【横溝正史短編集4】1話『悪魔の降誕祭』のネタバレと感想

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NHKで放送されたドラマ【横溝正史短編集Ⅳ 金田一耕助悔やむ】1話『悪魔の降誕祭』のネタバレと感想をまとめています。

金田一に依頼をしに来た女性が事務所で亡くなり、なぜか壁のカレンダーは5日後の12月25日になっていた。迎えたクリスマスの日、新たな犠牲者が出てしまい……。

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『悪魔の降誕祭』のあらすじ

志賀葉子(土本燈子)は殺人事件が起こる気がして怖いと、金田一耕助(池松壮亮)に電話をする。金田一は話半分で聞きながら、葉子に事務所で待つよう告げて出かけた。やがて金田一が戻ってくると、そこには口から血を流して亡くなっている葉子がいた。

葉子は人気ジャズシンガーの関口たまき(月城かなと)のマネージャーだった。夫の服部徹也(竹本織太夫)も一緒に事務所に現れ、金田一は彼女たちに聴取をする。

中でも葉子のハンドバッグの中から見つけた切り抜きが、何を示しているのか金田一にはまだ分からなかった。壁の日めくりカレンダーはなぜか12月25日になっていたのに気付き、金田一はたまきにクリスマスの予定をきく。

すると、ごく親しい人たちで集まってパーティーをする予定だとたまきは話した。

やがて起きる第二の殺人。金田一が導き出した犯人は……?

2話『鏡の中の女』→

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『悪魔の降誕祭』のネタバレ

金田一は由紀子がたまきの紅茶に毒を入れているのに気付き、あえて由紀子の気を引いてその隙にたまきのものと彼女の紅茶を入れ替える。それを知らずに紅茶を飲もうとしている由紀子に、母親のと入れ替えたのだが、本当に飲むことができるのかと問いかける。由紀子は全てバレたと知ると、紅茶を一気に飲み干して自殺した。

葉子が持っていた新聞記事は、裏面に意味があった。そこには犬の集団中毒が発生したという記事があった。犬たちは青酸カリで死んでいた。葉子はそれを金田一に伝えたかった。

由紀子は以前、本当の母親を同じく青酸カリで殺害していた。父も母も憎悪の対象以外の何者でもなかった。葉子はそれで不安を感じ、金田一にすがろうとしていたところ、由紀子に感づかれてしまう。

金田一の事務所で待っていた葉子のところに由紀子がやってきて、葉子は驚きのあまり鎮痛剤を飲もうとする。しかし由紀子は葉子の薬を青酸カリにすり替えていた。由紀子は葉子を殺害して有頂天になり、カレンダーを破って殺害予告をした。

あの晩、由紀子は父親を刺す。徹也は自分の娘をかばおうと、罪業感から行動する。偶然通りがかった浜田を証人として、由紀子と共に立ち去るよう合図した。その後、ドアを閉めて徹也は亡くなった。

由紀子はたまきを自分一人のものにしておきたいという、少女らしい独占欲から徹也を殺害した。そしてたまきの財産を狙って、今度はたまきを殺害しようとしていた。

事件発生

金田一耕助(池松壮亮)は事務所で志賀葉子(土本燈子)からの電話を受け取った。葉子は何となく殺人事件が起きる気がして怖いと言う。金田一はちょうど外出の支度をしていたため、管理人に葉子の部屋に連絡してもらい、そこで待機するよう頼んだ。

等々力(ヤン・イクチュン)は面白そうな電話ではないかと揶揄したが、金田一は近頃この手のノイローゼが増えているだけだと一蹴した。

「霊感が囁いている。この件はいずれ私に繋がってくる」

予言めいた言葉を等々力は放ち、日めくりカレンダーを千切って12月20日を示した。促されるまま金田一は等々力とともにその場を後にした。

現場から戻った金田一は、葉子が待つ部屋の前で呼びかけた。扉を開けると、葉子は白目をむき、大きく開いた口から血を流して絶命していた。思わず金田一は壊れた笛のような不気味な音を喉の奥から漏らす。ソファのそばには、ひっそりとピルケースが置かれていた。

