今回の白い巨塔は主に裁判の話になります。財前がドイツに行っている間に、手術をした患者である佐々木庸平が亡くなります。帰国した財前を待っていたのは訴訟でした。己の保身のために奔走する財前、裁判の結果はどうなるのか?
白い巨塔概要
5月22日から5夜連続で放送する「白い巨塔」はテレビ朝日系列で21時より放送されています。野心家の医師財前と対照的な医師里見を通して描かれる、金や権力といった欲望が渦巻く医療の世界を描いたドラマとなっています。
キャスト
- 財前五郎(岡田准一)
- 里見脩二(松山ケンイチ)
- 花森ケイ子(沢尻エリカ)
- 東貞蔵(寺尾聰)
- 鵜飼裕次(松重豊)
- 大河内恒夫(岸部一徳)
- 柳原雅博(満島真之介)
- 佃友弘(八嶋智人)
- 金井達夫(長谷川朝晴)
- 安西太郎 (尾上寛之)
- 亀山君子(美村里江)
- 野坂奈津美(市川実日子)
- 財前又一(小林薫)
- 財前杏子(夏帆)
- 黒川キヌ(市毛良枝)
- 里見三知代 (徳永えり)
- 里見好彦 (鳥越壮真)
- 東政子(高島礼子)
- 東佐枝子(飯豊まりえ)
- 鵜飼典江(浅田美代子)
- 船尾徹(椎名桔平)
- 佐々木庸平(柳葉敏郎)
- 佐々木よし江(岸本加世子)
- 佐々木庸一(向井康二)
- 関口徹(斎藤工)
- 国平幸一郎(山崎育三郎)
- 岩田重吉 (岩松了)
- 鍋島貫治(山田純大)
スタッフ
- 【原作】山崎豊子『白い巨塔』(新潮文庫刊)
- 【企画協力】野上孝子、一般社団法人山崎豊子著作権管理法人、新潮社
- 【脚本】羽原大介、本村拓哉、小円真
- 【監督】鶴橋康夫、常廣丈太
- 【音楽】兼松衆
- 【チーフプロデューサー】五十嵐文郎
- 【エグゼクティブプロデューサー】内山聖子
- 【プロデューサー】船津浩一、秦祐子
4話ゲスト
- 河野正徳 (矢島健一)
前回はこちら
あらすじ
ドイツで手術のデモンストレーションを行う財前五郎(岡田准一)が現地の医師たちに絶賛されている頃、日本では、ICUでの治療の甲斐なく佐々木庸平(柳葉敏郎)が死亡していた。死因が肝不全だと知り、膵臓がんだと思っていた妻のよし江(岸本加世子)と息子の庸一(向井康二)はがく然…。里見脩二(松山ケンイチ)は、そんな二人に病理解剖を勧める。
財前のミスを疑い、真実を知りたいと強く願う庸一の後押しで、後ろ向きだったよし江も解剖を了承。病理学科の教授・大河内恒夫(岸部一徳)が解剖を担当することになる。
解剖の結果、血管内リンパ腫が原因で肝不全となり、血液凝固障害を起こしたため死亡したことが判明。よし江と庸一は、手術の前後ともに、財前は「膵臓以外に問題がない」と言っていたと柳原雅博(満島真之介)に詰め寄る。もともと財前の傲慢な診察態度に疑問をもっていた二人は、彼を裁判で訴えることを決意する。
そんな中、財前が帰国。空港で訴訟についてのコメントを求める記者たちに囲まれ、もみくちゃになっている財前を連れ出した義父の又一(小林薫)は、その足で医学部長・鵜飼裕次(松重豊)の自宅へ向かう。教授選で財前を推薦したがために自分の立場が危うくなったと激昂する鵜飼に、財前は、すべては遺族の誤解で、自分に後ろめたいことはないとキッパリ宣言。又一も金に糸目はつけないので、何とか降りかかる火の粉を払ってほしいと土下座する。
翌朝、柳原を呼び出した財前は、恩師の大河内が解剖を担当したと聞き、自分の立場が悪くなると激怒。さらに、柳原にカルテの改ざんまでほのめかす。また、里見のもとを訪れた財前は、遺族に自分を窮地に陥れる病理解剖を勧めた彼にも食ってかかり、同期の二人に溝ができてしまう…。
よし江と庸一は財前を訴える裁判を起こすために、弁護士・関口徹(斎藤工)の事務所を訪れる。一方、病院と財前の代理人となった弁護士・国平幸一郎(山崎育三郎)は関口に破格の金額を提示し、示談にしないかと持ちかける。
公式HPより
真実と自分の将来を天秤にかけ、裁判を前にどんどん追い込まれていく柳原…。
そして、ついに、純粋に真実を知りたいと願う遺族と、保身にすべてをかける財前の長い闘いが始まる…!
