【全領域異常解決室(ゼンケツ)】3話のネタバレと感想をまとめています。
突如空から飛行機の残骸と共に落ちてきたのは、人間の足だった。被害者はタイムホール研究の第一人者だった。これらの残骸は時空を超えて届いたものなのか?それとも……?
【全領域異常解決室】3話のあらすじ
空から突然降ってきたのは、人間の足と飛行機の残骸だった。死後数年は経っているその足の持ち主は、タイムホール研究の第一人者である、真鍋哲(神保悟志)だった。
真鍋は4年前、小型飛行機で飛び立った後、飛行機ごと行方が分からなかった。4年の年月をタイムホールを抜けて出てきたのか?全領域異常解決室の興玉雅(藤原竜也)と雨野小夢(広瀬アリス)は早速調査を開始する。
やがて、タイムホール研究は捏造問題が出て、その時の主任研究員である常見真紀(山口紗弥加)が、チームから外された経緯があったことが分かる。真鍋の死はその1ヶ月後のことだった。
行方が分からない常見が、真鍋を恨んで殺害したのか?全決が導き出した結論とは……。
←2話|4話→
【全領域異常解決室】3話のネタバレ要約
常見の才能を慕っていた片桐が、捏造問題で常見が外したことを恨み、真鍋を爆破して殺害した。
さらに常見に濡れ衣を着せた古庄に脅され、その場にあったハンマーで殴って殺害した。
全決は全てを空から物が降ってくる、ファフロツキーズ現象と結論付けた。
【全領域異常解決室】3話の詳細なネタバレ
空から足が降ってきた
タワーマンションの広場で、子どもたちが無邪気に遊んでいた。そのとき、不意に上空から靴が落ちてきた。不思議に思って拾い上げた子どもたちが驚く間もなく、次々と異様な物が空から降ってきた。靴の中を見ると、そこにはなんと人間の足の骨があった。
ヒルコから犯行声明が出たのを受けて、全決が現場に出動する。捜査員たちが駆けつけた先では、荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)率いるヒルコ専従班と鉢合わせすることに。落ちてきたのは、左足。腐敗の進み具合から、死後すでに数年は経過していることが判明する。
足の中に紛れていたIDカードには、「真鍋哲」という名前が記されていた。調査が進むと、真鍋哲(神保悟志)は4年前に小型機で岩手花巻空港に向かう途中、突然行方不明になった人物であることが明らかになる。そのとき一緒に降ってきた物の中には、小型機の一部と思われる破片も含まれていた。
「4年前に消えた飛行機と体の一部が、空から降ってきたってことですか?」北野天満(小宮璃央)は興奮気味に声を上げる。しかし、雨野小夢(広瀬アリス)は「誰かがこのマンションの上から投げ落としたとしか」と冷静に指摘する。
そのとき、興玉雅(藤原竜也)が口を開いた。「タイムホールの可能性がある」
一同が静まり返る中、興玉は続けた。「タイムホールとは、時空を歪めて過去や未来とつなげる異次元的な現象だ。真鍋哲は、重力理論の世界的権威であり、タイムホールの研究に没頭していたことでも知られている」
「もしかしたら、彼はあの小型機に乗っていたとき、タイムホールに巻き込まれ、時空を超えて4年後にこの場所へ辿り着いたのかもしれない。そして、空から落ちてきた…」
興玉の理論に、荒波は眉をひそめる。「ふざけるのも大概にしろ!」と怒りを露わにしたが、興玉は平然としていた。「ヒルコの神隠しも、タイムホールによるものかもしれない…」
異常事件が絡み合う中で、現実と超常の狭間に揺れる捜査が始まろうとしていた。
全決とヒルコが結託?
