2019年10月18日から始まった【ミスジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~】の第1話は、化学プラントが爆発した原因は何なのかを調査します。失敗から学ぶというテーマの新しいタイプなドラマです。
【ミス・ジコチョー】1話のあらすじ
工学教授の天ノ真奈子(松雪泰子)は、「失敗学」という風変わりな学問を提唱しており、その研究も兼ねてさまざまな失敗に興味を持っている。工学者としても名高く、事故の調査委員会に招かれることが多い。とある化学プラントで爆発事故が起こり、真奈子は助手の野津田(堀井新太)とともに事故調査委員として原因解明に乗り出す。一見、とある従業員のうっかりミスに見えた事故は、真奈子によって複雑な真相が暴かれていく…。
公式HPより引用
【ミス・ジコチョー】1話のネタバレ
事故内容
- 東國実化学のプラントが爆発
- 工場の40%が焼失
- 隣接する数社に甚大な被害
- 作業員1名(水上)が死亡
事故の流れ
- 雷が落ちて辺り一帯が停電
- 予備電源も入らずタンクの冷却装置が働かない
- 冷却のための一酸化炭素もなぜか注入されない
- 温度が下がらず爆発
謎
- 事故直前水上は「白い鳥が…」と言って死ぬ
- 事故現場周辺にアオギリサービスの作業服の燃えカスがあった
- 現場に向かう水上とすれ違った社員は「俺のせいだ」と言っていたのを聞いている
爆発事故の原因その1:アオギリサービスのボンベ
強風にあおられたアオギリサービスのボンベが倒れてバルブが壊れる。一気にガスを噴出して飛び、干してあった作業着と一緒に窓ガラスを割って飛び出した。それを見た水上は白い鳥が飛んで来たように錯覚した。
ボンベはプラントにある一酸化炭素をタンクに送るパイプを破壊。そのため冷却装置が働かずにタンクは爆発した。
アオギリサービスは過重労働により社員たちに疲労が溜まり、些細なミスが発生する状況だった。そのため、ボンベの個数の把握もできず、そのずさんな管理体制がボンベの爆発を招いた。
爆発事故の原因その2:非常用電源の故障
水上の業務記録をずっと見て行くと、事故が起きた1ヶ月先の日付に「UPS修理連絡」という書き込みがあった。
非常用電源が故障していることを水上は気付いて報告したが、本社から収益を上げるため厳しく言われていたため、納期に向けてフル稼働しなければならなかった。
非常用電源の不具合を直すためにプラントを何日も止めることはできず、水上に1ヶ月だけ黙っていて欲しいと増渕は言った。
そのため、事故が起きたとき非常用電源が作動せず、水上は「俺のせいだ」と言っていた。
【ミス・ジコチョー】1話の感想
事故調査委員会というものを題材にしたドラマです。ドクターXが「私、失敗しないので」なら、ミス・ジコチョーは「私、失敗しちゃった」という対照的なセリフをワザと入れてきます。
失敗から学ぶ“失敗学”という学問をベースに、失敗の責任を誰かに問うのを目的ではなくて、原因を調査するストーリー展開となっています。
世界中にある過去の失敗例を持ち出し、分かりやすく説明をしてくれます。1つの失敗の裏側には沢山の小さな失敗が積み重なっている、そんなことも教えてくれます。
そして、失敗したことを責めるのではなく、今後他の人たちが起こさないために隠蔽するのではなく明らかにし、事故を減らして欲しいとまとめます。
個人的にはとても楽しく視聴しました。人情に話を持っていくのではなく、原因を明らかにして未来に生かすことをメインにしているのも良かったです。
松雪さん演じる教授が非常に変わっていて、堀井さん演じる助手の野津田が振り回されます。天才の身近に一般人を置くことで彼女が余計に際立つという、天才が主人公のドラマにはありがちな設定ではあります。
また、他の助手の人も変わっていて、なおかつ実は優秀という設定です。要するに野津田=視聴者となっており、主人公は真奈子なのですが、野津田の目を通して自分たちが参加しているように感じられます。
今回は主人公の真奈子がどんな人物なのか、失敗学というものがどういうものなのか、ドラマ内で教えてくれた事例や、今回の事故について解明するまでの流れをまとめました。
ネタバレ前提となりますので、未視聴の方はご注意ください。
天ノ真奈子とは?
物語の主人公となる真奈子は風変わりな人物です。しかし、とんでもなく優秀な人物でもあります。どんな人物か今回分かったことを中心にまとめました。
- 東京第一大学工学部教授
- 長く海外で活躍
- 新型産業ロボットや自動運転自動車の研究で、世界的に知られる工学博士
- 機械工学・宇宙工学・遺伝子工学福祉工学・食品工学など多くの工学分野に精通
- 最近は失敗学の研究に熱心
- 過去に起きた事故の膨大なデータを記憶している噂がある
- 本気で研究に取り組めば年間数億円を投資する企業もたくさんある
- 事故調査は趣味
- ノーベル賞候補に名前が挙がる科学者たちと仲良し
- 結婚後1年で離婚している
- 結婚を止めに行くためタイムマシンを開発したい
ドラマの内容が事故といっても医療事故から交通事故、今回起きたような爆発事故など色んなものを取り扱う予定のようで、一人の主人公でやる関係上、チート的に多岐に渡って知っている必要があります。
また、検証実験をするのに金銭がかかるので、すぐお金になるような研究能力を持っている必要もあります。
過去の事例を持ち出して説明するため、膨大なデータを記憶しているという設定も必要でしょう。
結婚の話は後に分かれた旦那でも出てくる予定でもあるのか、そういう設定のようです。そういえば松雪さん演じる人物は【サイン】でも離婚設定でした。
タイムマシンに関しては、どうやらそれだけが目的ではない雰囲気です。次でその理由を挙げます。
謎の日付
番組終わりにタイムマシンの設計図か構想図のようなものを、片付けのついでに野津田が見つけます。そこには日付が3つ書かれていて、野津田もその日付がどういう日なのか調べます。
- 1979年3月28日:スリーマイル島原子力発電所事故
- 1986年4月26日:チェルノブイリ原子力発電所事故
- 2011年3月11日:福島第一原子力発電所事故
この3つの日付が意味するものは、それぞれ大規模な原子力発電所の事故が起きた日付です。
失敗から学ぶために真奈子は、その3つの事故が起きた原因が知りたいのか?もしかしたら、事故によって誰かを亡くしているとか、そういう理由かもしれません。
“人類最大の失敗”を止めるため真奈子はタイムマシーンで戻りたいようです。それを自分の結婚と言いますが、だとしたら“人類”という言い方をするのか?その場合“人生最大の失敗”ではないのか?
