【創られた“真実”】のネタバレと感想|青木崇高主演のファクチュアルドラマ

スペシャルドラマ
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2025年3月18日にNHK総合で放送された【創られた“真実” ディープフェイクの時代】のネタバレと感想をまとめています。

妻が突然命を絶ち、夫が彼女の足取りを調べていくうちに“ディープフェイク”を使い、人助けをする企業に辿りつく。やがて妻に関する、衝撃の事実が明らかになり……。

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【創られた“真実”】のキャストとスタッフ

キャスト

主要人物

  • 佐藤晃(さとう あきら)…青木崇高
    前職は銀行の営業マン。「DIPREX(ディプレックス)」に転職
  • 洋子…本仮屋ユイカ
    真奈美の妹。サンシャイン生命に勤務
  • 佐藤真奈美(さとう まなみ)…入山法子
    晃の妻。故人。サンシャイン生命に勤務
  • 佐藤麗美(さとう れみ)…白山乃愛
    晃の娘

サンシャイン生命

  • 片平瑛二(かたひら えいじ)…
    専務
  • 曽根誠(そね まこと)…
    社員
  • 児島…
    真奈美の上司
  • 吉崎…
    社長

DIPREX(ディプレックス)

  • 坪倉達也(つぼくら たつや)…泉澤祐希
    チーフ。晃の教育係
  • 高山…
    社員
  • 石原…
    社員
  • 五十嵐…
    社長
  • 深山…
    ディプレックスの社員

その他

  • 鈴香…
    ディプレックスに依頼しにきた君枝の孫
  • 君枝…
    入院中の祖母
  • 洋介…
    鈴香の父。故人
  • DV被害者…
    夫にDV被害を受け、ディプレックスに相談にきた女性
  • 雨宮葵(あまみや あおい)…
    麗美のクラスメイト。いじめ被害を相談にディプレックスを訪れる
  • 葵の母…
  • 川田ひな子(かわだ ひなこ)…
    麗美のクラスメイト
  • 草薙美玲(くさなぎ みれい)…
    詐欺防止キャンペーンのイメージキャラクター

スタッフ

  • 脚本:大石哲也
  • 音楽:岡出莉菜
  • 演出:四宮秀二
  • プロデューサー:鈴木真美
  • 制作統括:葛城豪(NHK) 紅粉達広(NHKエンタープライズ) 山根幸太郎(パオネットワーク)
  • 公式HP
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【創られた“真実”】のネタバレ

妻の勤めていた生命保険会社の顧客情報が流出し、その後、妻は自殺した。夫は妻が最後に行った「DIPREX」という会社に、妻の死の真相を探るべく転職する。

妻のパソコンを妻のアバターで顔認証を解除し、中にあったウェブ会議のコピーを見ると、妻は会社の上層部に指示されて顧客データを転送していたことがわかる。だが、その会議は妻以外の参加者はすべてディープフェイクだった。

ディープフェイクかどうか、解析するソフトを使用して解析した結果、あの映像は会社の上司が作っていたことがわかった。

夫が問い詰めたところ、ダークウェブで顧客情報が売却されていた。全ては金を得ることと、大企業を懲らしめたかったという動機だった。

始まりは情報漏えい

サンシャイン生命で顧客情報の漏洩が発覚し、23万件のデータが流出したことを受け、謝罪の記者会見が開かれた。しかし、会見は混乱し、情報の不正利用を懸念する顧客の不安が高まった。

一方、佐藤晃(青木崇高)は朝、娘の麗美(白山乃愛)ために朝食を用意したが、娘は食べずに出かけてしまった。

その後、晃は転職先である創業3年目のベンチャー企業「DIPREX」に初出社する。社長の五十嵐()に案内され、挨拶を済ませた後、チーフの坪倉達也(泉澤祐希)から研修を受けることになった。最初の業務として、SNS上で助けを求める投稿を探すよう指示される。坪倉が試しに、迷子のペットを探す投稿を見つけ、それを拡散することになった。

