【イグナイト】8話のネタバレと感想|桐石と宇崎が対立!医療過誤を立証できるか?

2025春ドラマ
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【イグナイト-法の無法者-】8話のネタバレと感想をまとめています。

父親を手術後2日で亡くした遺族から、医療過誤の疑いについての相談が事務所に入ってきていた。調べているうちに病院で桐石と遭遇する宇崎たち。妻が検査入院をしているというが、執刀医はれいの医療過誤の疑いのある医師で……。

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【イグナイト】8話のあらすじ

伊野尾麻里(上白石萌歌)は依頼人の住菜々子(堀田茜)から医療過誤について相談されていた。父親が脳動脈瘤の手術を受けた2日後、くも膜下出血を起こして亡くなっていた。

病院側からの説明では、手術自体は成功したが、偶然発生したのだという。納得がいかない菜々子は病院を医療過誤で訴えたかったが、母親のさゆり(三浦純子)は反対していた。

宇崎がなんとか依頼人の力になりたいと奔走していると、桐石拓磨(及川光博)に病院で遭遇する。妻の綾(映美くらら)が手術のための検査入院をしているといい……。

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【イグナイト】8話のネタバレ

医療過誤を起こした疑いのある医師・河野は病院の看板医師だった。桐石は妻の手術を河野にしてもらいたく、宇崎たちが裁判を起こすことを阻止しようとする。

だが轟が説得し、綾を別の病院で手術させるから、手伝ってくれないかと頼んだ。

ようやく裁判が始まり、宇崎は事前に得た録音データを法廷で再生する。それは河野が部下の医師との会話で、医療過誤があったことやそれを隠蔽していることを示すものだった。そして裁判の結果、和解をすることになった。

綾は宇崎が知り合った医師・船木の紹介で、手術を受けることができて無事成功した。

未来を変える

轟謙二郎(仲村トオル)が吉野潤一(濱正悟)から聞き出したところによれば、事故を起こしたバスにはGIテクノロジーズのシステムが搭載されていたという。当時、同社はまだ小規模なベンチャー企業だったが、政府の後ろ盾を得て自動運転技術の開発を急いでいた。おそらく、早期にテスト走行を重ねたかったのだろう。自社の走行データが蓄積されればされるほど、システムの精度は向上するからだ。

政府からは破格の補助金が支給されており、同社の社長が政界と強い繋がりを持っているとも噂されていた。GIテクノロジーズはAI技術を中核に、自動運転車だけでなく病院の運用システムなど多方面に事業を展開していた。

そのGIテクノロジーズが関与している東亜病院では、先月医療過誤が発生し、遺族からの相談を伊野尾麻里(上白石萌歌)が受けていた。東亜病院は政治家御用達の病院として知られていた。

GIテクノロジーズの手がかりを得るため、今回の依頼はうってつけだった。

医療過誤問題

伊野尾と宇崎凌(間宮祥太郎)は、依頼人の住菜々子(堀田茜)から話を聞くため、喫茶店で面会した。

住によれば、今年の3月10日、父・高司()が東亜病院で脳動脈瘤の手術を受けたという。手術直後は元気そうだったが、2日後にくも膜下出血を起こし、58歳で亡くなった。病院側の説明では、手術自体は成功したものの、術後に治療部位とは異なる箇所で出血が発生したとされていた。

それでも住は、何が真実なのかはわからないが、ずっとモヤモヤが晴れないと語る。母・さゆり(三浦純子)にはこの話をしておらず、話せば反対されるだろうとも思っている。頭では理解しようとしても、父が亡くなった際に病院から告げられた言葉が、どうしても引っかかって離れないのだという。

病院からは体調の急変後すぐに検査を行ったが、治療部位とは異なる場所でくも膜下出血が確認された。運が悪かったとしか言いようがないと伝えてきた。

その説明は、まるでマニュアルを読み上げるかのように淡々としており、しかも執刀医の河野遼平(坪倉由幸)ではなく、別の医師・猪狩裕貴(野川慧)が対応していた。

喫茶店を後にした伊野尾と宇崎は、車の中でこの件について話す。伊野尾は「なんだか臭う」と疑念を抱いていた。宇崎も「事実はどうあれ、聞いていて腹が立つ」と憤りを露わにした。