直毘吉道(柿澤勇人)が全決のオフィスに現れると、落ち着いた口調で報告を始めた。「ビッグデータの解析によると、ヒルコを好意的に捉える人々の割合が、最近増加傾向にあるようです」
その言葉を聞いた宇喜之民生(小日向文世)は、静かに頷きながら答える。「昔から、カルトや危険思想に引き寄せられる者はいた。しかし、SNSの登場によってその影響はさらに顕著になった」
少し間を置き、彼は続けた。「愚かな人間に、情報発信をさせる道具を与えたからです」その冷ややかな口調に、場の空気が張り詰める。だが、すぐに彼は軽く手を振り、「あ、失礼。人間を見下しているわけではありません」と、わざとらしく謝罪を付け加えた。
直毘はその言葉を軽く受け流すと、話を続けた。「機密費削減のために、全決の解体が議論されていた矢先に、ヒルコが現れました。その結果、全決の存在意義が再び強く認識されるようになっています」
その一言に、宇喜之は不機嫌そうに眉を寄せ、「我々全決がヒルコと結託して事件を引き起こしているとでも?」と鋭く切り返した。
直毘は即座に頭を下げ、恐縮した様子で答えた。「もちろん私達は信じてます。あなたがたを疑うなんて、とんでもない罰当たりですから」
宇喜之は一瞬の沈黙の後、柔らかな笑みを浮かべた。「直毘審議官に信じて頂けるなら、こちらとしても安心です。我々は、ヒルコの正体を突き止めるために全力を尽くします」
その場に流れる不穏な空気の中、全決とヒルコを巡る闇がさらに深まっていくのを、直毘は冷静に見つめていた。
見つかった足は誰のもの?
DNA鑑定の結果、落下した左足が真鍋哲のものであることが判明した。さらに、小型機のパーツも4年前に失踪した機体のものと一致することが確認された。荒波は捜査を進め、建物と落下地点の位置や方角を分析した結果、西側の10階以上から落とされた可能性が高いと結論付けた。しかし、条件に合致する部屋や周辺の住戸を徹底的に調べたものの、遺体や小型機に関連する証拠は一切見つからなかった。
その報告を全決に持ち込んだ荒波に対し、興玉は疑問を投げかけた。「捏造の可能性は調べたのか?」と。
4年前、国立先端技術産業機構はタイムホールの時空制御に成功したと発表し、世界を震撼させた。その発表会見には、チームリーダーの真鍋哲と、主任研究員の常見真紀(山口紗弥加)が出席していた。しかし、そのわずか1ヶ月後、常見が研究データを捏造していたことが発覚し、真鍋は彼女を研究チームから解雇。タイムホールの研究は打ち切られた。
常見は謝罪会見に追い込まれたが、そこで改ざんを否定し、「研究から外されるのは無念です」と告げたまま、姿を消した。それから1ヶ月後に真鍋の小型機が事故を起こした。荒波によると、常見はその日以来行方不明となり、家族とも音信不通だという。
「もしかしたら常見もタイムホールに入ったのかもしれない。そのうち空から降ってくるかも」と興玉は半ば冗談交じりに言うが、彼の表情は真剣だった。
「真鍋はただ殺されたんだ」と、荒波は続けた。科警研の調べによれば、落下物から微量の硝酸カリウムが検出されたのだという。それは火薬の原料だ。「つまり、4年前の小型機の事故は、爆発物を使った意図的な殺人だった可能性が高いというわけだ」
荒波はさらに、飛行機が爆破され海に落ちたことを示唆する証拠も挙げた。「落下物からは、海水と藻類の成分が検出された。つまり、機体は海に沈んでいた可能性が高い」そう結論づけた荒波に対し、興玉は静かにそういうことですか」と呟いた。
その後、興玉は自身が調べた情報を荒波に伝えた。真鍋は研究資金を複数の企業から集めていたが、その中には海外の投資コンサルタント会社も含まれていた。この会社は某国の指導部と強い繋がりを持つスパイ企業として知られており、日本の最先端技術を盗むために活動していることが指摘されていた。