拡散の手法として、GAIというオリジナルアプリを使い、静止画を動画に変換する技術を活用。画像の動きを指定すると、AIが自動で動画を生成し、再投稿後すぐに拡散された。再生回数が増えると広告収入も得られ、こうした動画生成のノウハウを身につけることが業務の一環とされた。

晃は「これはフェイクではないか」と疑問を抱くが、坪倉は「重要なのは注目を集めること」と説明する。多くの人に拡散されることで、飼い主の助けにもなるという考えだった。その後、他の社員たちが坪倉の技術力について話し、過去の実績として、震災時に作成された動画を見せる。

その動画には、雪の降る倒壊した建物を背景に、母親と息子が再会し抱き合うシーンが映っていた。石原()によると、母親も背景もAIで作られたものだった。この動画に募金先のリンクを添えたところ、大きな反響を呼び、1億円以上の寄付が集まったという。坪倉はこのような動画を簡単に作成できる技術を持っていた

その直後、坪倉が作成したペット捜索の動画を見た人から、迷子の犬の居場所が判明し、飼い主の元に無事戻ったという知らせが届いた。

妻の死

晃が自宅に戻ると、義理の妹・洋子(本仮屋ユイカ)が訪れていた。彼女は、会社に置かれていた亡き妻・真奈美(入山法子)の荷物を持ってきてくれた。洋子に再就職の様子を尋ねられ、晃は「AIで人助けと聞いていたが、実際にはディープフェイクを多用している」とこぼす。

食事をしようと誘うも、娘の麗美は「一人で部屋で食べる」と言って閉じこもってしまう。妻が亡くなって以来、麗美はいつもこの調子だと晃はため息をついた。

四か月前――妻の真奈美が「明日からしばらく休職する」と告げた。晃が「会社で何かあったのか」と尋ねるも、真奈美は「今は言えない」とだけ答え、それ以上の説明はなかった。そして、ある日晃が帰宅すると、真奈美は自宅で亡くなっていた。

沈む晃に、麗美が「これ、ママの会社だよね?」と、サンシャイン生命の顧客情報漏洩を報じるネットニュースを見せる。それを見た晃は、すぐに洋子のもとへ駆け込み、「真奈美が情報漏洩に関わっていたのではないか」と問いただした。しかし、洋子は「そんな情報は届いていないし、漏洩がいつ、どのように起こったのかも分かっていない」と答える。晃は「それ以外に考えられない」と混乱した。

それから四か月が経ったが、未だに情報漏洩の原因は判明していないという。さらに、真奈美は亡くなる当日とその3日前の2度、晃の転職先であるディプレックスを訪れていたことが分かった。晃は「何かがあったとしか思えない」と確信し、再就職の目的が妻の死の真相を探るためだったことを洋子に明かす。サンシャイン生命の流出データの中に真奈美の名前はなかったものの、まだ調査を続けるつもりだと伝え、洋子にも何か分かったら教えてほしいと頼んだ。妻のノートPCが手元にあるものの、顔認証がかかっており開くことができないままだった。

ディープフェイクで人助け

研修期間を終えた晃は、新たに「お悩み相談」の業務を担当することになった。その最初の案件は、病気の母親と会話を続ける男性――しかし、実際に話していたのは彼の娘であり、孫の鈴香()だった。彼女はAIを使い、亡き父・洋介()の顔と声を再現し、祖母・君枝()と会話をしていたのだった。

実の息子は二週間前に交通事故で亡くなっていたが、祖母の持病を考慮し、その事実を伝えられずにいた。ショックを与えることで容体が悪化する可能性があったからだ。祖母は何も知らず、映像の息子に向かい「もう長く生きられないから、最後のわがままでこちらに来てほしい」と涙ながらに頼んだ。それを聞いた孫も涙を流しながら、「自分は行けないが、鈴香を行かせる」と返し、会話を終えた。

