【相棒シーズン23】9話「最後の一日」のネタバレと感想をまとめています。
ニュースキャスターの娘が何者かによって誘拐される。生放送中に犯人は様々な指令を出してきた。番組は放送事故レベルの大混乱に!犯人の狙いは一体何なのか?右京と亀山が事件解決に奔走すると……。
【相棒23】9話のあらすじ
ニュースキャスターの桧山弘一(高島政伸)の娘・結愛(中村千歳)が、何者かに誘拐される。桧山は以前から番組でカジノ誘致を反対し、そのせいで賛成派の反感を買っていた。中でも「ジョーカー」と呼ばれる反社が背後についているという団体が桧山を目の敵にし、自宅のガレージのボヤ騒ぎも起きていた。
楽屋に届いたファンレターに紛れ、ジョーカーから娘を誘拐したという声明文が届く。年末特番の生放送が控えている桧山だが、犯人は桧山のスマホに逐一指示を送るという。
一方、杉下右京(水谷豊)は陣川公平(原田龍二)とショッピングモールに来ていた。そこで子供を捜している桧山真紀子(大村彩子)と遭遇し、一緒に捜索を手伝う。しかし夫からの電話を受けた真紀子は、娘は自宅に帰っていたらしいと言って帰った。右京は違和感を覚えて陣川に真紀子の尾行させた。
その頃、亀山薫(寺脇康文)は伊丹賢一(川原和久)と益子桑栄(田中隆三)と一緒に、警察学校同期の澤田菜穂(櫻井淳子)の自宅を訪ねていた。だが紹介された夫はどこか様子がおかしく、菜穂も何かを訴えたい様子だった。
やがて始まる放送。犯人が桧山に送った指示は、不倫を告白しろという指示だった。娘を人質にとられていた桧山は、生放送で自身の不倫を話し始める。すると現場は大混乱するが、プロデューサーは番組を構わず続行する。
犯人の狙いは一体何なのか?右京と亀山が真相を探るため、奔走すると……。
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【相棒23】9話の見逃し配信
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【相棒23】9話のネタバレ要約
伊地知義弘の性被害に遭っていた山本ひかりは、告発をしようと音声データが入ったUSBを取りに施設に戻る。
するとそこにいた、伊地知の秘書の大田原に首を絞められてしまう。そこにひかりから助けを求められてやってきた、兄の柘原彰が現場を目撃した瞬間、土砂が流れ込んでひかりと大田原は死亡する。
土砂災害の現場に来た桧山弘一は、偶然あのUSBを手に入れる。ひかりの恋人だった武部友和は、それを知りきっと公表してくれると思っていたが、公表するのではなく伊地知を脅して、政局がらみの特ダネをもらいスクープを連発した。
ひかりの復讐をするため武部は桧山に付き人として近づき、柘原は秘書として伊地知に近づいた。武部は生放送で社会的に桧山を抹殺し、柘原は伊地知を狙撃しようとした瞬間、右京たちが間に合って取り押さえられた。
陣川がプロポーズをしようと思っていた相手は実は柘原の恋人で、彼女は柘原を止めるため、出産間近の体にも関わらずずっと思い出の喫茶店で待っていた。産気づいたところを麗音に助けられ、無事出産した。
【相棒23】9話の詳細なネタバレ
誘拐事件発生
12月31日。年の瀬の冷たい空気の中、甲斐峯秋(石坂浩二)は隣の社美彌子(仲間由紀恵)に視線を向けた。手渡されたのは、市民合唱団のチラシ。こてまりの女将・小出茉梨(森口瑤子)からもらったものだという。亀山美和子(鈴木砂羽)や女将たちも合唱団に参加していた。新年を迎える準備をする街の喧騒を感じながら、甲斐は車内の静けさの中で一言感想を漏らした。