白い巨塔2019 視聴率
平均視聴率:12.15%
話数 | 放送日 | 視聴率 |
---|---|---|
1話 | 5/22 | 12.5% |
2話 | 5/23 | 11.8% |
3話 | 5/24 | |
4話 | 5/25 | |
5話 | 5/26 |
その他の番組はこちら
感想
何度となくドラマになった話なので展開はわかっていても、やはり嫌な感じの裁判です。人一人死んでいるのに、そんなことよりも保身が大事というのは、見ていてなんともやるせない気分になります。隠蔽に奔走するブラック企業な浪速大学病院の良心は、里見と大河内のみといった回でした。
関口徹と国平幸一郎について
今回裁判になった際、それぞれ原告と被告側に弁護士がつきます。原告側には関口、被告側には国平です。この二人はある意味、里見と財前のような二人となります。それぞれどんな人物か記します。
関口徹とは?
遺族である佐々木よし江と庸一が頼ってきた弁護士です。あまり大きな事務所でもなく、身なりも儲かっていなさそうな風体です。約束の時間にも遅れてきて、携帯を事務所に置いて出かけてしまうような弁護士で大丈夫なのでしょうか?
- かつて河野法律事務所にいた
- 国平と一緒に働いていた
- 過去に依頼人が自殺してしまった
- 正義感強し
- 依頼人ファースト
国立の大学病院を相手取った裁判は勝てないと最初に言います。しかし、遺族の思いを感じて依頼を引き受けます。国平が示談に来た時、金額があまりに大きいので一応遺族を思って確認をしに行きますが、金ではないという思いに答えて争うことを決意します。
過去にいた河野法律事務所では、和解金の何割かが報酬になるため、裁判で金額の釣り上げを試みます。しかし、セクハラ裁判という内容だったため、依頼人の女性が証言をすることが辛くなった結果、自殺をしてしまいます。それ以来、依頼人ファーストを心がけるようにしました。
要するに里見のような心根の持ち主です。
国平幸一郎とは?
被告人である財前に頼まれた河野法律事務所が、国平を担当にします。財前同様に尊大なところがあり、合理主義な部分があります。
- 関口はかつての同僚
- 合理主義なところあり
- エリート意識高し
- 正義よりも金
- 事務所ファースト
裁判になるより示談にして欲しいとの依頼を受け、早速関口のところへ示談の交渉へ行きます。しかし財前のようなドヤり具合で1億6千万の示談金を提示し、さっさと帰っていきます。
また、大河内が証言台に立った際、不謹慎な発言をしたために怒りを買い、裁判官の心証を悪くします。
要するに財前のような心根の持ち主です。
裁判の内容
争点となるのは財前の医師としての怠慢の注意義務違反と、診断ミスがあったのではないかという診療過誤を争います。さらに賠償金として8千万円を請求します。その内訳は
- 実費として治療費・入院費・葬儀代 200万
- 庸一が将来見込めた収入の逸失利益 4200万
- 本人の死亡慰謝料 3000万
- 弁護士費用 600万
となっています。
証言台に立った人
金井の証言
- 財前はドイツ出発前忙しくしていた
- 多忙だったために佐々木庸平を直接診察できなかった
- 教授クラスの医師は執刀した患者を術後必ず診察するわけではない
- 柳原は良心的な医師
- 財前の診断や指示に疑問は持たなかった
- 自分は柳原に何も指示していない
- 自分が担当医でないから、庸平が死んだ理由についてはなんとも言えない
- 財前の判断は正しかった
大河内の証言
- 直接の死因・肝不全の原因・膵頭部の手術は成功していたかに重点を置いて解剖した
- 直接の死因は肝臓内に広範な血管内リンパ腫があり、それによって肝不全を起こして死亡した
- 血管内リンパ腫は死ぬ直前に起きたわけではない
- それがドイツに行く前か行ってからなのかはわからない
- 胆管炎の症状は起きていた
