【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話のネタバレと感想をまとめています。
オクラのメンバー・祈里の夫が亡くなった爆破事件を取り上げ、千寿は犯人へ導くための証拠をまたしても捏造する。しかし、その証拠が偽物だとバレてしまい……。
【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話のあらすじ
飛鷹千寿(反町隆史)は行きつけのバーの奥にある扉を開け、“大人の秘密基地”へ不破利己(杉野遥亮)を招き入れた。そこには千寿の元妻・井伏愁(観月ありさ)もいた。彼女も含め、この場所で証拠捏造をしていたことを千寿は明かした。
今回取り上げる未解決事件は、東京シンフォニー爆破事件という、アメリカの国務長官を狙った事件だった。この事件ではオクラのメンバーの一人・牧原祈里(青木さやか)の夫・圭吾(是近敦之)が亡くなっていた。
再捜査を開始していくが、千寿は最初から犯人も分かっていた上、証拠も愁に頼んで簡単に捏造する。そのやり方を間近で見た不破は、何も言わずに協力していた。
しかし、仕込んだ証拠が偽物だとバレてしまい……。
【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話のネタバレ要約
オクラのメンバー・祈里の夫が亡くなった爆破テロは、蓬田という男の犯行だった。
蓬田は難病の妻を救うため、大金を得る代わりに爆破事件を起こした。
しかし、留置所で蓬田は服毒自殺してしまう。加勢は千寿に警察関係者の仕業だと伝えた。
【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話の詳細なネタバレ
今回の事件
飛鷹千寿(反町隆史)の脳裏に過去の一瞬が鮮明に甦る――事件の現場で千寿は銃を握りしめ、瀕死の結城真一(平山祐介)の口から「ハイド・アンド・シーク」の声を聞き、目の前の真一を撃った。銃声が耳をつんざく中、彼の心は狂ったように叫んでいた。倒れ込む真一、血まみれの床。その光景がスローモーションのように展開し、千寿の手には鮮血で濡れたSIMカードが残されていた。千寿はSIMカードを握りしめ、現場を離れる。
PCの前に座り、震える指でカードを挿入する。回転するホイールを見つめながら、千寿は新たな情報が開くのを待っていたところ、誰かが部屋に入って来た。
現実に引き戻されたのは、バーのカウンター席に腰掛け、不破利己(杉野遥亮)を待っていたときだった。重たい空気を振り払うように、彼は静かにグラスを傾ける。不破がやってきた瞬間、千寿は彼に目を向け、笑みを浮かべながら「阿澄を紹介しよう」と切り出す。阿澄玄人(三浦?太)はこのバー「THE BASE」の店長で、かつては警察官だった。だが、それは表の顔だ。千寿は不破をバーの奥へと案内し扉を押し開けた。
そこから地下に続く階段を降りると、目の前には“秘密基地”とでも呼べるような隠れ家が広がっていた。何かを企んでいるような陰鬱な雰囲気が漂っている。ここで千寿は密かに未解決事件を操作し、裏で捏造していた。
千寿が冷静な目で言った。「どうして協力する気になった?」不破は表情を変えずに答えた。「言ったはずだ。あんたの正義が本当に正しいのか、見極めるってな」不破の目は揺るがない。千寿は満足そうに頷き、「もう後には引けねえぞ」と笑みを浮かべる。
そして次のターゲットを明かした。東京シンフォニー爆破事件だ。2013年、アメリカの国務長官を狙った未解決のテロ事件だった。
千寿は「2013年の東京シンフォニー爆破事件の犯人の名は『プロフェッサー」秋葉原の電気街を探せ」というメールを作成していた。千寿はPCに向かって手を動かし、警視庁へと新たなメールを流し込んだ。
「さ、プレーボールだ」と独り言をつぶやきながら、千寿の指は確信に満ちた動きで送信ボタンを押した。ゲームの幕が上がる音が聞こえるかのように、静かに始まりを告げる夜だった。
