【相棒 season24】第12話「特調係 陣川公平」は、“連続窃盗事件の解決”という表の成果の裏で、3年前のヴァイオリン強奪事件と密室殺人の真相に迫る物語でした。
本記事では単なるネタバレ解説に留まらず、
- 陣川回としての本質的な位置づけ
- 特調係という新設定が今後シリーズにもたらす意味
という2つの視点からも深掘りしています。
※本記事はネタバレを含みます。
第12話 事件ポイントまとめ
- 特調係(特別捜査係)は速水了子の主導で生まれた非公認チーム
- 3年前のヴァイオリン強奪事件は連続窃盗犯とは別犯
- 荒船友樹の死は自殺ではなく、共犯者による密室殺人だった
結論
本事件の核心は「盗まれたヴァイオリン」ではなく、才能・後悔・贖罪という感情が、二人の人生を歪めていたことにあります。
特調係は事件を解決するための装置であると同時に、誰かを“救おうとする意志”が生んだ、もう一つの正義でした。
登場人物
- 杉下右京/亀山薫
- 陣川公平(原田龍二):特調係。警視庁刑事部捜査第二課
- 速水了子(山下リオ):特調係。警視庁総務部用度課
- 若宮千晶(行平あい佳):ヴァイオリニスト・音大教授
- 若宮栄太郎(奥瀬繁):千晶の父
- 荒船友樹(上川拓郎):西禄プロパン社員
- 大和田紀彦(松本祐一):若葉音楽大学職員
- 沼口拓真(津村和幸):ヴァイオリン教師
ネタバレあらすじ(時系列)
① 特調係誕生の裏側|陣川の表彰と“非公認捜査”
連続窃盗事件を解決し表彰された陣川公平。しかしその捜査は、速水了子の指示をイヤホンで受けながら進めるという、警視庁非公認の形だった。
2人は防災倉庫を拠点に「特調係(特別調査係)」を立ち上げ、未解決事件を独自に追っていた。
② 3年前の未解決事件|消えた名器ヴァイオリン
窃盗犯・萩原和裕が関与を否定した1件──それが3年前、若宮栄太楼宅で起きた時価3億円のヴァイオリン強奪事件だった。
娘・若宮千晶は犯行現場に居合わせ、ヴァイオリンを奪われた過去を持つ。
③ 右京の着眼点|暗証番号とガスメーター
右京は、この事件が偶然の窃盗ではなく「内部情報を知る者の犯行」である可能性に気づく。
ガスメーターの交換時期から、作業員が金庫を覗き見た可能性を指摘し、捜査線上に荒船友樹(ガス会社社員)が浮上する。
④ 突然の死亡|荒船転落死と“自殺扱い”
荒船は自宅で転落死して発見され、部屋から盗まれたヴァイオリンが見つかる。一課は密室状態を理由に自殺と判断。
しかし右京は、ドアの状態に拭えない違和感を覚えていた。
⑤ 密室の違和感|外から施錠された可能性
右京と速水は、ドアについた傷から外部から細い金属棒で施錠された密室だった可能性に気づく。
荒船の死は自殺ではなく、他殺の線が濃厚となる。
⑥ 消えた“何か”|棚に残された痕跡
荒船の部屋には、不自然なホコリの跡が残っていた。右京は「犯人が何かを持ち去った」と推測。
それは後に、トロフィーだった可能性が浮かび上がる。
⑦ 共犯者の存在|ヴァイオリンは誰が管理していたのか
ヴァイオリンの保存状態が良好だったことから、右京は「荒船は単独犯ではない」と断定。
3年間、名器を管理していたのは共犯者だったと推理する。
⑧ 点と点がつながる|ダーツ部品が示す真相
荒船のロッカーから見つかったダーツ部品。
荒船がダーツ大会の優勝者だったこと、消えたトロフィーの存在から、共犯者は大和田紀彦だと判明する。
⑨ 真犯人の告白|自己保身が生んだ殺意
警察の捜査が迫っていると察した大和田は、荒船をベランダから突き落として殺害。
その後、密室を作り自殺に見せかけていた。
⑩ ヴァイオリンの帰還|救済としての結末
回収されたヴァイオリンは、若宮千晶の元へ戻る。
右京の言葉に背中を押され、千晶は再びヴァイオリンを手に取り、音を奏で始める。
⑪ 特調係、存続へ|悲恋で終わらない陣川回
事件解決後、特調係は解散されず存続。
陣川と速水は、今後も事件に関わることを示唆して物語は幕を閉じる。
トリック整理|なぜこの密室は成立したのか?
