【海に眠るダイヤモンド】1話のネタバレと感想|神木隆之介主演のヒューマンラブドラマ

2024秋ドラマ
記事内に広告が含まれています。

2024年10月20日からTBSの日曜劇場で始まった、【海に眠るダイヤモンド】1話のネタバレと感想をまとめています。

1955年の端島、長崎の大学を卒業して戻ってきた鉄平は、島で就職をする。父親に猛反対されるが、鉄平は意思を曲げなかった。鉄平が気になる島にやってきた謎の女性歌手リナは、職員クラブで働き始めるがセクハラにキレてしまい……。

スポンサーリンク

【海に眠るダイヤモンド】1話のあらすじ

新宿歌舞伎町。いづみ(宮本信子)はホストの玲央(神木隆之介)に「結婚しよう」と提案する。店で散在した後、再びいづみは玲央を捕まえる。何が何だか分からないまま、玲央は客のためならと、長崎へ連れて行かれた。

端島を見て涙するいづみ、玲央は彼女が何者なのか考えていた。

1955年、端島。長崎の大学を卒業した荒木鉄平(神木隆之介)は、幼馴染の百合子(土屋太鳳)と一緒に故郷の端島へ戻ってきた。そして反対する父に構わず、島で働くことにした。

幼馴染の賢将(清水尋也)と一緒にやってきた、歌手の草笛リナ(池田エライザ)に目を奪われる鉄平。仕事を求めてやってきたというリナは、職員クラブで働くことになるが……。

2話→

スポンサーリンク

【海に眠るダイヤモンド】1話のネタバレ要約

故郷の端島で就職した鉄平は、炭鉱で働く父に猛反対された。幼馴染の賢将と同じ船で戻ってきた、草笛リナに心惹かれる鉄平は、『端島音頭』を彼女に歌ってもらおうと提案する。

リナは職員クラブで働き始めるが、接待でやってきた鉄鋼会社の社長のセクハラにキレてクビになってしまう。一方、炭鉱では行方不明の炭鉱員を捜索していた。

島から出ようとするリナに鉄平は、『端島音頭』を三島の前で披露するようお膳立てし、島民を味方につけたことで三島に一泡吹かせた。行方不明になった炭鉱員も無事救い出した。

スポンサーリンク

【海に眠るダイヤモンド】1話の詳細なネタバレ

プロポーズ

1965年――端島から一艘の小船が暗い中、海を漂う。船には女性と小さな赤子。愛しい人との思い出は全部、あの島へ置いてきた。

現代――いづみ(宮本信子)が道の端に腰掛けていると、ホストクラブ「Heaven’s Jail」の看板に、持っていたドリンクを玲央(神木隆之介)は投げつけて去っていく。

転がった空容器を拾い、後を追ういづみ。忘れ物だと言って渡すと同時に、驚きの言葉を告げた。

「私と結婚しない?」

玲央は息を呑んだ。あまりにも唐突で、彼女が何を言っているのか一瞬理解できなかった。

「…は?」

その答えを待つかのように、彼女は微笑み、玲央のホストクラブへ向かって歩き出した。

店内に入ると、彼女はいとも簡単に席につき、シャンパンを注文した。玲央は戸惑いを隠せず、思わず彼女に声をかける。

「本当に大丈夫なの?」

すると彼女は新聞紙に包まれた札束をテーブルに置いた。玲央は再び言葉を失うが、仕事である以上、彼女のリクエストには応じるしかない。仲間たちが盛り上がるコールの中、玲央はちらちらとサヤという女の子を追いかけるが、彼女はただ「売掛で」と一言だけ残して去っていった

夜が明け、玲央が自転車に乗ろうとすると、突然、黒塗りの車が彼の横に静かに止まった。窓が開き、中から現れたのは澤田(酒向芳)という男だった。

「おはようございます」

突然の挨拶に驚く玲央。しかし、それ以上に彼を驚かせたのは、そのすぐ後にドアが開き、いづみが微笑みながら朝食に誘ったことだった。

「乗って」

玲央は反論する間もなく、強引に車に押し込まれ、そのまま長崎へと連れて行かれた

やがて長崎に到着すると、いづみは店に行ってちゃんぽんを注文した。食事をしながらも、玲央の疑問は募る一方だった。

「いづみさんってさ、何者なの?」

しかし、いづみは答えることなく、視線を皿に落としたままだった。玲央は更に追及する。

「なんで長崎なの?」

「たまたまよ」いづみはあっさりと答えた。

その後、タクシーに乗った二人は再び街を走り抜ける。玲央は窓の外に広がる風景を興味深そうに見つめ、気づくと、十字架を頂いた建物がいくつも目に入った。そして、やがて一際大きな教会が見えてきた。浦上天主堂だった。