担当医は看板医師

今度は高井戸斗真(三山凌輝)も同行し、宇崎たちは東亜病院を訪れた。手術を担当したのは、脳神経外科の医師・河野遼平。東亜病院では最年少で部長に就任した実力者だという。三人は院内で別行動をとり、それぞれ情報収集を進めることにした。

宇崎と伊野尾は、入院患者の林(相川裕滋)から話を聞く。林によれば、このあたりでは河野は「名医」として知られ、手術を受けたくても数ヶ月待ちが当たり前だという。河野はまさに東亜病院の看板とも言える存在だった。

その後、三人は再び合流し、得た情報を報告し合う。伊野尾は、河野医師が非常に人気で常に忙しくしていると話す。また、東亜病院ではGIテクノロジーズの運用システムが導入されており、これは院長の伊藤(直江喜一)の一存で決まったとのことだった。

ちょうどその時、偶然にも桐石拓磨(及川光博)が病院に姿を現す。

桐石の妻

桐石の妻・綾(映美くらら)が東亜病院に入院していることが判明し、宇崎たちは病室を訪れて紹介を受けた。綾は来月に予定されている手術のための検査入院中で、脳動脈瘤の診断を受けていた。執刀医は河野が担当する予定だという。しかし、宇崎たちは河野に関する疑念を抱えており、その件を桐石に伝えることはできなかった。

事務所に戻った宇崎は、轟とこの件について話す。綾と桐石は、かつて轟も勤めていた前の法律事務所で出会った仲だったという。轟は、桐石が昔から一貫して綾を大切にしていたことを振り返る。

そして、「友人としては綾さんに手術を受けて元気になってほしい。けど、河野って医師が宇崎のにらんだ通りの人物だとしたら……いろいろと複雑だな」と胸の内を明かした。

ぶつかる意見

宇崎たちは住の家を訪れ、母親とも話をすることになった。やはり母親は裁判に反対の姿勢を示した。

「お父さんのことは運命だったと思っているの。もうやめて、もういいのよ。私だってお父さんの死を受け入れようとしているの」と、静かに、しかしはっきりと語る母。

その言葉に、宇崎たちは返す言葉を失い、戸惑いながらも、その場では無理に説得することなく家を後にした

怪しい医師

宇崎は河野が登壇する医療シンポジウムに潜入し、会場の様子を静かに見守っていた。講演後、会場で出会ったのは医師の船木研二(伊原剛志)だった。彼からはカテーテル手術に関する、基本的な情報を教わることができた。

講演が終わると、船木はどこか冷めた口調で「学会なんて医者や病院の自慢合戦だよ。マウントの取り合い」とぼやいた。医者の世界では、難しい手術を担当することがステータスとされており、それが功績として認められる傾向が強いという。中には、自慢できる手術ばかり選んでやる医者もいると、皮肉交じりに語った。

宇崎が弁護士であることを明かすと、船木は脳動脈瘤に関する訴訟は非常に難しいと説明する。医者は自らの失敗を医療過誤とは認めたがらない。もしすべての手術結果が医者の責任とされたら、誰も手術をしようとは思わなくなるだろうというのが彼の見解だった。

それでも船木は、治療箇所と離れた部位で起きたくも膜下出血について、「運の悪さで起こることとは、ちょっとちゃうわな」と、静かに疑念を口にした。

最後に、宇崎は船木から連絡先を受け取り、その場を後にした。

関係者に聞き取り

宇崎はその後、東亜病院で待ち伏せし、手術に関わったとされる猪狩に声をかけた。住高司の手術について、何か証言を得るためだった。だが猪狩はカルテに書かれてる以上のことはわからない、と言い残してその場を去った。

一方その頃、伊野尾も院内で誰かを探していた。それに気づいた入院患者の林が声をかける。伊野尾は看護師の篠原杏菜()の写真を見せ、「この人を探している」と話す。林は写真の人物を見て、「オペ看だよ。手術専門だから、めったに見かけないんじゃないか」と答えた。

その後、宇崎と伊野尾は合流し、情報を整理する。住の手術に関わったのは、執刀医の河野に加え、後輩の猪狩医師、オペ看の篠原、放射線技師が2名、麻酔科医の計6名だった。この中の誰かから証言を得なければならないと、伊野尾は悩む。

