NHK BS【令和元年版 怪談牡丹燈籠】の最終回は、平左衛門を殺したお国と源次郎を追いかけ、孝助があちこちを探し回ります。因縁に導かれて再び出会った者たち、それぞれの物語がここに完結します。
【令和元年版 怪談牡丹燈籠】最終回のあらすじ
お国(尾野真千子)の悪計を阻止するため孝助(若葉竜也)が暗闇のなか斬ったのは源次郎(柄本佑)ではなく、師・平左衛門(高嶋政宏)だった。いまわの際の平左衛門によって源次郎は深手を負い、お国と共に逐電。孝助は二人を追って敵討ちの旅に出る。一年後、逐電先で名を変えていたお国に入れ込んでいたのは百両を元手に成り上がった伴蔵(段田安則)。日増しに態度が大きくなる妻(犬山イヌコ)が邪魔になった伴蔵は…
公式HPより引用
【令和元年版 怪談牡丹燈籠】最終回のネタバレ
- 孝助は平左衛門の仇を討ちに出るので、お徳との縁はなかったことにして欲しいと新五兵衛に頼む
- 平左衛門の遺言状を新五兵衛に見せてもらい、縁は切らずに仇討ちへと向かう
- 源次郎とお国は上州高崎から渋川に足の怪我を治しに湯治へ向かう
- 孝助は2人が行くところはお国の実家である越後の村上だろうと聞いて向かう
- 孝助は一年かけて2人を探すが見つからず、平左衛門の墓前に改めて機会を設けると報告する
- お国は飯屋で働いていた。そこに幽霊からもらった百両で商売を始めて成功した伴蔵がやってくる。伴蔵はお峰がいながらお国に妾にならないかと持ちかける。お国はトラブルに巻き込まれたくないといって断った
- そのことを知ったお峰は怒り、離縁してもいいが手切れ金として二百両寄越せという。伴蔵はお峰に謝り仲直りを一旦する
- 伴蔵はお峰と一緒に料亭で食事をした帰り、お峰のことを刺し殺す。そして川へ遺体を捨て、自らも体を傷つけ追いはぎに襲われたということにする
- 医者を探していたところ、たまたまそこに山本がいた。山本は伴蔵が今までしたことも知っていて、新三郎の仇だという。伴蔵は金を渡して黙っていて欲しいと願い、山本もそれを受け取った
- 飯屋に行った山本はそこでお国と出会う。お国のしたことも知っていたため脅し、後で部屋に来るよう言う。だが、お国は部屋には行かず源次郎とここを出て行こうと持ちかける
- お国が部屋に来なかったことを怒る山本は番所に行こうとするが、再び伴蔵の所へ行って金をせびる。そこで伴蔵は隠しておいた金の仏像を掘り出し、山本と折半しようと持ちかける
- 今度は舟の上で話していた山本のことを刺し、そのまま川へと遺体を捨てる。中々沈まない遺体を見ていた伴蔵の目に、殺したはずのお峰が見える。水中から伸びてきた手に捕まれ、伴蔵は川へ引きずり込まれ浮かんでくることはなかった
- 逃げるのにも疲れたという源次郎は、孝助を返り討ちにしてしまおうと言い、お国は果たし状を送ることにした
- 孝助は呼び出された場所へ行くがお国によって雇われた者たちに待ち伏せされる
- 橋の上で源次郎と向き合い刀を構える孝助、劣勢を強いられるが、師の言葉を思い出して源次郎を刺す。そしてお国も刺して平左衛門の仇を討った
【令和元年版 怪談牡丹燈籠】最終回の感想
因果応報という言葉がぴったりな物語でした。ただ、悪者を善人が成敗するというだけじゃないところが、この物語が現在まで語り継がれた理由の一つだと思います。
お国と源次郎、この2人は確かに悪者です。ですが、それぞれ“誰にも愛されない”という共通点があって結びつきます。いわゆる『俺たちに明日はない』のボニー&クライドのような破滅的カップルなのですが、どこか共感する部分もあって切なく強い印象を残します。
伴蔵の話は本当にどうしようもなく、完全なる悪として描かれます。そして、忘れてはならないのが新三郎とお露を出会わせておきながら、保身に走って別れさせようとしていたあの山本です。この人物も相当どうしようもない人物でした。この2人のオチはスッキリして痛快です。