いづみはぽつりと言った。「あなたがたは世の光である。人はみんな罪深いから光が必要で、光の近くにいると照らしてもらえる。するとあなたも光になれる」

その言葉を玲央は考えながら、車窓から差し込む光を心地よさげに浴びる。彼女の言葉にはどこか神秘的な響きがあったが、玲央はそれ以上踏み込むことができなかった。

客の言うところにはついていくし、話も聞くという玲央。いづみが「あなたは?どこへ行きたい?」と問いかけた。

「別にどこも…」玲央が答えると、いづみは少し寂しそうに微笑み、「ふ~ん、寂しいね」と言った。

それから彼女は海に浮かぶ小さな島を指さし、「あそこ、行ってみない?」と誘った。そうして二人は軍艦島へ向かう船に乗り込んだ。乗客たちが興奮気味に船旅を楽しむ中、いづみだけは沈黙を守っていた。

「マジ廃墟じゃん」玲央がつぶやくと、いづみは小さな声で「廃墟なんかじゃない」とつぶやいた。

その瞬間、彼女は急に立ち上がり、デッキへと向かって駆け出した。

「端島だ、端島だ…」彼女はそう繰り返し、船のデッキで膝を抱えて泣き崩れた。玲央は心配そうにしながらも、ゆっくりとデッキの先端へと足を運んだ。まるで何かに誘われるかのように、端島の風景を玲央は見つめた。

帰郷

次第に空が明るくなり、かつての端島がその姿を現していく。かつて静寂に包まれていた島は、今や人々で溢れ返り、活気が戻ってきた。炭鉱で働く人々、商店で買い物をする家族、そして賑やかな笑い声が響く中、船が港に到着すると、鉄平(神木隆之介)がデッキの上で大きく両腕を広げた。

「帰ったぞ!端島!」鉄平の声が港の人々に届き、その声には久しぶりに戻ってきた故郷への愛情が溢れていた。

彼の隣には百合子(土屋太鳳)が立っていた。鉄平は長崎大学を無事に卒業し、端島へ戻ってきたのだ。自宅に集まっていた家族や知り合いたちが彼を迎え、喜びの声を上げた。特に父親の一平(國村隼)や、周囲の人々が囲む中、鉄平は「卒業おめでとう!」と祝福を受けた。

その場の温かな雰囲気の中で、鉄平はふと静かに、しかし決意を込めて口を開いた。

「手紙に書いてあるから、分かってると思うけど…俺は、端島で働く」

彼の言葉に場が一瞬静まり返る。そして、次の瞬間、一平の手が鉄平の頬を鋭く叩いた。鉄平は驚きで一瞬動けなくなるが、父親の怒りは一瞬にして明らかだった。

「もう就職したから、決まったから!」鉄平はその場を立ち去る。一平は怒りを露わにしながら後を追った。

家に戻ると、母のハル(中嶋朋子)が鉄平の手紙を手にしていた。どうやら、手紙が間違って18号棟に届けられていたようだ。その手紙には就職のことが記されており、彼が端島で働く決意を表明していた。しかし、父の一平は頑なに反対の意思を示していた。

「だめなものはだめだよ!」父はそう言って怒りを露わにした。一平の想いも、鉄平の決意も激しくぶつかり合った。

就職

サイレンが響き渡り、炭鉱の仕事を終えた炭鉱夫たちが地上へと戻ってくる。その中に、鉄平はじっと兄の進平(斎藤工)を待っていた。進平が姿を現すと、鉄平はサイダーを手に微笑んで立っていた。