一方、陣川公平(原田龍二)は杉下右京(水谷豊)を伴い、ある目的のために指輪を買いに行った。店のショーケースを前に陣川の顔は明るく、これからの未来を期待するような笑顔だった。しかし、右京は少し心配そうだ。「早合点なのではありませんか?」と問いかけるが、陣川は今度の相手は大丈夫だと断言した。「もうすぐ赤ちゃんも生まれるんですよ」と、嬉しそうに付け加えた。
その頃、亀山薫(寺脇康文)と伊丹賢一(川原和久)は益子桑栄(田中隆三)と共に、警察学校同期の澤田菜穂(櫻井淳子)の家を訪れていた。玄関先で迎えられた菜穂を見て、伊丹はどこかぎこちない様子だった。どうやら彼女は伊丹が昔惚れていた相手のようで、益子がそのことを茶化すような目を送っていた。
また別のところで張り込み中の芹沢慶二(山中崇史)は、角田六郎(山西惇)の指示で喫茶店で待機していた。同じく喫茶店で張り込みの長さに出雲麗音(篠原ゆき子)がぼやくと、隣の席にいた中嶋紗央理(原田佳奈)が話しかけてきた。「もう1時間は待っています」と静かに言う彼女の声が、店内の静寂を少しだけ崩した。
一方で、陣川が買い物を終えると、何かを探しているような人物が目に入った。直感的にその異様な雰囲気を察した右京が声をかけると、話は思わぬ方向に展開した。「娘がいなくなったんです」と答えたその女性。名前は桧山真紀子(大村彩子)で、娘の結愛(中村千歳)が行方不明だという。右京は陣川と一緒に結愛の行方を探ることにした。
同じ頃、テレビ局の楽屋では、ニュースキャスターの桧山弘一(高島政伸)が黙々と準備をしていた。そこに付き人の武部友和(高橋光臣)がやってきて、ファンレターの束を確認している。武部が黒い封筒を見つけ、中を開けると「ジョーカー」と名乗る人物からの脅迫状が入っていた。「娘は預かった。警察には通報するな。指示に従わない場合、娘の命は保証しない」と書かれたその文面は、緊張感を漂わせた。
一方、右京と陣川は必死に結愛を捜していた。階段には彼女の靴が落ちており、それを手に取った右京が冷静に状況を分析していたところ、突然真紀子の夫から電話が入る。「結愛はどうしている?」という夫の問いに、迷子になってしまったと話す。すると夫は誘拐されたと教え、警察には言わないように言われた真紀子は右京たちに嘘をついた。「一人で先に家に帰ったようです」その言葉に違和感を覚えながらも、右京はその場では何も言わず、彼女を帰した。
やがて右京は陣川に、「彼女を追ってください」とだけ言い残し、自らは結愛の行方を追うことに全神経を集中させた。
その頃、亀山たちは菜穂の家で酒を飲んでいた。菜穂の夫はテレビ局のプロデューサーで、新婚旅行の話を笑顔で語っていたが、その行き先について微妙に勘違いをしている様子に、亀山は何か引っかかるものを感じていた。
過激な市民団体
弘一は脅迫状を手にしても警察には通報しないつもりだった。その決意を揺るがすかのように、スマホにメッセージが届く。「誘拐は事実だと確認できたか?今後はここに指示を送る。予定通り生放送を務めろ」送り主は明らかに結愛の誘拐に関与しているようだった。
一方、右京は防犯カメラの映像を確認していた。そこには階段をスーツケースを引きずる人物が映っており、その腕には「ジョーカー」の絵が描かれた腕章がはっきりと確認できた。
麗音と紗央理は喫茶店の同じ席で会話をしていた。紗央理が「ここは私たちが出会った場所なんです」と微笑む。彼女は再来週に出産を控えていた。そこに対象者が現れるが、その直後に紗央理が破水してしまう。慌てた麗音が助けようとすると、手錠がポケットから落ち、それを見た対象者の表情が変わる。喫茶店内は一気に騒然となり、事態が混乱する中、何とか対象者を取り押さえた。その後、右京は角田課長に電話を入れ、「ジョーカーについて教えてください」と情報を求めた。
