【モンスター】7話のネタバレと感想|ドラマと心中したい女性の狂気

2024秋ドラマ
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【モンスター】7話のネタバレと感想をまとめています。

人気ドラマのロケ地でイベントが開催され、大勢の人が詰め掛けた。しかし、コラボ饅頭屋の店員が感電する事故が発生し、被害者はイベント主催者だけでなく、雇い主と市も相手取り損害賠償請求したいと杉浦に依頼するが……。

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【モンスター】7話のあらすじ

『君が生まれたこの街で』という連続ドラマのロケ地になった公園は、聖地巡礼で放送から1年たっても盛況だった。ドラマのプロデューサーである坂口武広(林泰文)が、トークショーをするイベントが開催されることになった。

ドラマとのコラボ饅頭を製造する、和菓子屋の『みやこし』もイベント当日に饅頭を販売した。すると従業員の前園里佳子(堀未央奈)が機材で感電してしまう。命に別状はなかった里佳子だが、退院後にイベントを主催したテレビ局と神平市、さらには自分が勤める和菓子屋を損害賠償請求で訴える。責任は誰にあるのか?そして彼女の本当の狙いは……?

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【モンスター】7話のネタバレ要約

饅頭屋は市の担当者から無理難題を言われていて、市の担当者はテレビ局から無理を言われていた。

テレビの担当者はプロデューサーに無理を言われていた。しかし訴えられたことで、プロデューサーは局を退職する。

ドラマを愛し過ぎるがゆえに、続編が作られることを何とか阻止したかった里佳子は、自作自演で感電した。

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【モンスター】7話の詳細なネタバレ

大迷惑

大人気連続ドラマ『君が生まれたこの街で』の撮影が行われた公園は、放送終了から1年が経ってもなお、多くの観光客やファンで賑わっていた。ドラマの余韻は街全体を包み込み、地元住民にとっては嬉しくもあり、迷惑でもあった。

そんな中、住民の中本英子(真下有紀)が事務所を訪れた。「役所に何度も電話してみたんですけど、全然対応してくれないんです!」と、苛立ちを隠さない。英子の話によると、近くの公園では近日中にドラマのプロデューサーによるトークショーが開催される予定で、その日は主演の本田翔馬(青木瞭)の誕生日でもあるため、サプライズで彼が登場するのではないかという噂が広がっていた

「イベント自体はともかく、普段から人が多すぎて困っているんです!」と英子は訴える。特に問題となっているのが、地元の和菓子店「みやこし」だ。本田翔馬が撮影中にそこのおまんじゅうを食べている写真がSNSでバズった結果、店の前には毎日長蛇の列ができるようになった。それだけではなく、店側がドラマとのコラボ商品を発売したことで、さらに人が押し寄せる事態に。

「おまんじゅう一つ買えなくなっちゃって、私たち地元の人間には迷惑でしかありません!」と英子は憤る。「でも、どこに何を言えばいいのか分からなくて、それを相談しに来たんです」と疲れた表情で付け加えた。

神波亮子(趣里)は英子の話を黙って聞いていたが、ふと軽い調子で口を開いた。「じゃあ、引っ越しちゃえばどうですか?」その提案に英子は驚きと呆れが混じった表情で反応した。「悪いのは向こうなのに、なぜ私が引っ越さなきゃならないんですか?」

「裁判を起こすとなると、時間もお金も労力もかかりますよ。それに比べたら、引っ越しの方が手っ取り早いかも」と亮子は肩をすくめて言った。しかし英子は納得できない様子で反論する。「引っ越しだって労力とお金がかかるじゃないですか」

相談を終えた亮子を見た杉浦義弘(ジェシー)は、昨日とは打って変わって元気そうな様子に「意外と元気そうですね」と驚いた。

事故発生

街中がイベントで賑わいを見せる中、公園には多くのファンが詰めかけていた。ドラマの影響を受けた地元は観光地化しており、今回のトークショーも大勢の来場者で盛り上がっていた。亮子と杉浦も様子を見に来ていたが、コラボ饅頭の価格に杉浦が文句を言う。「こんなに高いなんて、観光地価格もいいとこですよ!」

その時だった。一人の女性が突然倒れ、会場は一瞬で緊張感に包まれた。倒れたのはコラボ饅頭を販売していた「みやこし」の店員、前園里佳子(堀未央奈)だった。周囲が慌てて駆け寄る中、救急車が呼ばれ、彼女はすぐに病院に運ばれていった。