事件概要
千寿が選んだ次のターゲット、それは牧原祈里(青木さやか)の夫が殺された事件だった。彼女が抱える悲しみと未解決の痛みを知りながらも、千寿はその事件に挑むことを決めていた。
オクラの部署で、祈里は静かに口を開き、過去の苦しみを語り始める。「11年前、あたしと夫は公安部に所属していたの。アメリカから来日したトーマス国務長官の警護を担当していた日、あの日がすべての始まりだった」彼女の声には、当時の緊張と不安が滲み出ている。
「クラシック音楽を鑑賞するということで、あたしたちは警備部と連携して警護にあたったの。当日は予定が狂って、トーマス国務長官の席が急遽変更になったり、想定外のことばかりだったのよ。バタバタしている中で、夫は変更された席の周辺を確認していた。すると、ゴミ箱から夫が爆弾を見つけたの」
その瞬間の映像が、祈里の頭に鮮明に蘇る。牧原圭吾(是近敦之)は冷静に対応し、その爆弾をすぐに外に運び出した。しかし、運命は残酷だった。爆弾を放り投げたが、逃げる時間が足りなかった。彼は負傷し、そのまま倒れ込んでしまった。
声が震える。祈里の目には当時の夫の姿が浮かんでいるのだろう。「搬送された病院で、彼は息を引き取った。結局、犯人は見つからないまま。『プロフェッサー』なんて名前も、聞いたことはないわ」
彼女の言葉が終わると、加勢英雄(中村俊介)が現れ、ため息混じりに言い放つ。「この事件は警察が威信をかけて捜査してきたが、何も出てこなかったんだ。ガセネタだ」
祈里も、疲れ切った様子で加勢の意見に同意する。「確かに、無理かもしれない……」
しかし、その場の空気を一変させたのは、不破だった。「確認してからでも遅くはないでしょう」彼の冷静で鋭い視線が、千寿に向けられる。
千寿は無言のまま、再び行動を開始する。祈里が止めることもなく、彼は次の手がかりを追うべく立ち上がった。
その一部始終を見届けた加勢は、黙ってはいなかった。部下の志熊亨(有澤樟太郎)に向かって鋭い命令を発する。「千寿たちを見張れ」
闇の中で動き出す捜査、そしてその裏で絡み合う陰謀。千寿、不破、そして警察内での思惑が交差し、事件の真相に迫る戦いが、今再び始まろうとしていた。
パフォーマンス捜査
手がかりを求めて千寿と不破、そして祈里が足を運んだ場所では、何の収穫も得られなかった。時間だけがむなしく過ぎていく中、祈里が息子にメッセージを送っているのを見た千寿は、ふと尋ねた。「息子さん、いくつ?」
祈里は少し戸惑いながらも答えた。「15歳。いじめにあって不登校に。半年以上学校に行っていない」彼女の目には苦悩が浮かんでいた。千寿は無言で聞き続ける。「父親がいないから、どう接していいのか分からなくて。シンママって大変で」
祈里の言葉には重みがあった。「もし犯人が捕まれば、何か変わるかもしれない。息子との関係も、少しは良くなるかと思って……それで、事件を解決したかったんだけどね」祈里は遠くを見るようにして、静かにそう語った。
休憩を終え、千寿たち一軒の店に向かう。情報を掴むためだ。千寿は店員の石崎(佐藤タダヤス)に向かって警察手帳を見せて切り出す。「プロフェッサーって知ってるか?11年前の爆破テロ事件について、何か知っていることはないか?」
その瞬間、石崎の顔色が変わり、言葉を発する前に逃げ出した。不破と祈里が挟み撃ちにして、祈里がすばやく石崎を取り押さえた。「お前がプロフェッサーなのか?」と問い詰める千寿。石崎は怯えたように首を横に振った。
「違う、俺は爆弾を作ったわけじゃない。ただ、材料を用意しただけなんだ……」石崎の声は震えていた。「闇サイトでのやり取りだけで、顔も知らないし、まさかテロに使うなんて思ってもみなかったんだよ……」
千寿は「材料を送った住所と、プロフェッサーのメールアドレスを教えろ」と命じた。
祈里を定時で帰らせた後、石崎も解放した。その光景を見た不破は、疑問を抱いた。「なぜですか?」千寿は冷静に答える。「知っている情報を仕入れても仕方ない。これまでは祈里さんへのパフォーマンスだよ」