その様子を見ていた晃は困惑を隠せなかった。会話を終えた鈴香は坪倉に感謝を伝えつつも、「このままずっと嘘をつき続けるわけにはいかない」と悩みを漏らす。彼女を見送った晃は、坪倉に対し「事情は理解できますが、結局、おばあちゃんを騙していることになりませんか?」と問いかけた。

しかし坪倉は「まだそんなことを言っているんですか? ディープフェイクは人の役に立つんです。そう思わないと、ここでは働きづらいですよ」と言い残し、部屋を後にした。

よみがえる妻

麗美は学校でプロンプトの活用など、AIについての授業を受けていた。授業中、クラスメートたちがスマホを回し見ていた。自分のところにスマホが回ってきて、画面を目にした麗美は、思わず声をあげた

その晩、晃は何かを考え込むように、ずっとパンフレットを見つめていた。麗美が話しかけても、まったく反応しない。苛立った麗美は怒って部屋に閉じこもってしまう。

晃は自室に戻ると、GAIに妻・真奈美の写真や動画を学習させ、故人生成アバターを作成し始めた。しばらくすると、画面に真奈美のアバターが現れ、「久しぶり、元気?」と話しかけてきた

やってきた麗美にもそのアバターを見せると、麗美は「ママ、どうして死んじゃったの?」と涙を流しながら問いかけた。しかし次第に、父と娘はアバターの真奈美と共に、久しぶりに笑い合った

翌日、晃は会社で新たな相談を受ける。相談者は、夫から暴力を振るわれている女性だった。彼女の顔には痛ましいあざが残っていた。坪倉が「証拠の映像はあるか」と尋ねると、女性は「隠し撮りしようとしたが見つかってしまった」と答える。まもなく離婚裁判が控えており、なんとか慰謝料を得たいと考えていた

坪倉が「夫の最近の動画はないか」と聞くと、女性は夫のSNSに投稿された動画があると伝えた。その動画を確認した坪倉は、「馬鹿だな、SNSに顔をさらすなんて自殺行為だ」と呟きながら、そこからAIを使って新たな動画を生成。映像の中で夫は、妻に暴言を吐きながら手を上げていた。

しかし、それを見た晃は違和感を覚え、「被害者の妻の表情が悲しんでいるように見えない。感情表現がイマイチだ」と指摘した。

ディープフェイク詐欺

晃は洋子と麗美を連れて公園へ出かけた。麗美はタブレットを手に持ち、アバターの真奈美に風景を見せながら話しかける。洋子もアバターに向かって話しかけ、「なんか、生き返ったみたい」と感慨深げに呟いた。

ふと晃と洋子はこのアバターを、顔認証に使えるのではないかとひらめく。そして自宅に戻ると晃たちはこのアバターを利用し、真奈美のPCの顔認証を突破することに成功。そして、保存されていたメールのコピーを取得した。

そこには、真奈美に顧客データの転送を指示していたのが、専務の片平瑛二()であることを示す内容が記されていた。しかし、専務は関与を否定。彼は出張先のニューヨークから真奈美にメールを送り、リモート会議への参加を指示していた。そして、真奈美はその会議を録画していた。

録画された動画を確認すると、会議の中で専務は「顧客データを共有フォルダに入れるよう」命じていた。真奈美は指示通りにデータを転送した。しかし、その後オフィスを出ると、片平と遭遇。驚いた真奈美が「出張のはずでは?」と尋ねると、片平は「出張は延期になった」と答える。さらにデータの送信指示を出したかと問い詰めるが、片平は「そんな指示はしていない」と否定した。

真奈美は片平から届いたメールに記載された、共有フォルダのリンクを開こうとしたが、すでに削除されていた。さらに、当時の会議に参加していたはずの、曽根()や児島()にも動画を見せたが、彼らは実際には会議に出席していなかった。児島は「ディープフェイクを使った詐欺ではないか」と指摘する。つまり、何者かが彼らになりすまし、真奈美を騙して顧客データを送らせた可能性が浮上したのだ。

