【相棒シーズン23】15話「キャスリング」のネタバレと感想をまとめています。
道に迷った右京が入った山荘でチェスをすることに。対戦相手は15年前に妻と娘を殺害された被害者遺族だった。慎重に手を進めていく右京だが、相手はいくつもの罠を張り巡らせていた。今シーズン屈指の見ごたえのある回です。
【相棒23】15話のあらすじ
右京とチェスをする相手は、15年前に「高円寺母子殺害事件」で妻と娘が殺害された奥田剛(佐野史郎)だった。奥田は事件当日のアリバイがないことから、一時容疑者として警察に取調べを受けていた。
だが、事件現場の遺留品にあったDNAと違ったため、警察は奥田が事件前に見たという不審人物を容疑者として追う。だが、現在も犯人は逮捕されず、未解決事件のままだった。
チェスをしながら右京は事件の話をし、奥田の証言の裏取りを亀山に指示する。しかしそれは、奥田の仕掛けた罠で……。
【相棒23】15話の見逃し配信
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【相棒23】15話のネタバレ要約
15年前の事件の日、奥田は忘年会が延期になったことで、久しぶりに独身気分に浸ろうと、家にすぐ帰らなかった。その結果、妻子が何者かに殺害されてしまう。
奥田はあの日すぐに戻らなかった自分が、妻子を殺したようなものだと激しく自分を責め、やがて自分が犯人のように思い込んでしまう。
現実逃避した奥田は、ずっと保険金で手に入れた山荘に住んでいると思っていたが、現実はアパート暮らしだった。
伊丹たちは捕らえた犯人に面通しをしようとするが、奥田は現実逃避したままで難しかった。そこで右京がチェスをしながら、奥田の発言の矛盾点を探して現実へ引き戻す。
ようやく現実を受け入れた奥田は面通しに応じ、事件は解決した。
【相棒23】15話の詳細なネタバレ
15年前の未解決事件
杉下右京(水谷豊)は山荘でチェスをしていた。キャスリングとは王の入場を意味し、右京は堅く守る相手に手こずっていた。道に迷ったという名目で山荘に来ていたが、彼の目的はある事件についての被害者遺族に会いに行くことだった。
その事件は、2010年12月28日に杉並区高円寺で発生した殺人事件で、被害者は3人家族の母親・奥田美奈(鎌田麻里名)とその娘・菜々美(近藤麻衣愛)だった。2人は鋭利な刃物で刺されて亡くなっており、死亡時刻は午前0時と推定されている。凶器は見つからなかったが、遺体から出刃包丁の破片が発見され、銘柄まで特定された。現場には犯人のものとおぼしき遺留品がいくつも残され、DNAも検出されたが、15年経った今も未解決のままだった。
事件発生時、偶然外出していたことで難を逃れたのは第一発見者でもある父親、奥田剛(佐野史郎)だった。奥田は被害者側でありながら、警察の取り調べを受けていた。事件の夜、奥田は忘年会に行く予定だったが、幹事の手違いで予約ができていなかったため、会自体は年明けに延期された。しかし奥田はすぐに家に帰らず、終電間際まで一人で街を散策していた。その間、証言する人物はおらず、防犯カメラにも姿は映っていなかったため、捜査上ではアリバイがない扱いとなっていた。
アリバイ確認
事件の5日前、12月23日に自宅付近で不審な男を目撃したと奥田は証言していた。犯人の遺留品から検出されたDNAは奥田のものと一致しなかったため、捜査本部はその男を第一容疑者として捜査を進めたが、逮捕には至らなかった。
右京は遺留品に囚われすぎたことが、捜査の誤りだったと考える。凶器を持ち去ったにもかかわらず、その他の遺留品を現場に残していったのは不自然だ。むしろ、捜査を撹乱するために、どこかから盗んできたものを意図的に置いていった可能性がある。もしそうなら、DNAの照合も無意味となる。
