今回のスパイラルは自分の思いを押さえきれない久万田が、とうとう浅子にプロポーズをします。そして村尾のマジテックへの攻撃が本格化し、ADキャピタルやスプラ社にまでそれが及びます。久万田はうまくいくのか?そしてマジテックの運命は?
スパイラル 町工場の軌跡 概要
テレビ東京系列で毎週月曜日22時から放送しています。中小企業の再生をテーマにした、様々な困難を諦めずに乗り越えていく話となっています。
キャスト
- 芝野健夫(玉木宏)
- 藤村浅子(貫地谷しほり)
- 藤村望(戸塚純貴)
- 久万田五郎(福士誠治)
- 正木奈津美(野波麻帆)
- 田丸学(前原滉)
- 隈田穣治(渡辺邦斗)
- 岩崎あけみ(水沢エレナ)
- 小笠原純(島丈明)
- 桑島孝幸(遠山俊也)
- 原口慎太郎(長谷川純)
- 正木希実(宝辺花帆美)
- 堀保徳(小野武彦)
- 藤村登喜男(平泉成)
- 村尾浩一(眞島秀和)
- ナオミ・トミナガ(真矢ミキ)
- 桶本修(國村隼)
スタッフ
- 脚本:羽原大介
- 監督:井坂聡・松田礼人・棚澤孝義
- 音楽:遠藤浩二
- 主題歌:SING LIKE TALKING「Spiral」(Universal Connect)
- 原作:真山仁 『ハゲタカ4.5/スパイラル』(講談社文庫)
前回はこちら
あらすじ
芝野(玉木宏)と久万田(福士誠治)は組合の曾根理事長(木場勝己)にロボット王国計画を打ち明けられる。町工場の技術力を世界へ。2人は想いを新たに再生へと動き出す。一方、ついに村尾(眞島秀和)の動きが本格化!村尾は田端(星田英利)の弱みを握りマジテックの債権を奪おうとする。ナオミ・トミナガ(真矢ミキ)は村尾を利用し、虎視眈々とマジテックの買収を狙うが…果たして彼女の狙いとは何なのか―。ついに直接対決!
公式HPより
感想
少しの良い話とたくさんの悪い話といった回でした。一週間が始まったばかりの月曜の夜から、なかなかヘビーな内容です。自分の会社は大丈夫だろうか?取引先の株価を思わず確認したくなるような回です。そして以前から浅子のことが気になっていた久万田ですが、とうとうプロポーズをします。そういえば付き合っていたっけ?なんて考えてしまいますが、その結果はどうなったか見ていきましょう。
ハニートラップに何度もハマる男
前回ハニトラで女性とホテルに入っている写真を押さえられた田端ですが、その写真を村尾に突きつけられて脅されます。しかし、既に妻と別居中である田端は全く意に介しません。そこで村尾は新たな脅迫材料を手に入れてきます。
それはインサイダー取引を示唆する会話が録音されたボイスレコーダーです。村尾は田端のお気に入りホステスに金とレコーダーを握らせ、会話を録音してくるよう依頼します。案の定、田端は女にだらしないせいで引っかかります。思いっきり“インサイダー取引”という単語まで入っている音声をとってきます。
とうとう田端は観念して、マジテックの債権を譲渡することになります。その買取額は額面の2割という破格の値引きで売ることになります。自分が売ったところで、スプラ社がついていればマジテックにはメガバンクすら融資するという田端に、村尾はホライゾンに頼んでスプラ社に対する妨害工作を始めます。
ロボット王国設立
博士は以前から人口が減って高齢化が進めば、人手が足りなくなってロボットが必要なるはず。と予見していました。そこで、この地域を“ロボット王国”にしたいという夢がありました。そのために博士は将来有望な研究者に投資したと組合の人たちに語っていたようです。それが久万田のことです。
そこで組合のほうから提案をされます。柴野をチームリーダーにして、研究所の所長を久万田にやってもらえないかと。場所は組合所有の場所を利用し、資金は月々の組合費の積み立てを解約して運用します。少ないながらも2人にも金を払うから頼むとお願いされます。
久万田も芝野も喜んで引き受けます。
ファブラボEO誕生
さっそく久万田はファブラボを設立します。その名も“ファブラボEO(east ota)”なるもものです。しっかり大田区の名前を入れておきます。この場所にレーザーカッターや旋盤、3Dプリンターまで置いて組合員は自由に使用できます。そして週に一度は一般に開放し、使えるようにします。ここで何をするのでしょうか?そのデモンストレーションを久万田はやります。