「トークショーはどうするんですか?」と心配する声に、ディレクターの坂口武広(林泰文)は淡々と答えた。「主催者としては会場の安全を最優先にするべきですが、最終判断は上層部に任せます」

その後、杉浦が救急車に付き添い、亮子は公園の片付けを見守る形になった。

事件後、公園は安全上の理由で閉鎖され、ファンたちの足も遠のいていった。数日後、事務所に突然里佳子が訪れる。「助けていただいてありがとうございました」と感謝の言葉を述べながらも、どこか怒りの表情を浮かべていた。

里佳子は語った。「感電だったんです。一歩間違えたら命を落としていました。イベントの安全対策が全くなっていなかったせいです。入院費も馬鹿になりませんし、その間働けなかったんです。しかも、気分的にもうあの土地では働けません。結局、店を辞めることになりました」

彼女の言葉には怒りと悔しさが滲んでいた。「私はあの主催者全員を訴えたいです。役所の観光課、テレビ局の事業部、そして『みやこし』です」

亮子は静かに彼女の話を聞き、訴訟の可能性について検討を始めた。

その頃、杉浦はパラリーガルたちと相談をしていた。事件の規模や関係者の多さに戸惑う声が上がる中、村尾洋輔(宇野祥平)がぽつりと言った。「これ、神波先生ならどうする?」

その言葉に杉浦は大きく息を吸い込み、顔を引き締めた。「いや、僕がやります」彼は迷いを振り払うように言い切った。その決意には、事件を解決するための熱意が感じられた。

責任のなすりつけあい

亮子たちは早速、事務所でイベントの主催者たちを交えて話し合いを行った。出席者には、役所の観光課の吉原秀介(夙川アトム)、東都テレビの笠野凌輔(須田邦裕)、そして「みやこし」の店主・宮越周(ドロンズ石本)がいた。

「安全管理はどのように行われていたんですか?」と杉浦が問いかけると、役所の吉原は「機材の設置は東都テレビに任せていました」と答えた。しかし東都テレビの笠野は、「機材と技術スタッフは貸しましたが、公園の管理は観光課の責任です。総合的な安全チェックは観光課が行うべきです」と反論。

さらに笠野は、「機材にお客さんが触れないように、ちゃんとコーンを設置していました」と主張した。すると宮越が、「それなのに、なぜ里佳子さんが中に入ってしまったのか?」と疑問を呈した。

里佳子は「入ったんじゃありません、倒れたんです」と強く言い返した。「寝不足で疲れていたんです。コラボ饅頭のせいで。分かっていましたよね?」と宮越を非難する。

宮越は「疲れていたのはうちのせいじゃありません。夜もスナックで働いていたでしょう?」と反論。里佳子は「それは饅頭屋の仕事が低賃金だからです!」と声を荒げた。

「低賃金なのは分かっていてうちに来たんじゃないですか?」と宮越が返すと里佳子は「コラボ饅頭をやるなんて聞いてません」と反論し、笠野が口を挟んだ。「これって労災ですよね?僕らには関係ないと思いますが」

互いに責任をなすりつけ合う様子に業を煮やした里佳子は、机を強く叩いて立ち上がった。「労働環境が悪化したのは、テレビ局が街への影響を考えずに撮影し、観光課が聖地巡礼を煽ったからです!あなたたち全員を訴えます。1億円、請求します!」と宣言した。

事務所に戻った杉浦は、パラリーガルたちと共に今後の方針を話し合った。「誰も事故の瞬間を見ていないので、何が起こったのか分かりません。しかし、主催者には何らかの責任があるはずです。どこにどんな責任があったのかを調べていきましょう」と杉浦は提案した。

「どう思いますか?」と杉浦が亮子に意見を求めると、亮子は淡々と答えた。「饅頭屋の仕事がそんなに過酷なら、辞めればよかったのに。辞めていれば感電事故にも遭わずに済んだでしょう」

その冷淡な意見に、杉浦は呆れた表情を浮かべた。「またそういう話?引っ越せばいいとか、勤め先を辞めればいいとか」

亮子はさらに畳みかける。「他の饅頭屋じゃだめなの?ケーキ屋じゃだめなの?どういう基準で仕事を選んでいるの?そこじゃなきゃいけない理由は何?」

杉浦は困惑しつつも、「まあ、自分が辞めると、他の年配の従業員に負担がかかるからじゃない?」と答えた。

「他の従業員のことは店長が考えること。さっさと辞めていれば、饅頭屋は破綻して、店長も改善策を考えたはず。前園さんが中途半端に頑張ったことで、問題が先送りにされた」と亮子は続けた。

