2025年1月4日に放送された「新・暴れん坊将軍」のキャスト・ネタバレと感想をまとめています。
吉宗の治世となって二十有余年、享保の大飢饉をきっかけに世は乱れていた。さらに後継者問題にも吉宗は頭を悩ませていたが、久しぶりに町へ徳田新之助として出かける。するとそこに現れた謎の青年に見覚えがあり……。
キャストとスタッフ
⚔️予告解禁⚔️
— 「新・暴れん坊将軍」25年1月4日放送!【テレビ朝日公式】 (@abarenbo2025) December 20, 2024
2025年も、成敗致す!!
主演 #松平健
世界に誇る将軍 #暴れん坊将軍
17年ぶりに大復活!!🪭#西畑大吾#小澤征悦#藤間爽子#GACKT #勝村政信#高島礼子 #生瀬勝久
超豪華キャストで贈る令和の時代劇!!
「#新・暴れん坊将軍」
1月4日よる9時!!🫏#テレビ朝日 pic.twitter.com/Yz0hAVHsSL
- 徳川吉宗(とくがわ よしむね)/徳田新之助(とくだ しんのすけ)…松平健
徳川家八代将軍 - 徳川家重(とくがわ いえしげ)/徳長福太郎(とくなが とみたろう)…西畑大吾(なにわ男子)
吉宗の嫡男。病で右腕が不自由となり、顔にこわばりがあってうまく話すことができない - 大岡忠相(おおおか ただすけ)…勝村政信
江戸南町奉行。大岡越前守忠相、通称:大岡越前。吉宗の良き理解者 - 大岡忠光(おおおか ただみつ)…木村了
側用人。忠相の親戚。家重が幼い頃から仕えていた。家重が心許す人物 - 加納五郎左衛門(かのう ごろうざえもん)…小野武彦
御側御用取次役。吉宗が幼い頃からの教育係で、爺と呼ばれている - 辰五郎(たつごろう)…生瀬勝久
江戸町火消“め組”の棟梁。町人で唯一徳田新之助が吉宗だと知っている - おさい…高島礼子
辰五郎の妻 - 徳川宗武(とくがわ むねたけ)…駒木根葵汰
吉宗の次男。若き日の吉宗と同じく文武両道
元服して徳川田安家にの当主になる。田安様とも呼ばれる - 徳川宗春(とくがわ むねはる)…GACKT
徳川御三家の筆頭格・尾張徳川家の当主。尾張藩七代藩主
派手で豪儀、倹約令に反発している - 藪田八兵衛(やぶた はちべえ)…浜田学
将軍家御庭番。吉宗の側近 - こはる…中島亜梨沙
将軍家御庭番。吉宗の側近 - ひさめ…尾崎真花
将軍家御庭番。家重の側近 - 猪野尾又吉(いのお またよし)…マギー
老舗材木商「猪俣屋」の主人。おきぬの父 - おきぬ…藤間爽子
猪俣屋の娘 - 奥平重徳(おくだいら しげのり)…神保悟志
老中。奥平掃部頭重徳(おくだいら かもんのかみ しげのり) - 本間要治郎(ほんま ようじろう)…小澤征悦
旗本。本間要蔵の嫡男。本間壬生守要治郎(ほんま みぶのかみ ようじろう) - 本間要蔵(ほんま ようぞう)…本田博太郎
若年寄。本間丹後守要蔵(ほんま たんごのかみ ようぞう) - 田九郎(でんくろう)…渋川清彦
人買いの元締め - 蘭丸…内藤秀一郎
美男役者。茶屋で働く
スタッフ
- 監督:三池崇史
- 脚本:大森美香
- 音楽:菊池俊輔(「暴れん坊将軍」より)、遠藤浩二
- ゼネラルプロデューサー:服部宣之
あらすじ
享保の大飢饉をきっかけに人々は苦しんでいた。徳川吉宗(松平健)に対しても人々は文句を言い、さらに後継ぎである嫡男・家重(西畑大吾)に対しても悪評が立っていた。
吉宗には三人の息子がいるが、家重は病で右腕が不自由になり、顔にこわばりがあるせいでうまく言葉が話せなかった。一方、次男の宗武(駒木根葵汰)は若き日の吉宗を彷彿とさせる、文武両道の人物だった。彼こそが次期将軍に相応しいと推す声もあった。