- 海外のそれぞれの地域でパーツを作る
- そのデータを3Dプリンターに送る
- 出来上がったパーツをそこで組み立てる
- すると1つの物が出来上がる
今回は簡単な自転車の模型を作ります。各国一つずつ別のパーツを作り、そのデータを送信すると3Dプリンターに反映されて立体物ができるという仕組みです。
こちらからも送ることができるので、町工場の優れた技術を海外に発信できるというわけです。また原材料を現地で用意すればいいので、物を作って送るといった手間や、時間も大幅に削減されます。夢のようなシステムです。
久万田のプロポーズ大作戦
いつもの焼肉屋で肉を美味そうに食べる望と浅子ですが、そこで久万田がとうとう浅子に告白をします。当然お付き合いをお願いする告白かと思いきや、いきなりプロポーズです。さすがに無理だろうと思っていたら、浅子はものの1秒で「お断りします」と即答します。
その後遅れてきた芝野が、死人のような顔をしている久万田と話をします。
「普通プロポーズする時はもう少し時間をかけて、相手の胸の内を読んでから告白するものでは?そもそもまだ交際もしていないのに、いきなりプロポーズというのは」
芝野は女心が読めるというか、ちゃんと手順を踏む男です。それに対しての久万田の答えはこうです。
「俺的には7年かけて7年分の思いをぶつけたつもりです。まさか1秒で断られるとは」
久万田が勝手に7年思っていただけで、浅子はなんとも思っていないとは考えなかったのでしょうか?意外とストーカー気質な男です。
しかし、断る浅子には理由があったのです。
浅子の過去
かつて結婚を約束した男性がいました。式場の下見をしに行こうと、待ち合わせをしていた日、浅子は数分遅れてしまいます。そこで運悪く工事の足場が崩れ落ちてきて、その恋人は下敷きになって亡くなってしまいます。それ以来、浅子は自分を責めて結婚はもとより、恋愛自体するつもりがなくなってしまいます。
いまだにその時の後悔があり、会社の引き出しにはその時の指輪がケースに入ったまま置いてあります。ただでさえ傷付いた心を、久万田に身勝手なプロポーズをされたら、そりゃ1秒で断ると思います。
そして浅子は今は会社が恋人だと言います。しかし久万田は諦めません。執念とはいいませんが、こういいます。
「諦めないから、俺はマジテックだけじゃなく、浅子ちゃん自身も過去から未来に連れていく。絶対諦めないから」
浅子も久万田のことを本当に恋愛対象でなければいい迷惑ですし、久万田は完全なストーカーです。もしかすると、久万田の力が今のマジテックには必要だから我慢しているとも考えられます。ですが、浅子という女は“駄目なものは駄目”とハッキリ言う女だということがこの後わかります。
よって、久万田のことを生理的に無理とか、そういった感じではないのだとわかります。
転んでもタダで起きない女、浅子
田端がハニトラに引っかかったせいで、マジテックの借入金は下町信金に譲渡されることになります。それだけではなく、村尾はホライゾンアメリカ本社を動かし、アメリカのスプラ社の株を下落させます。その結果、スプラ社はマジテックとの契約を破棄します。それを突きつけられた浅子は激怒します。
- マジテックの債権を1億5000万の半分の7500万にしろ
- 契約を反故にしたのだから、それぐらいの責任取れ
- 下町信金はADキャピタル社と同じ条件でやれ
と、田端に迫ります。仕方なく田端は5000万負担するといって約束します。よってマジテックの負債額は1億に減ります。また、ADキャピタルと同じ金利2%でやることを下町信金に強要します。
確かにスプラ社の売り上げがなくなるので大打撃なのですが、無理を言ってきてるのはあっちなので、ここぞとばかりに浅子はしっかり交渉します。転んでもタダで起きない女です。
また“侍”にかぶれるナオミ
以前もやたら侍を強調していたナオミですが、今回もまた侍ワードに反応してしまいます。お気に入りなのでしょうか?
- 侍は主君に忠実じゃなかった?