「捏造の発覚で研究が打ち切られたことで、この企業は多額の出資金を無駄にした。そのため、彼らは真鍋を恨んでいた可能性がある」荒波は鋭く推測する。「真鍋がそいつらに殺された可能性も否定できないってわけか…」
謎がさらに深まる中、事件の裏には国家レベルの陰謀と技術の争奪戦が潜んでいることが、徐々に明らかになってきていた。
常見から連絡
興玉と小夢は、片桐凛太朗(森下能幸)という研究員に話を聞きに行った。片桐は真鍋から研究室を引き継ぎ、現在は重力理論のコンピューターシミュレーションを応用して、マクロ経済の分析などを行っていた。研究は続けているが、かつての異次元的なテーマからは大きく離れた実用的な分野にシフトしていた。
「先生は、タイムホールが関係していると思いますか?」と興玉が尋ねると、片桐は即答した。「タイムホールなんてものは、存在しません」
興玉は一瞬黙り込んだが、次に古庄時実(山田キヌヲ)について尋ねた。「古庄さんもタイムホールの研究に参加されていたのですか?」
片桐は深いため息をつきながら答えた。「残念ながらね。常見さんの捏造騒動のおかげで、散々な目に遭いましたから」彼女の声には、かすかな苛立ちが感じられた。古庄は常見と仲が良かったが、彼女の口から語られる過去は冷ややかだった。
「いいえ、あの人とはもう赤の他人です」その言葉を聞いた瞬間、小夢は驚きを隠せなかった。興玉は古庄の態度に何か感じ取ったようで、無言で観察を続けていた。
「誰も彼女の居場所は知らないんですか?」と興玉が片桐に訊くが、誰も彼女の居場所は知らないという。
そのとき、突然電話が鳴り響いた。受話器を取ると、なんと常見真紀を名乗る人物からの電話だった。常見は落ち着いた声で住所を伝え、「今いらっしゃるお二人だけで来てください」と告げた。その要求に、興玉は警戒心を募らせながら尋ねる。「なぜ我々がここにいるとわかるんですか?」
「タイムホールを使えば、それくらいの予知はできます」と常見は冷静に答えた。そして続けて、「古庄さんには気を付けてください。タイムホールは捏造だという嘘をマスコミに流したのは、古庄さんなんですから」そう言うと、彼女は電話を切った。
その場にいた皆が固まった。古庄は顔を真っ赤にして「違います!そんなこと、していません!」と激しく否定したが、片桐をはじめとする他の研究員たちは、沈黙のまま彼女をじっと見つめていた。
小夢は、その瞬間に書き留めた住所を確認して驚愕した。常見が告げた場所は、まさに足が降ってきたマンションの住所だったのだ。興玉と小夢は、新たな謎を解くため、再び動き出すことを決意する。
自宅で研究
興玉と小夢は、指定された住所へと向かった。ドアが開くと、興玉はすぐに芹田正彦(迫田孝也)に指示を飛ばし、状況を確認する。場所は4階で、足が落ちてきた方角とは逆側だった。そこに現れたのは、豊玉妃花(福本莉子)だった。彼女の姿を見た瞬間、興玉は何かを感じ取った。
「少しここでお待ちください」と豊玉は優雅に言い、自己紹介を続けた。「私はハウスメイドをしています。常見さんはずっと部屋にこもりきりで、私自身もお会いしたことはありません」そう言うと、豊玉は外へと出て行った。
その隙に興玉は大胆にも勝手に部屋を開けて中へと入った。そこで彼が目にしたのは、豊玉神社のお守りと、指輪だった。不意に物音がして、常見真紀が姿を現す。
「あなたたちを呼んだのは、落ちてきた機体のパーツに爆発物の痕跡があったかどうかを確認したかったからです」と常見は冷静に告げた。
興玉はにやりと微笑み、「その前に、研究室を見せてくれたらお答えしますよ」と言う。実は彼は外の電気メーターを既に確認しており、通常では考えられない速さで回っているのを目撃していた。常見がまだここで何か研究を続けていることは明らかだった。