「お疲れ、ほら、これ」そう言って手渡したサイダーを、進平は無言で受け取り、二人はそのまま島の端へと歩き出した。

海風が心地よく吹く中、進平が一口サイダーを飲んでからふと呟いた。「お前、ほんとにここで働く気なんか?」

鉄平はサイダーの瓶を両手で握りながら、少し考えるようにして答えた。「兄ちゃんも学費を出してくれたんだし、反対するのか?」

進平は少し困ったような顔をして、空を見上げた。「鉄平を大学に行かせるってのは、親父の希望やった。お前が言い出したんじゃなか」

その言葉に、鉄平は満足そうに微笑んだ。「うん」そう言って、サイダーをゴクリと飲み干す。

進平はサイダーの瓶を振りながら、兄らしくからかうように言った。「島でなんする?まさか海の下じゃなかやろな」

鉄平は、笑いながら遠くを指差した。「メガネから見えるそこ」

彼が指し示したのは、勤労課の外勤先だった。鉄平は炭鉱の現場ではなく、外勤の仕事を選んでいた。進平は少し驚いた表情を見せたが、それでも弟を応援する気持ちは変わらなかった。

しかし、現実はそう甘くはなかった。勤労課に配属された鉄平の目の前で、次々と鉱員たちが欠勤届けを提出していく。疲労や怪我、そして精神的な重圧で、彼らの欠勤は日常茶飯事だった。

鉄平の同僚である松原(大下ヒロト)が、ため息をつきながらぼやいた。「独身の鉱員はダメだな。その日暮らしだもん」

鉄平は黙ってそれを聞きながら、鉱員たちの厳しい現状を改めて痛感した。鉱員、いわゆる炭鉱夫たちは会社に雇われ、日給で働いている。彼らの仕事は命がけで、生活は決して安定しているとは言えなかった。

そんな彼らを見つめる鉄平の目には、これから自分が何をすべきかという決意が静かに燃えていた。

端島とは

端島、その面積はわずか480メートル×160メートルという狭い土地。しかし、その小さな島に4000人以上が密集して暮らしている。想像を絶する人口密度だが、島での生活はそれでも回っていた。

この島に住む人々の大半は、鉱員とその家族たちで占められている。鷹羽工業の職員は100人もおらず、その他の住民は「社外者」と呼ばれ、食堂や商店の従業員として島での生活を支えていた。島の8割を占めるのが、炭鉱で働く鉱員たちとその家族だ。

島全体が鷹羽工業という日本有数のグループ企業の所有物であり、ここで取れる「黒いダイヤ」とも呼ばれる良質な石炭は、鉄鋼の製造に使われる。この石炭は、一般に燃料として使われる石炭とは違い、その品質の高さから、端島は鉄鋼産業にとって欠かせない存在だった。

端島が炭鉱の島としての歴史を刻み始めたのは明治時代から。1955年の現在でも、炭鉱がこの島の中心であり、炭鉱があるからこそ端島が存在していた。しかし、島の狭さが故に、居住スペースは限られており、次第に建物は上へと伸びていくしかなかった。

驚くべきことに、日本で初めての鉄筋コンクリート造りの住宅が建てられたのは、東京でも大阪でもなく、この端島だったのだ。小さな島にも関わらず、島内には小中学校、病院、郵便局、食堂、理髪店、購買部、ビリヤード場、映画館、さらには派出所まで備えられていた。島の住民たちは、この限られた空間で、日々の生活を営んでいた。

だが、土地が限られているため、島内には墓地がなく、火葬場も存在しない。火葬が必要な場合、隣接する無人島の中ノ島へと遺体を運び、そこで火葬を行うことが決まりとなっていた。島で暮らす人々は、生きるための空間だけでなく、死後の準備さえも隣の無人島に頼らざるを得なかった。

謎の女性歌手

鉄平は船で端島に到着したを名簿を手に、ひとりひとりチェックしていた。次々と名前を確認していると、そこに賢将(清水尋也)が戻ってきた。彼の姿を見てほっとしたのも束の間、ふと目を向けると、一人の女性が目に留まった。彼女は何やら物静かな雰囲気を漂わせていた。