その会話のやり取りを、陰に隠れて志熊がじっと見守っていた。
路地裏を歩きながら、千寿と不破はさらに話を続けた。ついに掴んだ情報――プロフェッサーの本名は蓬田晴樹(古賀清)、57歳。防専工科大学の元准教授だ。
「11年前に辞めてるな」と千寿が低くつぶやく。不破も真剣な表情で聞いている。「中学の時、興味本位で作った爆弾で公園の遊具を壊して警察沙汰になったことがある。書類送検されたが、未成年だったから不起訴処分になった。だが、それが大学にバレて解雇され、それからは転落の人生を歩んだ」
蓬田はその後、警備員や清掃員を転々としながら、世の中から姿を消していた。
千寿と不破がその真実にたどり着いたとき、ふと背後に気配を感じた。志熊が尾行していることに、彼らは既に気づいていたのだ。
捏造開始
夜の静寂の中、千寿と不破は蓬田晴樹の自宅のそばに車を停めた。千寿はハンドルに手を置きながら、不破を横目で見た。「お前、行ってこい」そう言って、彼を蓬田の家に送り出す。
不破は渋々、宅配業者の制服に身を包み、荷物を抱えて玄関に向かう。インターホンを押し、蓬田が出てくると、彼は荷物を差し出した。蓬田は一旦受け取るが、眉をひそめて「これは違うぞ」と一言。すぐに荷物を突き返され、不破はその場で戻ってきた。計画は失敗に終わったかに見えたが、千寿の表情は崩れなかった。
基地に戻ると、千寿は不破に井伏愁(観月ありさ)を紹介した。不破は冷静な目で愁を見つめ、すぐに核心に触れる質問をぶつけた。「捏造しているのか?」
愁は微笑を浮かべて頷いた。「そう。私は捏造グループの一員。前回の音声テープの加工をしたのも私」
千寿が手に入れた断片的な情報を元に、犯人逮捕のための証拠を作り上げるのが彼女の役目だった。
不破が疑念を抱きつつ、「科捜研なんだから、鑑定結果も偽造すればいいんじゃないですか?」と尋ねる。だが、愁は首を振って言った。「無理無理。あれは複数でちゃんとチェックしてるから」
その代わり、愁は別の方法を用意していた。犯行に使われたのと同じ型の爆弾を作成した。当時、テレビのリモコンを改造して遠隔操作で爆発させいていたのを再現した。
千寿はそのリモコンに蓬田の指紋を付着させる計画を明かした。宅配便を装ったのは、指紋を採取するためだった。愁は既に蓬田の指紋を型に取り、完璧に準備を整えていた。
証拠を捏造する待機中、不破は千寿にふと疑問をぶつけた。「1つか2つ、質問してもいいですか?」千寿はちらりと不破を見た。
「どうやって犯人を知ったんですか? これまでの事件でも、捜査資料に載っていない情報、凶器や経緯まで把握していましたよね。しかも、オクラのメンバーに関わる事件ばかりを扱っている。何か狙いがあるんですか?」
千寿は口元に不敵な笑みを浮かべ、「秘密だ。まだお前を信用したわけじゃない」とそっけなく答えた。
「じゃあ、今回の事件を解決に導いたら、教えてくれますか?」不破の問いに、千寿は無言のまま視線を外し、何も言わなかった。
千寿は愁から蓬田の指紋が付着したリモコンを受け取り、計画を進めた。「これを犯行現場付近の河原に隠してくる。河原にまだ証拠が残ってるかもしれないってところまでの、うまい筋書きを考えてくれ」
不破は無茶ぶりに頭を抱え、果たしてどこまでが計画で、どこからが真実なのかを測りかねていた。事件は動き始めたが、真相は未だ深い霧の中に隠れていた。
作られた証拠
後日、不破はオクラのメンバーたちを集め、蓬田が事件の犯人として怪しいと、これまでの経緯を説明した。だが、話を聞いた室長の幾多学(橋本じゅん)は腕組みをしながら渋い顔を見せ、「容疑者として断定するには、まだ時期尚早じゃないか?」と慎重な意見を述べる。
しかし、不破は自信満々だった。「犯行を裏付ける根拠もあるんです。蓬田のパソコンをハッキングして、11年前の犯行計画のファイルを入手しました」
