悪党~加害者追跡調査~WOWOWドラマ最終回6話感想 佐伯の決断

悪党 WOWOW
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今回で最終回を迎えるWOWOWドラマの「悪党~加害者追跡調査~」は、佐伯が最後の依頼を受けた結果どうなるのか?姉の仇である榎木が病院に入院してしまい、末期の膵臓がんであることがわかります。それでも佐伯は敵討ちをするのか?それとも憎しみを乗り越えられるのか?

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悪党~加害者追跡調査~概要

WOWOWプライムで5月12日より毎週日曜22時に放送しています。元警官の主人公が退職後に探偵となり、依頼を受けて犯罪加害者の現在を調査し報告をします。主人公自身も犯罪被害者遺族であり、調査をする内に様々な葛藤に直面していくストーリーです。

キャスト

  • 佐伯修一(東出昌大)
  • はるか(新川優愛)
  • 坂上洋一(青柳 翔)
  • 遠藤りさ(蓮佛美沙子)
  • 前畑紀子(山口紗弥加)
  • 早見剛(寛一郎)
  • 松原弥生(篠原ゆき子)
  • 松原文彦(中島 歩)
  • 細谷博文(渡辺いっけい)
  • 田所健二(三浦誠己)
  • 寺田正志(山中 崇)
  • 榎木和也(波岡一喜)
  • 鈴本茂樹(柄本 明)
  • 染谷久美子(板谷由夏)
  • 佐伯敏夫(益岡 徹)
  • 木暮正人(松重 豊)

スタッフ

  • 【監督】瀬々敬久
  • 【脚本】鈴木謙一
  • 【原作】薬丸岳「悪党」
  • 【音楽】大間々昂
前回はこちら
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あらすじ

復讐か、赦しか。揺れるままに佐伯がたどり着いた現在の榎木(波岡一喜)は、余命いくばくもない病床にあった。佐伯の正体を知っても、悪党のまま死ぬことを覚悟している榎木からは、謝罪も後悔の言葉もない。どうすれば自分は、犯罪被害者や遺族は救われるというのか? 悪党はしょせん、悪党のままなのか? さまよう佐伯は、図らずも榎木への復讐を果たせる、ある究極の手段を手に入れる。榎木の最期に佐伯が取った行動とは!?

