NHK BSドラマ『貸しボート十三号』の事件概要
金田一が発見した遺体は無残な遺体でした。この事件の名前は警察で『生首半斬り擬装心中事件』という名前で捜査されます。なんともおどろおどろしい名称です。
- 犯行時刻:土曜日午後8時~9時
- 吾妻橋の貸しボート屋から金曜日にボートが盗まれる
被害者その1:駿河譲治
- 年齢:22、3歳
- 身長:五尺七寸
- X大学のボート部学生
- 大木家の娘の家庭教師をしている
- 川崎美穂子と婚約した
- 藤子と不倫関係にあった
被害者その2:大木藤子
- 年齢:40歳前後
- 大木健造の妻
- 駿河と不倫関係にあった
歳の離れた2人の遺体に金田一は最初から妙な感じがしています。遺体を検分すると余計に妙な遺体であることが分かります。
駿河の遺体
- 首を半分ほど切られてちぎれそうになっている
- 致命傷は心臓のひと突き
- 死んでから半時間後に首を絞められている
- パンツ一つの素っ裸
藤子の遺体
- 首を半分ほど切られてちぎれそうになっている
- 絞殺
- 死んでから半時間後に鋭利な刃物で心臓部をえぐられている
- 洋装の上に派手なレインコート
片方は死んでから首を絞められ、片方は死んでから刺されています。死んでから刺したり首を絞めていることから、殺人であるということはすぐに分かり、“心中偽装事件”となります。
金田一はここで、本当は首を切り落としたかったが、何らかの問題が起きてできなかったのではないか?と推理します。また、片方は下着姿で片方は服を着ているのも妙な話だと言います。
首が繋がっていたお陰で身元は分かり、その関係者に話を聞いて回ったところ、事件の全貌が次第に明らかになっていくという流れです。
登場人物のその後
金田一のスポンサーでもある神門貫太郎の家で、金田一は事件の真相について語ります。登場人物たちはその後、どうなったのか?
- 川崎美穂子:殺害を自供し逮捕
- 八木:偽装工作を自供し逮捕
- 矢沢:罪に問われず
- 他の部員:罪に問われず
美穂子がまずみんなの前で自分がやったといい、罪について謝罪をします。その後、金田一が事件の真相を話し、最後に八木がみんなに謝罪します。
美穂子は殺人といっても自らも殺されそうになりました。逮捕されても伯父の神門貫太郎の計らいで、情状酌量されて正当防衛になりそうな気がします。
八木は死体損壊の罪と死体遺棄の罪に問われそうですが、本人も罪を悔いてか自殺未遂をします。罪としては美穂子より本来軽いものだと思います。
それなのに、他の部員達はまるで八木がこの後死刑にでもなるような勢いで、それぞれ手向けの言葉を贈ります。
- 「情状酌量という甘い考えは捨ててこい」
- 「潔く罪に服してこい」
- 「どちらにしても、お前の骨は我々が拾ってやる」
自殺などに逃げるのではなく、ちゃんと罪を償えというのは分かるとしても、“お前の骨は我々が拾ってやる”はどういう意味なのか?たとえ罪人になったとしても、八木との友情は決して変わることはない。そういう意味なのか?いずれにしても、面白いセリフです。
NHK BSドラマ『貸しボート十三号』のその他気になったこと
- パックのジュースを飲みながら検分に来る金田一
- 案の定遺体を見てもどす金田一
- 紙人形で遺体の状態を説明する新井
- サングラスをかけて捜査する金田一
- 寮母の作ったカレーを部員たちと一緒に食べる金田一
- 逮捕される前に最後の晩餐的にみんなで食事会
NHK BSドラマ『貸しボート十三号』のまとめ
30分で事件をちゃんと解決してくれるドラマでした。原作通りにやるというこだわりの結果、言葉の言い回しやナレーション部分で、現代では聞き馴染みのない言葉が出てきたりもします。
それもそのはずで、原作は1957年(昭和32年)に『別冊週刊朝日』に掲載された後、昭和33年に中編化されたものということです。
視聴し終えると、トリック部分を楽しむ作品だと感じました。キャラクターが深く掘り下げられなかったため、誰かに感情移入する隙がありません。
もし、長々と尺を伸ばしてやるなら、恐らく殺害された藤子と駿河の2人が結構嫌なヤツで、八木・矢沢・美穂子あたりが気の毒な人物となったでしょう。八木と美穂子はこの2人のせいで人生が狂ってしまったわけです。
次回は放送時間が早まり、1月25日22時30分から『華やかな野獣』が放送予定です。