「手術に直接関わった人間しか真実を知らない。だから、医療裁判って難しいんだな」――宇崎の言葉に、重い現実が滲んだ。

そこへ高井戸がやって来て、静かに一言、「一つだけ見つけた。ほころび」と告げた。

ほころび

トイレの中で、手術を終えた放射線技師の相澤健吾()と石田大輔(市原朋彦)が話をしていた。相澤は、「かなり強引にカテーテルを進めていた」とこぼし、さらに「フライトの時間が気になって、手術中もしっかり観察できていなかった」とも語った。

その会話は、偶然にもトイレを清掃していた清掃員に聞かれていた。そしてこの情報が、高井戸の耳にも入ることとなった。

報告を受けた伊野尾は、その発言が住高司の手術のことではないかと直感し、すぐに河野の手術当日のスケジュールを調べ始めた。

そして判明した事実に、宇崎は静かに怒りをにじませながら呟く。「やっぱりあいつら、隠してやがったな…」

再び説得

宇崎たちは、再び住の母親のもとを訪れ、話をすることにした。今回は高井戸も同行し、説得に加わった。娘の菜々子も、必死に母を説得しようと言葉を重ねる。

高井戸は静かに切り出す。「カテーテルを進める過程で、血管を損傷した可能性について、病院側から何か説明はありませんでしたか?」母は首を振り、「そんな話は一切なかった」と答える。高井戸は続けた。

「病院は、手術中に何か事故が起きていたのを、隠している可能性があります」

その言葉を聞いた母は、ふと何かを思い出したように口を開いた。「一つ、思い当たることがあるの」と。

手術の翌日、病院で夫と話した際、「なんだか頭が痛い」と夫が訴えていたのだという。術後の痛みかと思い、看護師にもそのことを伝えた。しかしその後、病院からは何の説明もなく、手術直後も「本人は元気だった」とだけ伝えられていた。

つまり、高司の術後に現れていた症状は、病院の記録から完全に無かったことにされていたのだった。

着火完了

宇崎は、真実を明らかにするために共に動いてほしいと住親子に呼びかけた。しかし、母・さゆりは医者相手に勝てるなんて思えないと不安を口にする。そんな中、高井戸が補足する。

「カテーテル手術では血管の撮影が行われている。河野医師なら、学会発表用に手術中の映像を保存している可能性が高い。その映像が手に入れば、真実に近づけるはずだ」宇崎は、静かに語りかける。

「お二人の思いを、俺たちに預けてくれませんか?『もう、いい』なんて言わないでください」

その言葉を受け、娘の住が母に向かって真っ直ぐに言った。

「お母さん。私、訴訟したい」

しばしの沈黙の後、さゆりは静かに頷いた。真実を求める闘いが、ついに動き出した。

ついに訴訟

東亜病院に、東京地方裁判所の執行官が姿を現した。医療裁判では、証拠保全の申し立てを裁判所に行うケースが多い。

通常、カルテや診療記録といった重要な証拠は病院側が保管しており、訴訟後にそれらが破棄されたり改ざんされたりするリスクがある。だからこそ、事前に証拠を押さえておく必要があった

執行官は院長のもとへ向かい、証拠保全の手続きが行われることを正式に告げた。そして伊野尾とともに、カルテや手術記録などの証拠提出を求めた。事態はついに、病院の中枢にまで踏み込む段階へと進んだ。

先回り

事務所に戻った伊野尾が、証拠保全の結果を報告した。手術中の動画は存在しなかったという。理由は「録画ボタンの押し忘れ」で、映像は一切記録されていなかった。

さらにカルテにも、術後に高司が頭痛を訴えていたという記載は見つからなかった。あれほどはっきりと母親が証言していた症状すら、記録上は“なかったこと”にされていた。

「なんか、先を読まれてるみたいだな」――高井戸が、思わずこぼす。

その頃、宇崎はある決意を胸に、桐石のところへ向かった。

対立

宇崎は桐石のもとを訪れ、怒りをぶつけた。「あんたのせいで、証拠保全の前に証拠を消されたんだぞ」と詰め寄る。しかし桐石は冷たく言い放つ。「悪いが、東亜病院の件は降りろ。もうすぐ妻の手術なんだ」

さらに、「正義を気取るのはやめろ」と言い放つ桐石に対し、宇崎は河野は医療過誤を隠してるかもしれないと、抑えきれぬ憤りをぶつける。

桐石は「お前は原告側の感情に引きずられているだけだ」と切り捨てるが、宇崎は即座にその言葉を返し、「あんたこそ、そうなんじゃないのか」と反論する。追い詰められた桐石は、珍しく声を荒げる。