公式HPより引用
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ネタバレ


続きはこちら
  • 榎木の勤めていた所に行くが、病気で辞めたことがわかる。そして入院先の病院に清掃員として潜入をする。ベッドに寝ている榎木の喉元にナイフを突きつける佐伯だったが、榎木が目を覚ますと一旦しまってその場を出て行こうとする。しかし、榎木が話し相手になってくれと言われて残る。
  • 思い残すことはないと語る榎木の話に苛立ちを覚える佐伯だったが、そこに鈴本が入って来て佐伯は去ろうとする。気付いた鈴本がどういうつもりかと聞くが、関係ないだろうと言ってその場を立ち去る。
  • その後再び榎木と話す佐伯は、遣り残したことが一つあったと榎木から話を聞く。それは母親に会いたいということだった。20年以上会っていない母親に会ったら、思いっきりぶん殴ってやりたいと語る。そんな話に余計に憤る佐伯は、自分が殺された姉の弟だと榎木に明かす。しかし榎木は悪びれずに、姉の最後の言葉を佐伯に教える。「しゅうちゃん、助けて…」と自分にしか聞こえないぐらいの声で言ったと教え、しゅうちゃんって誰のことかと思ったら、お前のことかと佐伯にいう。怒りに火がついた佐伯はナイフを取り出し、目を開けろと榎木に言うが、そのまま危篤状態になってしまう。
  • 収まらない気持ちをどうしたらいいかわからない佐伯は、様々な人に話を聞きに行く。坂上を見つけて「大切な人が殺されたらどうやって復讐する?」とたずねる。坂上は「もし俺なら復讐なんて面倒なことは考えない。人から奪った分だけ自分が何か失うこともちゃんとわかっている。それでも悪いことするのが悪党だ。そんなやつに復讐したところで時間の無駄だ」と答えた。
  • その後、坂上の元恋人であるりさに話を聞きに行く。りさにも自分の父親を殺した相手についてどう思うかを聞く。「憎しみがないと言えば嘘になる。もしあの人が何かを手放して生きているのだとしたら…」と答え、「許せるか?」と佐伯に聞かれると「わかりません。やっぱり目の前にしてみないと」と答えた。
  • 佐伯は所長に呼び出されてある家へ行く。そこは所長が過去に仕事をした依頼者の家だった。子供を交通事故で亡くした時に、刑に納得できなかった遺族が所長を頼って依頼をしてきたのだった。危険運転致死になるように証拠集めを手伝ったが、適応されず余計な金を使わせたと所長は言う。それでも、前を向いて進んで行こうとしているあの家族を見ていると、元気がもらえる気がするということだった。
  • 佐伯は自分にした依頼と矛盾していないか?と所長に食い下がる。すると所長は「君は立ち向かわないといけない。大人になった君を見てハッとした。まだあそこに立ち止まったままだ」と、運命から逃げている佐伯に檄を飛ばすのだった。
  • 榎木の母親を見つけ出して佐伯は会いに行く。自分の身分を明かした上で会話を録音をし、息子が今危篤状態だと教える。しかし母は「和也は死んだんです。あんな悪党とっくに死んだんですよ」と言って、面会に行こうとはしない。佐伯はその時、連れていた孫に対して子守唄を聞かせる母親の歌も録音しておいた。
  • いよいよ榎木の死が近いことを知り、鈴本が最後に佐伯の口から何か言ってやって欲しい。罪と向き合ってもらいたいと願う。佐伯は榎木と会話を始めるが、榎木は「死刑執行に立ち合わせてやる。許してやるとかいらねーぞ」と言う。佐伯は「俺はお前を絶対許さない」とはっきり答えると、「残念だったな、自分の手で殺せなくて」と榎木は言う。
  • すると佐伯はボイスレコーダーを取り出し、榎木の枕元に置いて母親の子守唄を再生する。それを聞いた榎木は「こんな女の声なんて聞きたくねぇ、やめろ」と言いながらも目には涙が浮かんでいた。佐伯はその様子を見て病室を後にする。その時、廊下で榎木の母親とすれ違う。駆けつけてきたが既に榎木は息を引き取っていた。その後、佐伯は病院を出て駐車場で泣きながら絶叫する。今までの憎しみや思い、そういったものを全て吐き出すように叫ぶのだった。
  • ある日、佐伯は海沿いのカフェに来ていた。店に入ると誰もおらず、そこにある黒板に文字を書く。店の外で掃除をしている店員に窓を叩いて気付かせ、書いた文字を見せる。「人を探しに来ました」「伊藤冬美さんご存知ですか?」と。佐伯は店の外に出て、彼女に改めて交際を申し込む。受け入れてくれた冬美と佐伯は、二人抱き合い新たな一歩を踏み出すのだった。
  • 佐伯は父親にも電話して、「今度会って欲しい人がいるんだ。すごく強くて、優しくて素敵な女の人なんだ」と言う。父は「これからお前はたくさん幸せになるんだ」とその言葉に喜んで答えた。
  • 佐伯は再び事務所に戻る。新たな依頼者は父親を殺した男の現在を知りたいという。佐伯は「相手の今を知ることで辛い思いをされるかもしれません。その時は必ず一緒に向き合います」そう答える。新たな依頼者はりさだった。

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感想

佐伯が敵討をするのか、しないのか?榎木の命のタイムリミットが迫る中、その決断をしなければなりません。結論から言いますとしません。非常に葛藤しますが佐伯は殺害を“しない”という選択をします。それは逃げて選んだわけではなく、様々な人物を見て来た結果、しないという選択をちゃんとしました。原作未読なのでわかりませんが、映像では過去回に出てきた人たちのその後も少し教えてくれました。

佐伯の決断

所長に命じられて榎木に会いに行きますが、残念ながら榎木は既に末期がんでした。復讐するにもしないにも、榎木の命が尽きるまでに決断を迫られます。時間に限りがある中、佐伯は色々な人に話を聞いて気持ちを固めます。流れとしてはこんな感じです。