本件のトリックは、「自殺に見せかけるための密室工作」と「単独犯に見せる偽装」の二重構造になっていました。
① 密室は“内側”ではなく“外側”から作られていた
荒船友樹の部屋は、発見時に玄関が施錠された完全な密室でした。そのため一課は「自殺」と判断します。
しかしドアに残された傷から、玄関の外側から細い金属棒(細い金棒状のもの)を差し込み、施錠した痕跡が見つかります。
つまりこの密室は、――犯人が外に出たあとで完成させた“作られた密室”でした。
② 転落死は事故ではなく“計画された殺害”
荒船はベランダから転落して死亡していますが、それは事故ではなく、共犯者・大和田紀彦によって足をすくわれた結果でした。
- ベランダという「事故に見せやすい場所」
- 転落後に密室を作ることで「自殺」に見せる
この二段構えによって、殺人でありながら事件性を消すことに成功していたのです。
③ ヴァイオリンを“現場に残した”理由
通常、犯人は盗品を現場に残しません。しかし本件では、3年前に盗まれた名器ヴァイオリンが荒船の部屋に置かれていました。
これは、
- 荒船を「単独犯」に仕立てるため
- 共犯者の存在を完全に消すため
という意図的な偽装でした。
右京が違和感を抱いたのは、ヴァイオリンの保存状態があまりに良すぎたからです。
④ 消えたトロフィーが示した“もう一人の犯人”
荒船の部屋には、棚に正方形のホコリ跡が残っていました。右京はそこにあったものを――「トロフィー」と推理します。
右京は以前、大和田に会った時、左手甲にあったタコに目を留めていました。やがて特調係が荒船の使用していた職場のロッカーから、謎の部品を持ってきます。右京はそれを見て、ダーツのバレルと呼ばれる部品だと気づきました。
なくなったトロフィー、手のタコ、ダーツの部品――大和田と荒船が右京の頭の中で結びつきました。
このトロフィーこそが、荒船と大和田をつなぐ“唯一の証拠”でした。だから、大和田はトロフィーを持ち去ったのです。
動機整理|それぞれの人物の心の核
本事件の動機は、単純な金銭目的ではありません。
それぞれの人物が抱えていた「才能への執着」と「自己否定」が、悲劇を生んでいます。
大和田紀彦の動機|憧れが妬みに変わった瞬間
大和田は、ヴァイオリンに強い憧れを抱いていました。
しかし自分が選ばれることはなく、才能の差を思い知らされ続けます。
- 若宮千晶という「本物の才能」
- ジュリオ・フェリーニという「触れてはいけない名器」
それらを前にして生まれたのは、敬意ではなく、歪んだ欲望でした。
荒船が捕まれば、自分の罪も露見する。
だから殺した――それは保身であると同時に、夢に敗れた者の最後の悪あがきでもありました。
速水了子の動機|救済という名の執着
速水了子は、かつてプロのヴァイオリニストを目指していました。
中学1年の時、若宮千晶と同じコンテストに出た了子は、優勝したいため千晶のバイオリンの肩当を隠します。
すぐに了子は疑われますが否定し続けました。すると千晶は自分が家に忘れてきたのを思い出したといて、了子のことをかばいました。
それでも千晶は優勝し、了子は敗北と同時に「人としての差」まで突きつけられます。
その瞬間から了子の中で、
- 千晶は「救ってくれた人」
- 自分は「救われた側」
という関係が固定されてしまいます。
3年前の事件後、千晶が舞台から姿を消したことで、了子は「今度は自分が救う番だ」と強く思い込むようになります。
警察官になり、特調係を作り、事件を追い続けたのも、すべてはそのためでした。
若宮千晶という存在|誰よりも自分を罰していた被害者
千晶は、ヴァイオリンを守れなかった自分を責め続けていました。
犯人よりも憎んでいたのは、「何もできなかった自分自身」だったのです。
だからこそ、
- ヴァイオリンが戻っても弾こうとしなかった
- 舞台に戻る資格はないと語った
この自己否定こそが、彼女を最も深く縛っていた“もう一つの事件”でした。
ここまで見てきたように、事件そのものは論理で整理できました。
では、
- なぜこの物語は“悲恋ではなく救済”で終わったのか?
- そして新設定・特調係は何を意味しているのか?