すると吉岡雷(前田旺志郎)がすかさず、「どうやってハッキングしたんですか?」と問いかけると、不破は力強く「それは……秘密です!」と胸を張って答えた。
その一言に、思わず千寿は苦笑し、資料を手に取り続ける。「犯行の詳細によると、蓬田は爆弾を起爆させた後、そのリモコンを皐月川に捨てたらしいな」
結城倫子(白石麻衣)が首をかしげ、「そんなところに捨てる?」と疑念を抱くが、千寿は蓬田の過去の警察沙汰を引き合いに出した。「蓬田には昔の事件で指紋が残っている。もしリモコンが見つかれば、それと照合して逮捕に踏み切れるだろう」
鷲沢泰造(宇梶剛士)は渋い顔をしながら、「見つかるわけねえだろ、10年も前のことだぞ」と反論するが、千寿は即座に反応した。「このエリアは当時、捜査網から外れていた。試してみる価値はある」
その言葉に、祈里は決意を固めた。「やろう」彼女の強い意志が伝わり、他のメンバーも彼女のために一肌脱ぐことを決め、全員が協力に乗り出した。
その日、みんなで皐月川の河原へ向かい、遺留品を探し始めた。5時間が経ち、疲労が色濃く漂う中で、何も見つからず焦りが募る。不破は千寿に「そろそろいいんじゃないですか?」と合図を送り、千寿はお得意の“下手な芝居”を打ち始める。「おお、見つけたぞ!」とわざとらしく叫びながら、リモコンを拾い上げた。
そのリモコンは科捜研に回され、鑑定にかけられることになった。その報告を聞いた加勢は驚愕した。「ありえない」
これで蓬田逮捕に向けた計画は、確実に一歩前進したかに見えた。
家庭崩壊
祈里が自宅に戻ると、リビングの片隅で息子の文哉(川口和空)が静かにカップ麺を作っているのを目にした。気まずそうに視線を避ける彼は、できるだけ早く部屋に戻ろうとする。しかし、祈里はその背中を見て思わず手を伸ばし、彼の腕を掴んだ。
「お父さんの事件、犯人が捕まるかもしれない……」
彼女の声は、期待と疲れが交じり合ったものだった。しかし、息子は冷たく「だから?」と、まるで興味がないかのように返す。その無関心さが、祈里の胸に鋭く刺さった。
祈里はたまらず言葉を続けた。「私がどれだけ頑張っているか、わかってる?」
すると息子は突然、「うるさい!うるさい!」と叫び、祈里を突き飛ばした。「誰が頑張ってくれって頼んだよ!誰がそんなこと頼んだんだ!俺のせいで自分が犠牲になってるみたいな顔しやがって……そんなに邪魔なら、殺せばいいだろ!俺はいつだって死んでやるよ!」息子の叫びは、祈里の心に深く突き刺さる刃のようだった。彼はそのまま、乱暴に部屋へ戻っていった。
祈里はふらふらと夫の遺影の前に立ち、涙を堪えきれずに声を漏らした。「何がいけなかったの……パパ、教えてよ……」彼女はその場に膝を抱え、嗚咽を漏らしながら泣き崩れた。
一方、自室に戻った息子も、苛立ちと悲しみが交錯していた。彼は部屋の隅に置かれた古い家族写真に目をやった。そこには幼い頃の自分と、父、そして母が幸せそうに写っていた。その瞬間、幼い日の記憶が鮮やかに蘇った。
父が滑り台の上で彼を抱きしめ、「いいか、何があってもママがちゃんと受け止めてくれる。だから、怖がらないで前を向け」と優しく語りかけたあの瞬間。父の温かい声と、母の優しい微笑み。それを思い出した息子は、しばし呆然とした。
やがて、彼は何も言わずにドアに背中を向け、ベッドに潜り込んだ。掛け布団の中で、彼の心はどこか遠く、過去の温もりにすがるように揺れていた。
まさかの自首
蓬田の家に電話がかかる。「分かりました。考えさせてください」蓬田の声には、どこかためらいと動揺が感じられた。その瞬間、彼の中で何かが揺れていることを、千寿は確信していた。
オクラの部署に愁がやってきて「リモコンの解析が終わったよ」彼女はそう言い、解析結果を千寿たちに報告した。「このリモコンは、11年前に使われた爆弾の遠隔スイッチの可能性が高い。そして、指紋は蓬田のものと一致した」