「自らトラブルの中にいて、想定されたトラブルに巻き込まれただけ。つまり、自作自演ってこと」と言い放つ亮子に、村尾は「なるほど」と感心した様子だったが、杉浦は「聞くんじゃなかった」と後悔した。

「前園さんの依頼に応える方向で、僕がちゃんとやりますから」と杉浦は決意を新たに宣言した。

調査開始

杉浦は「みやこし」の宮越を訪ね、話を聞こうと試みた。しかし宮越は「訴えたきゃ訴えればいい」と冷たく突き放し、まともに取り合ってくれない。仕方なく吉原の元を訪ねても、「だから労災だろ」と一言で片付けられ、会話は進展しなかった。

さらに、観光課の笠野は事前に約束していた面談をすっぽかし、杉浦は完全に空振り状態で事務所へ戻ることとなった。その頃、里佳子から調査の進捗について電話が入るが、成果が何もない杉浦は適当に誤魔化すしかなかった。一方、亮子は部屋で『君が生まれたこの街で』のドラマを見ていた。

数日後、杉浦は再び宮越を訪ねた。以前の賑わいはどこへやら、店内は閑散としている。杉浦は饅頭を全部購入し、隣の席で饅頭を食べながら話を始めた。

「久しぶりに落ち着いて饅頭を作ったよ。でも、うちを訴えたってお金なんて出せないよ」と宮越がこぼす。

「もしかして、コラボ饅頭なんて作りたくなかったんじゃないですか?」と杉浦が問いかけると、宮越は苦笑しながら答えた。

作りたいわけないだろ。コラボの話は観光課から持ち込まれたんだ。でも、最初は断るつもりだった。一時的な話に振り回される気はなかったし、饅頭なんて何食べても同じ味だって思ってる奴らに食べてもらってもしょうがないだろ?」

杉浦は驚きながらも、「それなのに、どうしてコラボしたんですか?」とさらに聞いた。

宮越の表情が曇る。「店が潰れそうだったんだ。老舗のプライドなんて言ってられなくてな。町の活性化になるとか、従業員の賃金を少しでも上げられるとか、そうやって自分を納得させたんだよ。でも、現実は厳しかった。吉原さんは色々注文つけてくるし、納期は短いし。もうやめるなんて言える状況じゃなかったんだ

さらに宮越はイベント当日の状況を語った。「前園さんにはすごく負担をかけた。だけど、正直、あんなに人が来るなんて思ってなかった。最初は100人って話だったんだ。それが300人になって、徹夜で急いで300個作ったんだ。でも朝になったら300じゃ足りないって、もっと作れって言われた

「無理ですよね?」と杉浦。

「無理だと言ったんだ。それでも吉原さんは『無理でもやってくれ』って言うんだよ」そのやり取りを、里佳子は隣でずっと聞いていた。

饅頭を食べながら聞いていた杉浦は、ようやく今回の問題が複雑に絡み合った状況から生まれたものであることを実感した。そして、宮越もまた、その渦中で苦しんでいた一人だった。

突然の訪問

その日、事務所に粒来春明(古田新太)が姿を現した。その瞬間、亮子は手早く城野尊(中川翼)に連絡を入れる。「粒来が来た」と短くメッセージを送ると、気を引き締めて事務所の様子を伺った。