漏洩した顧客データには、名前や保険番号だけでなく、銀行口座や医療記録といった機密情報も含まれていた。曽根は「顧客への賠償だけで10億円はかかるのではないか」と推測し、児島も「信用失墜によるクレーム対応まで含めると、さらに被害は拡大する」と懸念を示した。片平は、すぐに記者会見を開くよう要請した。

困惑する一同の中で、真奈美は「少し時間をくれないか。誰が何のためにこんなことをしたのか調べさせてほしい」と訴えた。しかし、その二週間後、真奈美は自宅で亡くなった。その後、真奈美のPCを調査したが、犯人につながる証拠は一切見つからなかった。そのため、記者会見では情報漏洩の事実のみが公表され、真奈美の疑惑については伏せられた。

晃は「このまま曖昧にしていいのか」と問いかけるが、片平は「では、あなたの妻が漏洩させたと公表すればいいのか?」と反論した。 晃は真奈美がディプレックスを訪れた理由は、ディプレックスがあのディープフェイクを作成したと確信していたからだと考えた。しかし、それを証明する決定的な証拠は何もなかった。

いじめをディープフェイクで解決

晃は坪倉と共に、新たな相談者である雨宮葵()の話を聞いた。母親()は娘が学校でいじめを受けていると訴える。坪倉が「どの子にいじめられているのか」と尋ねると、母親は写真を見せた。そこには、麗美の姿も写っていた。

坪倉は「この中でSNSをやっている子はいるか」と尋ね、母親は「川田ひな子()という子がやっている」と答える。さらに坪倉は、「望みはいじめの証拠映像を作って欲しいのか、それとも仕返しですか?」と問いかけた。相談を終えた後、坪倉はオフィスで「仕返しなら、こういうのがいい」と言いながら、女の子が服を脱ぎ始める動画を生成した。

その映像を見た晃は、慌てて動画を停止し、「冗談でも、そんなことをやっちゃダメだろう」と厳しく指摘する。すると坪倉は「娘さんがさっきの写真に写っていましたよね。スマホの待ち受けからわかった。一度ちゃんと話し合ったほうがいいですよ」と言い、部屋を後にしようとする。

晃は坪倉に「GAIについて聞きたい」と話す。一般的な動画生成AIでは、倫理的に問題のある映像は作れないはずなのに、なぜこれは可能なのかと問い詰めた。坪倉は「何を生成するかを決めるのはAIではありません。その倫理観を決めてプログラムするのは人間なんです」と答える。つまり、GAIには倫理的な制限が組み込まれていなかったのだ。

家に帰ると、麗美がタブレットを使い、真奈美のアバターと一緒にケーキを作っていた。その様子を見た晃は、タブレットを閉じて「やめろ」と言った。突然の制止に、麗美は怒る。

晃は娘を座らせ、真剣な表情で話し始める。「雨宮葵って子、知ってるよな? 会社に来て、学校でいじめられていると言っていた」と切り出し、「麗美、お前がいじめてるのか? その子が、お前にいじめられていると言ってきたぞ」と問いただした。

すると、麗美は「違う! いじめられているのは私の方だよ!」と強く否定する。そしてスマホを差し出し、画面を見せた。そこには、麗美がゾンビのような姿に加工された動画が映っていた。

「なぜ相談しなかったんだ?」と晃が尋ねると、麗美は「だって、パパは話を聞こうとしなかったじゃない!」と涙ながらに訴える。「だからママに聞いたの。なのに今さら見ないでなんて、ずるいよ!」と叫び、怒ったまま部屋へと閉じこもってしまった。

いじめの真相

晃は会社へ行き、坪倉と話をした。実際にいじめをしていたのは雨宮の方だったと言いながら、晃はその証拠として動画を見せて説明する。すると坪倉は「この案件からは外れてもらいます。当事者が関わると後々面倒になるので」と言い、晃に手を引くよう求められ、晃は素直に応じた。