「だったらどうした。綾の手術は高難度だ。頼める医者なんて数えるほどしかいない。こっちはもう時間がないんだ。部外者は黙ってろ!」

しかし宇崎は怯まず、「俺は部外者じゃない。だから黙りませんよ」ときっぱりと告げた。そして、「まだ方法はあるはずだ」と食い下がった。

その後、宇崎はある決断を下す。最後の望みをかけ、船木に連絡を取ってみることにした

2人の思い出

桐石は病室で綾と向き合っていた。綾はすでに桐石の様子の変化に気づいていたようで、静かに言葉を口にした。

「ごめんね、こんな体になっちゃって。仕事、忙しいのに……」

桐石は首を振り、「気にするな」と優しく応じる。すると綾は、少し冗談めかしながらも真剣な表情で言った。

「私がいなくなっても、再婚とか気にしないでね。……死んだら言えないから、先に言っておくの」

その言葉に桐石は言葉を返せず、ただ見つめ続けた。

綾は話を変えるように、ふと思い出を語る。「もし手術がうまくいったら、新婚旅行のリベンジしたいな。オーロラ、見に行きたい」

かつて二人でオーロラを見るはずだったその日、綾は風邪をひいて寝込んでしまった――そのことを、綾は少し笑いながら、けれども切なげに語った。

突破口

宇崎は居酒屋で船木と再会し、これまでの経緯を語った。手術映像が「録画ボタンの押し忘れ」で残っていなかったという病院側の説明について、船木は即座に嘘だと疑念を示した。そして船木は問いかける。

「それでも裁判、続ける気か? お前の仲間は手術を待ってるんやろ?」

宇崎はゆっくりと、だが強い意志を込めて答える。

「患者って、すがるしかないんですよ。当たり前ですけど、手術って本人や家族にできることは何もない。目の前のドクターだけが運命を握ってて、患者側はそれにすがるしかないんです。だから、そんな気持ちを裏切るような人間がいるとしたら……俺は許せないです

その言葉に、船木は「それがお前の“正義”っちゅうやつか」と静かに返す。そして、真実にたどり着く方法があるとすれば――それは手術に直接関わったメンバーの中にいると示唆する。

宇崎は「でも、そう簡単に口を割るとは思えませんよ」と弱音を吐いた。だが船木は笑って首を振る。

「お前、医者のことをまだわかってへんな」

船木は言う。医者の世界は、常に妬みや嫉みが渦巻いている。河野は“看板ドクター”として君臨し、その下にいる医師たちは何をやっても功績を横取りされる。そうした構図のなかで、下にいる者たちは、いつか上が失脚するのを待っているものだ――と。

そして最後に、船木ははっきりと言った。

「つまりやな。唯一、突破口があるとしたら……河野のすぐ下の医者やで」

それは――猪狩のことだった。

約束

轟は綾の病室を訪ねた。静かに見舞いの言葉を交わした後、「ちょっと」と桐石を呼び出し、病室の外で二人きりの会話が始まった。

「綾さんの様子は?」と尋ねる轟に、桐石は少し緊張した面持ちで答える。

「今、手術しないと危ない状態だって言われてる」

その言葉を聞いた轟は、「そうか……」と、短く答えた。

そして意を決したように言葉を続けた。「裁判が始まる。俺も正直、あいつらを止めるべきか迷ってた。でもな……」

轟はまっすぐに桐石を見据え、こう告げる。

「綾さんのことは、俺たちに任せてくれないか?綾さんは絶対助ける」

一瞬、桐石は黙っていた。轟はさらに一歩踏み込む。

「……その代わりと言っちゃなんだが、一緒に動いてくれ」

それは、友人としての真摯な願いだった。

裁判開始

裁判がついに始まった。傍聴席にはさゆりが静かに座り、緊張した面持ちで菜々子の証言を見守っていた。原告として法廷に立った娘に対し、高井戸が尋問を行う。

父が亡くなった原因について、菜々子は手術が原因だと思っていると話す。当初、病院からは手術は成功したと聞いた。亡くなった後、病院からの説明は「偶発的なもので、運が悪かった」というだけだった。

それでも自分たち素人は、医師から言われたことを信じるしかなかったと話す。そして最後に高井戸がもしミスだったとしたらどう思うかを問う。菜々子の声はわずかに震えていたが、言葉は揺るがなかった。

