【刑事7人シーズン5】9話はかつて実際にあった“帝銀事件”を元にした事件と、よく似た事件が起きる話となっています。なぜ71年も前の事件に似た事件が起きたのか?その背後には支配される側と支配する側の格差にありました。
【刑事7人シーズン5】9話のあらすじ
ベンチャー企業の社長で投資家の村野真(かないしゅう)ら4名の男女が会議室で死んでいるのが見つかり、専従捜査班が臨場する。村野は『貴田竜介』と書かれた名刺を握りしめており、現場からは現金2000万円がなくなっていた。天樹悠(東山紀之)は、被害者4人に対し、テーブルにグラスが8脚も残されていることに疑問を感じる。
公式HPより
東都大学の法医学教授・堂本俊太郎(北大路欣也)によると、被害者の体内からは、2種類が合わさった時に初めて致死性をもつ変わった毒物が検出されたという。また、現場に残されていたグラスに付着していた唾液から、一人2杯ずつ飲んだことも判明。天樹は、現場に2種類のお茶も残されていたため、それぞれを飲み比べさせたのではないかと疑う。
水田環(倉科カナ)と青山新(塚本高史)は、被害者の村野が握りしめていた名刺の人物・貴田竜介(尾崎右宗)のもとへ向かう。貴田は、村野が握りしめていた名刺と同じものは、とあるセミナーで名刺交換する際に100枚ほど配ったという。名刺交換した相手から貴田の名刺を回収できなかったのは6人。その6人の名前を見た野々村拓海(白洲迅)は、『松井章』の名を指差し、この人は現代アートの画家・松井章(須賀貴匡)だと断言する。また、現場付近で不審者を目撃し、通報した介護センターの職員・吉井理(清水尚弥)に松井の面通ししてもらった結果、自分が見た男は松井に間違いないと言う。
さらに、松井が事務所の口座に事件現場から消えたのと同額の2000万円を入金していたことも判明し、一気に松井の容疑が濃厚に…!
しかし、古い資料を読み返していた天樹は、今回の事件と71年前に起きた事件とが酷似していることに気付く。71年前に捕まった犯人は画家で死刑が確定しているが、当時から現在に至るまで冤罪を叫ぶ声が高いという。
松井を落とすべく取り調べを進める専従捜査班のメンバーだが、天樹は71年前の事件をなぞったかのような今回の事件に、“むしろ本当に松井が犯人なのか?”と疑問を感じ始める。
そんな中、松井には犯行時刻にアリバイがあることが判明。では、目撃者の吉井は、なぜ松井を見たと断言したのか…。専従捜査班は吉井の周辺を洗い始める。
一方、71年前の事件を調べ続ける天樹の前に、驚がくの事実が…!
【刑事7人シーズン5】9話のネタバレ
4人殺害犯
小野田金治
動機
自分の世話をしてくれてる吉井が支配される側の状況であるのを知り、かつて自分が起こした帝金事件と同様の事件を起こして救おうとした。
小野田の共犯
吉井理
動機
小野田の世話をしているうちに親しくなり、小野田の考えや戦争の話を聞く。それは現在自分が置かれている状況に似た人たちを救おうとしていたと知り、小野田がやろうとしていることに協力する。嘘の目撃証言をして別の人物に罪を被せ、小野田へ疑惑が向かないようにした。
逮捕の筋道
容疑者として上がった松井には当初アリバイがなかったが、後になってSNSに事件発生時刻当時にパーティーに参加していた写真が見つかった。それは、半グレ集団と一緒に写っていた写真のため、松井はアリバイの証明をしづらくて言わずにいた。
面通しで松井を見たと証言した吉井へ今度は容疑がかかる。しかし、吉井は事件発生時刻のころ書店で立ち読みをしていたのが防犯カメラの映像からわかる。
この事件がかつて起きた帝金事件に似ていると思った天樹は、堂本に頼み検出された毒物を帝金事件の毒物と比較してもらう。すると不純物さえも全く一緒の毒物だと判明した。
天樹は吉井が世話をしている小野田の家へ行き、小野田が帝金事件の犯人ではないかと告げる。その間に捜索をする海老沢が庭から毒物と奪われた金を発見する。小野田がなぜこの事件を起こしたのか、吉井が語る最中、海老沢は構わず小野田を逮捕しに向かう。だが、小野田は既に老衰で息を引き取っていた。
【刑事7人シーズン5】9話の感想
色々なことを絡めてきますが、結局何が言いたかったのか、どうなれば良かったのかがわかりづらい回でした。戦後すぐの食べるものもない状況と、雨風しのげて食事もできる現在とを比較する意味があったのか?謎です。
吉井は確かに重労働で未来も明るくないかもしれません。しかし、戦後と現在では生命の危機感が全く違います。“勝ち組”と自分との差が激しいというだけなのではないのか?そんな人物を助けるために小野田は立ち上がります。
また、支配者と被支配者がいない場所に行きたいといいますが、なぜか会社に勤めます。誰にも支配されたくないのに会社から給料をもらって生計を立てる、行動に矛盾を感じるため、いまいち説得力がありません。
今回の話は海老沢の言葉が一番的確な気がします。「大言壮語述べてやってることは、ただの逆恨みの犯罪じゃないか」しかし、吉井は「そう思うのは、あなたが飼い馴らされているからです」と答えます。