久しぶりに徳田新之助として町に出た吉宗は、材木商の娘・おきぬ(藤間爽子)が人買いの田九郎(渋川清彦)に絡まれているところに遭遇する。助けに入った吉宗、さらにべらんめえ言葉を使い、洋剣“レイピア”を片手で操る徳長福太郎を名乗る男が助太刀に入り事なきを得た。
この福太郎こそ、家重だと気付く吉宗。家重に何があったのかと驚きを隠せなかった。
旗本の本間要治郎(小澤征悦)と老中の奥平重徳(神保悟志)は宗武に、尾張藩主・徳川宗春(GACKT)が謀反を企てていると吹き込む。世継ぎ争いをたきつける、要治郎にはある野望があり……。
ネタバレ詳細
お世継ぎ問題
将軍吉宗(松平健)は、鶴屋と本間要蔵(本田博太郎)の密会現場に現れるや否や、一触即発の空気が漂った。本間に腹を切るよう命じるが、返ってきたのは吉宗の名を騙る「曲者」だという逆上の叫び。その態度に怒りを募らせた吉宗は剣を抜き、戦いの火蓋を切ることに。御庭番たちも合流し、乱戦の末、丹後守を見事に成敗した。
その後の吉宗の人生は、苦難と決断に満ちたものだった。将軍としての政は安定していた時期もあったが、五十を迎えるころには世情は一変。不景気の影響で百姓一揆が各地で起こり、西国ではイナゴの大量発生が享保の大飢饉を招いた。
民の声を直接聞きたいと城を出ようとする吉宗だったが、忠実な爺・加納五郎左衛門(小野武彦)に止められる。「家重様の悪評が広まっております」と爺が告げた言葉に、吉宗は心を乱される。家重(西畑大吾)は病のため右腕が麻痺し、言葉も不明瞭で、唯一その声を正しく理解できるのは大岡忠光(木村了)だけという状況だった。癇癪持ちで政にも武芸にも興味を示さない家重の評判は、「徳川の世もじき終わりだ」という噂を生むに至っていた。
一方で、弟の小次郎こと宗武(駒木根葵汰)は元服し、田安家の当主として立派に成長していた。文武両道の若武者は、まるで若き日の吉宗の再来のようだと評判になり、家重よりも時期将軍にふさわしいという声まで上がるほどだった。
そんな中、吉宗の悩みは尽きることがなかった。災害や米不足、そして後継者問題の波に飲み込まれ、「子一人の心がわからずして征夷大将軍などとは笑わせる」と自嘲する吉宗は、民を救うための新たな道を模索していた。
大岡忠相(勝村政信)の助言に心を動かされた吉宗は、江戸の町に徳田新之助として出て、民の暮らしを自らの目で確かめることを決意。繁華街を歩き、百姓たちの訴えを聞き、飢饉に苦しむ人々の姿を目の当たりにした。
謎の若者
江戸の町を歩いていた新之助の姿を見つけたおさい(高島礼子)が、駆け寄ってきた。「最近、この辺りはガラの悪い連中がうろついてるって話だよ」と警戒を促す。そこへ辰五郎(生瀬勝久)が現れ、吉宗の悪口を言う大工の源助()に絡み始めた。
その騒ぎの中、新之助は自分の悪口を直接耳にすることとなった。「将軍様も大変ですねぇ」と笑いながら割って入ったおさいが場を収めるも、その直後、福太郎という男が現れて「尾張様が将軍になったら、もっと良くなるだろうよ」と愚痴を漏らす。新之助は興味を抱き、「もう少し詳しく聞かせてくれ」と福太郎に話を促した。
突如響いた女性の悲鳴に、空気が一変する。声の主はおきぬ(藤間爽子)で、複数の男たちに連れ去られそうになっていた。新之助が飛び込んで助けようとすると、現れたのは田九郎(渋川清彦)だった。その場で乱闘が始まるが、さらに驚くべきことが起こった。福太郎が奇妙な刀を持ち、助太刀に入ったのだ。しかし、彼の刃は新之助にも向けられた。受け止めた刃越しに互いの顔が見えると、一瞬、驚きが走る。その顔立ちは家重によく似ていた。
