2021年4月2日に森村誠一ミステリースペシャル【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】が放送されました。キャストやネタバレをまとめています。
ドラマの内容と同時に気になるのが、レギュラー出演していた岡江久美子さんが演じる牛尾刑事の妻はどうなるのかです。新たな人が演じるのか、それとも回想で出演するのか?ドラマの最後にそのすべてが判明しました。
【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】のキャストとスタッフ
レギュラー
- 牛尾正直…片岡鶴太郎
- 大上刑事…東根作寿英
- 山路刑事…徳井優
- 坂本課長…秋野太作
ゲスト
- 伊庭悌二…尾美としのり
- 伊庭頼子…七瀬なつみ
- 伊庭崇彦…堀井新太
- 伊庭晴美…山谷花純
- 伊庭君江…赤座美代子
- 市野清明…国広富之
- 原作:森村誠一『停年のない殺意』(光文社文庫『完全犯罪のエチュード』所収)
- 脚本:橋本綾
- 監督:池広一夫
【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】のあらすじ
新宿の公園で伊庭崇彦(堀井新太)の遺体が発見され、新宿西署の刑事・牛尾正直(片岡鶴太郎)が臨場する。第一発見者は被害者の妹の晴美(山谷花純)で、事情をきくと崇彦のマンションで会う約束をしていたという。しかし、約束の時間になっても来ないので、近所を歩いていたところ兄の遺体を発見したという。
崇彦は事件の前に電話で「面白いものを見せてやるから来い。それを見たら最初はケタケタ笑うだろうけど、最後は必ず泣く」と言っていた。だが、晴美にはそれが何かまったくわからなかった。
父の悌二(尾美としのり)は茨城の大洗にある実家へ、母の頼子(七瀬なつみ)は友人たちと飛騨高山に出かけていたが、息子の死を知って急いで戻り遺体と対面した。両親とも息子の言う“面白いもの”には心当たりがなかった。
やがて崇彦の死因は階段から何者かに突き落とされたことが原因と判明し、牛尾刑事は崇彦には誰にも見せない裏の顔があるのではないかと思い始め……。
【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】のネタバレ
犯人
伊庭悌二
動機
晴美が自分の子供ではないということを知られたくなかった悌二は、「面白いものを見せる」という崇彦の言葉に慌てて直接会いに公園へ行った。
「そんなものを見せるつもりはない」という崇彦の言葉を信じられず、2人はもみ合いになってしまう。その弾みで崇彦は階段から落ちてしまい、一度は起き上がって歩き出すが、頭を打ったのが原因でその後亡くなってしまった。
事件の真相
頼子は悌二と結婚する以前、市野と関係を持っていたが、市野は頼子と結婚するつもりなどなく、別の女性と結婚をした。市野は既に身ごもっていた頼子に、中絶するか黙って他の男と結婚するか選択を迫った。そこで頼子に好意を寄せていた悌二とくっつけさせ、崇彦が自分の子であることをずっと内緒にしていた。
会社の感謝祭をやっていた時、同僚たちが市野の息子と悌二の息子がよく似ていると話していた。社内では市野が頼子を悌二に押し付けたという噂があった。偶然話を聞いてしまった悌二は、親子鑑定をした結果、崇彦が自分の子供ではないと気づいた。
それから悌二は市野に対する復讐を考えた。それは息子を誰が見ても羨むような青年に育て上げ、崇彦を捨てたことを後悔させるというものだった。そのため息子を厳しく育てるが、思春期の頃に親子関係が悪化してしまう。
しかし、息子が大学生になった頃、親子関係は良好になった。ある日、悌二は市野に息子を会わせた。市野の息子は落ちこぼれだったため、崇彦のことを羨んだ。その時、悌二は「勝った」と復讐できたたことに喜んだ。息子と一緒の未来を思い描き喜ぶのも束の間、自分が会社を定年退職するのと入れ替わりに、息子が市野の会社に入社することになった。
実家から離れ、市野の用意した豪華なマンションに住む崇彦に対し、晴美は兄がまるで別人になってしまったと思っていた。子供の頃、好きだったケーキを均等に7.5センチで切って食べた思い出、家族内では“7.5センチの倖せ”と呼んでいた。兄はもうそんな思い出も忘れてしまったのだろうと、晴美は悲しんだ。
市野は立派に育った崇彦を何とか自分の手元に置いておきたく、悌二に親子鑑定書の結果を突きつけて自分が父親だと名乗り出ようとしていた。悌二は怒ってその場で鑑定書を破り捨てた。だが、鑑定書は既に崇彦の手にも渡されていた。それ以前に崇彦は2年前に市野の息子から、自分が悌二の子ではないと聞かされていた。
真相を話さなければと思っていた悌二だが、怖くてできなかった。そうしているうちに事件の日がやってきてしまい、晴美に話した“面白いもの”とは鑑定書のことだと考えた。晴美にだけは知られたくない、そう思った悌二は直接息子に会いに行った。