興玉が爆発物の痕跡が確認されたことを伝えると、常見は静かに頷いた。「やはりそうでしたか」そう言い、彼らをラボへと案内した。
ラボは冷たく無機質で、凛とした雰囲気が漂っていた。興玉は、常見に向かって言った。「4年前にタイムホールは実体化したはずです」
常見はうなずきながら、「物質的なタイムホールを作るのは、個人では限界がありました。だから私は、データ的なタイムホールを作る方向にシフトしたんです」つまり、物質的なコンタクトは不可能でも、音声や文字などの情報は過去や未来から受け取ることができると説明した。
「私はただ、時空を超えて真鍋先生に聞きたいんです。なぜあの時、私に捏造の濡れ衣を着せて追い出したのか。それが私の最も解明したい疑問です」そう語る彼女の目には、強い決意が宿っていた。
「まだ真鍋先生が生きていると考えているんですか?」と興玉は問いかけた。
真紀は少し考え、答えた。「その可能性はあります。タイムホールの実現には、瞬間的なエネルギーと速度が必要だと考えていました。もし真鍋先生が、硝酸カリウムによる爆発と小型機の落下速度を利用して、自らタイムホールの実証実験を行ったのだとすれば…」
「成功していれば、真鍋先生が未来で生きている可能性があるということですね」興玉は彼女の意図を理解した。
真紀の言葉は、その場に重く響き渡った。真鍋が未来で生きているかもしれないという可能性は、単なる推測に過ぎないのか、それとも実験の成功を裏付けるものなのか。二人はこの新たな謎に、さらなる追及の手を進めることを決意した。
今度は手
荒波たちが全決の部屋にやってくると、荒波の表情は怒りに満ちていた。興玉は小夢をチラリと見て、「チクったんですか?」と問いかけるが、小夢は黙っていた。案の定、荒波はカンカンに怒っており、全決の部屋で話をすることになった。
「真鍋先生と常見さんが交際していたことは、もう判明したんですか?」と興玉が尋ねると、荒波は頷いた。「真鍋と同じ指輪を、常見が持っているのを自宅で見つけたんだ」それは興玉が前に確認していた事実だった。実は、研究室内では二人が交際しているという噂が流れていた。二宮のの子(成海璃子)が常見に直接確認したところ、彼女はあっさりとその事実を認めたという。
「もしかして、恋愛感情のもつれで、真鍋先生が常見さんを邪魔だと思うようになったとか?それで常見さんが恨みを抱いて、小型機に爆弾を仕掛けたんじゃないですか?」と小夢は推測を述べた。
するとその時、港区でまた遺体の一部が見つかったとの報告が荒波に届いた。今度は右手だった。現場に急行すると、発見されたのは女性の手だった。小夢がその手を見て「あれ、このネイル、どこかで…」とつぶやくと、興玉がすかさず「昨日コーヒーを出して頂きましたね」と言い放つ。手は古庄のものだった。
指紋が一致し、古庄の手で間違いないことが確認された。鑑識によれば、切断されたのは昨夜の深夜で、手は海水で濡れており、わずかに藻が付着していたという。「海の中から手だけ出てきたってことですか?」と小夢が荒波に聞くが、荒波は「わからん」と不機嫌そうに答えた。
さらに、研究室の古庄のロッカーからは硝酸カリウムが見つかり、爆弾を作った可能性が浮上する。小夢は驚きながらも「古庄さんが爆弾を作ったってことですか?」と荒波に問いかけた。
一方で、研究室の同僚によれば、昨夜の深夜に古庄から「タイムホールが見つかった」という一言だけのメッセージが送られていたことが明らかになった。
北野の調査により、古庄の自宅のPCから常見の住所を何者かにメールで伝えていたことも判明した。相手のアカウントはまだ調べている段階だが、宛名はなかったという。
その話を聞いた興玉は、立ち上がり「行きましょう」と言った。「古庄さんがメールした相手は、おそらくスパイ企業に雇われた人物です。常見さんが狙われるかもしれない」興玉はその場にいる全員を見回し、次の行動を決断した。