菜穂の家では、ジュースをこぼした菜穂が亀山を連れ出そうとするが、夫がそれを止めた。亀山は菜穂を心配そうに見つめ、彼女が何かを隠しているのではないかという疑念を抱いた。夫は弘一が出演する番組のプロデューサーで、どこか落ち着かない様子だった。
その頃、甲斐や社は自生党議員・伊地知義弘(石丸謙二郎)と共に酒を酌み交わしていた。義弘はグラスを傾けながら、「IR実現のためにジョーカーには困っている」と語った。ジョーカーは市民団体を名乗って活動しているが、その実態はカジノ利権を狙う反社会的勢力だった。彼らはIR誘致に積極的ではあるものの、反対する市民を暴力で押さえつけているという。話が深まる中、そこに衣笠藤治(杉本哲太)も加わった。
夫に成りすまし
角田課長は捕らえた男・野村稔(藤本タケ)の取り調べを行っていた。そこに右京が現れ、デパートでスーツケースを運んでいた男について心当たりがないか野村に尋ねた。野村は「そんなこと全く知らない」と否定するが、右京の鋭い視線は彼を追及し続けた。事件の背景を考察する中、結愛は桧山弘一の娘ではないかという推測が立てられる。
桧山弘一は国民的ニュースキャスターとして知られ、報道大賞を過去5年間で3度も受賞していた。その発言は常に注目を集める存在だった。
彼の報道番組では、IR(統合型リゾート)を巨額な利権を生む不正の温床とし、治安の悪化も懸念されるとして激しく批判していた。桧山は反社会勢力「ジョーカー」から発言撤回と謝罪を求められたが、これに応じることなく毅然とした態度を貫いていた。その結果、自宅のガレージが放火されるなど脅迫がエスカレートしていたという。
野村は「自分は関わっていない」と言い張りつつ、テレビ局にジョーカーの仲間が出入りしているという噂を耳にしたことを語った。
その頃、桧山の妻である真紀子が楽屋に現れ、状況を説明される。桧山の弟・賢二(池田努)は関係者に真実を話すべきだと進言するが、弘一はそれを制止する。緊張感が漂う楽屋に陣川が訪れると、場の空気がさらに張り詰めた。
一方、菜穂は夫から何か脅されている様子だった。亀山と伊丹は彼女の様子を注意深く観察し、状況を探る。
右京と陣川はテレビ局で落ち合い、今回の事件について話し合っていた。番組のリハーサルが始まると、右京はその場で「結愛が誘拐された」と堂々と皆に伝えた。右京は、「生放送中に指示が必ず何度も来るだろう。発言撤回だけでは済まない」と強調し、誘拐犯の目的が単なる脅迫ではないことを示唆した。しかし、番組が始まる時間となり、弘一はその場を去らざるを得なかった。
番組が進行する中、右京は収録を見守りながら、スタッフたちに問いかけを続けた。その中で、本物の菜穂の夫・澤田正志(佐古井隆之)に、「『言われたとおりにやっている。妻は無事か?』というメッセージの意味は?」と詰め寄った。正志は顔色を変え、席を立ってどこかへ向かった。
同時に亀山と伊丹は、事件の真相に迫る行動を起こしていた。本物の澤田正志がどこにいるのかを突き止めるため、亀山は菜穂を守るための決断をする。「本物の澤田さんはどこだ?」と問い詰めながら、事件の鍵を握る夫に成りすます人物に迫った。
不倫を暴露
生放送中、弘一のスマホに新たな指示が届いた。「不倫を告白しろ」という内容だった。それだけでなく、彼が別の女性とホテルに入る写真が添付されていた。戸惑う弘一に、「娘がどうなってもいいのか」と脅迫が続き、ついに彼は「モデルの水野友梨さんと不倫をしました」とカメラの前で告白した。スタジオは騒然となり、スタッフや出演者の間に動揺が広がる。プロデューサーの澤田はそれでも、「続けろ」と促した。