  1. 寝てる榎木にナイフを突きつけるが殺害はしない
  2. 再び榎木の病室に行き再び話し、姉の死に際の話をされて激怒
  3. 殺そうとナイフを取り出すが、危篤状態になってしまい殺害できず
  4. 何を思ったか坂上に会って話を聞く
  5. さらにりさに話を聞く
  6. 所長にある被害者家族の現在を見せられる
  7. 榎木の母親に会いに行く
  8. いよいよ榎木が危なくなり病院へ
  9. 「絶対許さない」と言い、録音した母親の子守唄を聞かせる

最初は殺す気満々でした。しかし、邪魔が入ったり容態が急変して殺せません。佐伯は偶然にも殺人者にならずに済み、改めてもう一度考える時間が与えられます。徐々に気持ちが許すほうに傾き始め、その決断を決定づけたのが榎木の母親との会話です。

榎木は10歳の時に両親が離婚しています。母親は弟だけを連れて出て行ってしまいます。その頃から榎木は荒れて、自分は“母親に捨てられた”と思っていました。孫を連れて公園にいますが、その子どもはかつて連れていった弟の子どもです。母が捨てた榎木には妻子もいない、その上末期がんで死にそうです。この立場の対比が皮肉です。

母親は息子は自分の中ではすでに死んだ、事件後自分も酷い目にあったといいます。それでも自分の子でしょ?最後ぐらいそばにいてやったらと詰め寄る佐伯に、「あんな悪党とっくに死んだ」と再び言います。そんな母親の様子に佐伯は何を思ったのか?

  • 親も親なら子も子だな
  • 親も言うように“悪党”だから殺しても仕方ない
  • つか、榎木って結構可哀想じゃね?

辺りでしょうか。具体的に何が理由とは言いません。母親に会った時直ぐ会話を録音をするので、母親が榎木と会いたがらない言葉を死に際の榎木に聞かせてやろうと、せめてもの仕打ちでも考えていたのかもしれません。しかし、最終的に聞かせるのは母の子守唄です。嫌がる榎木ですが目には涙を浮かべていました。佐伯なりの慈悲のように感じました。

結論:佐伯は許す。

その後の佐伯

許すと呪縛から解き放たれたように、佐伯は前を向いて歩き始めます。探偵という職業柄、探し出したいある人物を探し出します。それは“はるか”こと冬美です。

  1. 海辺のカフェに行くが中に誰もいない
  2. 「掃除中です」と書かれた黒板の文字を消す
  3. 「人を探しに来ました」と窓の外の店員に見せる
  4. 「伊藤冬美さんご存知ですか?」とさらに書く
  5. 冬美、自分を指差す
  6. 佐伯外へ迎えに行く

このシーンは映像で描くとフランス映画とかにありそうな叙情的なシーンです。瀬々監督のセンスが発揮されているこの作品屈指の名シーンです。これが“陽”の名シーンなら、“陰”の名シーンが初回の雨の中の細谷のシーンです。

冬美に佐伯はこう言います。

過去はこれからも追いかけてくるかもしれない。けど、それでも一緒に前に進もう。俺たち二人は今日初めて会ったことにして。俺のそばにずっといて欲しい。

そして佐伯は店が何時に終わるかを聞き、その後予定はあるかを聞いた上で「僕とデートしてもらえませんか?」と、初めて会った二人のように初々しく誘います。冬美は「ぜひ」と喜びに泣きながら答えます。冬美の仕事が終わるまでの間に、佐伯は父親に電話をします。今度会って欲しい人がいると、父もそれを聞いてようやく佐伯が一歩踏み出せたのを知り喜びます。

その後の登場人物たち

映像でさらっとですが、過去回に登場した人物たちのその後が紹介されます。なお、坂上とりさはちゃんと会話のシーンがあったので、それを記載しています。

  • 坂上(1話の対象者):今も特殊詐欺をやっている
  • りさ(坂上の元恋人):佐伯に父親を殺した人物の現在を調査依頼しにくる
  • 細谷(1話の依頼人):刑務所に服役
  • 剛(2話の依頼人):妻と一緒に病院へ行っている
  • 弥生(3話の依頼人):弟と一緒に実家で暮らしている
  • 文彦(3話の対象者):仏壇に向かって手を合わせている