「歌手の人?」と鉄平が尋ねると、彼女は少し困ったように笑った。

「歌手として来たんじゃないわ。仕事を探しに来たのよ」

その答えに、鉄平は少し考え込む。しかし、すぐに顔を明るくして提案した。

「じゃあさ、今年の盆踊りで『端島音頭』を歌ってくれないか?」

「ヅカガールが端島音頭を歌うなんて、面白いじゃないか!」と、鉄平は喜びを隠さずに笑みを浮かべた。

しかし、女性は笑うことなく、冷静に返した。「私はジャズ。民謡なんか歌わない」

その言葉に鉄平は一瞬驚いたが、すぐに彼女が本気であることに気づき、彼女を見送りながら、しばらくその場で立ち尽くした。彼女の名前は草笛リナ(池田エライザ)。後で面接を受けに行く予定だという。

その後、泊まる場所も決まっていないリナを見かねた、職員クラブの町子(映美くらら)が、彼女を寺へと連れて行き、住職(さだまさし)に頼み込んで女子寮に入れることにした

「目の下のあざ、うまく隠れてる。男に殴られたと?」と、案内しながら町子が何気なく声をかける。リナは何も答えられずに黙ったままだった。

町子はリナが見せた紹介状をちらっと見て、「紹介状は代筆屋に書かせた嘘っぱちかな」と見抜いていた。

リナは慌てて弁解しようとしたが、町子は軽く手を挙げて制した。「落ち着いて。あんたに何があって、どこから逃げてきたか知らんけどさ、あたしたち、あの戦争を生き延びたとよ。そう簡単には、死ねんさ

その言葉にリナは少し肩の力を抜いた。町子は彼女に優しく微笑みかけて、こう付け加えた。

「明日から頑張って」

リナはこうして職員クラブの女給として働くことになった

ちゃんぽん

鉄平はリナと共に食堂で食事をしていた。出された料理に箸をつけながら、彼はリナに思いついたアイデアを話し出した。

「端島音頭をジャズ風に歌ったらどうか?」

リナは驚いた表情を見せたが、隣の席でその様子を見ていた百合子は、明らかに不機嫌な顔をしていた。箸を持つ手が少し止まり、視線を下に落とす。

鉄平は、周りを気にせずさらに説明を続ける。「端島は色んな地方から集まってきていて、いろんな方言がまぜこぜに合わさっていうなれば端島弁。人も言葉もちゃんぽんしてるんだから、ジャズと民謡がちゃんぽんしたっていい

リナはその提案に戸惑いを見せた。「でも、民謡なんて歌ったことないし…」

鉄平はにっこり笑って、リナを励ます。「時間はあるんだし、練習すればいいさ」

その会話に我慢できなくなった百合子は、ため息をつきながら呆れた声を出した。「ジャズでどうやって盆踊りするのよ」

鉄平は笑って答えようとしたが、百合子の声がさらに冷たく響く。「端島音頭は端島の人が作詞作曲した魂の歌。変なアレンジで売ったたら、石が飛んでくる」

その言葉にリナも少し不安な表情を見せたが、鉄平は真剣な目で「大丈夫だ」とリナを安心させた。彼は実家を出て職員住宅に移り、新たな一歩を踏み出していたからこそ、島の伝統と向き合いながらも新しい風を吹かせたいという思いがあったのだ。

一方で、百合子は心中複雑だった。実は彼女は賢将と付き合っていたのだが、周囲は鉄平と百合子が一緒だと思っていた。特に、鉄平の幼なじみである朝子(杉咲花)はその勘違いをしており、百合子と鉄平の関係を誤解して少し胸を痛めていた。しかし、百合子と賢将が付き合っていると知って、朝子は少しほっとした

会計をしに行く、鉄平がぽつりとつぶやいた。「俺が好きになった子は、賢将がさらっていちゃうんだよな…」

その言葉を聞いていた朝子は、心の中でわずかな寂しさを感じた。鉄平の心の中には自分はいない気がした

地獄の職場

炭鉱長の邸宅は、端島で最も高い場所にあり、かつては誰も近づくことができない威厳のある場所だった。しかし、今ではその光景は少し違っている。鉄平は、炭鉱幹部である辰雄に誘われて、その邸宅を訪れることになった。端島生まれで端島育ちの鉄平にとって、この場所はまるで別世界のように映った。

一方、賢将は違う。彼は東京生まれで、12年前、小学5年生の時に父親の転勤で端島にやってきた。鉄平とは同級生であり幼馴染だが、幼い頃から二人の世界は違っていた。それでも、賢将が東京から来たときから、二人は友情を深めていた。