「他人の空似だろうか?」と吉宗は思う。家重がまともに剣を握れるはずもなく、ましてや将軍後継ぎが市井にいるなど信じられない。しかし、そんな考えを抱えつつも、二人は背中合わせになり襲い来る敵を迎え撃つ。そこへ辰五郎率いるめ組が助太刀に駆けつけ、田九郎は「地獄の底まで追いかけるからな」と不気味に笑いながら去っていった。
おきぬは新之助たちに感謝し、事情を語り始める。「父が材木商の不景気を嘆いてね。だから新しい商売を始めることになったの。でも、そのために西国の唐物商に嫁げって言われて、それが嫌で家を出たのよ」と打ち明けた。行くあてもなく彷徨っていた彼女は、蘭丸(内藤秀一郎)に誘われて妙な店に足を踏み入れてしまったという。そこでは男役者たちが女性をもてなし、盃タワーに日本酒を注いでいた。
「お礼にお酒や櫛を買ったら持ち合わせがなくなって、そこで田九郎を紹介されて借金することになったの」とおきぬは語る。十両を借りたものの、それもすぐに使い果たし、田九郎に捕らえられ監禁されてしまった。隙を見て逃げ出した先で吉宗たちに出会ったという。
話を聞いた吉宗は、親に正直に事情を話して借金を返すべきだと諭す。しかし福太郎は冷たく言い放った。「こんな世間知らず、いっぺん売られたほうがいい。そうでもしねえと馬鹿は治らねえ」と言い捨ててその場を去っていった。新之助はその後ろ姿を見送りながら、複雑な表情を浮かべていた。
家重の秘密
翌日、江戸城では諸大名が集う謁見の日が訪れた。その場には本間要治郎(小澤征悦)の姿もあった。彼は十数年前、吉宗によって成敗された本間要蔵の嫡男だった。本来ならお家取り潰しのところ、吉宗の慈悲により家名を存続することが許され、要治郎が閑職ながら跡を継ぐこととなったのだ。謁見の際、吉宗は「父上の汚名をそそぎ、誇り高き本間家を取り戻せ」と励ましの声をかけると、要治郎は深々と頭を下げ、その言葉に応えた。
その後、忠光から家重が町に出ていたという報告が吉宗に入る。忠光は己の不手際を詫び、「腹を切る覚悟でございます」と申し出るが、吉宗はそれを制し、詳しく話を聞かせてほしいと頼んだ。
忠光は、家重がまだ長福丸と名乗っていた頃から側仕えをしていた。その幼い頃から家重の聡明さを感じ取っていた忠光は、彼が自分の不自由な体や言葉に苛立つ姿を何度も目にしてきた。「その苛立ちが癇癪と見られてしまっている」と、忠光は言葉を詰まらせた。さらに、城内では家重の廃嫡を望む者たちの影もちらついており、忠光の心には常に不安がよぎっていた。
ある日、忠光は家重にこう進言した。「私は家重様のことを心よりお慕いしております。だからこそお願いがございます。どうか、この先も強く生きていただきたいのです」と。その言葉を機に、二人は密かに能楽師などから聞いた術を試し、家重の声を改善するための鍛錬を始めた。発声練習や薬の服用を続けるうち、少しずつ家重の声は出るようになり、鍛錬により体のこわばりも緩和されていった。
それでも、皆の前で話すことがないのはなぜか、と爺が問うと、忠光は「まだ四角四面な武家言葉は難しいのです。それに、陰口を叩いていた者たちに近づくことは、家重様ご自身がお好みではないのです」と答えた。