運命にちゃんと向き合った人はその後、幸せになっています。それが罪を犯した人であっても、被害者であっても。所長がなぜ佐伯にちゃんと向き合わせたかったのか、被害者遺族の人でも前を向いている家族を知っていたからです。それがわかるセリフを引用します。

残された者の悲しみはいつまでたっても癒えない。亡くした人を忘れることもない。後悔だってあるかもしれない。もちろん相手への怒りや憎しみも消えることがない。そうだろう?その上で彼らは前を向いている。一日一日前に進もうとしている。あの家族を見ていると、元気がもらえる気がするんだよ。

息子を交通事故で亡くした家族です。未成年の無免許運転者が、徹夜で遊びほうけて居眠り運転をした結果、この家族の子どもは死んでしまいます。その時の刑は「自動車運転過失致死罪」であり、量刑が軽かったことに納得できなかった遺族が、所長に「危険運転致死」の証拠集めを依頼します。しかし適用されず、余計な金を使わせたと所長は悔やんだ過去がありました。

今ではその家族は新たな子どもも増えて、前を向いて生活しています。佐伯もそうなったらいいと、所長は願っていたのです。

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ドラマの補足

ドラマ内の曲

劇中で榎木に聞かせる子守唄はこちらになります。

エンディングの曲について

いつもドラマでかかるあのエンディングの曲は、サントラ内に収録されています。このドラマのためのオリジナル書き下ろし曲です。作詞がShanti Snyderさんで、作曲が劇中の音楽を務めている大間々昴さん、歌っているのがAshton Mooreさんという方になります。歌詞がドラマの内容に一致していて、エンディングに聞くといつも切なくなる曲でした。

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ロケ地

冬美と再会する海辺の印象的なカフェは「音楽と珈琲の店 岬」です。外観からして映えます。

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「悪党~加害者追跡調査~」総評

始まった時はまた重いドラマが始まったな、と思っていました。実際決して軽い話ではなく、やり場のない怒りを感じるドラマです。もし自分が佐伯の立場なら?もし自分が加害者or被害者なら?身内に犯罪者がいたら?そんなことをいちいち考えて視聴すると、見終わった後には疲れるドラマでした。

良かった点

  • “犯罪”が起こす弊害を考えるいいきっかけになる
  • 大体良くない話なので、許す回が癒しになる
  • 映画を見ているような映像
  • エンディングの曲が良い
  • 押し付けがましいことを言ってこない
  • 登場するゲストがいい
  • 毎回タイトルの入り方が格好いい

残念な点

  • 救いがない回は気分が沈む
  • 気分が乗らない時にドラマを見るのをためらう
  • さすがに姉の事件の映像は、ドラマだとわかっていてもゲンナリする
  • 頭空っぽにして気軽に見るドラマではない

残念な点はこのドラマそのものの内容となります。映像もいい、曲もいい、ゲストもいい。しかし、とにかく話が重いのです。よくも悪くもドキュメンタリー作品のような、真実を淡々と教訓めいたことも言わずに突きつけてきます。

それだけに気軽には見れず、見終わるとどっと疲れます。感想で色々書いていますが、ドラマ内でハッキリと理由を言ってこないシーンが多いですし、映像から感じ取ってねというシーンも多いです。よって、勝手に解釈している部分があります。どちらかというと是枝監督の映画とかにも通じる、自分で考えろ系です。

また、演技力でよく疑問視される東出さんですが、今回の役柄がペラペラ喋る役柄でもないせいか、自分は全く気になりませんでした。むしろ松重さんとの高身長が並ぶ姿が見れて嬉しかったです。個人的にはやっぱり初回がインパクトがあって、話は重いのですが面白かったです。

結論:気分が乗らない時は見ないほうがいい。しかし、見終わった後に犯罪というものを深く考えさせてくれる良質なドラマ。

今回のいいセリフ

立ち向かうんだよ、自分の運命ってやつに。やられっぱなしじゃ、生きてる意味ねぇじゃねぇかよ。

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