一方、粒来は大草圭子(YOU)と話し始めていた。「亮子は滅多に泣かないけど、俺にゲームで負けたときだけ泣くんだよな。昔から」と、どこか懐かしそうに微笑む。

「それで、亮子にちゃんと説明をしたら?」と促す圭子。しかし、粒来は軽く首を振り、「聞かれないからな」と言うだけだった。

圭子はさらに問いかけた。「じゃあ、私に教えてよ。今までどこで何をしてたの?」

粒来は短く答えた。「まだ終わってないんだ」

圭子の表情が険しくなる。「なんか危ないことやってるんじゃないの?大丈夫なの?」

しかし、粒来は曖昧に笑うだけで、具体的な答えはしなかった。

事務所を出た粒来の後を、密かに城野が追っていた。粒来が角を曲がるたびに、城野も慎重に距離を保ちながらつける。そして、ついに粒来が立ち止まり、振り返った。

「どういうつもりで亮子さんをつけ回ってるんですか?」と見つかった城野が開き直って問い詰めると、粒来は肩をすくめて返す。「父親が娘に会いに行っちゃだめかな?」

城野は皮肉げに微笑む。「いいですよ。粒来さんがクリーンなら、ね」

その言葉に粒来の目が鋭くなる。「どういう意味だ?」

しかし、城野はさらりと答えをはぐらかす。「さあ?」

それ以上追及する様子のない粒来を見送りながら、城野は亮子に尾行がバレたとすぐ連絡を入れた。

責任の所在

杉浦はイベント責任者だった吉原に接触した。吉原は、街角で必死にビラ配りを続けていた。声をかけると、吉原はその手を止め、疲れた様子で話し始めた。

テレビ局の事業部から、可能な限り枠を広げるように言われていたんです。当日も、チケットなしで集まった人を受け入れる指示を受けました」

「その指示にただ従っただけですか?」杉浦は問い詰める。

「神平市は人口減少で税収も下がっています。だからなんとしても、ドラマの聖地という財源を確保したかった。当日、予想以上に人が集まり、対応も手探り状態でした。結局、テレビ局に指示を仰ぎ、言われた通りに動きました」と吉原は肩を落とした。

当日の混乱ぶりを問い詰める杉浦に、吉原は思い出したように話を続けた。「笠野さんが、広げられるところは広げろ、無理でもやってくれって言ってました。コーンを動かす指示もその流れで出たんです

杉浦は次にテレビ局へ向かった。笠野が逃げるように廊下を歩くのを見つけ、彼の前に立ちはだかった。

「ちょっといいですか?」杉浦が冷静な声で問いかけた。「チケットを持っていない人たちをどうして帰さなかったんですか?」

笠野は目を泳がせ、しどろもどろになった。「受け入れたわけじゃ……」と言葉を濁したそのとき、電話が鳴った。ディスプレイには坂口プロデューサーの名前が表示されていた。

笠野は取ろうとせず、話を続けようとしたが、杉浦は詰め寄った。「追加で饅頭を作るよう指示があったと聞きました」

笠野は困惑した表情で電話に出ると、相手の坂口がいきなり怒鳴りつけてきた。「出ろよ!」

電話を切った笠野は、杉浦との会話を無理やり終わらせようとする。「もうこれでよろしいですか?」

その後、笠野は坂口プロデューサーに問い詰められる。「訴えられたらどうすんの?イベントの責任者はお前だろ?」

すると笠野は「今までずっと坂口さんの指示通りにやってきたじゃないですか」と言うが、「俺がなんか指示したっけ?」と、坂口はとぼけた様子で返した。

「イベントを盛り上げるために、最低でも300人は必要だって坂口さんが言いましたよね?」

笠野はその時のことを回想する。「100人なんてしょぼすぎるだろ、最低300な」と鼻で笑う坂口。人が押しかけていると話すと「無制限でいいんじゃない?それに、コラボ饅頭を切らすなんてあり得ないだろ」と告げていた。

「それは指示じゃなくて要望だろ?」と坂口は悪びれもせず、態度を変えなかった。そして、まるで自分は無関係であるかのように付け加える。「当日サプライズあるかもってネットで煽ったのも、もしかして……」と坂口の仕業かと疑う笠野。

「訴えられて対応するのは責任者のお前だ。続編にケチがつくようなこと、絶対やらかすなよ」と坂口は念を押した。

そのやり取りを杉浦が階段の上から見ていた。

示談の提案

夜の静かな街に響くのは、スナックのマイクを通した亮子の歌声。『つぐない』を歌い終えた亮子は、カウンター越しにママの美咲(加茂美穂子)へ目を向けた。

美咲は少し考え込みながら口を開いた。「そういえば、坂口プロデューサーだったかしら。一度だけ店に来たわ。次はこの街じゃなくて、毛色を変えてサスペンスを作るんだって話してたわね