- ここからは、その“物語としての意味”
に踏み込みます。
陣川回として見た時の意味|なぜ今回は“悲恋で終わらなかったのか
陣川公平がメインで描かれる回は、これまで「善意が裏切られ、想いが報われない」という結末で終わることがほとんどでした。
しかし本話では、陣川は傷つきながらも否定されず、関係性も断絶されないまま物語が閉じています。
1.今回の陣川は「恋に溺れた人」ではない
過去の陣川回では、
- 相手を盲信する
- 違和感に気づけない
- 結果として利用される
という構図が繰り返されてきました。
一方、本話の陣川は、
- 速水了子を信じながらも
- 捜査そのものは右京・亀山に委ね
- 自分は「支える側」に回っている
つまり陣川は、
👉 感情の当事者でありながら、判断の主体ではなかったのです。
これが、悲恋で終わらなかった最大の理由だと言えます。
2.速水了子は“裏切る女”ではなく“善意の人”
本話が従来の陣川回と決定的に違うのは、速水了子が陣川を踏み台にする存在ではなかった点です。
彼女は確かに、
- 偶然を装って陣川に近づき
- 特調係を作り
- 非公式捜査を行った
という意味では“利用”していました。
しかしその動機は、誰かを陥れるためではなく、救うためでした。
陣川は最終的に、自分が利用されていた事実を知ってもなお、彼女を否定しません。
ここにあるのは恋愛的な破綻ではなく、同じ方向を向いた者同士の理解です。
3.陣川が守られた回だった
もう一つ重要なのは、右京と亀山が陣川を「守る側」に回っていた点です。
- 真相解明は特命係が担う
- 陣川は責任を負わされない
- 速水の罪も、感情論で裁かれない
これは、制作側が
👉 「陣川をこれ以上傷つけない」
という明確な意思を持って描いているように見えます。
だからこそ今回は、陣川回でありながら“後味の良い終わり方”になったのです。
特調係という装置の今後|なぜ今、この設定が必要だったのか
特調係(特別捜査係)は、単なるスピンオフ要員ではありません。
これは 今後の相棒を柔軟に動かすための“装置”だと考えられます。
特調係は「特命係の代替」ではない
まず重要なのは、特調係が特命係のコピーではない点です。
| 特命係 | 特調係 |
|---|---|
| 正式部署 | 非公認 |
| 事件後に呼ばれる | 事件前から動く |
| 真相解明が役割 | 糸口探しが役割 |
特調係は、
👉 事件の“前段階”を拾い上げるための存在です。
今後考えられる使い方①|未解決事件の掘り起こし
今回のように、
- 過去の事件
- 一度は処理された案件
- 一課が深入りしない事案
これらを特調係が拾い、特命係に託すという流れは非常に使いやすい。
特に、
- 冤罪
- 迷宮入り寸前の事件
- 内部的に触れにくい案件
との相性が良い装置です。
今後考えられる使い方②|警察内部の“グレー案件”
特調係は非公認であるがゆえに、
- 上司に知られると困る
- 表彰されても困る
- 記録に残せない
という立場にあります。
これはつまり、
👉 警察組織の矛盾や闇を扱えるポジションでもあります。
特命係が「外部の正義」なら、特調係は「内部からの違和感」と言えるでしょう。
今後考えられる使い方③|右京が“動けない時”の代替導線
年数を重ねたシリーズだからこそ、
- 右京が最初から動くと話が早すぎる
- 事件を“寝かせる”必要がある
そんな時に、特調係は物語の助走役として機能します。
「調べていたら、気になることがありまして」という一言で、自然に特命係へバトンを渡せる。
これはシリーズ構成上、かなり強力な装置です。
総合的に見た今回の意味
第12話は、
- 陣川というキャラクターを“消耗品にしなかった”
- 特調係という新たな導線を提示した
- 相棒の物語幅を広げた
という点で、シリーズの中でも“転換点的な回”だったと言えます。
悲恋で終わらなかったのは偶然ではなく、
👉 今後も陣川と特調係を使うための、明確な意図だった。
そう考えると、この回の位置づけがはっきり見えてきます。
まとめ|相棒24 第12話を理解するための3つの要点
- 特調係は「正義への執念」から生まれた非公式チーム
- 事件の本質は、才能と後悔が生んだ歪み
- ヴァイオリンは“奪われた人生”そのものだった
この回が刺さる人/刺さらない人
刺さる人
- 陣川回が好きな人
- 感情と論理が交錯する物語が好きな人
- 救済で終わる相棒が見たい人
刺さらない人
- スピーディな刑事アクションを求める人
- 犯人当て重視の人
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