その頃、亀山たちは家で犯人を取り押さえようと試みていたが、男に逃げられてしまう。菜穂に詳しい事情を聞くと、昨夜その男が突然家に現れ、夫を脅して「明日、何が起きても放送を続けるんだ」と命じていたことがわかった。
さらに、今日亀山たちが家に来ることを予想していなかったため、急遽夫のふりをしたことも明かされた。亀山の携帯に右京から連絡が入り、菜穂を介して澤田と直接話をすることに。右京の介入で、ようやく番組の混乱は収束に向かった。
やがてテレビ局には警察が大挙して押し寄せ、事件の捜査が本格化した。弘一の娘が誘拐されていたことや、澤田の妻が脅されていたことが関係者たちに伝えられる。右京はさらに、「局内に自由に出入りできるジョーカーの仲間がスタッフにいる可能性がある」と指摘する。
続けて「なぜ妻を人質にして澤田を従わせようとしたのか? なぜ不倫のような個人的スキャンダルを告白させたのか?」と疑問を投げかけ、本当にジョーカーが関わっているのかどうか、不信感を抱いていた。
その頃、紗央理は無事病院に搬送され、麗音が付き添っていた。すると陣川から電話が入り、麗音が応答すると、紗央理の彼氏が陣川であることが判明する。陣川に子供が生まれることを伝えると、彼の声は驚きと喜びに満ちていた。
桧山がジョーカーから脅迫を受けていたのは広く知られた事実だった。だからこそ、犯人はジョーカーの仕業に見せかけることで、捜査の目を誤魔化そうとしたのではないか。右京はその巧妙な意図を見抜き、捜査の方向性に疑問を抱きながらも、次の一手を考え始めていた。
5年前に起きた土砂災害
12月31日、生放送の収録は続いていた。桧山弘一はジョーカーからの新たな指示を受け、「経歴詐称を暴露しろ」と迫られる。そして彼は「ハーバードを卒業していない」と視聴者の前で告白した。テレビの前では驚きと疑念が渦巻いていた。甲斐はテレビを見ながら「これでもう誰も彼を信じないだろう」とつぶやいた。
その場にいた妻の真紀子は、夫の本性を知り「こんな人だったなんて」とショックを隠せなかった。付き人の武部も「人気を得るための嘘だったのか」と落胆した表情を見せた。
右京の目は楽屋に置かれた試験管のような瓶に留まった。中には土が入っていた。真紀子にその土について尋ねると、「小瀧市の土です」と答えが返ってきた。5年前、小瀧市の土砂災害を報じたことで桧山が初めて報道大賞を受賞した。その時の初心を忘れないためにとっておいたものだという。
「土砂災害の現場に同行していたのですか?」と右京が尋ねると、プロデューサーの澤田が答えた。「あの報道の内容が良かったので、桧山をサブキャスターからメインキャスターに抜擢しました」
この会話をきっかけに、右京の中で何かがつながった。そして彼は一言、「小瀧市の土砂災害が起きたのも5年前の今日、12月31日でしたね」とつぶやき、楽屋を後にした。
車中で右京はスマホで小瀧市の土砂災害に関する、当時の報道を確認していた。他の報道が自衛隊の活躍を伝える中、桧山の視点は特異だった。災害で2名の命が失われたが、その中で特筆されたのは、高齢者施設に勤務していた山本ひかり(水嶋凜)という女性の存在だった。彼女は自らの危険を顧みず、入所者の避難に尽力し、命を落としていた。
桧山がひかりの存在を見つけ、世に伝えたことは意義深かったが、この報道により傷ついた人間もいた。右京は考えを巡らせる。「それにより傷ついた人物は、この報道をきっかけに成功した桧山を許せないでしょうね」と呟いた。桧山が生放送中に辱められるのが今日でなければならなかった理由――それは、5年前のこの出来事に隠されているのかもしれないと右京は思い始めていた。
不審なあざ
桧山のスマホに新たなメッセージが届いた。「5年前の土砂災害 お前の罪を告白しろ」と短く冷たい文面。画面を見つめる桧山の表情は硬直していた。
