『未解決の女 Season3』第8話は、指名手配犯として6年間逃亡を続けた男が、なぜ突然出頭を決意したのかを描く物語でした。
事件の真相自体は比較的シンプルです。しかし今回印象に残ったのは、犯行のトリックや文書の謎ではありません。
橋の上で人生に絶望していた柿田賢介と、病気の娘を育てるために懸命に働く玲子。決して幸せとは言えない状況にいた2人が出会い、その出会いが柿田の人生を少しだけ変えていきます。
なぜ柿田は玲子に出頭の付き添いを頼んだのか。なぜ報奨金を受け取らせようとしたのか。
今回は葉山紙業社長殺害事件の真相を整理しながら、柿田が最後に残そうとした想いについて解説します。
これまでの事件について整理したい方は、各話の解説もあわせてご覧ください。
(→ 第1話の解説はこちら)
(→ 第2話の解説はこちら)
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3行まとめ(結末あり)
- 6年前の葉山紙業社長殺害事件の犯人だった柿田賢介は、逃亡生活の末に自ら出頭を決意
- 柿田が玲子に出頭の付き添いを頼んだのは、報奨金を高瀬親子へ残すため
- 第8話は、人生のどん底で救われた男が、最後に誰かを救おうとした物語だった
あらすじ(ネタバレあり)
警視庁特命捜査対策室第6係に、「未解決事件を捜査してほしい。さもなくば自分が犯人を殺す」という“善良な市民”を名乗る差出人不明の手紙が届く。
依頼されたのは、6年前に発生した葉山紙業社長・葉山信一郎殺害事件だった。事件当時、従業員の柿田賢介が容疑者として浮上したものの、そのまま失踪。現在も指名手配犯として追われていた。
捜査を進めた陸奥たちは、「渋川」と名乗る男が都内の解体現場で働いているとの情報を掴む。やがてその人物が柿田である可能性が高まり、さらに柿田がスナック「ニュー華音」の従業員・高瀬玲子と親しくしていることも判明する。
玲子の協力を得ながら行方を追う中、柿田は電話で自首する意思を伝え、翌朝に警察署へ向かうと告げる。しかし鳴海は、なぜ柿田が玲子に出頭の付き添いを頼んだのかに違和感を抱いていた。
その後、柿田は警察署前に現れて逮捕される。取り調べの結果、葉山殺害は事実であり、動機は葉山と妻との関係を知ったことによる衝動的な犯行だったことが明らかになる。
さらに鳴海は、柿田が玲子を呼び出した本当の理由に辿り着く。柿田は、自分を逮捕に導いた人物として玲子が報道される状況を作り、報奨金が高瀬親子に渡るよう仕向けていたのだ。
橋の上で人生に絶望していた自分に声をかけてくれた玲子。その優しさに救われた柿田は、最後に恩返しをするため、自ら出頭という道を選んだのだった。
事件解決後、第6係には再び“善良な市民”を名乗る人物から新たな手紙が届く。そこには別の未解決事件への捜査依頼が記されており、鳴海たちは最終章へ向けて新たな謎に向き合うことになる。
第8話の事件を整理|葉山紙業社長殺害事件と“善良な市民”からの依頼
6年前の西新井男性絞殺事件
今回6係のもとに持ち込まれたのは、2020年に発生した葉山紙業社長・葉山信一郎殺害事件でした。
当時、葉山はネクタイで首を絞められて殺害され、現場から財布が持ち去られていました。捜査線上には従業員の柿田賢介が浮上しますが、事情聴取の直後に失踪。自宅から凶器とみられるネクタイも見つかり、全国指名手配となります。
しかし、その後6年間にわたって足取りは途絶えたまま。事件は未解決状態となっていました。
そんな中、第6係へ届いた“善良な市民”からの手紙によって、事件は再び動き始めます。
指名手配犯・柿田賢介の足取り
捜査を進めた陸奥たちは、「渋川」と名乗る男性が解体現場を転々としながら働いていることを突き止めます。
目撃証言や関係者への聞き込みから、その人物こそ柿田である可能性が高まっていきました。
さらに柿田は、スナック「ニュー華音」の従業員・高瀬玲子と親しくなっていたことも判明します。
玲子の証言によれば、柿田はどこか影のある人物でありながらも穏やかな一面を見せており、とても人を殺して逃げ続けているようには見えなかったといいます。
