しいのかを客観的に証明できなければ、八神たちに不正を認めさせることは難しいでしょう。
鍵を握るのは、やはりソンハではないか。データに不審な点があることに気づいている以上、何らかの形で紀尾中たちに協力する可能性はまだあります。
ただ、論文の発表を阻止することと、不正を明らかにすることは別問題です。八神たちが都合の悪い事実を隠したまま発表を取り下げるだけでも、表向きには決着してしまいます。
紀尾中がどのような証拠を揃え、相手を追い詰めていくのでしょうか。これまでの行動を考えると、感情的に責めるのではなく、逃げ道を1つずつ塞いでいくような展開を期待したいです。
ノベルマの副作用問題はどう決着するのか?
ノベルマとAPIの併用による副作用の疑いが浮上したにもかかわらず、天保薬品は情報の公表を見送りました。
会社としては、薬害訴訟への影響やノベルマの売り上げを考慮しているのでしょう。しかし、情報を伏せることで患者が治療を受けられなくなっているのでは、本末転倒ではないか?
最終的には、会社が副作用情報を公表し、遺族に対しても賠償などの対応を取る形で決着するのではないかと予想しています。
ただし、金銭的な補償によって和解できたとしても、亡くなった患者の命が戻るわけではありません。天保薬品がどこまで責任を認めるのか、そして咲子の治療がどうなるのかも気になるところです。
紀尾中は天保薬品に残るのか?
紀尾中は出世や本社勤務よりも、現場でMRとして働くことを望んでいます。患者第一という信念を貫く姿勢も、第1話から変わっていません。
一方で、今回のノベルマの問題では、会社の判断と紀尾中の考えが真っ向から対立することになりました。このままでは、会社を辞めるという選択肢も考えられます。個人的には、特定の製薬会社に縛られず、独立した立場で医薬品情報を提供する道も紀尾中には向いていると思います。
もっとも、紀尾中自身が会社を改革するのではなく、彼の行動によって経営陣の考えが変わるという結末のほうが、現実的かもしれません。会社が変わり、紀尾中はこれまでどおり現場に残る。そんな結末になるのではないかと予想しています。
コラム|北風と太陽、人を動かすのは信頼か
今回、印象に残ったのは堂之上の再登場でした。第2話で紀尾中は、堂之上が不正に関わっていた証拠を掴みながらも、必要以上に追い詰めることはしませんでした。相手の逃げ道を完全に塞いでしまうのではなく、自分で過ちに気づき、やり直す機会を残していたように思います。
そして今回、堂之上は自ら紀尾中のもとを訪れ、八神の論文不正を疑わせる写真を提供しました。かつて不正に関わっていた人物が、今度は不正を明らかにするために協力する側に回ったわけです。
この展開を見て思い出したのが、イソップ寓話の「北風と太陽」でした。
北風がどれだけ強く吹いても旅人は上着を脱がず、むしろ身を守ろうとします。しかし、太陽が暖かく照らすと、旅人は自分から上着を脱ぎます。
人間関係にも似たところがあるのではないでしょうか。相手を力ずくで変えようとしても、かえって反発を招いてしまいます。もちろん、不正を見逃していいという話ではありません。ただ、過ちを認めさせることと、相手を徹底的に打ちのめすことは違うと思います。
韓国での池野たちの行動にも、同じことがいえます。カン院長との面会では、池野は不正を否定する相手に感情的になり、話し合いはうまくいきませんでした。しかし、その後、韓国側の研究員たちと酒を飲み、仕事を離れて交流することで、少しずつ距離が縮まっていきます。その結果、ソンハは研究データを調べることを約束しました。
相手を問い詰めても得られなかった協力が、信頼関係を築くことで生まれたというのは、なかなか興味深いです。
もっとも、紀尾中は決して甘いだけの人物ではありません。堂之上の不正を追及したときも、今回の論文不正疑惑でも、証拠を集め、相手が言い逃れできないように論理的に攻めています。
ただし、相手を必要以上に傷つけたり、屈服させたりすることを目的にはしていないように見えます。不正は正さなければなりません。しかし、相手を追い詰めることが必ずしも正しい結果につながるとは限りません。紀尾中の強さは、厳しさと相手を信じる姿勢を両立させているところにあるのかもしれません。
堂之上が持ってきた写真は、第2話で紀尾中が示した姿勢が、思わぬ形で返ってきた結果ともいえます。こうした人間関係の積み重ねが、事件を解決するための重要な力になっているところも、このドラマの面白さだと思います。
第4話のまとめ
第4話では、八神の論文不正疑惑が浮上し、物語は大きく動き出しました。堂之上が持ち込んだ証拠によって疑惑は深まったものの、韓国側は不正を否定。紀尾中たちは決定的な証拠を掴めないまま、最終回を迎えることになりました。
一方、ノベルマとAPIの併用による副作用の疑いについても、天保薬品は情報の公表を見送りました。患者の安全を第一に考える紀尾中と、会社の判断との対立も深まっています。
今回、特に印象に残ったのは、堂之上の再登場でした。かつて紀尾中が見せた対応が、思わぬ形で事件解決の手がかりにつながったという展開は面白かったです。
残るは最終回のみ。2つの問題をどう解決するの。そして、紀尾中が最後まで「患者第一」という信念を貫けるのか。その結末を見届けたいと思います。