その様子を見た賢二が声をかける。「最悪だ…」桧山は呟きながらスマホを賢二に見せた。内容を確認した賢二は息を呑む。「なんでこのことが?これ、俺たちしか知らないはずだ」と困惑した。
だが、賢二はすぐに「何も言うな」と桧山を口止めした。それでも弘一の心は揺れていた。娘の結愛の身に危険が迫っているという恐怖が消えなかった。
その頃、益子は菜穂の家からすべての爆弾を回収していた。しかし、回収されたそれらはすべてダミーだったことが判明する。
一方、右京と亀山は小瀧市の土砂災害に関する詳細を求めて、小瀧署署員の田所(若松力)に話を聞きに行った。右京は当時の報道内容と事実に違いがないかを尋ねた。田所は土砂災害の際、山本ひかりが施設の入所者48名を必死に避難させたことを語る。「ひかりさんのおかげで全員が無事でした」と彼は断言した。
しかし右京は、ひかりが避難を完了した後、なぜ再び現場に戻ったのかに疑問を抱いていた。「ひかりさんが引き返した理由は、誰かが残っていると思ったからではないでしょうか?」と右京。田所は頷きながら、一人残っていた人物がいたことを明かした。「見舞客の大田原という方です。ひかりさんはその方を助けるために戻ったのでしょう。そして、2人の遺体は同じ場所で発見されました」
田所は続けて言った。「大田原さんを助けようとして、ひかりさんは命を落としたのです」しかし右京は別の事実に着目していた。「ひかりさんの首に残っていたあざが気になります」と話す。
さらに右京は、大田原俊彦(石井浩)が誰の見舞客だったのかについても尋ねた。田所は答えた。「自生党の伊地知義弘の付き添いでした」この情報に右京と亀山は深く考え込む。伊地知義弘――この名前が、5年前の出来事と桧山にどうつながっているのか、謎が徐々に浮かび上がり始めた。
絶対に言えないこと
右京は土砂災害の現場となった施設に足を運び、当時の事情を知るためスタッフの山崎(船山拓也)に話を聞いた。山崎は当時、自生党の伊地知義弘の母親である広江が、施設に入所していたことを明かした。さらに、広江の担当が山本ひかりであったことも分かった。「あの日、ひかりさんは『忘れ物を取りに行く』と言って現場に戻りました」と山崎は語る。
右京は別のスタッフである斉藤(かとうずんこ)にも話を聞くことにした。斉藤は、「ひかりさんが大田原さんと付き合っていたなんて、ありえません」と断言した。「だって、ご主人様の女に手を出すわけないでしょう」と意味深な言葉を付け加えた。
右京はその言葉の真意を問うと、斉藤はひかりが伊地知義弘からセクハラを受けていた事実を語り出した。「もしかしたら、証拠を取りに戻ったのかもしれません」と右京は考えた。
一方、テレビ局では桧山弘一が追い詰められていた。ひかりが命を落とした理由を取材で知ったと話す弘一、その先を言うよう迫られると、弘一は突如として叫び始めた。「私は脅されています!娘が誘拐されているんです!助けてください!」とカメラの前で涙ながらに訴えた。その瞬間、彼のスマホに「娘を殺すぞ」という脅迫メッセージと写真が届いた。
その光景を見ていた妻は怒り狂い、夫の胸ぐらをつかんで激しく揺さぶった。出演者たちは凍りつき、スタジオの雰囲気は一瞬で異様なものへと変わった。誰もがこの状況をどう収拾すればいいのか分からないまま、番組は生放送の混乱の中で進行していた。
誘拐犯の逮捕
テレビ局のスタジオは騒然としていた。混乱の中、右京と亀山が局に戻ると、状況を冷静に把握し始めた。右京は武部を呼び止め、直接話を始める。武部が使っていた携帯電話が古いガラケーだったことに注目した右京は、「文字を見なくても入力ができるあなたが、今回の計画に関わっているのでは?」と詰め寄った。