物語をより深く知るために、孝助に対して平左衛門が残した遺言、お国の過去についてまとめました。
ネタバレの詳細となります、未見の方はご注意ください。
お国の過去
元々平左衛門の妻だったおりつの世話をしていたお国が、なぜ悪女になったのか?その疑問に明確には答えてくれません。しかし、お国の口から語られる話から考察しました。
お国の幼少期
- 生まれは越後の村上
- 実家は海産物の乾物問屋
- 12歳の時に父が後添えをもらう
- 母親以外の女を妻にする父が許せなかった
- あれこれ口出す継母も憎かった
- 14歳の時に家を出て江戸へ向かう
今の新潟県の商家の出です。母親が死別なのかは分かりませんが、後妻と折り合いがつかなかったようです。なので、14歳で実家を出て江戸へと向かいます。
お国の江戸時代
- 大店の呉服問屋に女中奉公
- 必死に働くうちに主人夫婦にかわいがってもらう
- 一通りの行儀作法を身に着ける
順風満帆な生活を送ります。しかし、それもお国が年頃になり持ち前の美貌のせいか、物事が悪い方向へ傾き始めます。そして最終的には店を辞めてしまいます。その理由はこうでした。
- 若旦那が女好きで言い寄ってくる
- 父親も妾にならないかと誘う
親子揃ってどうかしています。そこでお国はおかみさんに泣きつきました。すると、得意先の旗本の家に奉公の口を利いてくれます。これを、お国はていのいい厄介払いだと言います。
おりつの元での奉公
- おりつ付きの奥女中になる
- また男がちょっかいを出してくる
- 男の心を操る術を身につける
いつも男が言い寄って来てしまうお国です。しかし、この頃にはお国も開き直ったのか、お陰で男の心を操るスキルを会得します。
そしておりつが平左衛門のところに嫁いだ時、お国も一緒についていきます。おりつのことを大好きだったとお国は言います。
悪女が誕生した理由
そんなおりつが亡くなったあの日、自分は本当に悪い女になったと言います。なぜおりつが死ぬと悪女になるのか?その理由はこう考えられます。
- 実の父親は母以外の女を愛した
- 継母は愛情をくれない
- 呉服問屋の若旦那は女好き
- 呉服問屋の主人は妻がいるのに妾にしようとする
- 呉服問屋の妻はお国を厄介払いした
- おりつの娘お露は自分を毛嫌いしている
これらの人たちはみんな心変わりしたり、自分以外も愛します。しかし、おりつだけが変わらぬ愛情を注いでくれました。飯島家に嫁ぐ前も嫁いだ後も、お国のことを気にかけて着物をあげたりもしました。そのおりつが死んだことにより、お国の中で何かが壊れてしまったのだと思います。
もう、自分を愛してくれる人はいない。そんな喪失感のようなものがあったのではないかと想像できます。娘のお露とは折り合いが悪いですし自分が権力を握ろうと、平左衛門の心を操り後添えになろうとします。ですが、隠居するなどいうものだから、お国的には勘弁して欲しいとなります。そこで源次郎の登場です。
なぜ源次郎を選んだのか?お国はこう言います。
金や力で私をものにしようとした、どの男とも違う。本当に私を必要としてくれた。だから、あんたから離れやしない、死んでも。
お国は奉公人なため声をかけてくる男どもは、どいつもこいつも金と権力を使ってものにしようとしがちです。ですが、お国に限らずそんな男を愛せる女性は少ないでしょう。源次郎はお国を純粋に欲しいと思った、その気持ちが嬉しかったのだと思います。さらに、お国も純愛だったと思われます。
ただ皮肉だなと思うのは、結局自分が子供の頃家を出た原因となる、継母になろうとしていたことです。あの時のお露の心境はお国の幼少期そのものなのです。
平左衛門が残した遺言
孝助宛に残してはいないのですが、新五兵衛は明らかに孝助宛だと言って読ませます。その内容はどういうものだったのか?まとめました。
なぜ平左衛門は2人をすぐ討たなかったのか?