炭鉱長として3年前に赴任してきた廣田(渡辺憲吉)は、歴代の炭鉱長の中でも飛び抜けて気さくな人物だった。そのため、彼は端島での生活において、鉱員たちからも住民たちからも絶大な人気を誇っていた。そんな廣田の家に招かれることは、島民にとって特別な出来事だった。

鉄平はその日の帰り道、ふと自分の父親、一平の姿を思い出す。何十年も炭鉱で働き続け、家族のために金を稼ぎ続けた一平。その体は既に限界に達しており、今では週に3日働くのがやっとだ。炭鉱夫たちは、ただその身ひとつで家族のために稼ぎ、生きるために働く。しかし、その労働は過酷を極めていた。

ある日、炭鉱での作業中、一平が若い二人の鉱員、金太(阿部亮平)と銀太(羽谷勝太)に絡まれた。二人はまだ日が浅く、現場での作法を理解していなかったのだ。それを見た進平が、一平を守るようにして間に入り、唐突に詩を口にした。

「吹くからに 秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ」

周囲の鉱員たちも同じように声を合わせ、瞬く間にその場は和やかな空気に包まれた。

だがその瞬間、炭鉱内に響くブザーが鳴り響き、一平班が出動することになった。一平班は、鉱員たちが交代で働く班の一つで、1番方から3番方まで、1週間ごとに交代しながら24時間体制で炭鉱を動かしていた。彼らが向かうのは、海の底よりもはるかに深い場所、地下600メートルの坑道だ

エレベーターに乗り、さらに人車を乗り継ぎ、アリの巣のように張り巡らされた坑道を進む。そこにたどり着くまで、1時間以上もかかる。そしてようやくたどり着いた先は、気温35度、湿度80%を超える過酷な環境。地獄のようなその場所で、鉱員たちは汗まみれになりながら働き続けた。持参した弁当も、選び方を間違えればあっという間に腐ってしまう。

若い鉱員たちは暑さに耐えかねて半袖になることも多かったが、そんな彼らに一平はいつも忠告していた。「脱ぐな」それでも、若者たちはその言葉を無視することもあり、一平はそれを苦々しく見つめていた。

そして爆破が行われた直後、破片が飛び散り、若い衆が痛がる姿を見た一平は静かに言った。

「な、だから、着てろ」その声には、長年炭鉱で働き続けた者の深い思いが込められていた。

飛ぶ客

現代――いづみは息子の和馬と孫の星也と一緒に食卓を囲んでいた。いつも通り、賑やかな食事の時間だが、和馬は何やらいづみに言いたげな表情をしていた。

「母さん、何も言わずにどこかに行くのはやめてくれよ。心配になるからさ」和馬が注意すると、いづみは悪びれた様子もなく微笑んだ。

「若い男とデートしてきたのよ。それに、再婚しようかと思ってるの」と冗談交じりに言い、くすっと笑う。

その頃、玲央はホストクラブで後輩のライトに旅行の写真を見せていた。「目の前までいって船の上で1時間時間つぶして、上陸しないで帰った。やっぱボケてんのかな、ボケ姫」そう言って玲央は笑ったが、その言葉にはどこか複雑な感情が見え隠れしていた。

ライトはそれを聞きながら、ふと思い出したように口を開く。「玲央にめっちゃ似てるんだって、おばあちゃんが忘れらんない人に」

玲央とライトはその話を軽く流しつつ、街行く女の子たちに声をかけたが、まったく相手にされなかった。

そんな中、サヤからのメッセージが3日も既読にならないことに玲央は心配していた。「ブロックされてんじゃね?」とライトが茶化すが、玲央の心には不安が広がっていた。

「もしサヤが飛んでたら…ヤバいよ」玲央は戦慄した。サヤが逃げてしまえば、玲央は彼女の分の金を返さなければならない。追い詰められた玲央は、いづみに営業をかけることに決めた。

玲央がいづみに営業の電話をかけると、いづみは冷静な声で「店の原価率は7%だって言ってたけど、普通の飲食店はだいたい30%くらいよ」と淡々と話す。玲央は焦って「先輩から金を借りなきゃならなくなっちゃうよ」と必死に訴えた。