15年の間に技術が進歩し、防犯カメラの映像もAIで鮮明化されるようになった。事件現場と同じ沿線の荻窪には、凶器と同じ型の包丁を販売していた金物店があった。当時、その向かいの防犯カメラに店内で、包丁を物色する男の後ろ姿が映っていたが、彼は買わずに店を去ったため、当時の捜査では特に追及されなかった。しかし、先日映像の鮮明化によって、実は男が包丁を万引きしていたことが新たに判明した。
包丁が万引きされたのは12月24日の午後3時頃。その時間、奥田がどこにいたのかを尋ねると、彼は仕事先にいたと答えた。当時、奥田は個人事業主として電気工事を請け負っており、築地のウミマル水産という会社にいたと主張した。
第一の罠
右京は亀山薫(寺脇康文)にアリバイの裏取りを頼み、スマホでメッセージを送る。亀山はウミマル水産に向かい、美和子(鈴木砂羽)は奥田の写真を見た後、調べて高円寺母子殺害事件の父親であることを亀山に伝える。美和子は、一時容疑者として疑われていたことを思い出し、右京が調べ直しているのは何かあるかもしれないと考える。
亀山は写真を会社の人に見せて尋ねるが、当時の関係者はほとんど残っていなかった。すると奥田が、倉庫係ならまだいるかもしれないと助言する。亀山は勝手に倉庫の冷凍庫を開け、マイナス70度の中に入ってしまう。その後、午後4時に冷凍庫が閉まる時間になり、亀山は閉じ込められてしまう。奥田は「大事な駒を失ったな」と冷たく言う。
危うく右京は奥田の罠にはまりそうになるが、なんとか踏みとどまり、亀山が実際には冷凍庫に入っていなかったことを確認する。奥田は12月24日に築地にいたと言っていたが、当時の事情聴取では横浜にいたと証言していたことを指摘され、「なぜ嘘をついたのか?」と問われるが、奥田はとぼけてごまかした。
第二の罠
右京は奥田に、12月23日に自宅周辺で見かけたという男について再度話してくれないかと頼む。奥田はチェック柄のマフラーと手袋、そして手の甲に牙のようなマークがあったことを話す。右京はその話を聞いた後、一旦席を外し、亀山に電話してマフラーと手袋について調べるように頼む。
マフラーが「strand(ストランド)」というブランドで、イギリスのメーカーであり、日本には唯一の代理店があること、そして手袋に関しては手の甲に牙のようなマークがついていると伝えられ、すぐにミリタリー系の店に向かう。店長の田中(大窪晶)に話を聞くと、その手袋はこの店でしか扱っておらず、20年前から現地で買い付けており、どうしても欲しいという常連がいるため、購入した客は全員わかるという。
亀山は奥田が事件で、保険金を手に入れたために山荘を購入したことを明かす。その後、マフラーの店を訪れ、確かにその店でしか取り扱っていない上、柄は限定品で顧客リストまで存在することを確認。しかし、マフラーと牙の手袋両方を購入した人物は、リストにいなかったことを右京に報告する。
その後、右京は奥田が話していた服装の詳細が、証言にないことを不審に思い、マフラーは新聞の広告、手袋は雑誌の表紙に載っていた人物がしていたものだと気づく。つまり、奥田は目にしたものを適当に挙げていただけだと判断し、なぜそんな嘘をついたのかを問い詰める。右京は奥田自身が矛盾に気づいているからではないかと指摘する。
奥田は「俺は、家族を持つべき人間じゃなかった」とつぶやき、右京はその言葉に反応し、犯人だという証明が可能かを問う。奥田は殺害現場の家の裏手にある、古いビルの屋上に給水タンクがあり、その上に凶器を隠したと供述。亀山が裏を取りに行くが、はしごが外れて落ちてしまう。
右京はこの手はまずいと気づき、別の手を指すことに決める。実際は亀山は現場に行っていなかった。
第三の罠
右京は亀山に事件当日の、奥田の行動を追うよう指示を出す。亀山はまず、奥田が12月28日に一杯だけ飲んだという店に向かい、店主の中野(岩田丸)に写真を見せて話を聞くが、店主は覚えていないと言う。しかし、居合わせた客の小谷(真田幹也)がその場で話し始める。小谷は彼女との結婚を祝して店で乾杯をしたとき、一人だけ知らない客がいたことを覚えていた。