さらに、右京たちは土砂災害が起きた施設で、見つけた写真について話す。その写真には、山本ひかりと武部が親しげに写っていた。「特別な関係だったことは一目瞭然です」と亀山が指摘する。
その間に、行方不明だった結愛はテレビ局の仮眠室に匿われているのが発見された。救助された結愛はすぐに救急搬送されるが、激怒した母親は弘一を近づけさせなかった。
陣川が「どうして結愛ちゃんがテレビ局にいるとわかったんですか?」と問うと、右京は推理を語った。「もし武部が結愛ちゃんに危害を加えるつもりなら、これまでにいくらでも機会があったはずです。それがない以上、彼は近くに匿っていたと考えるのが妥当でした」
武部は警察に連行される。当時、ひかりは伊地知から受けたセクハラの音声データをUSBに保存し、弁護士に送る準備をしていた。しかし、大雨の中、伊地知の指示を受けてやってきた大田原がUSBを手に入れる。取りに戻ったひかりが急いで施設に戻った結果、土砂崩れに巻き込まれたのだった。
USBは奇跡的にデータが残った状態で発見されたが、それを取材中の桧山が手に入れた。しかし、桧山はそのデータを報じることなく、伊地知との取り引き材料に使っていた。伊地知から政局の情報を得ることで、桧山はスクープを連発し、名声を得るとともに報道大賞を受賞していた。
武部は激怒し、「あんたはジャーナリストじゃない!ただの人気取りのタレントだ!」と桧山を非難する。これに対し、桧山は「俺には信念があった。正義のために、政治を正しく伝えたかった」と苦しそうに弁明する。
しかし、右京は容赦しなかった。大田原はひかりを首を締めて殺そうとしていたのではないか、しかも弘一は気づいていたのではないか。ひかりさんは殺された。といっても過言ではない状況にと追及する。そして「人一人の命が奪われたことに目をつぶったままで、何が信念ですか!何が正義ですか!」と激しく叱責した。後ろめたさがのこっていたから、生放送ですべてを語れなかったのではないかとも指摘した。
追い詰められた桧山は地べたに手をつき、「あなたの言う通り、私は間違っていました」と涙ながらに武部に謝罪した。そして「番組内で必ず決着をつけます」と約束する。その言葉を聞いた武部はしばらく桧山を見つめた後、無言で一課の刑事たちに連行されていった。
謎の男の正体
一件落着かと思われたが、右京はまだ何かが引っかかっている様子だった。「一件落着だといいのですが」と呟きながら、次の行動を考える。陣川は一息ついたところで、右京に心情を打ち明けた。「実は彼女の子供は、前の人との間の子なんです。実の子じゃないからこそ、慌ててプロポーズしたかったんです。生まれた瞬間に『パパだよ』って迎えてあげたいじゃないですか」と話す陣川の顔は真剣そのものだった。
その後、右京たちは墓地を訪れ、弘一が言う場所にひかりのUSBがあるか捜すが見つからなかった。「一足先に誰かがここに来ていたようですね」と右京は言い、さらに調査が必要だと判断する。武部が持っていたペンが通信機だったことがわかり、それを通じて誰かが現場に駆けつけた可能性が浮上する。
その後、右京と伊丹は武部の元を訪れ、USBを回収した人物について問い詰めるが、武部は口を固く閉ざしていた。伊地知議員の秘書である柘原がUSBを伊地知に渡した事実が判明。柘原は「武部が暴走して、5年前の話を蒸し返そうとしていた」と説明し、USBの奪還を議員に報告していた。伊地知はデータが手元に戻ったことで満足げな表情を浮かべる。
その後、伊地知、甲斐、そして社がコンサート会場で落ち合い話を交わしていた。一方で、右京たちは武部に再び接触し、「柘原は伊地知の秘書だとわかりました」と告げる。伊丹は「あなたは完全に利用されて裏切られた」と言うが、右京は違う見解を示した。「武部さんは裏切られたわけではないと思います」と静かに語る。