- それが令和の侍のやり方?
- 期待してます、あなたの侍スピリッツ
村尾をからかっているのか、それとも単純に侍という言葉を気に入っているのか。いずれにしても侍とやたら言いまくります。そんなナオミのことを村尾は陰で“女狐”と呼びます。そのワードに興味を持ったあけみが、指で狐をかたどって「コン」とかいって遊びます。そんなあけみに「お前にだったら化かされてもいい」なんてノロける二人でした。
ハゲタカの本気
ホライゾンキャピタル社はいわゆるハゲタカファンドです。日本の業績が悪化している会社を安く買い叩いて買収し、それを他に売り飛ばしたり会社を再編成したりして儲ける会社です。バブル崩壊後、借入金の焦げ付きが沢山あったため、目先の債権回収に踊らされる銀行から安く買い叩いて買収しました。技術的には良質な会社も沢山あったのですが、これによって技術の流出や、倒産といったことも起きました。技術大国日本が崩壊した事柄の一つです。
そんなホライゾンですが、とうとう本気を出します。マジテックが特許を借りて仕事をしていた会社である英興技巧を買収します。元々経営にあまり興味がなかった社長に、持ち株の売却とおなじみ“ゴールデンパラシュート”として1億円渡して買取ります。世襲も良し悪しだなと思うポンコツ振りです。この後、多くの社員が路頭に迷うことになっても、自分さえ良ければそれでいいという、経営者と呼べないお粗末な社長です。
その他気になったこと
- 田端の負け犬の遠吠えっぽい演技
- やたら“令和”と言いたがる回
- インドの人のセットが適当なインド感すぎる
- ドラマの展開に合わせて雷雨になったりする天気
- こんな店とっとと売っ払ってといわれるあけみの店
- 用済みになった途端、さっさと出国しろといわれる英興技巧の社長
ドラマの補足
ファブラボとは?
ドラマで出てくる“ファブラボ”とは一体どういったものなのでしょうか?
正式名称“fabrication laboratory(ファブリケーション研究所)”略してファブラボです。様々な工作機械を揃えて、国際規模のネットワークで情報を交換し、自由に物作りをする実験所となります。自分たちが使うものを使う人自身が作るという文化と劇中でも紹介していました。
ファブには“Fabrication(ものづくり)”と“Fabulous(楽しい・愉快な)”という2つの単語がかけられています。ほぼあらゆるものを作ることを目標にしたワークショップです。ドラマでもいっていたように、一般市民にも開放されているのも特徴です。
ファブラボを名乗れる条件
- 一般市民に開かれていること
- ファブラボ憲章の理念に基づき運営されていること
- 共通の推奨機材を備えていること
- レーザーカッター
- CNCルーター
- ミリングマシン
- ペーパー/ビニールカッター
- 3Dプリンター
- 各種ハンドツール・電子工作ツール
- 国際規模のネットワークに参加すること
この4つが揃って初めて“ファブラボ”を名乗れます。一般に開かれていない、道具がない、国内だけで完結しているなどの場合はファブラボを名乗れません。
参考HP:What’ FabLab?
2019年5月現在、日本には18ヶ所にファブラボあります。この試みが今後定着し、欲しいものを企業に頼らずに生み出せたりするようになるといいなと思います。自分たちが必要なものは、自分たちで作る。誰かに提供されるのを待つのではなく、誰かの商品を買うのではなく、本当に自分たちが欲しいものはこういうものだと、逆に消費者から発信する時代が来るかもしれません。
しかし、これにAIを絡めたら、マーケティング会社や、商品を開発販売している会社の存在意義が薄まりそうな予感もしますが。最後に残るのは個人の知恵と、手先の技術となるのかもしれません。流行を生み出す意図的な戦略といった仕掛けが、今後無意味になったらいいと自分は思います。
ファブラボを詳しく紹介している日本のファブラボサイトがあるので、ご興味のある人はぜひご覧になってください。
まとめ
一話に色々詰め込まれた回でした。良い話がファブラボの話だけで、後はもう転落していくばかりの回でした。これを月曜の夜から見せられるというのも辛いもので、一刻も早く良い話を入れてくれないと、毎週ブルーな気分で一週間が始まってしまいます。来週は当然今週より悪い回になりそうですし、後半にいい話を入れてくれることに期待します。