- ただし術後胆管炎か血管内リンパ腫による二次的なものかはわからない
- 病理解剖とは一つの生命の帰らぬ死を、次の人の生によみがえらせる尊い手段
- 死因に疑問があれば遺族に解剖を勧めるのは当然
- 病理解剖は医者の学問的興味でやっているわけではない
- 膵頭部の手術は成功している
- 検査を怠ってメスを入れたのであれば、財前は注意義務に欠けている
里見の証言
- PET検査をしたほうがいいと言った
- 柳原もそう思ったから情報を自分に教えた
- 柳原もPET検査を進言していた
- 財前もPETは撮ると約束した
- しかし検査はしなかった
- 速やかに診断し、適切な治療が行われていれば、こんなに早く死ぬことはなかった
- 財前は膵臓がん以外の病気を発見する可能性があったが処置をしなかった
柳原の証言
- DICが発症したのは財前が出発した後
- 呼吸不全で苦しんでいたからステロイドの量を増やした
- 金井准教授に連絡してできる限りの処置はした
- 病理解剖まで血管内リンパ腫には全く気付かなかった
- 手術前も気付かなかった
- 手術の際も肝臓周辺に異変はなかった
- 財前の手術は完璧だった
- 里見のいったような事実はない
- 何も隠していない
よし江の証言
- 金ではなく無責任な医者の言いなりになって、泣き寝入りしなくていいということを訴えたい
- 里見先生は親身になってくれた
- 財前先生は嘘つき
- 手術の後お願いしても来てくれない
- 柳原先生に嘘の証言をさせてる
- 財前先生の無責任な診察で夫は死んだ
財前の証言
- 里見の証言は故意に事実をねじ曲げた発言
- 血管内リンパ腫は確定診断するのが難しい
- 証拠を示して発言して欲しい
- 誤診などしていない
- 家族からの診察要請など受けていない
- 患者が死亡したのは不可抗力または不運
裁判の結果
いよいよ結審のときを迎えます。果たしてどちらが勝つのでしょうか?
- 柳原証人の尋問結果は全面的に採用しない
- 財前被告は里見証人の要請を無視してPET検査をしなかった
- 術後胆管炎とのみ診断を下し、他の疑いを持たなかったのは明らか
- しかし血管内リンパ腫の鑑別は困難だった
- よって財前の法的責任を認めるものと断定する事はできない
その他気になったこと
- 遺族と里見が話している室内が急に明るくなる演出
- 「降りかかる~火の粉は払わないかん」という又一節
- 日向夏のダンボールで宮崎出身を示唆
- 水中に揺らぐ手で愛人だとすぐわかる財前
- 財前と愛人のいちゃつく部屋にキャンドル多過ぎ
- 「里見先生が好き」と唐突に告白をする佐枝子
- ドイツロケは財前のPVみたい
ドラマの補足
病理解剖とは?
病理解剖については、こちらの記事に記載しています。
対質尋問とは?
里見と柳原の証言が食い違うので、関口は対質尋問を要請します。ドラマでは柳原と関口の二人を同じ証言台に立たせて尋問していました。
当事者双方の供述や、証人相互の証言が食い違う場合、これらの者を相対させて尋問することをいう(民事訴訟規則118,126条)。
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ということです。ドラマでやっていた通りの尋問ということだと思います。嘘つきの隣に真実を話す人をあえて立たせて揺さぶるという狙いと、裁判官への心証を左右させるという狙いがあるのだと思います。
まとめ
ドイツでのロケがどんなものかと思ったら、まるで財前先生のプロモーションビデオのような撮影でした。無意味にあちこちに財前が行き、その場所場所でドヤる財前を撮影しているという感じです。また、関口役の斎藤工さんも背が高いものですから、証言台に立つ財前が本当に追い込まれているように見えてなりません。同じ仕事をするなら財前ではなく、里見や大河内のような人物と仕事をしたいとしみじみ思う回でした。