右京が奥田に裏が取れたことを伝えると、奥田は共犯者がいると思っているだろうと指摘する。その可能性もあると言いながら右京はある住所を挙げ、亀山にその場所に行くよう指示した。右京はずっと奥田の話の矛盾点を探していたのだった。
亀山がそのアパートに向かうと、誰もいなかった。部屋の中には被害者親子の写真と、行動を把握していたかのようなメモが見つかる。亀山はそのことを右京に伝える。すると、亀山が床に広がる水溜まりに足を踏み入れて感電を起こしてしまい、右京が電話で呼びかけても答えがなかった。
しかし冷静に振舞う右京に奥田は「なぜそんなに暴きたがるのか?」と尋ねる。右京は「どんなに目をそむけたいことであっても、真実と向き合うべきだと思うからです」と答える。奥田は「その結果、相手を地獄に突き落としてもか?」と問い、右京は「ええ」と答える。
すると奥田は引き出しから包丁を取り出して立ち上がり、右京の腹を刺した。
現実逃避
だが実際は右京も亀山も死んでいなかった。右京は静かに言う。「何度想像と現実を行き来したことでしょうか、あなたの城を崩すために」奥田はうろたえ、「さっき死んだはず」と動揺するが、右京は冷静に囁く。「あなたは家族を殺そうと、その機会をうかがっていた」
右京はさらに説明を続ける。「凶器は足がつかないように万引きし、捜査を撹乱するための遺留品を手に入れ、事件当日、予定がキャンセルになったのを幸いに、自宅に戻り犯行に及んだ。そう、思い込んでいる。しかし、ほんとうのあなたは……」
奥田は過去を振り返るように語る。あの日、娘の欲しがっていたクリスマスプレゼントを探しに「おもちゃを探し回っていた」それが本当の行動だったと感じた瞬間、右京は奥田が凶器を万引きしたと言っていた日、その時にアリバイがあったことを示唆する。
事件当夜、予定が変わった奥田は、独身時代によく行った場所を巡っていた。家族を持つ前の自由を思い出してみたくなった。しかしその結果、妻子が殺されてしまった。
悲しい現実
気づくと、奥田は特命係の部屋にいた。右京と奥田はずっとここで話していたのだ。亀山はアパートの写真を見せ、奥田に「あなたの住んでいるアパートです」と教えるが、奥田はそれを否定し、自分の家は保険金で買った山荘だと主張する。
奥田は確かに家族に生命保険をかけていたが、「家族は死んでないから」と保険金の受け取りを拒否していたことが明かされる。事件の後、奥田は元の家の近くに一人でアパートを借り、ずっとそこに住んでいた。
子供を朝送るための時間や、仕事の帰りに寄るスーパーの特売の時間が記されたメモがあった。奥田が事件の前に毎日やっていたことだった。
右京は奥田に説明し「あなたは犯人ではない。今日は面通しのために呼ばれたんです」と伝える。AIによる防犯カメラの鮮明化で、有力な容疑者が浮上したという。伊丹憲一(川原和久)たちが近隣を徹底的に聞き込みした結果、容疑者にたどり着いた。
リビングから見たという男と同じ人物ではないかと、伊丹たちが奥田に確認を求めるが、奥田は「俺が犯人だという証拠がどこにある!」と叫び、捜査に協力してもらうことが難しいと判断される。
事件の真相
右京は奥田に語りかける。「頭の中で何かを思い浮かべ、また元の場所に戻って来る。だから我々は元の場所が現実だと認識します。しかしある時、その元の場所が別の場所に変わってしまっていたら、我々は一体どの場所を現実だと捉えるのでしょう。果たして戻ってこられるのでしょうか?」
「現実を受け入れられなかったあなたは、そうやって想像の山荘へ行ったきりになってしまった。そして15年という歳月は、その場所を城のように堅固なものにさせた」と右京は続ける。