その言葉に店で働いていた里佳子は、驚きのあまり手元のグラスを割ってしまったとも美咲は話した。

翌日、事務所では杉浦が熱を込めて議論を進めていた。

「事故の責任者として一番関与度が高いのは、プロデューサーの坂口さんです。だからテレビ局に絞って損害賠償を請求するべきだと思います」と杉浦。

それに対して亮子は冷静に反論した。「示談に持って行くのがいいと思う」

「なんで?」杉浦は疑問を隠さず、亮子に詰め寄る。

その時、村尾由紀子(音月桂)がスマートフォンを見ながらニュースを読み上げた。「坂口さんがテレビ局辞めたって」

その知らせを聞いても、杉浦の方針は変わらなかった。

「里佳子さんの目的は、損害賠償金を得ること?それだけじゃないと思う」と亮子は言い切った。「杉浦先生、何が本当の目的か追及したほうがいい」

「なら、何が目的なんだ?」と杉浦が問いかけると、亮子は少し間を置いて答えた。

「『君街』を潰すことだと思う」

その後、杉浦は事務所に里佳子を呼び出した。里佳子は坂口が局を辞めたことで、続編の行方が気になっているようだった。

率直に目的についてたずねると、里佳子の目が一瞬揺れた。「…そうね。でも、私の要求はそれだけじゃない。テレビ局と坂口さんに対して、『君街』のイベントを全て中止して、今後もイベントをやらない。そしてドラマの続編も作らないことを求めます

杉浦は驚きを隠せなかった。「お金はどうでもいいの?」

「いいの。私が欲しいのは、『君街』が死ぬこと」

その強い言葉に押されつつも、杉浦は提案した。「一度、坂口と話してみないか?」

脱・歯車

ドラマで有名になったあの公園で坂口プロデューサーと里佳子、杉浦の三人が顔を合わせた。亮子もついては来ていたが、少し離れて聞いていた。杉浦が静かに口を開く。

「責任を取って局を辞めることになったんですか?あなたにとって『君が生まれたこの街で』は何なんですか?お金儲けの道具ですか?」

坂口は少し目を伏せ、ため息をついて答えた。「訴えられるかもしれないって話になったとき、会社からは『しばらくドラマ作らなくていい』って言われました」

それでも口調を落ち着けながら、坂口は続ける。「『君街』は最初、上から絶対に当たらないからやめておけって言われてたんです。でも、ドラマを作るのは金儲けのためだけじゃない。心からやりたいことだからやったんです」

言葉に力がこもってきた。「そしたら、バカ当たりしましたよ。その途端、グッズ作れだの続編作れだの、会社は金になるなら何でもやれって言ってきた。でも、本当はそんなの嫌だった。地方回ってトークショーをするたびに、自分の作品を語ることで作品の世界観を壊している気がしてた

坂口の目が遠くを見つめる。「ファンの中にもわかってないって批判する人たちがいることも知ってました。それでも続編を作るよう迫られた。でも『君街』って、大きな事件が起きないことが魅力だったんです。それなのに、サスペンス要素を入れろだとか、聖地化を前提にロケ地を選べだとか、そんの絶対やりたくなかったけど、会社員なんで、会社の歯車になるしかなかったんですよ

坂口はどこか吹っ切れたように語る。「その中でなんとかしようと思ったけど、今思えば歯車から抜け出せばいいだけの話だった」

静かに言葉を切り出した坂口は、深く頭を下げた。「あの時感電して、一歩間違えば亡くなっていたかもしれないと思うと、ほんとゾッとした。俺、何やってたんだと思います。本当に申し訳ありませんでした」

杉浦が口を開きかける。「坂口さん、全てを話してくれてありがとうございます。利益を上げないといけない会社と、熱烈なファンの間で板挟みになった思いは…」

その言葉を里佳子が遮った。「熱烈なファン?写真撮ってキャーキャー騒いで、コラボ饅頭を食べて散らかして。それが本当に作品を愛してるって言えますか?」

里佳子の言葉は冷たい。坂口を見据えながら続けた。「ただ好きな俳優が出てるから見てるだけで、作品の中身なんてどうでもいいんじゃないですか?」

「それは坂口さんも同じ気持ちだった」と杉浦がいうと、「一緒にしないで!」とキレる里佳子。

「作品より会社を取ったということですよね?あなたの世界は会社中心に回ってる。でも私は違う、私の世界は作品中心に回ってる。このドラマに出会ったときから」と思いの丈をぶちまけた。

狂気の沙汰

疲れた表情でバスを待つ里佳子。仕事の愚痴を友人に話していると、隣のカップルが『君が生まれたこの街で』について語り始めた。偶然耳にしたその話に興味を持ち、彼女はドラマを観てみた。そして気づけばすっかり作品の虜になっていた。

「この何でもない公園が、作品の世界観を作る重要な鍵になっている」彼女はそう信じ、この街に引っ越してきた。それだけではない。仕事を辞め、引っ越し費用のために借金までしたという。