やがて柿田は玲子へ連絡を取り、自首する意思を伝えます。
しかし、その言葉の裏には誰にも気づかなかった別の目的が隠されていました。
事件の真相と葉山殺害の動機
逮捕後の取り調べで、柿田は葉山殺害を認めました。
事件の発端は、葉山と自分の妻との関係を知ってしまったことでした。
柿田は職場でも家庭でも居場所を失い、追い詰められた末に衝動的な犯行へ及んでしまいます。
もちろん殺人という罪は消えません。
しかし第8話で描かれたのは、犯行そのものよりも、その後の6年間でした。
逃亡生活の中で人生に絶望していた柿田は、橋の上で玲子と出会います。
その出会いが、やがて彼の最後の選択へとつながっていくことになるのでした。
柿田賢介はなぜ葉山を殺したのか
上司だった葉山への怒り
柿田が葉山を殺害した理由は、葉山と妻との関係を知ってしまったことでした。
柿田は会社でも家庭でもうまくいかず、借金を抱えながら生活していました。そんな中、自分の上司であり仲人まで務めた葉山が、妻と関係を持っていたことを知ります。
そもそも柿田の結婚は、葉山が自分の不倫相手を柿田に紹介しただけのことでした。
葉山はそのことがバレると柿田に「お前程度の男が俺の女と結婚できたんだから、むしろ感謝だろ」と開き直りました。カッとなった柿田は思わず殺害してしまいます。
葉山殺害は計画的な犯行というより、長年抱えていた怒りや絶望が噴き出した末の悲劇だったといえます。
裏切りが引き起こした衝動的な犯行
第8話で描かれた柿田は、決して有能な人物ではありませんでした。
元妻の証言でも、出世は遅く、借金癖があり、要領も良くない人物として語られています。
しかし、それでも葉山を信頼していたことだけは確かだったのでしょう。
だからこそ、裏切りを知った時の衝撃は大きかったはずです。
葉山殺害は許される行為ではありません。
一方で、第8話は単純な善悪だけでは片付けられない事件として描かれていました。
柿田は被害者でもあり加害者でもある。そんな複雑な立場のまま、人生を大きく踏み外してしまったのです。
逃亡生活で失われた6年間
事件後、柿田は6年間にわたって逃亡生活を続けました。
しかし、その時間は自由な人生だったわけではありません。
名前を変え、職を転々としながら暮らし、常に警察に追われる不安を抱え続ける日々でした。
そして何より、その6年間は二度と取り戻せない時間でもあります。
もし事件を起こさなければ、別の人生があったかもしれません。
しかし柿田は、その未来を自ら失ってしまいました。
だからこそ第8話の後半で描かれた玲子との出会いは印象的でした。
人生の大半を失った男が、それでも最後に誰かのために行動しようとしたこと。その意味を考えることが、この物語の本当のテーマだったのかもしれません。
柿田はなぜ玲子に報奨金を残そうとしたのか
橋の上で救われた柿田
柿田と玲子の関係は、橋の上での出会いから始まりました。
玲子の証言によれば、初めて見かけた柿田は今にも川へ飛び込みそうな様子だったといいます。
実際、柿田自身も後に「あの時会っていなければ、とっくに死んでいた」と語っていました。
6年間の逃亡生活の末、人生に希望を見いだせなくなっていた柿田にとって、玲子の何気ない声かけは大きな意味を持っていたのでしょう。
玲子は指名手配犯だと知らずに接していました。しかし柿田にとっては、自分を人間として扱ってくれた数少ない存在だったのかもしれません。
娘のために働き続ける玲子の姿
玲子もまた、決して恵まれた環境にいる人物ではありませんでした。
シングルマザーとして娘を育てながら、昼はクリーニング店、夜はスナックで働く日々を送っています。
さらに娘は病気を抱えており、治療費の負担も重くのしかかっていました。
それでも玲子は愚痴をこぼさず、笑顔を絶やしません。
柿田はそんな玲子の姿を見ていたのでしょう。
自分は人生を踏み外し、逃げ続けるしかなくなった。一方で玲子は苦しい現実の中でも前を向いて生きている。
だからこそ柿田は、玲子に特別な感情を抱くようになったのだと思います。
「自首の付き添い」を頼んだ本当の理由