益子が現れ、柘原の指紋が自衛隊員時代の記録と一致したと報告する。柘原は4年半前に自衛隊を辞めており、5年前の土砂災害では救助活動にも携わっていた。右京は、「武部さんと柘原が災害現場で知り合ったなら、当然、伊地知議員の性加害の事実も知ったでしょう。柘原が秘書になったのは、武部さんに協力するためだったのかもしれません」と推測する。
さらに右京は、「USBのデータは既にコピーされており、もっとも効果的なタイミングで公開される準備が整っているのではないでしょうか」と語った。ひかりと柘原の間には、まだ明らかになっていない特別な関係が存在するのかもしれないと、右京の推理は次なる謎を示唆していた。
事件の真相
陣川は紗央理の病室を訪れ、プロポーズをしようと決意を胸に秘めていた。しかし、ふと彼女のスマホの画面に目をやると、そこには柘原と一緒に写る紗央理の姿が映っていた。「この人は誰?」と問い詰める陣川。陣川はこの人は「事件に関係している人だ」と教えた。
一方、右京は施設で見たひかりの写真を思い出していた。写真の中でひかりが組んでいる腕と、柘原がしている腕の組み方が驚くほど似ていたのだ。「幼い頃、同じ環境で育った者同士は些細な癖が似るものです」と右京が指摘すると、陣川からの連絡が入る。柘原がひかりの兄であることが判明した。幼い頃に両親と別れ、姓が変わったため気づかれなかったが、彼はひかりの仇を討つために伊地知の秘書となったのではないかという推測が立てられた。
その時、芹沢のスマホが鳴り、画面にはインフルエンサーが公開したひかりが襲われる際の伊地知の音声データが流れていた。「これだけならば、武部はとっくに口を割っていたはずです。いまだ黙ったままでいるのは、この先に何かがあるからではないでしょうか」と右京が語る。
その頃、柘原はついに伊地知を狙撃しようと準備を整えていた。コンサート会場に潜入し、演奏が終わるタイミングを待つ。演出で大きな発砲音と共に、拍手と歓声が響き渡る中、右京たちが到着し、間一髪で柘原を制止した。
「5年前の今日、何があったんですか?」と右京が問いかける。柘原はゆっくりと口を開いた。あの日、小瀧市での災害の状況を知り、管轄外でありながら救助活動に志願した柘原。しかし、ひかりと連絡が取れず、不安が募る中、彼女から「殺される、お兄ちゃん助けて」という悲痛な声の電話が入った。その言葉で、ひかりが災害ではなく誰かに襲われていることを確信した柘原は、急いで施設へ向かった。
施設に着いた彼が目撃したのは、大田原がひかりの首を絞めている光景だった。しかし、その瞬間に土砂が施設内に流れ込み、すべてが飲み込まれた。後に武部と出会い、彼はひかりが伊地知から性的暴行を受け、USBにその証拠が残されていたことを知った。
柘原と武部は復讐を決意した。武部は桧山に接近し、柘原は伊地知に取り入り、汚れ仕事を請け負いながら彼の信頼を得た。そして、ひかりの命日であるこの日に復讐を完遂する計画を立てたのだ。
「伊地知だけは、あいつだけは殺さなきゃ気が済まない。ひかりはあいつに泣き寝入りしたくないと言ったんだ。その望みをかなえてやらないと。じゃないと俺は、何のために生きてる?あの日…あの日何のために生き残った」と柘原は嗚咽しながら訴えた。その声に込められた深い悲しみと憤りが、場の空気を重くした。
【相棒23】9話の結末
12月31日、大きな事件が幕を閉じた後の物語は、静かに人々の心に刻まれていった。
何も知らずに妻のもとに花を差し入れる伊地知。だが、待っていたのはひかりが襲われた音声を無言で流す女性たちの抗議だった。その冷たい空気が伊地知の肩をさらに重くする。