魅惑の歌姫

緑ヶ丘荘から遺体が運び出された。島田警部補(みのすけ)によれば、死因は青酸カリ中毒だった。遺体の身元は、ジャズシンガー関口たまき(月城かなと)のマネージャー、志賀葉子と判明した。

聴取のため、関口たまきが現場に姿を現す。その華やかな気配に、金田一は思わず息を呑んだ。同伴した夫・服部徹也(竹本織太夫)に対し、金田一は発見の顛末を淡々と語ると、たまきは堪えきれず腰を崩して座り込み、鎮静剤を服用した。

調査の途上、葉子のハンドバッグの中から先月、たまきが羽田に到着した際の新聞切り抜きが見つかった。アメリカツアーから帰国したときのもので、切り抜きに写る男性について徹也は道明寺修二(上川周作)ではないかと呟く。その言葉に、たまきの目がかすかに震え、徹也の鋭い視線がその横顔を透視するかのようだった。

島田が道明寺修二の素性を問いただすと、たまきはピアニストだと説明した。さらに切り抜きに写りかけている女性についても説明を始めた。

「多分、柚木さんの奥様です。在米中から道明寺さんとは懇意にしていました」

さらに島田が関口家の家族構成を尋ねると、たまきは伯母の梅子(YOU)、娘の由紀子(青戸虹子)、志賀、それに女中が一人と答えた。由紀子は志賀の連れ子だという。

クリスマスの予定について金田一が問いかけると、たまきはごく親しい人だけでパーティーを開くつもりだと静かに告げた。

その直後、島田が不思議そうにさっきクリスマスのことを尋ねたのはなぜかと訊ねる。金田一がふと見た日めくりカレンダーは、先ほど20日だったはずの日付が25日になっていた。留守中に誰かに五枚剥ぎ取られたらしい。

「予告の殺人だ」

等々力が低くつぶやいた。たまきが身辺から離さない鎮痛剤を、葉子も愛用していた。青酸カリはそこに入っていた

忌まわしき過去

たまきは終戦の翌年、女学校を卒業すると雑誌社に入社した。その編集長が服部徹也だった。世間知らずのたまきは「独身」という言葉を鵜呑みにし、服部に身を任せてしまった。やがて雑誌社の経営が傾くと、服部はたまきを看板娘にしてバーを開業した。たまきが歌ううちに人気は急上昇し、その名声は瞬く間に広まった。

一方、徹也の妻・可奈子(佐藤有里子)は夫とたまきの関係を知りながらも、自身もたびたび浮気を繰り返していた。そんな折、可奈子は青酸カリを服用して亡くなり、自殺ということになった。結果として、徹也とたまきは可奈子の娘・由紀子を引き取り、共に暮らすことになる

聴取の席で島田警部補は、たまきが封筒を開けようとしたときの表情を指摘した。たまきは自分に関する記述がないかを恐れていたのではないかと疑っていた。また、志賀葉子がたまきの亭主殺害計画を、ばらそうとしているのではと危惧した可能性も示唆された。

たまきには結婚以前に数度の妊娠歴があり、その都度堕胎していた。古風な家庭に育った彼女は子どもは欲しかったものの、私生児だけは絶対に認められないと考えていたという。堕胎のたびに悲しみを抱かせる服部に対し、「殺して自分も死にたい」と漏らしていたこともあった

志賀葉子もまた、たまきの真似をして鎮静剤を常用する癖があったため、たまきなら薬をすり替えられる機会は、いくらでもあったと島田は語る。

金田一は一連の事件とは別に、新聞の切り抜きが何を意味するのか気にかかっていた。島田によれば、道明寺修二はたまきに熱心に接近していたとの評判があり、切り抜きを見せるつもりだったのではないかという。羽田到着時の完全な写真には、確かに柚木繁子(板谷由夏)の顔も写っていたが、葉子はなぜその部分だけを切り取ったのか。金田一にとって、それが最大の謎であった。