しかし、その時には既に手遅れだった。常見が何者かに拉致されたとの報告が入り、それだけでなく、小夢も連れ去られてしまったのだ。事態は急速に悪化し、興玉はその複雑な状況に頭を抱えながらも、早急に次の一手を考える必要に迫られていた。
事件の真相
真鍋殺害の真相
小夢が目を覚ますと、自分が廃ビルのような場所に拘束されていることに気づいた。体を少しでも動かそうとすると、突然、犬の面を被った男が近づき、銃口を彼女に向けて「騒ぐな」と低い声で命令した。その場には、興玉も常見も同じように拘束されていた。
しばらくして、廊下の扉が開き、誰かが入ってきた。その人物は片桐だった。犬の面を被った男が話す。「4年前、捏造が発覚し、タイムホール計画は消えた。依頼人たちは多額の投資金を失ったんだ。しかし、本当はこの女は捏造なんてしていなかった」
その言葉に、片桐は即座に否定した。「違う!そいつはただの嘘つきだ!」
そのやりとりを見ていた男が「常見を殺されたくなかったら来いと伝えたはずだ。それで来たということは、この女には命を懸けても助けるだけの価値がある、そうだろ?」と冷たく言い放つ。「つまり、この女は本当にタイムホールを実現できるってことだ。そうだろ?答えろ!」と片桐に問い詰めた。
片桐は焦った様子で答える。「そうだ!だから、常見さんには手を出すな」
その光景を見つめていた興玉が、突然笑い出した。「そうですか、やっぱりタイムホールは存在したんですね。そして、小型機に爆弾を仕掛けて真鍋先生を殺害したのは、片桐さん、あなたでした。真鍋先生が常見さんに濡れ衣を着せて追い出したことを、あなたはどうしても許せなかったんだ」
小夢がつぶやく。「好きだったとか?」
興玉は首を振りながら、皮肉を込めて答えた。「そんな安い感情ではありませんよ。これは狂気にも似た、純然たる研究者としてのリスペクトでしょう」
片桐の目が異様に輝きながら、口を開いた。「真鍋は常見さんを追い出した後も、密かに研究を続けていた。そして、ある日私にこう言ったんです。『爆薬が必要だ。タイムホールを通るために使う』と。つまり、捏造なんかなかったんだ!あいつは、天才の常見さんを潰し、人類の大発見を自分だけの手柄にしようとしていた。そんなことは許せない。だから私は、飛行機に爆破装置を仕掛け、真鍋に天罰を与えたんだ!」片桐は狂気じみた笑い声を響かせた。
その告白を聞いた常見は、何も言わず、ただ静かに涙を流していた。
古庄殺害の真相
興玉は冷静な声で片桐に問いかけた。「古庄さんを殺したのも、あなたですね?」
片桐は少し沈黙した後、言葉を紡いだ。「彼女はもともと、常見さんの才能に嫉妬していた。ただ、私はそのことを知らなかったんです……。」
片桐は、古庄がマスコミに嘘の情報を流したという件について、以前の電話の後で確認をしたという。「そうです、マスコミに流しましたよ。常見さんが体を使って真鍋先生に取り入っているのが、どうにもムカついて……でも、真鍋先生が私の嘘に乗っかって、常見さんをクビにしたのは予想外でしたけどね。もう彼女が邪魔になってたんでしょう」
その言葉を聞いた片桐は、怒りを抑えきれずに声を荒げた。「君は、自分が犯した過ちの大きさを分かっているのか?タイムホール実現の夢を壊したんだぞ!」
しかし、古庄は冷笑を浮かべながら答えた。「それは残念でしたけど、あの女がちやほやされているよりマシです」
「君はそれでも研究者か!」片桐の怒りは頂点に達した。
古庄は片桐をじっと見つめた後、挑発的な口調で言った。「いいんですか?そんな偉そうなこと言って。私、見たんですよ、片桐先生が爆弾を作っているところ。あれで真鍋先生を殺したんですよね?実は今、真鍋先生に出資していた企業に雇われて、情報を売ってるんです。片桐先生がやったことも、伝えちゃおうかな?黙っていてほしかったら、研究費の一部を私の口座に振り込んでくださいね」
