今回で最終回を迎える東京二十三区女は、品川区にある鈴ヶ森刑場跡が舞台の話でした。この回が全話の中で画面的に見て一番怖かったです。そして思いもよらない最後の終わり方に、まさに最終回といった感じの話となっていました。
東京二十三区女概要
WOWOWプライムで4月12日から毎週金曜の0時より放送されています。東京の裏側にある様々な話を、各区ごとに解き明かしていくことで、想像を絶する恐怖に襲われてしまうホラーミステリードラマになっています。
キャスト
- 原田璃々子(島崎遥香)
- 島野仁(岡山天音)
スタッフ
監督・脚本・原作:長江俊和
第6話ゲスト
- 白洲迅
- 山崎真美
- 椋田涼
- 川並淳一
- 田中研
- 藤木由貴
前回はこちら
あらすじ
現存する江戸時代の処刑所、鈴ヶ森刑場跡。品川区の交番に勤務する木内巡査(白洲迅)は、事件現場で何度も不審な女性を目撃する。それは、璃々子だった。木内は鈴ヶ森刑場跡に入っていく璃々子を問い詰めるが、璃々子は意外な事件の真相を語りだした。木内を見つめていた人物の正体は一体誰なのか、そして、璃々子を取り巻く秘密も明らかになる衝撃の結末とは!?
公式HPより引用
ネタバレ
感想
璃々子が主人公の話かと思いきや、警官の木内が主人公の話でした。鈴ヶ森刑場で処刑された八百屋お七の念が、現代にまで影響を及ぼし事件を起こすという話になっていました。その二つの話を掘り下げてみたいと思います。
鈴ヶ森刑場とは?
劇中でも璃々子が言っている通り江戸時代にできた刑場です。1651年にできて1871年に閉鎖されます。220年間刑場として存在していました。10万~20万人が処刑されたといいますが、明確な記録は残されていません。ここは東海道の江戸の入り口にあり、当時江戸に入ってくる人はまずこれを目にしないとならないという、なんともすごい状況だったのだろうと思います。
北の入り口には日光街道沿い小塚原刑場がありました。こちらは現在でいうところの荒川区南千住にありました。
さらに西に大和田刑場があり、こちらは現在の八王子市大和田町にありました。この三つを江戸三大刑場と呼びました。
八百屋お七とは?
劇中でも説明していた通り、一度会った人にまた会いたくて放火をしてしまった女性です。
実在した人物ということですが、詳しいことはどうもわかっていないようです。江戸幕府の処罰の記録である「御仕置裁許帳」にもお七の名前はなく、お七の年齢も放火の動機も処刑の様子も事実として知ることのできる記録はなく、そもそもお七の家が八百屋だったのかも裏付ける確実な史料がないようです。
ただ言えることは、お七の事件の3年後に書かれた井原西鶴の「好色五人女」があることから、モデルになった人物はいるのではないかということと、もし実在しない事件なら3年後にあれほど同情を集めなかったはずだということです。
この好色五人女が当時大人気となり、後に歌舞伎や浄瑠璃、落語など様々な作品に影響を与えたそうです。
話の内容としては一般的なお七の話と同様に、火事焼け出され避難した寺で知り合った男の人にお七が恋心を抱き、初々しいやり取りなどあった後にお七は実家に戻ります。そしてもう一度会いたいと思って火をつけるが、ぼやで消しとめられてしまいその場で自白、市中引き回しの上火あぶりになって処刑されます。病でそのことを知らなかった男ですが、真新しい卒塔婆にお七の名を見つけ、男は後を追おうとします。しかしお七の両親や人々に説得され、出家した後にお七の霊を供養しました。
好色五人女とは?
好色五人女は五巻あって、全て当時世間で知られていた実話をベースに書かれています。なのでお七の元になる話も何かしらあったのだと思います。
- 姿姫路清十郎物語(お夏清十郎)
- 清十郎とお夏の恋物語。駆け落ちの途中で捕らえられ、清十郎は刑死、お夏は発狂してしまう。
- 情を入れし樽屋物かたり(樽屋おせん)
- 隣の家の麹屋の女房がおせんに嫉妬し、しつこく嫌がらせを受ける。そこでおせんは仕返しに麹屋の夫と不倫してやろうと考え、いざことに及ぼうとした時に夫が起きて、おせんはその場で自害、麹屋も後に捕らえられる。
- 中段に見る暦屋物語(おさん茂兵衛)
- おさんが奉公人の茂兵衛と関係を結び、家を逃げたが捕らえられて刑に処される。
- 恋草からげし八百屋物語(八百屋お七)
- 寺小姓吉三郎に恋した八百屋お七が、もう一度会いたいために放火する話。お七は処刑、吉三郎は出家した。
- 恋の山源五兵衛物語(おまん源五兵衛)
- 武士源五兵衛と琉球屋の娘おまんの恋が成就し、巨万の富を得る話。
の五つの話となっています。この内五巻目の話以外は、全て悲劇的な結末で終わります。
しかし本来五巻目の話も歌舞伎とかでは悲恋です。おまんは別の男と恋仲で源五兵衛が横恋慕し、相手の男を切ってしまいます。そしておまんは自害し、源五兵衛も切腹するという話です。
シリーズの終わり方について
まさかのシックスセンス的オチで終わります。
呪いの根源を突き止めるためにあちこち巡る璃々子ですが、だとしたら真っ先に行く場所は、もうあそこ以外考えられません。なぜ遠回りするのか?怖くて行けないのか?とにかくまずは、将門の首塚に行くべきです。行ったけど違うというならわかりますが、今回の二十三区女に“千代田区の女”はありません。
もっとも、これを初回にやってしまうと、それ以外の回の怖さが小さく感じるので、やらないというのはわかります。
シリーズ全体としては面白かったです。行ったことのある場所が出てくるので、親近感も湧きますし由来の再認識もできました。二十三区全て回って欲しかったです。
個人的には無理にオチをつけるでなく、普通に璃々子と島野は雑誌記者と専門家で、そこで起こる怪異を調べるといった話でも十分面白かったと思います。
まとめ
30分という放送時間が完全に良い方向に作用したドラマでした。初めから終わりまでテンポ良く進んでいくので、見ていてずっと飽きずに集中して見れました。個人的には2話が一番面白かったです。一番可能性がある話だと思ったというのもありますし、登場する俳優さんがみなさん適材適所でした。本では新しい話があるようなので、また新作を見れるのを楽しみにしています。