奥田は自分の心を守るために、チェスの駒のように理屈を重ねていた。自分が帰らなかったから家族が殺された。自分が殺したようなものだ。犯人は自分だ。「やがてついに、犯人のように振る舞わなければならないと」と亀山が言うと、右京はその矛盾点を見つけ出し、無実を証明しようとしていた。
そして、奥田が破れた写真の反対側を指さしながら「こっち側に犯人が写っていた。そいつは家族を疎ましく思うような最低の人間だ。だからあんなことが…」と憤るが、亀山が破れた切れ端を置くと、そこに写っていたのは奥田自身だった。
「長い生活の中でふと、独身生活を懐かしむことぐらい、誰にだってあることじゃないですか。それをそんなふうに…」と亀山が語る。そして「本当のあなたはずっと、家族を大事にしていたんでしょう?だから今でも…」と諭す。
「何一つ、悪いことなどしていないにもかかわらず、ある日突然、見ず知らずの誰かの悪意で全てを奪われてしまう。これ以上不条理なことはありません。受け入れがたい現実だったと思います。その上で…その上で言うのですが、捜査にご協力願いませんか?」と右京がお願いすると、奥田は「やめろ!何も見たくない!」と叫ぶ。
再び奥田が目を開けると、そこは山荘だった。亀山が「奥田さん」と声をかけながら首を横に振る。すると、再び特命係の部屋に戻ってきた。
右京は立ち上がり、奥田に向かって言う。「あなた自身のためでなく、あなたのご家族とこの世界から一つ未解決事件を終わらせるために」そして特命係を出て、面通しへ向かう奥田を見送った。
【相棒23】15話の結末
取り調べ室では犯人が動機を自供する。奥田の妻とケーキ屋の前で、ぶつかりかけたことがきっかけだったと話す。「私には守るものがあるんだ」というような相手に、イラっとしたと振り返る。「守るものがあって何が悪いんだよ」と芹沢慶二(山中崇史)は反論した。犯人はその後、旦那がいない日を確認し、凶器の包丁と遺留品に見せかけるカバンを盗んで、事件当日、押し入ったことを認めた。
面通しを行う奥田。出雲麗音 (篠原ゆき子)は辛い中、協力してくれた奥田にとても感謝し、奥田も「あんな話にずっとつきあっていただいて」と謝意を表しながらその場で崩れ落ちた。
その後、右京はこてまりで話し、事件が解決したことを報告する。小出茉梨(森口瑤子)は言う。「その方も誰かに話したかったのかもしれませんね。矛盾を解き明かして終わらせてくれる誰かに」と。「自分のためだけではなかったと思いますよ。家族を奪われた現実と再び向き合うことが、どれほどの痛みだったか……感謝しかありません」右京は静かに語った。
【相棒23】15話のまとめと感想
右京との対話で、ようやく現実と向き合うことができた被害者遺族が、面通しをして犯人逮捕に協力したという話でした。
今シーズンは12話「細かいことが気になる患者」と13話「レジリエンス」、そしてこの「キャスリング」と秀作続きです。この回は特に印象に残ることとして、タイトルからいきなり始まるかなり珍しい回です。
現実と夢、または妄想の区別が曖昧なまま進み、オチで分かるという海外のホラーやサスペンス、SFなどでは時々見る手法です。それを佐野さんが演じるので、映画のように非常に見ごたえのある面白い回です。夕方の再放送も多そうな、語り継がれる回の1つだと思います。
なので、難解に感じますが、今回の話は最後を曖昧にせずちゃんと終わるので、どれが現実か妄想かは明確に分かります。実際は亀山も右京さんも、何の被害も受けていません。
あまりにショックで現実を受け入れられず、そのまま15年間逃避して生きていた奥田ですが、ようやく犯人が捕まることで現実に戻ります。その現実がたとえ地獄だとしても、右京さんは目を背けるべきではないと向き合わせました。
そんな切ない回ですが、花見に向けて練習中なのか、「日本代表、美和子ブルー。食べなければならない戦いが、そこにある」と亀山の名セリフが生まれる回でもありました。
どんなに目を背けたいことであっても、真実と向き合うべきだと思うからです。