すると、いづみは少し間を置いて「逆らってみれば。あなた人生で本気で逆らってみたことある?」と静かに問いかけた。その言葉は鋭く、玲央の心に深く突き刺さった。

玲央は自分が今までどれだけ周囲に流されて生きてきたのか、そして本当に自分の意思で逆らったことがなかったのだと、いづみの言葉で気づかされたのだった。

たかが端島

鉄平たちは、職員クラブでの一杯を楽しんでいた。クラブにはリナも働いていて、賑やかな笑い声が響く中、賢将はリナにちょっかいを出そうとし始めた。その様子を見た鉄平は、ちょっと険しい表情で「百合子はいいのかよ」と注意する。

すると、百合子は笑って肩をすくめ、「私達フリーダムなカップルなの」と言い返す。

その一方で、別の離れたテーブルには辰雄が座っており、彼の隣には製鉄会社の社長、三島(坪倉由幸)がいた。鉄平は石炭の将来について三島に尋ねたが、三島はそれには答えず、リナを呼び寄せた。リナは戸惑いを隠せなかったが、町子が目で合図を送り、彼女はしぶしぶ席につくことになった。

その場の雰囲気が変わる中、賢将は自身の進路に迷っていた。「兄たちは鷹羽銀行に入ってるけどさ…」とぼやく。

鉄平はそれを聞いて、「早く仕事決めないと、百合子と一緒になれないぞ」と軽く促すが、賢将は呆れたように「仲人おじさんか」と笑い飛ばした。百合子も「私だって、東京に出てサラリーガールになるかもしれないわ」と言い出した。

そんな中、三島はリナの手を突然触り始めた。「やめてください」とリナは小さく声を上げたが、三島は無視して続けた。リナは耐え切れず、「やめて!」と叫び、手を払い除けた。そして、怒りに任せて立ち上がると、そこにあったグラスを手に取り、三島の顔に酒をぶっかけた。

「女の体を気安く触るんじゃないよ!」リナの声が響く。

一瞬で静まり返ったクラブの中、三島は怒りに震え、リナの顔をビンタした「何お高くとまってんだ?たかが端島の炭鉱の女風情が」と侮蔑の言葉を投げつける。

辰雄は冷静に「君、謝りたまえ」とリナに言ったが、リナは何も言わず、ただ黙っていた。三島は不快感を露わにし、「不愉快だ、帰る。生意気な女中はクビにしたまえ」と捨て台詞を吐いて立ち去った。

残されたリナは呆然とし、涙がこぼれ落ちた。鉄平はそっとおしぼりを差し出し、「リナさん、冷やしたほうがいい」と優しく声をかけた。

リナは涙を拭いながら、「ありがとう…」と小さな声で応え、おしぼりを受け取った。

しかし、その光景を見ていた町子は、怒りを抑えきれず「なんばしよっと!」とリナに向かって叱りつけた。

リナは怯まずに「アメリカの兵隊だって、ビールかけて目を覚まさせてやる」と強がったが、町子は冷たく言い放った。

「目を覚ますのはあんた。ここがどういう島か、分かっとると?この島全部、鷹羽。鷹羽のもんたい」

その言葉にリナは何も言えず、下を向いていた。

悔しい過去の思い出

鉄平が大学に通っていた頃、友人たちとの何気ない会話の中で、生まれ故郷について尋ねられた。「端島だ」と答えた彼は、続けて「父も兄も炭鉱夫なんだ」と誇らしげに言った。しかし、その言葉を聞いた友人の反応は冷ややかだった。

「そういうとこからも来てるんだ、うちの大学」と、友人は蔑むような口調で言い放った。鉄平の心には深い傷が刻まれた。

その後、鉄平、百合子、賢将の三人は路面電車に座りながら話していた。百合子も同じような経験をしていたのだ。

「私も友達に言われた。炭鉱の島出身なんて、あんまり言わないほうがいいよ。私達ずーっとあの島で、あそこで育ってきたからわからなかったけど」と、百合子は寂しそうに鉄平に忠告した。

それを聞いた賢将は、怒りを抑えきれず、声を荒げた。「日本の発展を支えてきたのは石炭だ!石炭がなかったら、電気だって使えない。分かってねえのは、そいつらだと」彼の言葉は鋭く、車内に響き渡った。