さらに、御庭番のこはる(中島亜梨沙)は家重が町に出る際にひさめ(尾崎真花)が伴っていたことを明かした。そして家重が使っていた剣について問われると、「かつて豊臣家が南蛮から得たと言われる洋剣、リングド・レイピアを模したものです」と説明した。片手で操ることができるこの剣を使い、家重は密かに鍛錬を積んでいたという。
「家重様は弓や馬を操れずとも、その聡明さと優しさで主君たるに相応しいお方です。どうかお咎めなきよう」と忠光は深々と頭を下げた。するとその場に家重が現れ、忠光の肩に手を置いて「頭を下げる必要はない。自分が望んでやったことだ」と告げた。
家重はさらに、「まさか徳田新之助なんて名乗ってうろついているとはな」と父を嘲笑し、吉宗の胸に冷たい言葉を突き刺した。吉宗が「自分と同じ思いで外に出ているのではないか」と問いかけると、家重は「ただの暇つぶしだ」と冷たく否定し、「将軍なんて興味がない。宗武が継げばいい」と言い放った。
「己の手で民を守ろうと思わないのか?」という吉宗の問いかけにも、家重は毅然として答えた。「思わねえな。己の身がこれほどみっともなく思えるのは、将軍家の嫡男なんかに生まれたせいだ。そんなもの、失ったってなんも惜しくねえよ」と。吉宗はその言葉に表情を曇らせたが、それ以上何も言えず、その場に立ち尽くしていた。
一触即発
江戸城では、奥平重徳(神保悟志)が宗武に接近し、「兄上(家重)には失望した」とたきつける場面があった。しかし、宗武は「兄上の悪口は聞きたくない」と奥平の言葉を軽く受け流す。その場に本間要治郎が現れ、「尾張徳川家が謀反を企んでいる」と吹聴し始めた。本間はさらに、尾張の徳川宗春(GACKT)が上様の倹約令を無視して豪華絢爛な振る舞いを続け、ついには「尾張様のほうが将軍に相応しい」と言い出す輩までいると宗武に告げる。これには宗武も呆れ、「尾張殿も何を考えているのか」とため息を漏らした。
そこへ奥平が洋銃を持ち出し、「公儀に楯突くものを成敗する準備だ」と誇らしげに語る。その姿に宗武は「まさか尾張を成敗するつもりか?」と問いただすが、本間は「むしろ尾張が戦支度をしているかもしれません」と煽るように付け加えた。
さらに材木商から武器商人に鞍替えした猪野尾又吉(マギー)が現れ、新しい武具を持ち込む計画を話し出す。民が苦しんでいる時に軍備に資金を注ぐべきか戸惑う宗武に対し、奥平は冷たく「下々がいくら苦しんだところで国が潰れることなどありません」と一蹴する。そして、奥平が銃の試し撃ちを迫り、宗武がその威力に驚愕した。
一方、め組では家重が辰五郎に新之助について尋ねていた。そこにおきぬが現れ、「ここで働いている」と告げた。「今の一推しは福さん」と冗談めかして話すおきぬに、家重は困惑し、近くで見ていたおせつ()がヤキモチを焼く様子を見せた。その時、半治郎()が駆け込んできて「若い娘の仏さんが上がった」と報告。仏を回収しに行くと、それは団子屋の看板娘であるおみね()だった。
一方、町の片隅では、吉宗が藪田八兵衛(浜田学)から報告を受けていた。八兵衛の話では、おみねは親や団子屋の主人に何度も金の無心をしており、町では他にも行方不明になっている女性が多いという。昨夜も深川で二人の女性の遺体が発見されており、吉宗は「裏がある」と察し、さらに調査を命じた。その後、勘定所で金子が減っているという話も耳にした。
城に戻った吉宗は、救い米の金子が減っている件について奥平に問いただすが、奥平は「知らない」と否定し、「軍備に金がかかるのは仕方ない」と主張。これに対し、吉宗は「肝要なのは民の心だ」と反論したが、奥平は「宗武様も軍備への支出を承知しています」と返し、宗武の後継相続を望むとまで言い切った。