そんな吉井は小野田がいなくなってしまうと「助けてくれるんじゃなかったの」と泣きます。支配はされたくないが他力本願、自力ですることは会社という名の支配下に入る。言うこととやることが乖離していてぼんやりします。
今回は71年前に起きた帝金事件と元ネタになった帝銀事件の比較、登場人物の詳細などを書いていきます。
帝銀事件との比較
今回起きた事件がまるで71年前に起きた“帝金事件”のようだと天樹は言います。その帝金事件とはどういった事件だったのか?実際に起きた帝銀事件と比較してみました。
帝銀事件 | 今回の事件 | |
---|---|---|
発生年月日 | 1948年1月26日午後3時過ぎ | 1948年1月26日午後3時過ぎ |
発生場所 | 帝国銀行 | 帝都貴金属店 |
訪問者 | 東京都防疫班 | 行商人 |
見せた名刺 | 厚生省技官 | 進駐軍少尉 |
飲ませたもの | 予防薬 | コーヒー |
死者 | 16人中12人 | 16人中12人 |
盗った金額 | 現金16万円と小切手1万7450円 | 現金16万円と貴金属1万7450円 |
被疑者 | テンペラ画家 平沢貞通 | テンペラ画家 平原正通 |
判決 | 死刑 | 死刑 |
全く同じような内容です。1杯目を飲んで少ししてから2杯目を飲ませるという手口も一緒です。預金した金が「春画を描いて得たもの」という部分も一緒となります。
毒がバイナリー方式ではないかという説もありましたし、軍人が関わっているのではという説も一緒です。ただ、帝金事件が自決用の毒物だったに対し、帝銀事件は青酸化合物などを熟知した731部隊関係者ではないかという説でした。
どちらの事件も冤罪では?と当時から言われていたという部分も同じで、後に小説になりそれが話題となったという部分も一緒です。
ドラマ内では「異説帝金事件」というタイトルで紹介され、作者名が藤間清一となっていました。多分、実際の本は「小説帝銀事件」で作者は松本清張のやつだと思います。というのも、帝銀事件の話は色々な方が書かれているので断定はできません。
帝銀事件の話は熊井啓監督の映画もあって以前見たことありますが、なかなか考えさせられる作品です。現在は残念ながら廃盤のようです。
吉井と小野田について
今回出て来るこの2人について、ドラマ内では勝ち組の人たちよりも詳細を説明します。この2人の背景を知ることで、今回の事件がなぜ起きたのかがわかります。
吉井理とは?
- 23歳 訪問介護センター いのちの木 契約社員
- 14歳の時に両親が離婚
- 経済事情から定時制高校へ進学
- 日中アルバイトをして家計を助ける
- 卒業後、最初の介護センターで有期雇用契約社員になるが4年後解雇
- 3ヶ月の求職の後、現在の介護センターで再び有期雇用契約社員
- 労働時間は1日12時間から13時間
- 土日も呼び出されることもあり
- 年収は264万円で月収は交通費込みで22万2000円
- 昇給したのは1000円のみ
この3ヶ月の求職中に貴田竜介のセミナーだかに顔を出します。しかし、相手にされません。自分が下に見られ惨めな思いをしたと愚痴ります。妙な情報商材とか買ってしまいそうなタイプです。youtubeとかで意識高い系の動画とかを見てそうです。
小野田金治とは?
- 92歳 吉井に介護をしてもらってる
- 1944年 17歳の時に独立混成第15連隊に志願入隊
- 第32軍として沖縄戦に参加
- 終戦後帰還し、元兵士に対する扱いに不満を覚える
- 吉井と仲良くなり戦時中の話などを聞かせたりも
吉井が面倒を見ている老人です。戦争に行った人物でもあり、戦後は日本がおかしくなったと吉井に語ったりもしていたそうです。吉井は今まで知らなかったことを彼から聞かされ、今の自分が置かれている状況と重ねます。
小野田は意図的に吉井を煽ったわけではありませんが、現状に満足していない吉井には、小野田が救世主のように見えたようです。
【刑事7人シーズン5】9話のその他気になったこと
- リアリティを出すための片桐と海老沢の苦しむ演技
- それを見て“小芝居”と突っ込む青山
- 「馬鹿だけ馬鹿にしてろ」という貴田の著書
- 金稼いでるから人気なだけと言われる松井
- 味のある作品といって誤魔化す環
- 眼鏡が曇って前が見えない海老沢
- 若者がみんなこいつらみたいなら平和と言う片桐
【刑事7人シーズン5】9話のまとめ
今回の話はなんともチグハグな感じの話です。問題提起をしたいのだと思いますが、いかんせんスタンスがあやふやです。
右っぽいことを言ったかと思えば、左っぽいことを言ってみたり、結局、“勝ち組”になりたいだけなんじゃね?という風にしか見えません。しかし、人間の植民地化という言葉はなかなか考えさせられます。
貧しくとも社会貢献をして満たされたいというわけでもなく、支配されるのもするのも嫌だという割には、金持ち主催のセミナー行ってみたりと行動が謎過ぎます。これに帝銀事件を絡める必要はあったのか?ただ、絡めたかっただけじゃないのか?そんな気すらします。
次回最終回は久し振りに沙村の姿が見れます。といっても、味方として登場といった感じではなさそうでした。個人的には沙村がいた時の話のほうが好きでした。ぜひ沙村を度々出せるように、逮捕したり殺したりしないで欲しいものです。