ワールドとは?
そしてもう一つの衣料ロスに挑むのが、アパレルメーカーのワールドです。どんな会社でしょうか?
- 社長:上山健二氏
- ブランド数:55
- 店舗数:2530店舗
アンタイトル、インディヴィ、タケオキクチなどを主に展開しているメーカーです。2015年に経営建て直しのため、創業家以外の社長として長崎屋の社長やぐるなびの副社長を歴任してきた、上山氏を迎えました。
そのため、従来どおりの経営ではなく、衣料ロス問題にも目を向け始めたのだと思います。上山氏はこのように語ります。
供給過剰を適正化していく動きは必ず出てくる。やらなければいけないこと。
衣服ロスをアパレルブランド側からなくしていこうと、取り組み始めました。
アパレルブランドの問題
ショーイチのところでも語っていましたが、ブランド側がキャンセルなどをすること、しかも廃棄を命じるという問題がありました。なぜブランドはこういう状況を生み出してしまうのか?
- 半年前に発注しないと間に合わない
- 定価で売れる数の倍を発注する
- 100%店頭で売れるとは思っていない
- 常に店頭に商品を揃えるため、在庫を抱える必要がある
まず、気候が読めないため、暖冬だったらコートは余るし、冷夏だったら半そでは売れません。そういった予想が難しい商売をしているのが第一の原因です。
さらに、店頭に商品がなくガラガラだと物が売れないため、売り切れない数をあえて作っているということです。
そこで、ブランド担当者の星洋輔氏に、余剰在庫をゼロにするのは難しいか?と聞きました。この言葉は、業界に携わっている人が言うため、非常に説得力があります。
ワールドの挑戦
ワールドが取り組んでいる衣服ロスをなくすためにやっていることは、以下の2つです。
- オーダーメイドスーツでロスをなくす
- 在庫を格安で販売する店舗を出店
アンビルド タケオキクチとは?
番組では神戸製鋼ラグビーチームのチームスーツをこちらで作ります。スーツは人の数だけ形が違うため、既製品を売る場合は大量に色々な形を用意しないとなりませんでした。それが、衣料ロスに繋がります。
しかし、このアンビルド タケオキクチは、すべてオーダーメイドとなります。組み合わせはなんと約5億通りです。1着3万9000円から作ることができ、タブレットで簡単に色や形を選んでいくので完成形のイメージが分かりやすいです。
&Bridgeとは?
ワールドが昨年9月にオープンさせた新業態の店舗です。全商品が30%~90%で販売されており、ワールドを中心とした人気ブランド服がすべて新品で販売されています。
社長の松下剛氏の話をまとめますと
- 在庫1万2千点ほど
- 2ヶ月ですべて売り切る
- 余剰在庫だけを販売
- 5年で30店舗、10年で100店舗が目標
- 賛同してくれた企業と取り組んでいこうと考えている
アウトレットと同じでは?と考えたくなりますが、アウトレットは余剰在庫だけでは商品が揃えられず、アウトレット用の商品を作っています。
アンドブリッジでは製造は一切しません。その代わり他社の商品も置いて商品を揃えているとのことです。
ここで、疑問点が出てきます。
- 余剰在庫を最終的になくすのが目標なのに、なぜ店舗を増やすことを考えているのか?
- 他社のブランドが7割では、ワールド中心の店ではないのでは?
衣服ロスをなくすという、本来の目的を見失っているように感じます。しかし、今ある衣服ロスをどうにかしようという、気概は感じました。
【ガイアの夜明け】余った服の行方のまとめ
アパレルブランド側との取り組みと、余剰在庫を買い取って販売する側の取り組みが紹介されました。
そのどちらも、今そこにある問題に目を向けるという意味では良いと思います。しかし、根本的な改善にはいたっていません。
今回紹介された中で一番可能性を感じたのは、アンビルドタケオキクチです。これは本当にロスが出にくい取り組みだと思いました。
逆に本末転倒になってそうなのが、ショーイチのデニム生地を買い取ってジーンズを作るというものや、アンドブリッジという店舗の話です。
なぜなら、ジーンズを作って余ったらどうするのか?ということと、衣料ロスを目指すのに、店舗拡大する理由は?という疑問が浮かびました。
ワールドの社長上山氏が言っていた、“供給過剰を適正化していく”が効果的な改善策です。コントロールしないで商品を供給することは、またロスに繋がる可能性があると思いました。