その後、困惑する吉宗のもとに三男の小五郎()がやって来て、「自分が将軍を継いだらどうでしょう?」と冗談を交えつつ提案。「二人のいいところも悪いところも知っているから、一番いい将軍になるかもしれませんよ」と笑いながら、「鬼切の太刀の話を聞かせてください」とねだり、吉宗はその要求に応じた。
一方、越野左衛門之助()の耳に「奥平が宗武に銃を渡した」という話が坂上英次()から入る。その場で「消えた公儀の金子はまさか」と口走った越野だったが、直後に田九郎の襲撃を受け、二人とも命を落としてしまう。
一方、尾張では宗春が瓶に入った小判を持ちながら妙なトレーニングをしていた。そこへ長松()が現れ、「公儀が尾張を攻める準備をしている」と報告する。竹本正綱()は「豪勢な振る舞いを控えるべき」と助言するも、宗春は「そっちがそう出るなら、この宗春様が目にものを見せてやろう」と豪語し、聞く耳を持たなかった。尾張と公儀の緊張が高まる中、波乱の幕開けを予感させる展開となった。
民こそ宝
奥平と要治郎は密談を重ねていた。宗武が銃に夢中になっている隙をつき、彼を将軍に擁立すれば公儀の財を自由に使えると画策していたのだ。「宗武様を将軍にする暁には、老中筆頭の座を約束しよう」と奥平は囁く。しかし、要治郎は「上様は侮れない。急いで手を打たねばならぬ」と不敵な笑みを浮かべ、尾張の仕業に見せかけて吉宗を葬る計画を語った。
一方、家重はおきぬを追いかける。家に戻るよう説得するが、おきぬは「家には居場所がない」と反論する。母を病で亡くし、父は金のことばかりしか考えない――そんな家族に絶望していたのだ。
そこへ突然田九郎が現れ、おきぬをさらってしまう。家重は鎖で片腕を封じられ剣を抜くこともできず、力負けしてしまった。おきぬは連れ去られ、トドメを刺そうと迫る田九郎の一味を、ひさめが現れて食い止めた。「自分はいいから追え」という家重の言葉にひさめは戸惑いつつも従い、田九郎たちを追った。
家重はおきぬを探し、男役者が集う店に乗り込む。「ここにいる女、全部まとめて返してもらう」と啖呵を切るが、蘭丸らに囲まれ乱闘が勃発。それでも奥の牢へと進むが、そこにおきぬの姿はなかった。背後からの襲撃に備えたその時、忠光が現れ、家重を助けた。蘭丸を問い詰める忠光だったが、蘭丸は「吸い尽くすまでが俺たちの仕事。後は知ったことじゃない」と冷笑。それを聞いた家重は怒りを抑えきれず、拳を振り下ろした。
その後、奉行所で忠光が語るところによれば、先日殺された女性たちは皆、あの茶屋の男役者に入れあげていたという。さらに、ひさめも田九郎たちを取り逃がしてしまい、悔しさから畳を叩く家重の姿があった。その場に宗武が現れ、「また癇癪か」と呆れながら西洋の銃を持参。家重は「なぜそんなものを?」と忠光を介して問い詰めるが、宗武は「国を強くするため」と答えた。そして、「兄上にその気がないなら、自分が将軍となって国を守る」と宣言する。
それに対し忠光は「くだらん!」と一喝。「武器とは持つ者が持たぬ者を踏みにじるための道具。民の心を動かすのは誠の心のみ」と語りかけた。その言葉に宗武は正論と認めながらも、「ではどうやって民を守る?」と問い返す。しかし、忠光が答える間もなく宗武は刀を抜き、忠光を斬ろうとする。その瞬間、家重が「俺の言葉だ!」と大声を上げた。
驚いた宗武は動きを止め、家重は直接自分の言葉で話し始めた。「てめえが跡継ぎになんのは構わねえ。ただ、そんなもんで民をはべらせようとする気なら話は別だ。父上が民を思う心、てめえにはわからねえのか?」と父・吉宗の信念を語り、宗武に鋭い言葉を浴びせた。