柿田は自首を決意した際、玲子に警察署まで付き添ってほしいと頼みました。
しかし鳴海は、その行動に違和感を覚えます。
本当に自首するだけなら、玲子を巻き込む必要はありません。
それどころか、警察に追われている立場なら、できるだけ関係者を遠ざけるほうが自然です。
それにもかかわらず柿田は玲子を呼び出し、人目の多い警察署前へ現れました。
そして逮捕される瞬間には、まるで玲子に裏切られたかのような言葉まで口にしています。
鳴海は、この一連の行動そのものが柿田の計画だったと見抜きました。
報奨金は恩返しだった
柿田の本当の狙いは、玲子を“自分を逮捕に導いた人物”として世間に認識させることでした。
そうすることで、多額の報奨金が玲子へ支払われる可能性が高まるからです。
もちろん柿田は最後まで認めませんでした。
「報奨金なんてどうでもいい」と強がり続けます。
しかし、その言葉を額面通りに受け取る人は少ないでしょう。
橋の上で自分を救ってくれた玲子。
病気の娘のために必死に働く玲子。
その姿を見続けてきたからこそ、柿田は最後に何かを返したかったのだと思います。
それは恋愛感情だったのかもしれませんし、感謝だったのかもしれません。
ただ一つ確かなのは、柿田が最後に選んだのは自分のためではなく、誰かのための行動だったということです。
だから第8話は、逃亡犯が逮捕される物語というよりも、救われた人間が最後に恩返しをしようとした物語として描かれていたように感じました。
なぜ鳴海は柿田の本心を見抜けたのか
出頭するだけなら玲子を呼ぶ必要はなかった
柿田は玲子へ電話をかけ、「一緒に警察へ行ってほしい」と頼みました。
しかし鳴海は、その時点で違和感を覚えていました。
自首する意思が固まっているなら、誰かの付き添いは必ずしも必要ありません。ましてや玲子は家族でもなく、事件とは無関係の人物です。
それにもかかわらず柿田は玲子を呼び出し、警察署前で待たせようとしました。
鳴海が疑問に思ったのは、柿田が本当に求めていたのは「付き添い」だったのかということでした。
その行動の先には、別の目的が隠されていたのです。
「裏切られた」は最後の演出だった
警察署前で柿田は取り囲まれると、玲子に向かって「お前が俺を売ったんだな」「報奨金目当てだったのか」と怒りをぶつけました。
しかし鳴海は、その言葉さえも柿田が意図的に発したものだと考えます。
もし本当に玲子を恨んでいたのなら、自ら彼女を呼び出す必要はありません。
むしろ柿田は、玲子が自分を警察へ通報した人物だと周囲に思わせたかったのです。
さらに、その様子を多くの報道陣に見せることで、「高瀬玲子の情報提供によって指名手配犯が逮捕された」という構図を作り上げようとしていました。
柿田が残した罵声は、本心ではなく最後まで格好をつけるための芝居だったのかもしれません。
柿田が守りたかったもの
鳴海が辿り着いた結論はシンプルでした。
柿田は、自分を救ってくれた玲子とその娘を守りたかったのです。
逃亡生活を続けてきた柿田にとって、玲子との出会いは人生の終盤でようやく見つけた小さな救いでした。
だからこそ、自分が捕まるその日まで利用して、高瀬親子へ何かを残そうとした。
その方法が報奨金だったのです。
もちろん、柿田の罪が消えることはありません。
それでも鳴海は、彼が最後に選んだ行動の中に、人を思いやる気持ちを見出しました。
第8話で鳴海が見抜いたのは、巧妙なトリックではありません。
誰にも言えなかった柿田の優しさと、不器用な恩返しだったのです。
コラム|第8話は“間に合わなかった優しさ”の物語だった
地獄のような人生の中で出会った二人
第8話を見終えたあと、事件の真相以上に印象に残ったのは柿田と玲子の関係でした。
6年前に殺人を犯し、逃亡生活を続けてきた柿田。
シングルマザーとして病気の娘を育てるため、昼も夜も働き続ける玲子。
二人とも決して幸せな人生を送っていたわけではありません。
むしろ、それぞれ違う形で人生の苦しさを抱えていました。
そんな二人が出会ったのは、柿田が橋の上で人生に絶望していた時でした。
玲子はただ声をかけただけだったのかもしれません。