「父は、なぜ死ななければならなかったのか。残された母の気持ちを思うと……許せません」

被告人への尋問

続いて、伊野尾が証人席の河野に対する尋問を行った。通常カテーテルではしない手術を、なぜカテーテルで行ったのか?それは術例を増やすためではなかったのかと。だが、河野はあくまで患者にとって最善の方法だったと主張した。

続いてくも膜下出血が起きたことに触れる。河野は手術自体は成功しており、因果関係はないと主張した。

その頃、傍聴席にはいつの間にか船木の姿もあった。彼は黙って、法廷のやりとりを見つめていた。

伊野尾は問いを重ねる。「では、手術中に血管を傷つけたという事実は?」

河野ははっきりと否定した。

「そんな事実はありません。カルテにも、そういった記録は一切ありません」

証言は淡々と進められていくが、その背後には静かな緊張が満ちていた。

新たな証拠

法廷の空気が張り詰める中、宇崎が一歩前に出て、音声データの再生を始めた。「これは猪狩医師から預かった音声です」と前置きしながら。

そこに流れたのは、河野と猪狩の密室での会話だった。

「……何も喋ってないだろうな?」と、河野が念を押す。

「でも、あのときカテーテル、結構強引に進めてましたよね。あれで血管解離が起きた可能性は……」と、ためらいながらも指摘する猪狩。

それに対し河野は冷静に、しかし明確にこう言い放つ。

「そんなこと、患者や家族にはわかりっこない。俺たち医者にしか判断できないんだ。それに頭痛を訴えた記録も、看護記録からは消してある」

音声が止まり、静寂が戻った。

宇崎は河野に一歩近づき、「これは……どういうことでしょうか?」と鋭く問い詰める。そして、耳元でささやいた。

「夜道と野心ある部下には……お気をつけを」

その一言に、河野の表情が微かに揺らいだ。

宇崎は船木に相談した際、猪狩を自分の病院に受け入れるという話を聞かされる。船木が差し出した名刺には「京華病院 院長」の肩書き。宇崎は思わず目を見開く。

この話を武器に、宇崎は猪狩に河野との決別を持ちかけたのだった。そしていま、猪狩はついに決断し、真実の一端を暴露したのである。

医療過誤を追及

宇崎はさらに河野を追及する。手術が行われた3月10日に、福岡で脳神経外科の大きな学会が開かれていた。河野はそこで大事な発表を控えていた。手術中にもフライトの時間まで、「あと何分あるか」をきいていたという証言もあった。

「本当は、カテーテルを進める過程で、血管を損傷した感覚があったのではないですか?しかし、時間に追われていたあなたは、経過観察をせずに手術を切り上げた」

河野は無言のまま、視線をそらす。宇崎の追及はさらに続く。高司が手術後、頭痛を訴えているという報告を受け、河野は病室を一度も姿を見せていないと、同じ病室の患者から確認を取っていた。

術後の看護記録もスマホを確認しただけで、実際に検査の指示もしていなかった。それにもかかわらず、遺族には「手術は成功したが、離れた箇所でくも膜下出血が起きてしまった」と説明していた。

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裁判の結果

宇崎の追及はさらに鋭さを増していく。河野ほどの医師なら、その傷からくも膜下出血が起こることは予見できたはずだと。静まり返る法廷の中、宇崎は厳しく問いかけた。

「自らの名誉を優先するばかりに、患者の命という最も大切なものを、置き去りにしていたのではないですか?」

そして、核心に迫る。

「通常できていた処置と対応をしていれば、住高司さんは、今日も元気に生きていたんじゃないですか?」

その言葉に、見守っていた娘は涙をこぼした。

「何か、反論があるならどうぞ」宇崎の言葉に、河野は沈黙したまま、視線を落とした。言葉は、もう出てこなかった。宇崎はさらに医師の管理をするはずの、病院側にも問題はあると指摘した。