その言葉に、片桐の表情が凍りついた。古庄の脅しに追い詰められた彼は、視線を周囲に巡らせ、そこにあった金槌に手を伸ばすと、無言で振り下ろした。古庄の体が崩れ落ち、片桐は冷ややかな目で彼女を見下ろしていた。
「遺体はバラバラにして海に捨てた。彼女のロッカーに硝酸カリウムを入れ、メールも送った。すべて彼女がやったことにすればいい。小型機の爆破も、古庄さんの仕業で、彼女はタイムホールに消えた、という筋書きにしたんだ」片桐は、自らの計画を冷徹に語り出した。
興玉と小夢は、その告白を聞きながら、事件の全貌が明らかになっていくのを感じた。しかし、ここからどうするか、次の一手を考える時間はほとんど残されていなかった。
事件の顛末
「けれどまさか、右手が出てくるとは思いませんでした。あれはどういうことです?常見さん。真鍋の足も、古庄の手も、すべてあなたの仕業ですよね?教えてください、タイムホールを利用したんですよね?」片桐は常見に詰め寄りながら問いただした。
しかし、常見は冷静に「不合理な仮説です」と答えた。その瞬間、片桐は焦りを隠せず、上着の前を開け、体に巻き付けた爆弾を見せつけた。
「ホントのことを教えてください。タイムホールが完成したんですよね?私は研究費を横流しして、あなたを支えてきました。私には最初に知る権利があるはずです!」片桐はスイッチを手に取り、常見にじりじりと近づいてきた。
「そのような優先順位はありません」と、常見は毅然として答えた。
「教えろ!」片桐は狂ったように叫びながら、スイッチを握り締めた。「黙っているならボタンを押すぞ。死を免れるにはタイムホールを使うしかない。一緒に時空を越えようじゃないか!」
「冷静な判断ができないとは、あなたこそ研究者失格ですね」常見は動じることなく、片桐に冷たく返した。
片桐は怒りに任せて叫び、ついにスイッチを押そうとした。しかし、その瞬間、片桐の顔の周りの空間が歪み始め、彼は苦しみだした。その隙をついて、興玉は素早く拘束を解き、片桐の手からスイッチを奪い取った。
その時、犬の面を被った男が正体を現し、それは芹田だった。さらに、一緒にいたもう一人の男・村主虎飛矢(名村辰)も全決の一員であることが判明し、事態は急展開を見せた。
混乱する小夢に興玉が静かに説明を始めた。「常見さんのマンションの前に怪しげな車が停まっていた。それで私は芹田さんに依頼して、常見さんを見守ってもらっていたんです。予想通り、彼らはスパイ企業に雇われた連中で、常見さんを拉致しようとしていた。だが、彼らが間一髪で救出に成功した」
興玉は続けた。「そして常見さんに協力をお願いして、片桐から自供を引き出すための芝居を計画した。もちろん、君がまた警察にチクるかもしれなかったから、少し寝てもらいました」
興玉はにっこりと笑みを浮かべ、「おかげでこうして、片桐さんから自供を引き出すことができた。どうぞ、荒波警部を呼んでください」と穏やかな口調で言った。
小夢はまだ少し混乱していたが、興玉の冷静な指示に従い、事件の全貌が明らかになる瞬間を見届けようと心を落ち着けた。
今回の現象
全決の部署に戻り、興玉、小夢、荒波が揃って事件の総括を始めた。「そもそも、なんで片桐が怪しいと思ったんです?」と小夢が尋ねる。
興玉は落ち着いた口調で説明を始めた。「最初の違和感は、常見さんから電話があった時です。彼女が住所を教えてくれた際に、中央区と言っていましたが、彼は『東京都』と書いていたんです。でも、もし常見さんが本当にどこにいるか分からないなら、そんなことは分からないはず。中央区は他の都道府県にも存在する可能性がある。それで、片桐が常見さんの居場所を知っていたと確信しました」