学校で葵は「チクった仕返しだ」と言い、新たな動画を作成し拡散した。麗美とひな子は「やめて」と必死に訴えたが、雨宮は聞く耳を持たなかった。

しばらくして、麗美の担任から晃に電話が入る。麗美が雨宮をいじめている動画を見せられたというのだ。驚いた晃はすぐに坪倉のもとへ向かい、「どういうことか」と問い詰めた。坪倉は「嘘をついているのは、娘さんの方らしい」と答える。

なぜなら、その動画はGAIで作成されたものであり、解析ソフトを使えば誰が生成したのか特定できると説明した。社内でもこのソフトを扱えるのは一部の人間のみであり、最近はディープフェイクの真偽を確かめる依頼が急増しているという。

解析結果を見ると、その動画を作成したパソコンのシリアルナンバーは晃のものだった

自宅に戻ると、麗美が泣いていた。そして「パソコンを勝手にいじってごめんなさい」と謝る。しかし「でも、いじめられているのは本当だ」と訴えた。

「なぜあんな動画を作った?」と問いかける晃に、麗美は「彼女が作った動画は見せられない」と答える。すると洋子が、麗美がいじめに使われていたのは「裸にされた動画」だったと明かした。

晃はその夜、妻のアバターに向かい、「ふがいないよ、自分が……」と呟いた。「どれだけ頑張っても、真奈美の代わりにはなれない」と落ち込む晃。「真奈美が生きていてくれたら……」とつぶやくと、アバターの真奈美は「生きてるよ、ここにいる」と微笑んだ。

「でも、解析ソフトを使えば一発でAIだってバレるんだろ?」と苦笑する晃。アバターの真奈美も「そうね」と応じ、二人は虚しく笑い合った。

妻の死と情報漏えいの真相

翌日、晃は坪倉のPCにアクセスし、解析ソフトを使って例のウェブ会議動画を解析しようとした。その様子を高山()に見つかるが、なんとか誤魔化してやり過ごした。

しかし、坪倉が戻ってくると、高山が「坪倉さんのPCをいじってたけど」と伝えてしまう。坪倉は慌てて駆け戻るが、ちょうどその頃、晃の解析が終わった。画面に表示されたシリアルナンバーを写真に収めた晃は、坪倉のPCのシリアルと照合し、それが一致していることを確認する。

「僕のPCで何をしているんですか?」と問い詰める坪倉に、晃は「お前だったんだな。妻を騙したのは」と告げる。坪倉は一瞬動揺し、「その人が……佐藤さんの奥さんだったんですか……」と驚いた表情を見せると、地下駐車場に晃を誘って2人きりで話すことにした。

地下駐車場で対峙した2人。坪倉は「奥さん、元気にしてますか?」と尋ねるが、晃は「妻は自殺しました」と静かに答えた。

「なぜ彼女を狙った?」と晃が問い詰めると、坪倉は「狙ったわけじゃない」と言う。たまたまサンシャイン生命の社員名簿が手に入り、その中に彼女の名前があっただけだと。

「ハッキングされた大企業の情報は、ネットに頻繁に流れているんですよ。しかも、大企業の役員クラスなら、必ずネット上に動画がある。だから、ディープフェイクを作るのも簡単なんです」と坪倉は淡々と語った。

坪倉は3人分のディープフェイクを作り、一人でウェブ会議の3役を演じ、真奈美を騙したのだった。しかし、彼女がデイプレックスを訪れたのは、助けを求めるためだったと坪倉は続けた。

それは4ヶ月前のこと――真奈美は「この動画、ディープフェイクかどうかわかりますか?」と相談に訪れていた。坪倉は「解析すればわかる」と答えた。しかし、3日後、坪倉は「偽物かどうか判別できなかった」と真奈美に伝えた。

「顧客データはダークウェブ上で確認できました。すでに売買の形跡があった」とも報告した。「取り戻せませんか? いくらかかっても構わない」と懇願する真奈美に、坪倉は「流出してしまった情報は、取り戻せません」と突き放していた。