里佳子の行動の背景を知るため、亮子と杉浦は事前に事務所で会話していた。

「『君街』を潰すってどういうこと?」杉浦が尋ねると、亮子は静かに答えた。「それはつまり、愛しているってこと」

さらに、亮子は考察ブログを読み込むうち、ある文章が里佳子のものではないかと気づいた。

里佳子は地元の和菓子店「みやこし」でアルバイトを始めた。本田翔馬が店のお饅頭を食べたことで繁盛し、彼女も最初は喜んでいた。しかし、続編制作の噂が流れたときから、彼女の思いは変わり始める。

「なんでコラボ饅頭なんて作るの?お金の匂いがして、作品が汚れるだけ」そのときの怒りを思い出した里佳子は、グラスを叩きつけた過去を語る。

トークショーも全て追いかけ、北海道から九州まで駆け回った。借金してでも。彼女の異常な執着に話を聞いていた杉浦たちもドン引きした。

「何度言えば分かるの?私は作品のためなら何だってできる。『君街』が私の人生なの!」

ついに里佳子は自らの目的を明かす。「私は『君街』の続編を作らせたくなかった。あの日、私がここで死ねば、『君街』も一緒に死ぬと思った」

衝撃的な事実が語られる。イベント当日、里佳子はサプライズ登場を煽る投稿を自ら行い、機材に触れて感電したのだ。自作自演による事故だった。

「感電は自作自演だった。作品と心中しようと思った」彼女の言葉に、杉浦は静かに結論を告げる。「自作自演なら、なんの請求権もない。訴えることもできない」

里佳子は、ぽつりと呟いた。「なんで死ねなかったのかな…」

公園に吹く冷たい風が、彼女の言葉を虚しくさらっていった。

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【モンスター】7話の結末

事件が終わり、亮子と杉浦は並んで歩きながら話していた。

「ちゃんと追及できたじゃん」亮子が杉浦を軽くからかうように言う。

「まあね。でも、里佳子さんの執着には驚いたよ」杉浦が応じる。

ふと、亮子は話題を変えた。「あのドラマ、『君街』、どの場面にも必ず花のモチーフが入ってたの、知ってた?」

「花?気にしたことなかったけど」

「私も気づかなかったんだけど、最後までちゃんと入ってるのか確かめたくて、一気に見たんだ。そしたら本当に最後まで花が使われてた」

亮子の瞳が少しだけ輝いているのに気づいた杉浦は、「そこまで調べたの?」と感心したように聞いた。

「それが気になって、考察ブログをいろいろ読んでみたけど、そのことについて触れてるものはまだ見つかってない」

少しの沈黙のあと、杉浦が呟いた。「結局、続編は作られるらしいよ。商売だから仕方ないのかもしれないけど」

「いいじゃん」亮子はあっさり言った。「ひどければ前作まで潰すことになる。『君街』に死んでほしかった前園さんの望みは、違う形でかなうことになる」

杉浦はその言葉に驚き、思わず感心したように亮子を見た。

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【モンスター】7話のまとめと感想

愛していたドラマの続編を阻止するため、自作自演で感電したという話でした。

テレビ局の自虐的なパロディーというか、よくこの話を放送したなとも思います。コラボ商品、テレビ局の事情、続編、聖地巡礼、市の事情、ドラマファン、考察ブログ……あらゆる所に疑問を投げかけます。

純粋な思いで偶然生まれた産物から、金の匂いを嗅ぎつけた亡者に食いつぶされ、狂信的なファンに破壊されるまでを皮肉った話です。そして亮子は『嫌われる勇気』を地で行くようなセリフで、毎回気付きを与えてくれます。

行き過ぎた推し活とでもいいましょうか、里佳子は借金をしてまでドラマに心血注ぎます。それは愛というよりも、狂気と言ったほうが近い気がします。何かに固執することで、全てが狂い始めます。

里佳子はそこまで愛情があるにも関わらず、亮子が気付いたドラマ内の法則には一切気付きません。彼女のブログは考察ブログをうたっていますが、単なる感想を書いているだけだったというのが、何とも皮肉です。

所詮ドラマに依存していただけで、思い通りにならないと暴れだすという、彼女の稚拙な行動にみな振り回されただけでした。逆にテレビ局が里佳子を威力業務妨害で訴えてもいいぐらいです。

里佳子役の堀未央奈さんの演技が、見ているこっちまで苛々するぐらい、ヒステリックに狂気を帯びてて良かったです。

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