逮捕状を請求する準備が進む中、突然加勢が部屋に入ってきた。「その必要はない」その言葉に、全員が振り返る。「そのリモコンは偽物だ」加勢の声には冷静さと鋭さが混じり、明確な根拠があるようだった。
「どういうことですか?」不破が問うと、加勢はリモコンを指さしながら説明する。「劣化の進行具合が違う。こんなに外の雨風にさらされていたはずのリモコンが、まるで室内に置かれていたような状態だ」
加勢の調査によれば、リモコンは明らかに最近まで室内で保存されていたものだった。「誰かが証拠をでっち上げようとした。リモコンに関しては蓬田に逮捕状を出せない」彼の声には確信があった。
その時、千寿が現れた。「蓬田ならもう来てるよ。今、取調室で待ってる」千寿の口調は落ち着いていたが、その言葉は全員を驚かせた。「自首してきたっていうのか?」加勢が疑念を込めて聞くと、千寿は平然と答えた。「俺はただ、爆弾のリモコンが見つかったって、指紋が検出されたって言っただけだ。来たのはアイツ自身だ」
「リモコンが偽物だとわかってるのに、どうするつもりだ?」加勢の声には苛立ちが混じっていたが、千寿はにやりと笑った。「蓬田が犯行を自供すればいいんだろ」
千寿の言葉に、部屋の空気が重く張り詰める。真実と嘘が交錯する中、彼の計画がどこまで成功するかはまだ分からない。しかし、千寿は自信に満ちた表情で、次の一手を見据えていた。
事件の真相
取り調べ室の静寂の中、千寿は蓬田に冷静な声で問いかけた。「爆破したのか?」蓬田は短く「はい」と答え、犯行を認めた。
千寿はさらに追及する。「当時、アメリカのNSAが通信情報を集めていたことが明らかになった。でも、アメリカ政府はそれをテロ防止のためだと公表した。そのことで強い憤りを感じたんだな?」蓬田は無言で頷く。
「だから、テロを起こしたと?本当にそれが犯行の理由なんですか?」千寿の声は疑念を含んでいた。「間違いありません」と蓬田は言い切った。
千寿は鋭く目を細めた。「あの事件で、トーマス国務長官の警護をしていた警察官が殉職した。あなたは、トーマス国務長官を殺害するつもりで爆弾を仕掛けたのか?」蓬田は、少しだけ躊躇したが、やがて「はい」と力なく答えた。
その時、不破が部屋に入ってきて、手に持ったタブレットを蓬田に見せた。画面には、取調べの様子を見ている蓬田の妻・多恵子(藤倉みのり)の姿が映し出されていた。それを見た瞬間、蓬田の表情が変わり、怒りが込み上げてきた。「卑怯だぞ!こんなの許されるわけないだろ!あいつに気づかれたくなかったから自首したのに!」彼は立ち上がり、机を力強く叩きつけた。
しかし、不破は冷静に言葉を返した。「奥様は、あなたに本当のことを打ち明けてほしいと望んでいます」その言葉に、蓬田はしばらく無言で立ち尽くしたが、やがて再び椅子に座り込んだ。
千寿は改めて尋ねた。「当時の爆破テロは、アメリカの事件に触発されて起こしたものなんですか?」
蓬田は重々しい声で答えた。「違います。11年前、私は子供の頃に犯した過ちを学生に暴かれて、大学をクビになった。それからまもなく、家内が病気になり、日本では治療が難しい大病だと診断された。海外での臓器移植しか、彼女を救う手段はありませんでした」
蓬田の目に涙が浮かび始める。「その手術費用は莫大なもので、とうてい払えるものではありませんでした。そんな時、一本の電話がかかってきたんです。相手は今でも誰か分かりません。ただ、私の素性を知っていて、コンサート会場の一部を爆破すれば、家内の手術費を負担すると言われた」
「その言葉を信じて、あなたは犯罪に手を染めた……」千寿が言葉を継ぐと、蓬田は静かに頷いた。
その瞬間、部屋の空気が一気に重くなり、蓬田の過去と犯行の理由が明かされたことで、誰もがその苦悩に言葉を失っていた。
罠
蓬田は取調室で、静かに口を開いた。「私は、電話の主が送ってきた設計図をもとに、プロフェッサーを名乗ってネットの闇サイトで爆弾の材料を購入しました。そして、当日、指示通りに清掃員になりすまして、指定された場所に爆弾を隠しました」
