2月9日に放送された【私刑人~正義の証明】のネタバレと感想をまとめました。
遠藤憲一さん演じる元SPが再び現れ私刑人を追うため、私刑人対策室に呼び戻されます。私刑人の正体とは誰か?その裏側に隠された真実とは?
【私刑人~正義の証明】のネタバレ
私刑人
藤谷剛
藤谷の動機
高校生の娘が龍岡の娘美香に濡れ衣を着せられてしまい、周りの誰もが美香の父親の力を恐れて助けなかった。それを苦にした娘は学校の屋上から飛び降りて自殺してしまう。その後、妻は体調を崩して亡くなり、自身も病院を辞めて町を出る。
世の中に理不尽な悪がはびこっていることや、世の中を駄目にする諸悪の根源である龍岡に復讐するため私刑人となった。
山葉文雄殺害犯
龍岡が暴力団に頼んで殺害
龍岡の動機
娘と結婚させると言って山葉に汚れ仕事を龍岡はやらせていた。しかし、美香は山葉とではなく政略結婚で別の男と結婚させる。怒った山葉は美香の結婚式の時に、新郎とは別の相手とのベッドシーンの映像を流す。山葉がやったと知った龍岡は新郎の父が懇意にしている暴力団に頼み、私刑人を装って山葉を射殺した。
私刑人の協力者
江崎哲平
江崎の動機
前から憧れていた藤谷を偶然タクシーに乗せたのをきっかけに話が弾む。過去に松永が撃たれたのに警察が隠ぺいしたことに失望し、江崎は警察を辞めた話をする。以前からあの時何の罪もない人を撃ったことを後悔していた藤谷は、自分が私刑人であることを告白する。
それ以来、江崎はタクシーに藤谷を乗せて私刑人の協力をしていたのだった。
真相への道筋
以前の私刑人と違い、山葉が殺されたことが松永は引っかかっていた。さらに江崎が私刑人として逮捕されるが、3年前に一緒の現場にいたことから犯人は江崎ではないと松永は確信していた。
松永は山葉の実家がある群馬へ行って話を聞く。すると、山葉は龍岡の娘の美香と結婚する予定だったことを聞かされる。そこでもらったUSBの中を見ると、結婚式で流した映像と同じものがあった。映像を流したのは山葉だったと分かる。
山葉の話を聞きに行っている時に、美香の悪い評判を同級生から聞く。美香は不祥事を起こしてもすべて親のお陰で揉み消していた。そして、文化祭の演劇で主役を決める投票をクラスでやったが、その時一票差で亜弥に決まる。怒った美香は嫌がらせで自分の財布を亜弥の鞄に入れ、まるで亜弥が盗んだかのように仕立て上げる。
クラスのみんなも美香がやったに違いないと思ってはいたが、父親の後ろ盾がある美香を恐れて誰一人亜弥を助けてはあげなかった。それを苦にした亜弥は学校の屋上から飛び降りて自殺したという。亜弥の苗字を聞いたところ藤谷亜弥という名前だと分かる。
亜弥の父親は射撃の日本代表だったこともあり、世界大会でも何度も入賞している選手だった。それは妹の主治医である藤谷剛であることが分かった。
江崎に藤谷の話をすると、タクシーに乗せた時にひき逃げ事件を目撃した話をする。ひき逃げ犯は最終的には捕まるが、父親が官僚で叔父が国会議員だった関係で罰金刑だけで済んでいた。藤谷に憤りをぶつける江崎はやがて、藤谷から私刑人であることを聞かされる。
松永を撃ったことを後悔していた藤谷は一度は私刑人をやめた。しかし、ひき逃げをした男がかつて女子大生を暴行しても不起訴になった、あの金山言訓だと知って再び銃を取った。そして、共感していた江崎も協力する。
犯行を止めようとする松永は何度も私刑人と遭遇していたせいで、どの場所から狙ってくるかの見当はついていた。ただ、いつやるのかはわからなかった。そこで江崎に話を聞くともう手遅れだと言う。今夜決行されると察した松永は藤谷を探しに向かう。
藤谷を発見した松永は狙撃をやめるよう説得する。だが、そこで妹が実は龍岡が理事をしている病院に転院させられていることを知らされる。龍岡は松永のことをすべて調べ、自分の都合の良いようにするためにそうしていたのだった。
驚く松永を尻目に警官が入って来て藤谷を確保する。松永はこの人は俺達の敵じゃないといい、この国の正義はどこにあるんだと叫ぶ。そして、龍岡のところへ行くなり今までの悪事に対して怒りをぶちまける。龍岡に向けてとうとう銃口を向ける松永、まるで悪びれない態度に苛立っていると、青柳が松永の足に向けて撃ち凶行を阻止した。
ネタバレまとめ
- 私刑人は藤谷
- 龍岡の娘美香に娘は自殺に追い込まれた
- 山葉は美香と結婚できない腹いせに盗撮動画を公開
- 龍岡の怒りを買って山葉は暗殺される
- 龍岡が松永をコントロールするため、妹を自分が理事を務める病院へ転院させる
- それを知った松永がキレて龍岡を撃とうとするが阻止された
【私刑人~正義の証明】の感想
日曜の夜にこの話は重いです。明日から仕事に向かう人々の気力が失われ、ちょっとしたことで怒りが込み上げそうです。勧善懲悪ものではなく、悪は野放しのままどころか悪が国のトップになって終わります。
正義とは何かを問いかける作品なのですが、復讐できずに悪が勝って終わるので、そういう話が苦手な人は視聴するとフラストレーションが溜まると思います。
暴行した慶大生の不起訴事件や、池袋のひき逃げ事件やら、ゴーンの逃亡やら、いわゆる上級国民と呼ばれる人たちはやっぱり上級なので裁かれない、または裁かれても軽いというような話が盛りだくさんです。弱者は踏みにじられ復讐すら許されず、ただ、ひっそりと悲しみを抱えて生きていくしかないのか?そんな気持ちにさせます。
復讐ものは2時間ドラマの定番でして、大体一番復讐したい相手には復讐できずに終わります。ですが、よくあるドラマだとちゃんと悪人は逮捕されます。今回のドラマは逮捕どころか、なかったことにされるので無罪です。
また、最後に銃声が何発か聞こえるのですが、結局どうなったのかがハッキリとは描かれません。エンドロールの映像を見て想像してくださいという感じです。
内容は重いドラマですがキャスティングは良かったです。それぞれが己の芸を見せ合うような、バチバチと火花を散らすやり取りが見られます。ラストは怒涛の展開で、遠藤さんと北村さんの取調べシーン、遠藤さんと光石さんの説得シーン、遠藤さんと竹中さんのやり合うシーンと続きます。どのシーンもお互いが演技合戦してるようで見ごたえありました。
正義とは何か?