弘一は生放送の番組内で、ついにすべての事実を告白した。「私はみなさんの信頼を裏切りました」と声を震わせながら語る。そして、最後にこう付け加えた。「最後に一言だけ言わせてください。なぜ私がキャスターになろうと思ったのか、いいニュースを伝えたかったからです。嫌なニュースを聞きたくなければ、いいニュースを作るしかない。そういったのは誰だったか。もともとはつらく悲しいニュースであふれた世の中を、皮肉って言った言葉だったような気がします。真意はどうあれ、私はこの言葉が好きです。いいニュースを作ろう。誰もがそういう気持ちで過ごしていれば、毎日はきっと明るい出来事であふれるようになる。わたしが行っても説得力がありませんね。ですが、ことしがそういう年になることを願っています」深々と頭を下げる弘一。その姿はテレビを通して、多くの人々の目に焼き付けられた。
その後、右京は柘原を紗央理のもとに連れていった。紗央理は無事に子供を出産しており、その顔には安堵の色が浮かんでいた。「去年、復讐を実行する前に、けじめとして別れていました。だから妊娠のことは知らなかったんです」と語る柘原。
紗央理は思い出の喫茶店で彼を待ち続けていたのだ。赤ん坊を抱いた柘原は、ひかりが本当に復讐を望んでいたのかを考えた。「ひかりさんは、あなたに幸せになってほしいと願っているのではないでしょうか」と右京は優しく語りかけた。「罪を償い、幸せになるために生きてください」赤ん坊を抱いた柘原は静かに涙を流した。結局、陣川の恋は静かに幕を閉じた。
弘一はテレビ局を去り、公園のベンチに座り込んでいた。妻が娘の結愛を連れてやってくると、弘一は地面に手をつき、頭を下げた。「ごめんなさい、ごめんなさい…」と震える声で謝罪する父に、結愛は小さな手でそっと頬を包み、微笑んだ。その温かさに、弘一は結愛を抱きしめる。「帰りましょう」という妻の言葉に、家族3人は静かに歩き出した。
その後、右京は伊地知のもとを訪れた。「あなたごとき、底辺の僕たちで十分でしょう」と冷ややかに言い放つと、亀山が妻からの伝言を伝えた。「二度とその口で政治を語るな、だそうです」右京は続けた。「政治というのは人々が前向きに生きられるような世の中を作るもの。私物化した権力で希望を奪うくらいなら、存在しないほうがマシです。いい加減に罪を認めたらどうですか?」と。
全てを終えた右京と亀山は歩き出す。最後に右京は亀山にプレゼントとしてハンカチを差し出した。思いもよらないプレゼントに亀山は喜んだ。
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【相棒23】9話のまとめと感想
性被害を告発しようとした女性が土砂災害で、そのまま葬り去られそうになったが、命日に恋人と兄が復讐しようとしたという話でした。
土砂災害、IR、性被害、市民団体、不倫問題、経歴詐称、テレビの問題、インフルエンサーが暴露などなど…様々な時事が含まれている集大成のような話でした。それに陣川の話も交えて、短時間に起きた事件を年内に解決します。
現在も過去に起きた性被害問題を、被害者が訴えることで表舞台から人が消えています。今回の話では取り巻きを社会的に抹殺するだけでなく、加害者本人を殺害しようと2人は考えました。当然右京さんたちに阻止され、伊地知は右京さんに存在しないほうがマシと非難されて終わります。
話自体は何度も見たことのあるような話ですが、様々な問題を絡めることで相棒らしさを付け足したテンポのいい回です。番組の出演者のバイナリ入江の縦笛ギャグが、緊迫した状況の中でとてもシュールでした。
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