千寿は、冷静なまま話を進めさせる。蓬田は自らの手で犯行を進めたことを振り返るように、遠い目をしていた。「外に出て、リモコンでスイッチを押しました。その後、急いで自転車に乗ってその場を去り、リモコンを川に捨てました」
「リモコンを川に捨てるのも、電話の主の指示だったのか?」と千寿が問うと、蓬田は頷いた。「はい。その数日後、成功報酬として、大金が私の銀行口座に振り込まれました。そのおかげで、家内は海外で手術を受けて無事助かりました」
千寿は冷たい視線を投げかける。「だからといって、他の人を傷つけていいという理由にはならない」
「もちろんです」蓬田は眉間にシワを寄せ、悔しそうな表情を浮かべながら言葉を続けた。「私は誰も傷つけるつもりなんてなかった。犠牲者なんて出したくなかったんです」
その瞬間、別室で取り調べの様子を見ていた祈里が激しく立ち上がり、部屋の外へ向かって走り出した。蓬田は「当日、あの2階には誰も座る予定がなかったんです」声が震えていた。千寿が続けて言う。「だが、その席には国務長官が座っていた」蓬田は力なく頷いた。
不破が静かに尋ねる。「じゃあ、あなたは……はめられたってことですか?」その問いに答える前に、祈里が怒りを爆発させた。「なにそれ、ふざけないでよ!」彼女は蓬田に掴みかかろうとするが、すかさず不破が彼女を押さえ込んだ。
蓬田は深いため息をつき、弱々しい声で語った。「はめられたかもしれません。でも、私にとっては家内がすべてでした。だから、後悔はありませんと蓬田は語る」彼の言葉には、長年の苦悩と覚悟が滲み出ていた。
その言葉を聞いて、別室で見ていた蓬田の家内は、静かに涙を流していた。彼女の目に浮かぶ涙は、感謝と後悔、そして複雑な思いが入り混じっているように見えた。
祈里の怒り
祈里の怒りは収まることなく、取調室に響いた。「いいかげんにしてよ!あんたは、あたしの夫を殺したの!」
彼女の声には悲しみと憤りが混じり合っていた。蓬田はその言葉を、目をつむったまま黙って受け止めた。全てを受け入れるしかないというように、彼は口を閉ざしていた。
祈里はその静けさに耐えきれず、不破の手を振り払い、蓬田の肩を強く掴んだ。そして、顔を近づけて鋭い言葉を浴びせた。「あたしは、あんたを殺したい……でも、殺さない。何でだかわかる?」彼女の目は鋭く光り、蓬田を強く睨みつけた。
「あの人がそんなこと望んでないから!あんたはどう!?奥さんがそんなこと望んでると思う?爆破テロなんて起こして、それで得た大金で手術して、そこまでして助かりたかったと思う!?」
祈里の叫びに、蓬田はただ黙り込んで、何も言えずにじっと聞き続けていた。彼の目には後悔が滲んでいたが、その後悔の大きさをどう表現していいか分からない様子だった。
祈里は息を荒げながら立ち上がり、蓬田から離れると、涙を堪えながら壁に背を向けた。「あたしは、踏みとどまれてよかった……あんたみたいにならなくて、本当によかった!」その言葉を絞り出すように叫び終えると、祈里は壁に頭を押し付け、深い呼吸を繰り返した。
千寿が静かに、しかし重みのある言葉で語り始めた。「あなたにとって奥様が、何物にも代えがたい存在であるように、あなたが傷つけた人たちの中にも、たくさんのかけがえのない存在があった。それを忘れないでください」その言葉は、まるで蓬田の心の奥に直接届くように響いた。
蓬田はしばらく沈黙したままだったが、やがてその顔には大粒の涙が流れ始めた。そして、ゆっくりと祈里に向かい、深々と頭を下げた。彼の体が震えていたが、その頭の下げ方には、彼自身が犯した罪と、その罪に対する深い謝罪の気持ちが込められていた。
一歩前に
取調べを終え、祈里は涙を拭いながら静かに千寿と不破に向き直り、言葉を絞り出した。「さっきはすみませんでした……それと、ありがとうございました」その感謝の言葉には、彼女自身も整理しきれない感情が詰まっていた。