新たな犠牲者

等々力からの電話が入った。今度は「あなたの予感が的中しました」と告げられる。舞台は12月25日、たまきの家で開かれていたクリスマスパーティー会場だった。そこで徹也が何者かに背後から刺され、絶命していた

金田一が現場に到着し、家族から事情を聴く。たまきは発作を起こして2階で眠るように横たわっており、死体を発見したのは修二だった。修二はまるで悪夢を見ているようだと言い、11時頃にたまきと居間で話していたと語った。

10時半頃、ポケットからハンカチを取り出そうとした際に「十一時ジャスト。私の居間へ。聞いていただきたい話があります。たまき」と書かれた手紙を見つけたという。

到着時には部屋は真っ暗で、たまきも「今晩十一時ジャスト。あなたの居間へ。きいてもらいたい話があります。修二」とだけ記された手紙を修二に差し出した。しかし、たまきも修二もそんな手紙を書いた覚えはなかった

その後、物音を聞いてドアを開けると徹也が倒れ込み、ドアにもたれかかった状態で息絶えていた。金田一は小廊下を抜け、脱衣場を経由して再び居間へ戻った。

島田警部補は葉子殺しとの関連を疑い、脱衣場で見つかったロケットに目を留める。蓋を開けると中に修二の写真が入っており、亭主の目を盗んで愛人の写真を胸に抱えていたのではないかと推測した。

そのとき、伯母の叫び声が響き、廊下に飛び出すとたまきがまるで夢遊病のように歩き回っていた。金田一がその光景を目撃するのは初めてだった。倒れ込むたまきを修二が抱き起こし、再び部屋へ運び込むのを金田一は見守っていた。

聞き込み

梅子によれば、たまきは時折あのような発作を起こすという。凶器はサロンにあった七面鳥用の肉切りナイフだった。ロケットはたまきのものではなく、繁子の所持品だった。繁子は夫に先立たれた未亡人で、落とした場所は脱衣場だと答えた。

繁子は道明寺への想いを自覚しており、道明寺とたまきの関係にやきもきしていた。道明寺が屋敷を抜け出した約3分後、たまきが部屋を出ていくのを見て後をつけたという。小廊下で立ち聞きしようとしたところ、すでに背中にナイフを突き刺された徹也が立っていた。驚いた繁子は叫び声を上げ、慌てて脱衣場から逃げ出す際にロケットを落とした。

金田一は徹也が小廊下に忍び込んだのは、道明寺やたまきが居間へ向かう前のことだったと語った。

由紀子に聞き込みを行う。父を最後に見たのは11時ちょっと前、脱衣場の前だったという。由紀子が手を洗いに行くと、父があとからついてきた。「もう遅いから部屋に帰って寝なさい」と言われ、由紀子は家政婦の浜田(伊勢志摩)と一緒にサロンへ戻った。その際、他に誰ともすれ違わなかったと証言する。

浜田への聴取でも、由紀子以外の人物は見かけなかったと断言した。

由紀子は母に挨拶して寝室へ向かおうとしたが、母は客に囲まれて話し込んでいたため、代わりにテレビを見て過ごしているうちに父の姿が消えた。しばらくして、居間から道明寺の声が聞こえてきた。

聴取の席で由紀子に手紙を差し出すと、「これは手紙ではない」と答えた。それは学校の寄宿舎を舞台にしたシナリオの書き潰し原稿の断片で、由紀子のノートから破り取られたものだった。原稿には本来「十時ジャスト」と記されていた箇所に、無理やり「十一時」と書き加えられていた