もしこの原発事故のことを指しているのだとしたら、“人類最大の失敗”という言い方をするのも分かります。
ハインリッヒの法則とは?
真奈子が大学の講義で説明する法則です。ドラマ内ではこう説明されていました。
1928年アメリカの損害保険会社の安全技術者ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、50万件以上の事故事例を調査し一つの法則を導き出しました。1件の重大災害の陰には29件のかすり傷程度の軽災害があり、更にその陰には300件のヒヤリとした体験がある。
今回の事件に当てはめますと
- 1件の重大災害=プラント爆発
- 29件の軽災害=非常用電源の故障や、ボンベが飛んだ
- 300件のヒヤリとした体験=労働環境や収益を上げるために起きたミスの数々
となります。
このハインリッヒの法則は実在するもので、“災害防止のバイブル”と呼ばれています。
ハインリッヒはこう分析しました。
- 人間の不安全行動と機械的物理的不安全状態が原因の災害のうち98%は予防可能である
- 人間の不安全行動(88%)は、機械的物理的不安全状態(10%)の約9倍の頻度で出現している
この上記の法則から、
- 教訓1:災害を防げば傷害はなくなる。
- 教訓2:不安全行動と不安全状態をなくせば、災害も傷害もなくなる。(職場の環境面の安全点検整備、特に、労働者の適正な採用、研修、監督、それらの経営者の責任をも言及している)。
という教訓を導き出しました。
ヒューマンエラー=人災は人が起こす災害なのだから、人がまともにその任務に就ける状態でなければ起きるということです。
ノルマや売り上げをこれだけ出すという結果から逆算するのであれば、人数も本来必要です。なのにリストラで人を減らし一人頭の負荷を高める、当然ミスが起きやすくなります。
健康な精神状態と肉体が災害を減らし傷害を減らすことに繋がります。
失敗の事例
ドラマ内でタコマ橋の話が失敗の事例として出て来ます。ドラマ内では最初、業務記録を借りるために2度目に落ちた時、甚大な被害が出たと言ってある意味脅します。
ドラマ内でも種明かししますが、この事故は2度目の崩落もありませんし、1度目の崩落で死者も出していません。
では、なぜ映像が残っていたのか?
それは、架橋当時からわずかな風でも激しく揺れることが問題となっており、ワシントン大学の研究チームが崩落以前から日々調査をしていたからです。
異常振動が始まったと聞かされたチームは、すぐに近所の写真店から映画用カメラを借りて、崩落するまでのシーンを撮影することができました。
その時の映像が以下のものです。
ちょっとありえないぐらいの揺れ具合です。こんな状態だったので両岸で通行規制が敷かれ、崩落前には調査しに来た橋の上にいた研究者や技術者もちゃんと避難しています。よって、死者は誰も出ませんでした。
【ミス・ジコチョー】1話のその他気になったこと
- 亡くなった人の無念を晴らしたいなら僧侶になれと言う真奈子
- 面白おかしく失敗を語れと無茶言う真奈子
- ロボットの衣装を縫っていた郁美
- ジコチョーじゃなくジコチューと言われる真奈子
- 鳥の翻訳機を作ろうと本気で考える真奈子
- モーションキャプチャーの手伝いでボックスステップする野津田
- もはや距離を飛ばすのが目的になっている実験
- 事故現場の模型はレゴのようなブロック
- 鳩と会話させられる野津田
- 当然会話にならずクルポポうるさいと怒る野津田
【ミス・ジコチョー】1話のまとめ
今回は【ガリレオ】とかのように仮説を立てて、検証するため実験という流れでした。毎回実験するのかは分かりませんが、実験部分は面白かったです。
また、【ドクターX】を意識しているのかオマージュなのか、所々そんなセリフやナレーションが入ったりします。
失敗というと汚点のように考えがちですが、失敗にも種類があると真奈子は言います。今回の水上の失敗は他の人なら目を背けるような失敗にも向き合っていた裏返しで、業務記録にもみんなと共有するために隠さず書いてありました。
失敗を隠したり人のせいにするのではなく、ちゃんと自分の責任としていたわけです。さらに、失敗した自分を恥ずかしいと思ってなかったことにするのではなく、みんなにあえて知ってもらうことが今後に繋がると思っていたのです。水上は誠実な人間でした。
どうにも失敗した人のことを叩くばかりで、建設的な話にならない昨今、失敗とは学びのいい機会だと思えるようになりたいものです。
次回は10月25日22時から放送予定です。食中毒の話となります。