しかし柿田にとっては、その何気ない優しさが生きる理由になったのでしょう。
もっと早く出会えていたら違ったのか
第8話を見ながら、何度も考えてしまったことがあります。
もし二人がもっと早く出会っていたらどうなっていただろう、と。
もちろん過去は変わりません。
柿田は既に人を殺してしまっていましたし、6年間の逃亡生活も消えることはありません。
だから二人に未来はありませんでした。
それでも、玲子と出会った後の柿田は、橋の上で死のうとしていた頃とは少し違って見えます。
玲子の娘のことを気にかけ、店へ通い、誰かのために何かをしたいと思うようになった。
その変化を見るほど、「もう少し早ければ」と考えてしまいます。
だから今回の物語は恋愛の成就ではなく、間に合わなかった優しさの物語だったのかもしれません。
最後に柿田が選んだ生き方
柿田は最後まで格好をつけていました。
報奨金のためではないと言い張り、玲子を罵る演技までしてみせました。
しかし、その不器用さこそが柿田らしかったようにも思います。
感謝していると素直に言えない。
助けてくれてありがとうとも言えない。
だから代わりに、自分にできる最後の方法で恩返しをした。
それが玲子へ報奨金を残すことでした。
人を殺した罪は消えません。
失われた6年も戻りません。
それでも最後の最後に、誰かのために行動することはできた。
第8話は、そんな男の小さな救済を描いた物語だったように思います。
だから見終えたあとに残るのは、事件解決の爽快感ではありません。
「もっと早く出会えていたら違ったのだろうか」
そんな答えの出ない切なさでした。
次回の焦点|善良な市民の正体と最後の未解決事件
新たな失踪事件の真相
最終回で6係が向き合うのは、新たな失踪事件です。
善良な市民から届いた手紙によれば、絵画講座に通う女性・広橋芳乃は講師の大倉英行によって殺害された可能性があるとのこと。
しかし大倉自身も2年前から行方不明になっており、事件の全体像はまったく見えていません。
さらに手紙には謎の風景画の写真も同封されていました。
文書や文字から真相を追う『未解決の女』らしい事件になりそうです。
陸奥を襲った男の正体
予告では、聞き込み中の陸奥が大倉らしき人物と接触し、襲撃される場面が描かれていました。
これまで冷静に捜査を進めてきた陸奥ですが、最終回では自ら危険の中へ飛び込むことになります。
襲撃した男は本当に大倉なのか。
それとも別の人物なのか。
事件の真相だけでなく、陸奥自身の運命も大きな見どころになりそうです。
善良な市民はなぜ6係へ手紙を送り続けるのか
第8話のラストでも、善良な市民から新たな手紙が届きました。
これまでも未解決事件の情報を送り続けてきた人物ですが、その正体はいまだ不明のままです。
ただ、第8話の手紙には「解決して良かったという感情が半分、残りの半分は憤りです」という言葉が記されていました。
善良な市民は単なる情報提供者ではなく、未解決事件そのものに強い感情を抱いている人物なのかもしれません。
最終回では失踪事件の真相とともに、善良な市民がなぜ6係を選び、未解決事件を追い続けてきたのかにも注目したいところです。
まとめ|第8話は“最後に誰かを救おうとした男”の物語だった
第8話は、6年前の殺人事件の犯人を追う未解決事件として始まりました。
しかし物語の中心にあったのは、事件の謎そのものではなく、柿田賢介という一人の男の人生だったように思います。
上司と妻に裏切られ、衝動的に人を殺し、6年間逃げ続けた柿田。取り返しのつかない罪を背負ったまま、人生に絶望していた彼は、橋の上で玲子と出会いました。
病気の娘を育てながら懸命に働く玲子の姿は、柿田にとって失ってしまったものを思い出させる存在だったのかもしれません。
だからこそ柿田は、最後に高瀬親子を救おうとしたのでしょう。
失われた時間は戻らない。
犯した罪も消えない。
それでも最後に誰かのために行動することはできる。
第8話は、そんな小さな救済を描いた物語でした。
そして物語はついに最終章へ。
善良な市民の正体と最後の未解決事件の真相が、次回明らかになります。