これがこのドラマの一番のテーマとなっています。それぞれに正義がありました。
- 松永祐一郎
- 生きる資格のない人間なんか誰もいない
- 弱い人の力になりたい
- 価値のある命と価値のない命があるとは思えない
- 善人だろうが悪党だろうが守るのが仕事
- 正義は弱い者を守るためにある
- 藤谷剛
- この世の悪に対する義憤がある
- 人を助けたいから医者になった
- 罪を誰も裁かないなら自分が刑を処する
- 世の中の理不尽な悪は許さない
- 腐らす菌を除去して何が悪い!
- 龍岡泰邦
- 国益のために多少の犠牲は仕方ない
- 自分の立場を守るためなら何でもする
- 江崎哲平:不正や隠ぺいは許さない
- 吉尾恵美:民主主義の国には報道の自由がある
【私刑人~正義の証明】の登場人物のその後
ラストに銃声が何発か入り、誰か死んだりしたのかと気になる終わり方をします。しかし、エンドロールでなんとなく詩の朗読と一緒にそれぞれの映像が入るだけなので、一部の人については想像で書いています。
- 松永祐一郎:タクシー運転手に転職
- 松永琴乃:骨髄移植できたのか、退院して子供と遊んでいる
- 青柳真司:SPの職についている
- 相馬晃弘:SPの職についている
- 江崎哲平:逮捕
- 藤谷剛:逮捕
- 龍岡泰邦:総裁選に勝利し総理大臣へ
- 吉尾恵美:写真は掲載されず
- 湖中重義:龍岡の応援をしていた
- 三津井正司:カタギになった
銃声後、どうやら誰も死んでいないようです。逮捕されたのは2人だけらしく、松永はまた隠ぺいされたのか何のお咎めもなくタクシー運転手をしていました。『イコライザー2』のデンゼル・ワシントンのように殺しに行くかは分かりません。
妹の琴乃ですが骨髄移植手術ができたのかどうか分かりません。ただ、娘と一緒に公園で楽しく遊んでいたので退院はできたようです。
松永を撃った青柳ですが、特に怪我をしたとかしないとかもないようで、普通にSPの職に就いていました。室長も同じくSPの職に就いています。
冒頭に出てきたボッタクリバーの店員である三津井は、普通にスーツを着て新橋のガード下で会社の人と飲んでいるようでした。恐らくカタギになれたのだと思います。
そして問題の龍岡は民自党の総裁選に勝利し、民自党の総裁となります。その後、総理大臣になりました。同様に湖中も議員のままで龍岡の応援をしていました。悪は滅びずに勝利します。
恵美の撮った写真は編集長に見せても紙面には載らず、そのままなかったことにされてしまいます。恐らく事件自体を揉み消されたのでしょう。
【私刑人~正義の証明】で朗読した詩
ドラマラストに読む詩は谷川俊太郎さんの『生きる』という詩です。
【私刑人~正義の証明】のまとめ
正義とは何か?ということを問いかける作品でした。最後に『生きる』という詩を朗読し、それぞれの心に今度は生きるとは何か?を問いかけます。正義に殉じて死ぬか、悪に従い生きるか。それとも亜弥が死んだ時のように、見て見ぬふりをして生きるのか。色々考えさせられます。
時には立ち止まって“正義”や“生きる”について考えてみませんか、という作品なのかもしれませんが、やはり何度も言うように日曜にこれは重いです。明日仕事に行って理不尽な仕打ちを受けたら、私刑人がいたらなぁと思いそうです。
勧善懲悪ならスカっとするドラマなのですが、悪は懲らしめられるどころか国のトップになるという、なんとも恐ろしい終わり方をします。まったく逆なタイプの【多加賀主水】の予告で和めたのが救いです。
とはいえ、世界的に格差社会を描いた映画がヒットしている昨今、この【私刑人】も意外と受け入れられそうな気がしました。