今回の坂の途中の家は“普通”や“常識”というものが何か?ということを考えさせられる内容でした。いわゆる同調圧力のような、個人個人違う価値感を認めないと誰の身にも起きうる事柄だと思いました。
坂の途中の家概要
4月27日から毎週土曜22時よりWOWOWで放送しています。平穏な暮らしをしてた主婦の里沙子に、ある日裁判所から刑事事件の裁判員候補者に選ばれた通知が届きます。自分と同じ年頃の専業主婦が、生後八ヶ月の娘を浴槽に落として虐待死させたという衝撃的な事件の補充裁判員となります。当初被告に嫌悪感を抱いていた里沙子だったが、次第に被告に境遇を重ね自身の心に眠っていた混沌とした感情に惑わされてしまう――
キャスト
- 山咲里沙子(柴咲コウ)
- 山咲陽一郎(田辺誠一)
- 芳賀六実(伊藤歩)
- 安藤寿士(眞島秀和)
- 松下朝子(桜井ユキ)
- 山田和貴(松澤匠)
- 山咲文香(松本笑花)
- 安藤邦枝(倍賞美津子)
- 三沢富路子(高畑淳子)
- 穂高真琴(佐藤めぐみ)
- 芳賀直人(窪塚俊介)
- 山田牧子(玄理)
- 松下忠弘(水間ロン)
- 安田則子(長谷川稀世)
- 青沼隆宏(利重剛)
- 篠田さかえ(酒井美紀)
- 山咲和彦(光石研)
- 山咲里子(風吹ジュン)
- 安藤水穂(水野美紀)
スタッフ
【原作】角田光代「坂の途中の家」(朝日文庫刊)
【脚本】篠﨑絵里子
【監督】森ガキ侑大
【音楽】山口由馬
【主題歌】Musek「silence」
前回はこちら
あらすじ
陽一郎が文香とともに実家に泊まりに行ったことで休息の時間を過ごした里沙子。しかし実は陽一郎が泊まりで同窓会に参加していた事実を知る。陽一郎からは事前に伝えたはずだと主張され、さらにキャパオーバーなのだと指摘され落ち込んでしまう。評議室でも他の裁判員よりも理解が遅く、また自分だけ異なる発言をしたことで自信を無くし始める。そんな中、実母(高畑淳子)が突然訪れ、里沙子はさらに困惑していくことに……。
公式HPより
ネタバレ
感想
回を追うごとに壊れていく里沙子と、ずっと無反応だった水穂。この二人のシンクロ度合いがますます強まる理由として、実母の存在が今回クローズアップされます。実母の抱く“普通”と“常識”がどちらの家でも似たようなもので、“可哀想”と思われるところまで合致します。本当に里沙子と水穂は可哀想な人達だったのでしょうか。
二人の実母
どちらの家も昭和な母親で、固定概念的なものがあります。そして自分の理解の及ばないことや、思い通りにならないことは“非常識”と考えます。
- 結婚式を挙げないのは非常識
- 新居が中古のマンションとか非常識
- 夫が会社員でないのは非常識
- 子供が出来ても働くのは金がないからだ
とにかく非常識といって否定します。母の常識にそぐわないものは、全て非常識となります。娘のためを思って、可哀想だと言うところも二人とも一緒です。仮に母の言う通りに望むような式を挙げたとしても、また別のことで非常識と言いだしそうです。
果たしてこの二人にとっての常識とは何なのでしょうか?それは恐らく自分が歩んで来た道だったり、他人との比較での常識なのだと思います。自分の知らないことや、考えも付かないことを非常識というのはどうなのかと思います。娘達は二人共、少なくとも母親に迷惑をかけるような非常識はしていないと思いますが、二人の母は自分の思うような結果でないと否定します。
これによって里沙子はより崩壊が進み、水穂とシンクロ率を高めていきます。そして水穂は失われていた感情を、怒りや悲しみという形で思い出して発狂します。
夫の浮気
ここに出て来る男性陣はなぜか浮気の影をチラつかせます。山田に至っては本当に浮気します。そしてそれを擁護する女達、女の敵は大体女です。
陽一郎の場合
- 同窓会に喜んで出かける
- 一泊して戻る
- スマホには謎の女性からのメッセージ
- 夫はスマホばかりいじってる
山田の場合
- 妻に22時まで帰って来るなと言われる
- 同僚の女が寄って来るので手を出す
- いざ浮気するが行為に及べない
寿士の場合
- 育児についての相談を元彼女にする
- 妻がおかしくなったから元彼女にメールする
- そうやってメールするのが癒しだった
六実は家で育児の愚痴聞かされてたら、夫も浮気したくなると言います。
陽一郎の母は里沙子が苛々していると、夫が寄り付かなくなると言います。
寿士の母は夫を支えるのが妻の仕事と言います。
妻が不満をいうと浮気をする、支えなければ浮気をするという論理です。
ではこの登場人物は、満足いく家庭なら浮気はしないのか?
たまたま好みで妻にはない魅力があれば、惹かれるのではないでしょうか。それを正当化するために「夫婦関係が冷えきっているから…」と言っているだけのような気がします。
結局何かきっかけがあれば、いつだって浮気するのだろうと思います。
言えることは、妻がハンドクリームを勧めて来たら気をつけろということです。
壊れゆく妻たち
里沙子を筆頭に裁判という名のパンドラの箱を開けた人達に、災いが降り掛かります。
里沙子の場合
- 酒の量が増える
- 子供に当たる
- 夫の浮気疑惑が起きる
朝子の場合
- 非協力的な夫に怒る
- 出世を阻む夫に怒る
- 取り敢えず子供を産ませようと考えた夫に怒る
六実の場合
- 公園で子供をずっと眺める
- 知らない子供に近付いていく
- 部下に嫌味を言われる
この三人のことを劇中でカウンセラーの人がそれぞれに名を付けます。
朝子は世間が求める普通、六実は自分が決めてしまう普通、里沙子は実の母親が求める普通です。
まとめ
“普通”や“常識”とは結局個人の物差しで決めたものでしかなく、それを家族であっても人に強要すると軋轢が生まれるという話でした。知らず知らず他人に強要しまわないよう、誰かに何かを言う時には、今一度考えてから話すことを心がけたいと自省を促す回でした。次回は陽一郎が果たして浮気をしているのか否かがわかるのでしょうか、家庭崩壊の引き金になりそうな予感がします。