『銀河の一票』第6話は、やらせのつもりで始めた企画が、本物の事件へ変わってしまう回でした。
通り魔事件の衝撃も大きかったですが、今回印象に残ったのは、その事件そのものよりも、透と雨宮が抱えていたものです。
「傷が欲しかった人」と「死ぬ場所を探していた人」。
一見するとまったく違うように見える2人ですが、その根っこには「自分が生きていていい理由」を探し続けていた共通点もあったように思えます。
そして、その先であかりが口にした「誰も死ななくていい世界」という言葉。
少し大げさで、少し照れくさい。でも『銀河の一票』は、そういう言葉を真正面からぶつけてくるドラマなのかもしれません。
今回は、透と雨宮の過去を整理しながら、第6話が描いていた「生きる理由」と「あかりの出馬表明」の意味を考えていきます。
『銀河の一票』の各話ネタバレ解説はこちらにまとめています。
3行まとめ(結末含む)
- 透は亡くなった親友・明を失って以降、「自殺に見えない死」を探し続けていたことが明かされた
- 雨宮もまた「傷が欲しかった」と語り、それぞれが生きる理由を探していた
- やらせの配信企画は本物の通り魔事件へ発展し、あかりは「誰も死ななくていい世界」を掲げて出馬を叫んだ
あらすじ(ネタバレあり)
都知事選に向けて動き出したチームあかりは、知名度を上げるための作戦を考えていた。そんな中、茉莉は暴露系配信者・白樺透に協力を依頼。透は「退治系」として話題を集める配信企画を提案し、あかりを世間に知ってもらうための準備が進んでいく。
一方で、雨宮と透、それぞれの過去も描かれた。雨宮は「傷があれば強く優しくなれる」と信じ、自分の中に何もないことに苦しんでいた。そして透は、亡くなった親友・明との過去を思い返しながら、「神様に自殺だとバレない死」を探し続けていたことが明かされる。
しかし、やらせのはずだった配信企画は予想外の事態に発展。本物の通り魔が現れ、透はあかりをかばって刺されてしまう。
混乱の中、追い詰められた男へ向かって、あかりは「誰も死ななくていい世界を作りたい」と叫ぶ。そして思わず、「私、都知事になる」と口にしてしまうのだった。
第6話の事件を整理|やらせのはずが現実になった理由
今回チームあかりは、出馬表明前に知名度を上げる方法としてネット戦略を考えていました。
そこで協力を求めたのが、暴露系配信者の白樺透です。
透が提案したのは「退治系」と呼ばれる企画でした。街で迷惑行為をする人物を配信で取り上げ、問題行動を止める様子を見せることで話題化を狙うものです。
内容としては、事前に用意した“ぶつかりおじさん役”に対して、偶然通りかかったあかりが止めに入り、改心を促すという筋書きでした。
茉莉も当初はためらっていました。
これまで「正しいこと」を重視してきた茉莉にとって、やらせを利用して知名度を得る方法は、本来なら受け入れにくいものだったからです。
ただ、選挙戦では知ってもらえなければ何も始まらないという現実もありました。
しかしここで想定外の事態が起きます。
現れたのは用意した人物ではなく、本当に無差別に人へぶつかり続ける男性でした。
あかりが止めに入ると男性は逆上し、ナイフを取り出します。そして透はあかりをかばって刺されることになりました。
皮肉なのは、「作られた問題」を退治するはずだった企画が、「現実の問題」と向き合う場に変わってしまったことです。
そしてそこであかりは、誰かが用意した言葉ではなく、自分自身の言葉として「誰も死ななくていい世界を作りたい」と口にしました。
今回の事件は単なるハプニングではなく、「作られた物語」から「本当の物語」へ変わった瞬間だったように思います。
透はなぜ危険な場所へ向かい続けたのか|「神様に自殺とバレない死」
今回明かされた透の過去は、想像以上に重いものでした。
透は高校時代、盲目の親友・明と出会います。
最初はただ助けた相手でしたが、やがて2人は「ブライトブラインド」という動画配信を始め、一緒に過ごす時間が増えていきました。