- 源次郎はかつての弟子で子供のころから知っている
- それゆえ自分の手で斬るのは忍びなかった
- しかし不義密通を見逃すのは武門の名折れ、飯島家にも咎が及ぶ
- そこで一太刀でも浴びせて殺さずに2人を逃そうとした
- 計画を言わなかったのは孝助を死なせたくなかったため
ということが理由となります。
不倫を見逃すとこっちにも何かしらのペナルティが起こるというのは、この時代ならではのものとなります。“家”というものがとにかく大切な時代です。お取り潰しになって一家断絶となったらヤバいと武士の人は基本的に思っています。
遺言状の内容
当然そんな“家”の跡継ぎというのも大切で、そのことについても遺言状で触れています。原文をドラマ内から引用します。
孝助儀、あのように一本気な性格ゆえ、必ず我が仇を討たんとするに相違なきこと明白に候。しかしながら、貴殿には約束どおり孝助をお徳殿の婿に迎え入れてもらいたく頼み入り候。今回の不始末、不義の両名を我が手で討ち果たし候といえども、家名に傷が付くことは免れず、飯島家代々の霊にあの世で顔向けできまじく候。露も死に後嗣これなく候わば当家を残す唯一の道は、拙者が源次郎に討たれその仇を孝助が見事そそいで、世に義名を上げるほかござなく候。
言っている内容もちょっと現代では考えにくい内容な上、言い回しも現代と違うので分かりにくいです。内容としてはこんな感じです。
- 孝助は仇討ちに行くと思うけど、約束通りお徳の婿にしてくれ
- もし、お国と源次郎を討ったとしても家名に傷が残る
- 跡継ぎもいないし家を残す唯一の道は、孝助が仇討ちして世間に名を上げるしかない
不倫されたら家ごと「あの家、不倫されたんだって。駄目な家だな、減俸しろ!家を潰せ!」となるのが現代では意味不明ですが、当時ではあるあるな話だったのでしょう。その汚名をそそぐには仇討ちしかないとなれば、平左衛門はワザと殺された可能性があります。そして孝助なら絶対仇討ち行くと思ったのでしょう。結構計算高いです。
後継者について
さらには後継についても触れています。
- 孝助とお徳の子の一人目は相川家を継がせる
- 二人目は飯島家にくれ
- 男だったら平左衛門を名乗らせて欲しい
- 女だったら婿養子をもらって家名を継がせてくれ
など、希望を書いてあります。しかも、この内容を新五兵衛の家だけでなく、若年寄にまで送っています。孝助は仇討ちに絶対行かないとなりませんし、子供も二人作らないとなりません。
人の将来まで決めてしまう今では考えられない遺言状です。それだけ“家”というものが大切な時代ということが分かるかと思います。
【令和元年版 怪談牡丹燈籠】最終回のその他気になったこと
- お国が帰って来るまで暇で蛾を斬る源次郎
- 幽霊をたぶらかしたことに今更ビビる伴蔵
- 足を掴まれ手ごと斬る伴蔵
- 山本にバカにされて「どっちが小悪党だ」とボヤく伴蔵
- 悪の巣窟な宿場
- お国に出会って思わぬお宝と喜ぶゲスな山本
- 金の仏像見て興奮する山本
- 猪侍と言われる孝助
- なぜか孝助を攻撃しない雇われた人たち
【令和元年版 怪談牡丹燈籠】最終回のまとめ
“初めて完全映像化”という触れ込みで始まったドラマでしたが、孝助の母親が出て来る話はありません。それでもほとんどの部分は映像化されているので、今回映像で初めて見れたのは楽しかったです。
どの登場人物に感情移入するかで、物語の楽しみ方が変わってきます。孝助に感情移入すれば因果応報・勧善懲悪な話と見れますし、お国に感情移入すれば破滅的なカップルの物悲しい恋の話として見れます。牡丹燈籠という物語は今までお露と新三郎の怪談だけだと思われてましたが、実は壮大な“因縁”の物語だったことが今回分かりました。
また、映像も現代的にワイヤーアクションや特殊メイクを使用する反面、昔の時代劇のように結構残酷なシーンもあったりします。怪談という怖い部分もありつつ、恋の話や仇討ちといったものもある一大エンターテイメント作品となっています。
時代劇の形でやっているので、古臭い話なのではと思う人もいるかもしれません。しかし、現代の私たちにも通じる愛や恨み、憎しみや復讐といった人間の“業”の部分を取り扱っているので、今見ても十分面白い作品です。
また、キャストがよく、尾野さんのどこか陰があり情熱的なお国や、柄本さんの感情に素直に生きる破滅的な源次郎、仇討ちに向かう孝助役の若葉さんの青臭くも凛々しい姿など、見ていて引きこまれる配役でした。
怖い話が一切ダメという人には向きませんが、狂おしいまでの恋愛話などが好きな方にはオススメです。エンターテイメント作品として楽しめます。