さらに続けた。「それに、常見さんの充実した研究資材を考えれば、彼女がどこから資金を得ていたのかも疑問でした。世間と隔絶していた彼女に、その資金を提供していたのが片桐だったことは容易に想像できました」
興玉の推理は続く。「そもそも真鍋先生が消えて一番得をしたのは、研究室を引き継いだ片桐です。最初は出世のためだと思っていましたが、常見さんへのサポート体制を見て、片桐は単なる野心家ではなく、研究者としての使命を全うしようとしていたのではないかと感じました」
小夢がさらに疑問を呈する。「でも、足が降ってきたのはどういうことなんですか?常見さんのマンションの前に、あんな偶然がありえるんですか?」
興玉は冷静に説明を続けた。「これはファフロツキーズ現象です。空から魚やカエル、血、コイン、亀などが降ってくる現象で、科学的には竜巻などの気象現象によって舞い上がった物体が落下するものです。小型機が海に墜落し、足が腐って海底で流された後、竜巻に巻き上げられて空に浮き、風に流されて落下したと考えられます」
小夢は不満げに首を振り、「でも、それがたまたま常見さんのマンション前に落ちるなんてありえませんよ」
興玉は微笑んで答えた。「可能性としてはゼロではありません。古庄さんの右手も同じ現象で説明できる」
荒波は不機嫌そうに、「難しい言葉でそれっぽくいっているがあり得ない」
興玉は挑発するように言い返す。「じゃあ、他に説明できるんですか?他に納得のいく説明がない以上、私の理論が結論です。それとも、警察はタイムホールの存在を信じるということですか?」
荒波は言い返せず、無言のままその場に静けさが広がった。
タイムホールはあったのか?
内閣府本府庁舎では、事件に関する重要な話し合いが続いていた。テレビ画面には、花園(中野剛)が記者会見を開き、ファフロツキーズ現象が今回の事件の原因だと結論付ける様子が映し出されている。その一方で、直毘は常見が片桐から受け取っていた資金には、一切手をつけていなかったことを報告した。
「それじゃ、どうやって研究資金を集めていたのですか?」と宇喜多が疑問を投げかける。
直毘は淡々と答えた。「投資です。僅かな元手を短期間で、莫大な額に」
宇喜多の目が鋭く光った。「タイムホールを使って、未来から情報を得ていたと?」
直毘は一瞬、宇喜多の目を見て、「どう思われます?」と問い返した。宇喜多はふと笑い、「まあ、投資の才能があったんでしょう」と軽く片付けた。
しかし、話はそれだけでは終わらなかった。常見が2か月前に「ヒルコ」と名乗る人物からメールを受け取っていたことが明らかになったのだ。そのメールには、「新しい神になりませんか?あなたにはその資格があります」と書かれていたが、常見は無視し、返信をしていなかったという。
その話を聞いた宇喜多の顔色が変わり、怒りに震えながら低く呟いた。「ふざけやがって……」
全決の結論
興玉たちは常見の家で静かに話を進めていた。興玉が口を開く。「4年前、タイムホールが発見された直後、スパイ企業がその技術を独占しようとし、あなたを拉致しようとしていたことが明らかになっています。そしてその直後、真鍋先生はあなたのデータ改ざんを発表し、プロジェクトから外した。しかし、僕はこう思うんです。スパイ企業があなたを狙っていることに、真鍋先生は気づいていたんじゃないでしょうか。あなたを守るために、研究から外したんです。つまり、真鍋先生にとって、タイムホール研究よりも常見さんの命が大事だったんですよ」
その言葉に、常見は声も出せず、涙を流した。
「以上が、今回の全領域異常解決室が導き出した結論です」と興玉は穏やかに締めくくった。しかし、常見は毅然とした表情で答えた。「憶測は必要ありません。私は真鍋先生に直接答えを聞き出します。自分の力で」そう言い残し、彼女は静かにラボへと戻っていった。