明は目が見えないことを「不幸ではなく、不便」と語っていました。
点字ブロックや音声信号など、世の中が見える人中心に作られているから不便なだけで、自分自身が不幸なのではないという考え方です。
そして「不便をなくしたいなら政治が必要だ」と、選挙にも希望を持っていました。
しかし明は事故で亡くなってしまいます。
透はそのことをずっと後悔していました。
「あのとき家まで送っていれば」
「どうして俺もだよって言えなかったんだろう」
そんな後悔を抱え続けた透は、ある言葉を口にします。
「神様に自殺ってバレないように、死ぬって決めた」
明が生前、自殺した人はそれ以外の理由で死んだ人と、同じ場所へ行くのが大変なんだってと話していました。だから明の元へ行くために、自殺とバレないようにする必要があったのです。
明が死んで透は生きている意味を見失っていました。
ここが今回の透を考える上で一番大きなポイントだったと思います。
透は生きる意味を探していたというより、ずっと“死ねる場所”を探していたのではないでしょうか。
だから危険な場所へ行く。
暴露系の活動も、危ない相手へ突撃する行動も、自分から危険に近づいていく姿勢も、ただの無鉄砲さでは説明がつきません。
いつか、誰かが自分を殺しに来てくれると信じていたのではないか。
今回の「退治系」企画も事前に向かう場所を告知し、本当に誰かが自分を殺しに来ても不思議ではない状況でした。
そして実際に、本物の事件が起きてしまいます。
ただ皮肉なのは、その瞬間に透が見たものです。
死ぬ場所を探していた透の前で、あかりは「誰も死ななくていい世界を作りたい」と叫びました。
ずっと終わりを探していた人が、最後に見たのが“生きる側の言葉”だったことには、大きな意味があったのかもしれません。
明は「不便をなくしたいなら政治が必要だ」と話していました。
一方で、これまで『銀河の一票』では政治そのものよりも、「誰かを救う人」が描かれてきた印象があります。
▶ 【銀河の一票】第5話ネタバレ解説|レンガを渡された人たち――“ぶっとばし蛍”の帰還
雨宮はなぜ“傷”を欲しがったのか|誰かの特別になりたかった人
今回もう1人、強く印象に残ったのが雨宮楓でした。
透が「死」を探していた人だとするなら、雨宮は「傷」を探していた人だったのかもしれません。
雨宮は、自分には何もないと語っていました。
健康で、家庭にも大きな問題はなく、特別に苦しい経験もない。
一見すると恵まれているようにも聞こえます。
しかし雨宮にとっては、その「何もないこと」自体が苦しさになっていました。
ドキュメンタリー番組で様々な困難を抱える人たちを見たとき、自分には悲しいことも苦しいこともないから、強くも優しくもなれないと思ってしまった。
だから傷つけば、自分も変われるのではないかと考えるようになっていたのです。
ただ、本当に欲しかったものは傷そのものではなかった気がします。
雨宮は涙を流しながらこう語っていました。
「誰かの特別になれるじゃないですか」
つまり欲しかったのは、「傷」ではなく「居場所」だったのではないでしょうか。
誰かに必要とされたい。
誰かにとって特別な存在になりたい。
その証明として、傷や苦しさが欲しかったのかもしれません。
だから茉莉の言葉は大きかったように思います。
「愛される手段として、強く優しくなることを選ぶあなたは、なんて強くて優しいんでしょう」
雨宮は強く優しくなった先で愛されたかった。
でも茉莉は、その前の段階で、今の雨宮自身を認めていました。
何かを失ったから価値があるのではなく、何も失っていなくても、誰かにとって大切な存在にはなれる。
今回の雨宮の話は、透とは違う形で「生きる理由」を探していた物語だったように感じます。
コラム|第6話は“救われた人が誰かを救う回”だった
今回の第6話を見ていて感じたのは、「救われた人」が今度は誰かを救う側になっていたことでした。
