遺言状の内容
この内容がなんとも複雑な条件を提示するため、殺人事件が起きたりする原因となります。
- ひとつ、犬神家の全財産ならびに全事業の相続を意味する、犬神家の三種の神器の家宝、斧・琴・菊を次の条件のもとに野々宮珠世に譲られるものとす。
- ひとつ、ただし野々宮珠世はその配偶者を、犬神佐兵衛の三人の孫、佐清・佐武・佐智の中より選ばざるべからず。
- 他に配偶者を選ぶ場合は、珠世は斧・琴・菊の相続権を喪失するものとす。
- ひとつ、もし、野々宮珠世にして、この遺言状が公表されてより、三か月以内に死亡せる場合には、犬神家の全財産は五等分され、その五分の一ずつを佐清・佐武・佐智に。残りの五分の三を青沼菊乃の一子青沼静馬に与えるものとす。
簡単に言うと犬神家の全財産と全事業は始め珠世に渡り、問題が生じたら最後は静馬のところへ行くという感じの内容です。
実の娘である松子・竹子・梅子にはまったくいかず、孫の佐清・佐武・佐智よりも静馬のほうがもらえるという、絶対に殺人事件が起きそうな遺言状です。
NHK BSドラマ『犬神家の一族』のトリック
トリックの自体は『華やかな野獣』や『貸しボート十三号』のほうがこっています。この事件は殺害者と技巧をした人が別なため、金田一も頭を悩ませていました。
佐武殺害のトリック
- 犯人
- 生花用のはさみで刺す
- 以降別人が行う
- 日本刀で首を切断
- 頭を菊人形の頭と入れ替える
- 胴体は豊畑村へ運ぶ
佐智殺害のトリック
- 犯人
- 紐で首を絞めて殺害
- 以降別人が行う
- 遺体を元あった場所へ運ぶ
- 後から琴の弦を巻きつける
静馬殺害のトリック
- 犯人
- 帯紐で首を絞めて殺害
- 以降別人が行う
- 湖に逆立ちの状態で上半身を水に浸からせて立たせる
犬神家の三種の神器である“斧・琴・菊”になぞらえて技巧をこらします。
佐武は“菊”で佐智は“琴”、佐清は逆さまになっているので“ヨキケス”となり、上半身が水に入って見えないので“ヨキ”となり、神器である“斧”を示す判じ絵のようになっています。
登場人物のその後
登場人物はたくさんいるのですが、その後が分かる人はあまりいません。分かった人のみ記載しています。
- 佐清:遺体の処理をしていたため逮捕
- 松子:服毒自殺
- 珠世:三種の神器を佐清に渡し、戻ってくるまで待つ
佐清は罪に問われるのはやむを得ないと警察は言い、相続はどうなってしまうのか?と思ったら、松子が珠世に佐清のことを待っていて欲しいとお願いします。珠世は元々佐清が好きだったので待つことを約束し、相続の条件である犬神家の三種の神器を佐清へ渡します。
その後、松子は一人で部屋から出て行き、毒を含んだキセルを吸って亡くなりました。
NHK BSドラマ『犬神家の一族』のその他気になったこと
- 佐兵衛が亡くなった途端、額縁が出てきて遺影となる
- 唐草模様の風呂敷を被る佐清
- 風呂敷を取るとでっかい頭が出て来る佐清
- マスクをめくると口から血が出て来る佐清
- 佐智のモーションのかけかたが変
- ぺろぺろ舌を出して喜ぶ佐兵衛
- 会話していたと思ったらもう死体
- 全員が揃う時には毎回タイトルが出て、インド音楽みたいなのがかかる
- 胸の筋肉を誇示するよう動かす猿蔵
- たらいに逆立ちの足だけで登場する佐清
- 窓から転がり込んで入って来る金田一
- 雪のようにフケが舞う金田一
- そこにある佐清の逆立ちの足を撫でて遊ぶ金田一
- 佐清のマスクを被って話す金田一
NHK BSドラマ『犬神家の一族』のまとめ
“30分でわかる犬神家の一族”は、何度も見ている側はこれでも分かりますが、初見の人が分かったのかは不明です。
演出は舞台のような演出で、あまりあちこちに移動しません。基本的には一つの部屋で全員そろって話をしています。そのため、死体役の人も死体の状態のままそこにいるので大変そうでした。
今回で【横溝正史短編集2】は終わりとなります。全3話あった中で個人的に一番面白かったのは『華やかな野獣』でした。話自体は『貸しボート十三号』のほうが面白かったですが、演出も含めて映像で見た場合、『華やかな野獣』が一番面白かったです。
『犬神家の一族』はやっぱり短時間でやるには話がゴチャゴチャしていて、どんどん物語が進んでいってしまい置いていかれそうになります。そういう意味では『貸しボート十三号』が、30分でやるにはちょうどよいテンポでした。
またこの『横溝正史短編集』が制作されるかはわかりませんが、意外と見ていて面白いので放送される日を楽しみにしています。