そのとき伯母の梅子がやって来て、「たまきが話があると言って皆を呼んでいる」と告げた。

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事件の真相

金田一は一言も発せず、しばし沈黙が場を満たした。やがて梅子が運んできた紅茶を一口含む。等々力が何か聞きたいことはないかと問うと、金田一の表情が瞬間だけ揺れた。

そのとき、脱衣場の奥から不気味な声が漏れ、金田一は等々力と島田を調べに向かわせる。ほどなく二人は戻り、異状はないと報告した。金田一は「失礼しました」と短く詫び、由紀子に向き直って「驚かせてすまなかった」と告げる。

由紀子が紅茶を口に運ぼうとした瞬間、金田一は静かに問いかけた。

「あんた、その紅茶飲む勇気がある?」

彼は由紀子が密かに、紅茶に毒を入れた場面を見逃していなかったのだ。

「君が警部に気を取られている間に、母君の紅茶と入れ替えておいた」

由紀子は俯いたかと思うと絶叫をあげた。その顔はみるみる歪み、身体は激しくねじれ、人の皮を被った化け物のような異形の姿を露わにした。そして由紀子は紅茶を一気に呷る

「誰が…おまえなんかに捕まるものか。おまえなんかに!」

怒声を轟かせ喚く由紀子に、居合わせた者すべては悲鳴をあげて震え上がった。

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『悪魔の降誕祭』の結末

事務所に戻り、警部たちが金田一に問いかける。最初から由紀子に目をつけていたのかと感心し、志賀葉子が持参した記事には何の意味があるのか彼らは気になっていた。

金田一は裏面の記事に意味があると言う。返すと「相次ぐ愛犬の嘔吐と痙攣 謎の奇病が流行か」という見出しの記事だったと明かす。記事は集団中毒による犬の毒殺とされ、青酸カリが使われていた

由紀子は以前、母親を青酸カリで殺害していた。父母は彼女にとって憎悪の対象以外の何者でもなかった。志賀葉子が不安に駆られて金田一に助けを求めようとしたところ、由紀子に感づかれ、鎮痛剤の中身を青酸カリにすり替えられて命を奪われた

その後、有頂天になった由紀子は日めくりカレンダーを破り、殺人を予告した。

刺された服部徹也は、娘をかばおうと行動する。幸い、家政婦の浜田が現れたため、彼女を証人として由紀子と共に出るよう合図を送ったあと、ドアを閉めて明かりを消し、ひっそりと息を引き取った

徹也殺害の動機は、たまきを独占したいという幼い独占欲だった。さらに強欲でたまきの財産を狙い、殺害しようとした。島田警部補は由紀子を「一点の同情の余地もない鬼畜」と断じた。

等々力が「悪魔に自殺のチャンスを与えたのか」と金田一を問いつめると、突然由紀子に成り代わったように見えた。驚く2人の背後に由紀子の姿を装った金田一が現れ、不気味に「メリー・クリスマス」と笑いかけた。警部たちは驚愕し、凍りついた。

2話『鏡の中の女』→

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『悪魔の降誕祭』のまとめと感想

娘は母を独占するために父を殺し、母の財産を得るために今度は母を殺そうとしたという話でした。

横溝作品らしいドロドロした男女関係が、実は根底にありました。たまきは騙されて不倫をし、妊娠をするが堕胎します。悲しい思いをさせる徹也を殺そうと思ったこともあったそうです。しかし、由紀子の実の母である可奈子もまた、別の男性と不倫していました。

登場人物はみな、誰かが誰かを愛していて、それが不倫という形だったり、一方通行だったりします。その結果、由紀子は両親を嫌悪しました。そしてまず実の母親を殺害します。そして父も殺害しますが、父は最期に由紀子をなんとかかばおうとしました。

両親のせいでおかしくなったような雰囲気もありますが、由紀子は生まれついての悪魔だったような気がします。

幕間と称してドラマの最後に「キャストによる悪魔ダンス」という、みんなであのダンスを見よう見真似で踊るオマケが面白かったです。

2話『鏡の中の女』→

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