悌二はケーキを渡し、鑑定書を晴美に見せるなと迫った。崇彦は「そんなものを見せるつもりはない」と言うが、悌二はその言葉が信じられなかった。そこで2人はもみ合いになり、階段から崇彦が落ちてしまう。その時に頭を打ったことが原因で、崇彦は亡くなってしまった。
あの時、市野から見せられた鑑定書はさらに晴美との親子鑑定もあり、娘もまた市野と頼子の間にできた子供だった。市野は頼子も気づいていないと言い、晴美は任せるから崇彦を自分の息子にすると言った。だから悌二は晴美に自分の子ではないということを知られるのを恐れ、崇彦に執拗に問いただしたのだった。
崇彦が見せたかった“面白いもの”は、“7.5センチの倖せ”だった。それを見れば晴美は笑い、兄は変わってなかったと知るはずだった。そして一緒にケーキを食べながら自分の本心を話し、それを聞いた晴美は恐らく涙を流すはずだろうと。
兄の本心、それは血やDNAよりも思い出や記憶を共有していることが大事だということ。晴美にとっても自分にとっても、父親はただ一人、悌二だけだということだった。
岡江久美子さんの出演について
昨年お亡くなりになられた岡江久美子さんの役はどうなるのか?最後の最後に牛尾刑事のナレーションで分かりました。
無事事件を解決した牛尾刑事が自宅に戻り、妻の遺影に手を合わせます。ナレーションが非常に物悲しくも、終着駅シリーズらしい内容でしたので引用します。
家内が私の人生から姿を消してしまってから半年が経ちます。
耐え難い苦痛と悲しみの中で、私は若い頃に読んだ本の中の言葉を思い出していました。
“愛別離苦”
愛する者たちには、常に別れの苦しみがつきまとう。
苦しみたくないのなら、愛さなければいいのかもしれません。
けれど、私たちは出会い愛し合い、そしてお互いにかけがえのない人になったのです。
苦しむ事が愛した事の証しなら、別れのこの苦しみを受け入れよう。
今はそう思っています。
今も彼女の笑顔が目に浮かび、彼女の声が聞こえます。
その彼女に私は語りかけ、そして言います。
ありがとう。そして、いつかまた。
このナレーションが流れている間、過去作から編集した岡江さんのシーンが次々と映し出されます。
最後のほうは鶴太郎さん本人の声が感極まり、涙を流しているのではないかと思わせるほどでした。
岡江さんが亡くなったのと同時に、牛尾刑事も妻を亡くしたのです。妻役に新たな人を配役はしませんでした。
もしかしたら今後のシリーズでも、回想シーンで岡江さんの笑顔が流れるかもしれない、と思わせる演出でした。
【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】のその後の登場人物
それぞれ登場人物がどうなったのか?分かった範囲でまとめました。
- 伊庭悌二:息子殺害の罪で逮捕
- 伊庭頼子:離婚し実家へ戻る
- 伊庭崇彦:悌二により殺害
- 伊庭晴美:悌二の実家がある大洗の水族館で働く
- 伊庭君江:何も変わらず
- 市野清明:何も変わらず
牛尾刑事の捜査により、悌二は逮捕されました。その後、どういう罪に問われたかは不明です。
頼子は悌二と離婚し、実家へ戻ります。晴美は大洗の水族館で働くようになりました。
市野は変わらず会社の社長のようです。頼子と市野、この2人の身勝手な関係のせいで、崇彦は死んだようなものです。しかし、彼らを罪に問うことはできません。何とも空しい終わり方でした。
【終着駅シリーズ37 停年のない殺意】のまとめと感想
息子の言葉を信じられなかった父親が、誤って息子を殺してしまうという話でした。いつもの終着駅シリーズ的な動機で、勘違いや不安から殺人が起きてしまいます。
今回の話もなかなか酷い話で、息子だけでなく娘も実は他人の子供でした。と、なると妻は息子を産んだ後もずっと関係を続けていたことになります。それどころか、実は息子の死の直前まで関係しています。ちょっとさすがに酷いです。
そこで夫の考えた復讐が、息子を他人が羨むような立派な青年に育てるということでした。しかし、その息子が実の父親のいる会社に就職します。ダメ息子を亡くした実の父は、他人が育てた優秀な息子を欲しがります。なんとも都合のいい話です。
ですが、優秀な息子だけあって、血縁よりも育ててくれた父こそが父と呼べる存在だと気づきます。そんな矢先に息子を信じきれない育ての父親に殺されてしまいました。
実の父と実の母、この2人がいつまでも不倫関係を続けていたせいで、家族が不幸になってしまったのです。この2人を罰する罪はないのがやるせない気分にさせます。
故・岡江久美子さんの演じていた牛尾刑事の妻はどうなるのかと見ていましたが、代役も立てず一時的にいないだけともせず、亡くなったことになりました。岡江さんの死は牛尾刑事の妻の死でもあったのです。今後、事件のヒントはどこから得るのか、今回みたいに自然と気づく流れになるのか?
岡江さんの笑顔が時折ドラマ内で回想シーンとして使われ、在りし日の姿を今後も見せてくれるのかもしれません。