ラボでVR空間に入る前、常見のスマホに一通のメッセージが届いた。差出人は真鍋。「事件が落ち着いた頃だね」という短い言葉だった。
「真鍋先生ですか?」と返信を送ると、すぐに「まず、おめでとうと言わせて欲しい。君が発見したタイムホールは実証された。2032年11月3日、我々は再会する」という返事が届いた。そのメッセージを見た瞬間、常見は感情があふれ出し、抑えきれない涙が頬を伝った。
その後、小夢がふと思い出したように話を切り出した。「片桐が起爆スイッチを押そうとした時、周りが一瞬歪んだように見えたんですが、あれは何だったんですか?」
興玉はシラを切り、「私にはそんなことは見えませんでしたけどね。」と答える。
「じゃあ、片桐が急に苦しみだしたのはどういうことです?片桐は取り調べで『急に息ができなくなった』と供述しています」と小夢がさらに突っ込む。
「日頃の不摂生がたたったんじゃないですか」と興玉は軽く言い放つ。
「でも、あんな都合のいいタイミングでですか?」小夢は納得していなかった。
興玉は立ち上がりながら、微笑んで答えた。「ならヒルコの、神の御業だとでも?わからないことがあってもいいじゃないですか。全て知ろうとするなんて人間の傲慢です」そう言いながら、彼は外に向かって歩き出した。
その時、ハウスメイドが部屋に入ってきた。小夢がふと口を開く。「この前の人とは違いますね」
しかし、その女性は驚いた表情で答えた。「こちらを担当しているのは私だけですが」
その瞬間、小夢は凍りついた。彼女が見た人物は一体誰だったのか。興玉も困惑した表情を浮かべ、次の一手を考えているようだった。
【全領域異常解決室】3話の結末
小夢は部署で一人、机に向かって考え込んでいた。徹夜をしていたようで、疲労が顔ににじんでいる。その時、興玉が黙ってコーヒーを入れ、机の上にそっと置いていった。
「思い出したんです…」小夢は突然、独り言のように呟いた。「シャドーマン事件の時、すれ違った人…あの時も、空間が歪んだように見えた。そして、その女性はメイドの人だった」
彼女はすぐに過去の記録を見直し、シャドーマン事件の現場と葛乃葉女子高等学校の現場、両方に同じ女性が映っている写真を興玉に見せた。「この女性は3つの事件に関わっています。彼女がヒルコです」
その時、場面は変わり、豊玉がどこかでドーナツを食べているシーンへと移る。彼女の背後で、男が突然落ちてきて、テーブルに激突し、即死する。しかし、豊玉はまるで何事もなかったかのように微笑みながら「あららら」と言っただけで、全く動じる様子はない。
そこに現れたのは宇喜多だった。彼は豊玉に向かい、警告するように言った。「あまり派手に動かないでください。そろそろ気づかれますよ」
豊玉はその言葉を聞いても無邪気に笑い、「いよいよ対決か、全領域異常解決室と」と楽しそうに答えた。
←2話|4話→
【全領域異常解決室】3話のまとめと感想
タイムホールかと思われた現象は、ファフロツキーズ現象だったという話でした。
今回の話はいつもよりも嘘か本当か、かなり曖昧な終わり方をします。常見はタイムホールは完成しているといい、最後に真鍋からメッセージが届きます。もちろん、メッセージ自体も何らかの細工をしていて、別人が送っている可能性はあります。
完成していたとして、足はここにあるということは、もし2032年に再会した時、真鍋の足はちゃんとあるのか気になるところです。
物語本編とは別に、少なくとも宇喜之は人間ではないのかもしれないと、思わせる発言が続きます。もしかしたら、興玉も人間ではなく、それこそヒルコなのかもしれません。豊玉と全決が対決するのであれば、豊玉も果たして人間なのか?
もしそうだとした場合、安っぽいCGで人外感を出すぐらいなら、藤原さんや小日向さんの生身の演技でいったほうが、ある意味人外感が出る気がします。それぐらい彼らの演技は見ていて面白いです。
←2話|4話→