宗武は「父上をわかっていないのは兄だ」と反論し、「私が先に生まれていれば」と言い残して立ち去った。家重は一人になり、「つい口が滑った」と忠光に語る。その時、江戸に尾張の宗春が到着したとの報告が届き、場面は新たな局面へと進んでいった。
戦への道
江戸に姿を現した宗春に、町の人々は魅了された。「江戸より尾張の方が賑わってるなんて、いっそ尾張を都にしたらどうだろう」とまで言う宗春。その後、宗春は吉宗のもとを訪れ、にこやかに挨拶をした。
「こちら、拙著を献上いたします」と差し出された本のタイトルは『温故政要』だった。そこには、「金は活かして使え。過度な倹約は却って無益」「芸能は庶民の栄養。見世物や茶店を許すべし」といった言葉が並んでいた。その内容に爺は「国元ならともかく、江戸で好き勝手されては困ります」と眉をひそめる。
吉宗は宗春に向かい、「草の者を使って公儀の悪い噂を流しているのは、そちらの仕業ではないか?」と問うた。宗春は「江戸の治安の悪さをよそ者のせいにするのですか」と反論し、「金は使うことで天下を巡り、それがやがて民を助けるのです」と語る。そして、「口先だけの倹約では民は救えません。我が書をお読みになって、誰が上に立つべきかご一考ください」とまで言い放った。
宗春は見かけた長春に合図を送った。「吉宗殿にばれているぞ」という眼差しに、長春は「市井の事情に上様が詳しいはずがない」と否定。しかし、宗春は「かくなる上は、戦しかないか」と不敵な笑みを浮かべ、悠然とその場を後にした。
その頃、要治郎は猪俣屋に尾張にも武器を売るよう命じていた。「これを両軍が使えば、派手な戦になり、儲かるぞ」と要治郎は焚きつける。彼の動きは天井裏に隠れた密偵によって監視されていた。
さらにその場に田九郎が現れ、連れてきた女たちを披露した。彼女たちは唐物商への貢物であり、その中にはおきぬの姿もあった。
おきぬの父がその光景に驚くが、父は要治郎に取り入るため、「おきぬを妾にしてやってくれ」とまで言い出した。おきぬは父の言葉に衝撃を受け、その場に立ち尽くした。町が宗春の派手な振る舞いや尾張の影響で荒れ、盗賊や怪しげな信仰が流行している中、事態はますます混迷を極めていった。
抱き続けた恨み
家重は吉宗に直訴した。「尾張をあのままにしておいてよいのですか」と迫る。その真剣な表情に、吉宗は静かに語り始めた。「そなたも知っての通り、俺は元は紀州徳川家の四男だ。一生部屋住みで終わる身分だった。それが何の因果か紀州藩主になり、果ては将軍だ」
「将軍になったばかりの頃から、市中を歩いて民を知ろうと思った。俺の市中お忍びは年季が入ってんだぜ」と笑う吉宗。その表情には懐かしさが滲んでいた。
「将軍というものは、何でもできるようでいて、実は縛られるばかりだ。民が苦しんでいるのを見れば、逃げ出すこともできん。だからもう少し励んでみようと思ったのだ」と語り、「だからそなたも好きなように生きればよい。もっと己に誇りを持ってほしいと願っていたが、それは俺の過ちだった。そなたはそなたのままでよい」と家重に伝えた。
「将軍後継であろうがなかろうが、そなたが俺の子であることに変わりはない」と語る吉宗の言葉に、そばで聞いていた忠光が感極まって涙を流した。その時、猫が首に巻かれた文を持って現れた。それはひさめからの文で、おきぬの居場所を知らせるものだった。