「あたし、嘘つきました。ほんとは羨ましかったです、だって、犯罪を犯してもあの人には奥さんがいるじゃないですか」祈里の声はかすれていた。彼女の目には、孤独と羨望が複雑に交錯していた。
祈里は静かに言葉を漏らした。「大切な人が、そばにいてくれるじゃないですか……」彼女の声はどこか寂しげだった。「あたしには、もう……いないんですから」そう言って、祈里は一礼し、静かにその場を去った。「お疲れ様でした」と別れの言葉を残して。
連行される蓬田の前に、彼の妻が現れた。彼女は泣きながら、夫を見つめた。蓬田も目に涙を浮かべ、深々と頭を下げる。二人の間には、言葉では言い尽くせないものが流れていた。
自宅に戻った祈里は、夫の遺影に向かって静かに立ち尽くしていた。遺影の中の彼の笑顔を見つめながら、祈里は胸に込み上げる思いを噛み締めていた。その時、背後から足音が近づき、息子が制服を着て部屋に入ってきた。
「おかえり」祈里は驚いたように息子を見た。「ただいま」祈里は短く答えた。
息子は制服の袖口から伸びる手を見せる。それを見た祈里は息子の手を取り、成長を実感する。「大きくなったね……きっと、お父さんより大きくなるね」そう言って、祈里は泣きながら息子を強く抱きしめた。彼女の涙は、悲しみだけでなく、再び取り戻した温かな絆に対する喜びでもあった。
家族の愛は途切れず、どんな形であれ、彼女たちを繋ぎ続けていた。
【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話の結末
愁がオクラの基地でぽつりと呟いた。「法の下に引きずり出して、真実を明らかにしてもお、幸せな結末を迎えるとは限らないってことなんだろうね」彼女の言葉にはどこか虚無感が漂っていた。
その言葉を受け、不破は再び疑問を抱き、千寿に尋ねた。「なぜ、犯人や事件の全容を知っていたんですか?」
千寿はいつものように無表情で答えた。「これまでの事件はすべて、あるファイルに記されていることだ」
「何のファイルなんですか?」不破がさらに問い詰めると、千寿は短く「秘密だ」と返す。だが、愁は顔をしかめて言った。「実は私たちも分からない。どこでどうやって手に入れて、それがいったい何なのか……」
愁は軽く溜息をつき、「いつになったら教えてくれるのか」とぼやくように言うが、千寿はただ無言だった。
その頃、留置所にいる蓬田は、静かにポケットから小さなカプセルを取り出していた。何かを決意したように、その手に握りしめていた。
その時、加勢から緊急の連絡が入る。「蓬田が死んだ。留置所で倒れていた。服毒による自殺らしい」
「どうやって毒薬を……?」千寿が不審に思い、「ボディーチェックはしたはずだ」と呟くと、加勢が冷静な声で答えた。「ああ、つまり。警察関係者の仕業ってことだ」
加勢は千寿に「話がある。面貸せ」と指示を送り、千寿は無言で屋上へ向かった。その足取りには、次に何が待ち受けているのかを予測する冷静さと、どこか切迫感が入り混じっていた。
思い返せば、あの時――千寿がSIMカードの中の情報を見ていた時、部屋に入って来た人物は加勢だった。
【オクラ〜迷宮入り事件捜査〜】3話のまとめと感想
難病の妻を救うため大金が必要だった男が、爆弾を設置すれば貰えるという誘いに乗り、爆弾を仕掛けたという話でした。
大切な人を救うために事件を起こした加害者と、事件を防ぐために大切な人を亡くした被害者の話です。同じ状況なら蓬田化する人もいると思う反面、祈里のように守るべき子供がいれば、踏み止まれる人もいそうです。
1人の大切な人を救うため、1人の大切な人を失う。でもよくよく考えてみれば、蓬田の妻が助からないのは、金がないなら自然であり、祈里の夫が死ぬのは無理矢理命を強奪された感があります。そう思うと、蓬田のエゴで祈里の夫は犠牲になった感じもします。
祈里も嘘をついていたと、犯罪者でも大切な人が生きているのは羨ましいといいます。口では綺麗事を言っても、本音は別です。祈里のこういった正直な気持ちが人間臭く、このドラマを単なる勧善懲悪ドラマにしてなくていいです。