あかりは10年前、とし子に救われました。
「おなかすいてない?」
たったそれだけの言葉でしたが、生きる理由を見失っていたあかりを引き止めた言葉でもありました。
そしてその後、あかりは茉莉を救います。
屋上で抱きしめ、「1人にしない」と言いました。
さらに今回は、透や通り魔の男性にも手を伸ばそうとしていました。
相手が誰なのか、何をしてしまった人なのかを先に判断するのではなく、「話そう」「聞かせて」と言ったのです。
思い返すと、このドラマには最初からそういう流れがある気がします。
とし子があかりを救った。
あかりが茉莉を救った。
茉莉が雨宮に寄り添った。
そして今回、あかりはまた誰かの手を掴もうとしていた。
救う側と救われる側が固定されていない。
昨日まで救われていた人が、今日は誰かを救う。
逆に、誰かを支えていた人が救われることもある。
だから『銀河の一票』は、特別な人が世界を変える話というより、小さな光が少しずつ誰かに渡り繋がっていく話なのかもしれません。
今回あかりが叫んだ「誰も死ななくていい世界」は、突然出てきた理想論ではなくて、そうやって受け取ってきたものが繋がった結果、生まれた言葉だったように思いました。
思い返すと、この流れは前回から続いていたものでもあります。
▶ 【銀河の一票】第5話ネタバレ解説|レンガを渡された人たち――“ぶっとばし蛍”の帰還
前回は蛍や茉莉たちの「救われた経験」が描かれていましたが、今回はその先として、救われた側が今度は誰かを救おうとしていました。
次回への焦点
第6話ラストでは、あかりの出馬表明が動画として拡散され、一気に状況が動き始めました。
次回はまず、その反響がどう広がるのかが大きな焦点になりそうです。
特に気になるのは、茉莉の存在です。
星野幹事長の娘であり、今は対立する立場にいることが世間に知られれば、チームあかりだけでなく父娘関係にも大きな注目が集まるはずです。
さらに予告では、あかり自身が「話しとかなきゃいけないことがある」と切り出していました。
これまで断片的に描かれていた10年前の出来事や、これまで意味深に描かれてきた少女の置物の存在など、あかりの過去もいよいよ明かされるのかもしれません。
そしてもう一つ気になるのが透の存在です。
現時点では生死は明言されていませんが、今回ずっと「死」を探していた透が、最後にあかりの言葉を聞いたことには大きな意味がありそうです。
“誰も死ななくていい世界”という言葉が、これから誰を変えていくのか。
都知事選だけでなく、人の物語としても次回は大きく動き出しそうです。
都知事選の流れや、これまでの各話の動きを整理したい方は、こちらもどうぞ。
まとめ|“誰も死ななくていい世界”が初めて言葉になった
第6話は通り魔事件の衝撃も大きかったですが、本当に描かれていたのは事件そのものではなく、「生きる理由」を探していた人たちの話だったように思います。
透は「神様に自殺とバレない死」を探していました。
雨宮は「傷があれば強く優しくなれる」と思っていました。
そして茉莉もまた、大切な人を守るために全部自分で抱え込もうとしていました。
みんな何かが欠けていると思っていて、何かを探していました。
そんな中で、あかりが咄嗟に口にしたのが、「誰も死ななくていい世界」という言葉でした。
少し大きすぎて、少し綺麗すぎる言葉かもしれません。
でも『銀河の一票』は最初から、そういう言葉を真正面から描いてきた作品でもあります。
誰かに救われた人が、今度は誰かを救う。
そして迷った時には、また明るい方へ向かっていく。
今回の第6話は、そんな積み重ねが初めて「あかりの言葉」になり、“誰も死ななくていい世界”という形を持った回だったのかもしれません。
▼これまでの流れを振り返る
・第1話ネタバレ解説
・第2話ネタバレ解説
・第3話ネタバレ解説
・第4話ネタバレ解説
・第5話ネタバレ解説