「保険会社が持つ個人データの価値は、1人あたり30ドル。23万人分なら、日本円で10億円ほどになります」と坪倉は説明し、続けて「その10億があれば、もっと多くの人を救えるじゃないですか」と言い放った。「それがどうした!」と晃は怒りを露わにする。「お前が顧客データを取り戻していたら、真奈美は死なずに済んだ!」

「誰がデータを買ったのか、本当にわからないんです」と坪倉は言う。「でも、人はフェイクを求めているんですよ。ディープフェイクは、弱者を助けることができるんです!」晃は、今まで自分が対応してきた依頼者たちのことを思い出し、言い返せずにいた。

坪倉は続けた。「正直に生きたって、誰も助けてくれないじゃないですか。だったら、嘘でもいい。嘘でもいいから、助けてほしい。その思いにディープフェイクは応えることができるんですよ!」晃は「そんな嘘に助けられた人生に、一体何の意味があるんだ!」と叫んだ。

坪倉は嘲笑し、「古いですね。何が真実かなんて、人によって変わる時代なんですよ」と言い放つ。「お前を警察に突き出す」と晃は静かに言った。「もう終わりだ。騙すのも、騙されるのも」

その後、坪倉は不正競争防止法違反の疑いで逮捕された。供述によれば、「庶民を搾取する大企業を懲らしめたかった」と動機を語っていた。

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【創られた“真実”】の結末

晃は麗美に、「しばらく休むよう学校に伝えている」と話す。そして、「また帰ったら話そう。色々つらい思いをさせてごめんな」と謝った。「逮捕されちゃうの?」と不安そうに尋ねる麗美に、晃は「何日か話を聞かれるだけだよ」と穏やかに答えた。

洋子に感謝を伝え、麗美を頼むと告げると、洋子は麗美を連れて車に乗り込んだ。麗美は「帰ってきたら、ケーキ作ってあげる」と言い、笑顔を見せた。今日は、晃の誕生日だった

自宅に戻った晃は、一人静かに真奈美のアバターに話しかける。「今日はさ……お別れをしようと思ってる。麗美と、ちゃんと向き合いたいんだ」「どういうこと?」とアバターの真奈美が問いかける。「俺も麗美も、もう真奈美のいない人生を生きないといけないんだ。ありがとう」そう言いながら、晃はAIアバターの削除を選ぼうとした。

しかし、画面の真奈美は「本当にいいの?」と問いかけ、まるで抗うように見えた。「真奈美……お前は死んだんだよ」晃の声が震える。「……ごめんな。ごめん……本当にごめんな。ありがとう。さよなら、真奈美」意を決し、削除ボタンをクリックした。

その頃、車の中で麗美はタブレットに向かって、小さく母に話しかけた。実は麗美は、真奈美のアバターをこっそりコピーしていた。驚いた洋子が「麗美ちゃん、それって……」と尋ねると、麗美は「パパには内緒だよ」と微笑んだ。

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【創られた“真実”】のまとめと感想

妻はディープフェイクに騙されて顧客情報を流出させてしまい、そのディープフェイクを作ったのは夫の転職先の上司だったという話でした。

ドラマの間にドキュメンタリー部分が差し込まれ、現実で起きたことを元にドラマは進みます。ディープフェイクを見抜くことは難しく、AIが生成したものはAIでしか見抜けないと専門家が語ります。

そして、昔は「見て確かめろ」といっていたが、今は何を見たって信じられない。信じるものがどんどん変わっていく時代に、私達は生きているのです。と、専門家はまとめます。つまり、今日信じているものが、明日には信じられなくなるかもしれないわけです。

今のところ映画『ブレード・ランナー』に出てきた、レプリカントのような存在はいませんが、いずれそれも出てくるでしょう。そうなると見るどころか、触れても偽物か分からないわけです。誰が人間なのかも分からない世界が、やってくる日もそう遠くないかもしれません。

坪倉のように偽物でも人を救っているのだから、構わないと考えるか、晃のように嘘に助けられた人生に何の意味があると考えるか。どちらを選ぶかは、その人次第なわけです。ただ、いくら逃避しても、現実は確実にそこに存在することは忘れずにいたいものです。

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