やがて裁判長から、和解を視野に入れた提案が出された。賠償金と病院側の謝罪があるなら検討すると、高井戸は応じた。

同じ思い

裁判を終えた後、法廷で宇崎は船木と静かに言葉を交わしていた。

「今、医師の世界に対して俺が憂いてることをやな、ぜ~んぶ、お前が法廷でぶつけてくれたわ」

そう言って、船木はどこか晴れやかな表情で宇崎に感謝を伝えた。

実は例の学会で船木は「医師の倫理観」について警鐘を鳴らしていたという。術例ばかりを追い求め、患者と向き合うことを忘れている医師たちに対して、船木は危ぶんでいた。

その信念と、宇崎たちの戦いが重なったのだ。「手術のことは任せておけ」船木は綾の手術の成功を約束した

守れた正義

手術当日、病院に戻ってきた桐石は、綾の手術が無事に終わったと知らされ、安堵のあまり静かに涙を流した。眠る綾の傍らでは、轟たちが見守っていた。医師の話によれば、来週には退院できる見通しだという。

その様子を見ながら、伊野尾が感心したように言った。「宇崎の友達、すごいね。数ヶ月待ちの名医を、すぐに手術してくれるなんて」

「やっぱ持つべき友は、医者と弁護士か」と、高井戸がぼやくように呟き、場が和んだ。

轟は微笑みながら言った。「どっちの正義も、守れたな」

その後、病院の外に桐石が宇崎を呼び出した。人目のない場所で、桐石はゆっくりと口を開く。

「すまなかった。俺が間違ってた。弁護士としても、人としても。綾のこと……いや、自分のことしか考えてなかった」

その言葉に、宇崎は首を横に振って応える。

「うらやましいっすよ。それだけ桐石さんが、綾さんを大事に思ってるってことですよね」

そして、少し茶化すように笑った。

「俺も、そんなふうに想える人を見つけたいっす。……ごちそうさまです」

二人の間に、静かな和解の空気が流れていた。

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【イグナイト】8話の結末

浅見涼子(りょう)が事務所を訪ねてきた。轟は今回の病院の件で、本丸に一歩近づけたと手ごたえを感じていた。そして改めて5年前に起きたバス事故についてまとめる。

バス事故が起きた当初、表向きには運転手が薬を飲んで、その副作用で運転操作を誤ったことが原因とされていた。だがそのバスには、GIテクノロジーズの自動運転システムが搭載されていた。走行中何らかのエラーを起こし、バスは突然暴走した。

その後、GIテクノロジーズは政府の後ろ盾を得て、自動車技術では国内有数の企業に成長した。その大株主は石倉の妻が代表を務める会社だった。続けて桐石が話す。

「東亜病院にGIの運用システムを導入させたのも、石倉の“お願い”だったと院長が証言した。和解をちらつかせて、全部吐かせたよ」

さらに、GIテクノロジーズは近々上場を狙っていた。会社の評価が上がれば上がるほど、株主である石倉の側に莫大な利益が流れる構造になっていた。だからこそ、石倉は国交大臣時代から巨額の補助金を注ぎ込み、開発を急がせていた。

「だが、そんな矢先にあの事故が起きた。計画が潰えるのを恐れた石倉は、派閥の後輩でもある湊市の音部市長に手を回した」

事故の責任を自動運転ではなく運転手の個人責任にすり替え、闇に葬るよう仕向けたのだ。警察もその片棒を担ぎ、事故をなかったことにしていた。その件については浅見が現在追っていた。

浅見は本当にやるのか轟に尋ねる。轟は一瞬の沈黙の後、力強く答えた。

「ああ。争いは、起こせばいいんだよ」

その声には、覚悟と決意がにじんでいた。

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【イグナイト】8話のまとめと感想

病院ぐるみで事故を隠蔽しようとしていたところ、別の医師を焚き付けて、医療過誤の証言をさせたという話でした。

今回は桐石の過去の話が少し出てきます。妻の綾が手術を受けることになり、執刀医が医療過誤で訴えられそうになると妨害します。桐石が愛を優先して正義を曲げたみたいな展開の話になるのですが、そもそも医療過誤の疑いがある医師に手術してもらうほうが怖くないのか?

結果的に綾は宇崎の人柄のお陰で、別の優秀な医師に手術してもらえました。この時高井戸は持つべき友は、弁護士と医者だと言います。しかし、本当に持つべきものなのは、宇崎のような誠実さなのだろうと思います。それこそあらゆる方面から、手助けしてもらえる可能性があります。

次回は轟の過去の話になるようです。そこから裁判になり、最終回へ繋がるのか?

【イグナイト】8話のいいセリフ

物事をどうみるかによって、未来は変わるってことだよ。

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