同時に八兵衛が駆け込み、「武具庫の奥に銃が隠されていました」と報告。囲い米の金子が流用されたのではと考えた吉宗は、「戦もないのになぜそんな武具が?」と疑問を抱く。そして、奥平の発言を思い出し、陰謀の匂いを察知した。
一方、吉宗に呼び出された奥平は、囲い米の金子を軍備に流用した事実が露見したのではと焦っていた。そこへ要治郎が現れ、「尾張に攻め込もう」と奥平を焚きつける。明朝、宗武を大将に据え、奥平を先鋒として尾張の江戸屋敷を攻める計画を提案。徳川同士を戦わせて潰し合うことで、自らの野望を果たそうとしていた。
猪俣屋は「そんな恐ろしいことはできません」と尻込みするが、要治郎は奥平を脅して従わせた。さらに、おきぬの父猪野尾を銃で撃ち殺し、「本間家はかつて武勇で名を馳せたが、太平の世のせいで腐った。この世を作った徳川のせいだ。私は戦国の世を取り戻す」と狂気じみた声で叫ぶ。
そして、田九郎におきぬを殺すよう命じた。その間、町では戦が始まるという噂が広まり、騒ぎが巻き起こる。町人たちが恐怖に包まれる中、事態はますます緊迫していった。
親子で成敗
おきぬが田九郎によって牢から引き出されたその時、「やっと見つけたぜ」と声をかけながら現れたのは家重だった。家重の後ろからは応援の忍びたちが現れる。彼らは風魔の残党であり、戦国の世を取り戻すという理想に賛同し、公儀に悪評を流し、ならず者を集めて町を混乱に陥れていた首謀者だった。
家重はレイピアを抜き、「俺は戦が大っ嫌いなんでえ!人の命を命とも思わないてめえらの所業、断じて許せねえ!」と啖呵を切り、田九郎たちに斬りかかる。その戦いにひさめも助っ人として加わり、田九郎との勝負が再び始まる。田九郎が鎖を投げて家重の動きを封じようとするが、家重は軽やかにそれを避け、ひさめの一太刀によって田九郎は成敗された。
その頃、鎧をまとい怯えている奥平の元に現れたのは、笠を被った新之助――吉宗だった。「主の声も聞き分けられないとは、よほど追い詰められているようだな」と言いながら笠を外すと、奥平らはひれ伏した。吉宗は悪行の数々を非難すると、奥平は開き直り「かくなる上は筋書き通りに死んでいただく」と宣告。家臣たちが襲いかかるが、吉宗は峰打ちに刀を返し応戦。次第に追い詰められる奥平の姿に、御庭番たちも加勢した。
その様子を見た要治郎は逃げ出そうとするが、扉を開けるとそこに家重が立っていた。「何者だ?」と驚く要治郎に、家重は静かに語り始めた。「俺はいろんなとこが悪いが、耳だけはいいんでい。小せえ頃から、表で頭を下げながら陰で好き放題言う輩の声を山ほど聞いてきたからな。おかげで、思ってもいねえことを口にする声色はすぐにわかっちまう。おめえは今でも死んだ親父を逆恨みして、徳川を憎んでやがるな」
「俺の顔を見忘れたか?まあ、覚えてちゃいねえだろうが」と首を傾げる家重の姿を見て、要治郎はようやく目の前の人物が家重だと気づき、ひれ伏す。しかし、家重が悪行を追及すると要治郎は逆上。「ご嫡男は病で話すこともできぬはず!それが城を出ているなどありえぬ!」と叫び、刀を抜いて襲いかかる。
家重もレイピアを構え応戦。その間に奥平がふらふらと現れ、「家重は出来損ないだ。将軍は強く、美しくあるべきだ」と毒づく。しかし、吉宗は現れた家臣を次々と薙ぎ払いながら進軍した。
要治郎は吉宗に「父の仇!」と叫んで突進するが、吉宗はそれを軽くいなし、御庭番に成敗を命じた。奥平と要治郎は斬られ、互いにもたれかかるようにして崩れ落ちる。要治郎は断末魔の中で「放っておいても戦は起きる。江戸もいずれ火に包まれ、戦国の世が再び訪れる」と叫ぶ。
家重はそれに対し、「確かに平和は続かねえ。でも民の笑顔を守りたいと願う真心があれば、戦は起きねえ」と返す。その言葉に吉宗は感慨深く耳を傾けた。「綺麗事を…」と呟きながら息絶える要治郎。
最後に吉宗は膝をついている家重に手を差し出す。家重はその手をしっかりと握り返し、父と息子の間に静かな理解が流れた。
ドラマの結末
宗春は銃を手に「紀州を叩き潰してやる!」と意気込んでいた。しかし、その場に忠相が現れる。「武具が運び込まれていると聞きました。それに御家断絶された本間家とも関わりがあるとか。中を調べさせてもらいます」と宗春の制止を振り切り、堂々と中に入っていった。その結果、宗春の野望は露と消え、戦の火種は完全に断たれ、町には平和が戻った。
一方、吉宗が出かけようとしたところを爺が止める。「尾張は借金がかさみ、結局武具を売り払ったそうです」と忠相が報告。吉宗が「家重はどうした?」と尋ねると、忠光は「外に出てしまいました」と答える。爺は深いため息をつきながら、「嫡男も見なくてはなりませんね。若き日の上様を彷彿とさせる暴れ者で…」と苦笑した。
その頃、宗武と小次郎は城内で次の将軍について語り合っていた。「次の将軍は誰になるのでしょうね?兄上」と小次郎が尋ねると、宗武は意味深な笑みを浮かべるだけだった。
おきぬは父に代わって材木商を立て直す決意を固めていた。植林活動を進める彼女に声をかけたのは伊藤汝鈞()だった。「花の声を聞いてみなさい。誰の心にも花は咲いているはずや」と語りかけられたおきぬは、家重のことを思い浮かべた。
家重は団子を食べながらぼんやりと空を見上げていた。その姿を見た吉宗が近づき、「実らぬ恋か?」と冗談めかして話しかける。そして、懐から扇子を取り出し、「これをやろう」と家重に渡した。その扇子には「真心」と書かれていた。「俺とお揃いだ」と言う吉宗の扇子には「正義」の文字が刻まれていた。
「いらない」と素っ気なく答える家重に、吉宗は「そう言うな」と笑顔で扇子を渡す。その時、辰五郎たちが現れ、親子は町でのひとときを楽しむことになった。
初めて見る、息子の屈託のない笑顔に、いつかこの男が将軍となり、この国を守る日が来るのかもしれない…そう思う吉宗なのであった。
まとめと感想
後継ぎ問題に便乗して戦の世を取り戻そうとする要治郎の野望を、親子で共に成敗したという話でした。
17年ぶりの暴れん坊将軍は昔からのいいとこを押さえつつ、新たな試みと時事を融合してうまくまとまっていました。さらにエンタメ性も高く、飽きずに見られます。
キャストも個人的には悪くなかったです。辰五郎やおさい、爺はぴったりで、家重役の西畑さんも意外と良かったです。
時代劇に興味のない人も見たらきっと面白いと思います。今回は家重が堅苦しくない話し方をするので、時代劇特有の言葉使いが苦手な人もとっつきやすいかと思います。
今度もし放送されるなら、ただでさえハンデのある家重の助っ人が少なすぎるので、弟2人が助太刀するとか誰か追加してあげてください。
「必殺仕事人」シリーズの代わりに、今後はこちらのシリーズをやるのかもしれないと、思わせる内容です。しかし、仕事人は仕事人で面白いので、そちらも忘れずに作ってもらいたいです。
松平健さんが元気なうちは、この親子で成敗物語は続きそうな気がします。せかっくなのでエンディングに北島三郎さんの歌があれば嬉しかったですが、特にエンディングの曲はありませんでした。
シリーズ化されてまた放送される日を楽しみにしています。