鉄平はその言葉にこたえられず、悔しさで涙を流した。自分の誇りを傷つけられたことに対する痛みが胸に広がっていたのだ。そんな彼を見た百合子は、静かに寄り添い、「ばか、泣かないでよ。私まで泣きたくなる」と言いながら、彼女も涙を流した。

その後、賢将は父の辰雄を外で待っていた。父親が通りかかると、賢将は「たかが端島。言い返してもよかったんじゃないですか」と投げかけた。

しかし辰雄は、淡々と答えた。「どうして?たかが端島だろ」そして、続けて言った。「4月からうちの会社で働くにしても、お前はここじゃない。新しい部門に入れてもらう」

それを聞いた賢将は、少し寂しそうに「さらば端島か…」とつぶやいた。端島での生活が終わりに近づいていることを、彼は少しずつ実感していた。

一方、炭鉱では、鉱員たちがトロッコに乗って一日の作業を終えて帰ろうとしていた。しかし、その途中で銀太が突然腹を押さえ、「腹が痛い」と言ってこっそりトロッコを降りてしまった

噂と捜索

炭鉱長が島に戻ってくると、辰雄は出迎えに行き、軽く会釈しながら「三島さん、問題なかった?」と尋ねた。三島は淡々と、「ええ、特には」と返事をした。

その後、辰雄と炭鉱長が歩いている中で、職員クラブに関する話題が持ち上がった。「新しい女給が入ったけど、島に馴染めなかったみたいだ。結局、入れ替えることにしたよ」その話を偶然耳にした鉄平は、胸の奥でざわめきが広がるのを感じた。

端島は狭い島だ。噂はあっという間に広まる。鉄平がその場を立ち去る前に、近くにいた誰かが「ヅカガール、クビらしい」と他の人に話しているのが聞こえた。ほどなくして、百合子の耳にもその噂が届き、彼女は憤慨した。

「悪いのは向こうなのに、どうして…!」百合子は悔しさを抑えられず、声を荒げた。

端島のような小さなコミュニティでは、具体的すぎる噂には必ず発信源がある。そして、すぐに「たかが炭鉱風情」と侮辱的な言葉を口にしたという話が島中に広がり、人々の間で囁かれ始めていた。

その頃、進平は焦りながら金太を見つけ、急いで声をかけた。「お前、相方はどうした?」

金太は頭をかきながら「戻ってこん」と答えた。相方の木札を返却していたため、しばらくの間その失踪に気づかれなかったのだ。しかし、20時間も坑内に戻ってこなければ、無事では済まない

「坑内に20時間、とっくにくたばっとるかもしれんな」進平は鋭い口調で言い放つ。それを聞いた金太は激昂するが、進平は冷たい視線を送り、「ついてくるなら、背中に気をつけろ。真っ暗闇で殴り殺されても、だーれも気付かんけん」と脅しをかけた。

金太は黙り込み、その場の緊張が増す。進平と一平たちは急いで坑内の捜索に向かうことになり、緊迫した雰囲気が漂っていた。

人生を変えるチャンス

リナは荷物をまとめ、住職に別れの挨拶をしていた。住職は彼女に優しく微笑みながら、「またおいで」と告げ、静かに「南無釈迦牟尼仏、あなたを信じてよりどころにします」と言葉を添えた。

その頃、鉄平が慌てて寺に駆けつけるが、住職から「リナはもう出ていった」と告げられた。「楽譜欲しかって言うけん、渡したら毎日練習ばしっとたばい」と住職は続けた。それは端島音頭の楽譜だった。鉄平はその言葉に驚き、すぐさまリナを探しに走り出した。

彼は食堂を訪ねるが、そこにもリナの姿はない。焦りながら港へ向かうと、ようやくリナが船に乗ろうとしているところを見つけた。

「どこへ行くの?町子さんから聞いたよ、行くとこないんでしょ?」と鉄平はリナを引き止める。

リナは一度立ち止まり、荷物を地面に置いた。彼女の表情はどこか寂しげで、あきらめたような声で話し始めた。「いっつもそう。やっと見つけたと思っても、うまくいかなくて。一人で、根っこがちぎれた海藻みたいに漂って、流されて、転々と。そういう人生。よくしてくれてありがとう、私まで同級生みたいにほんの少しだけど思えて、楽しかった」そう言うと、リナはカバンを持ち直し、「さようなら」と言い、再び歩き出そうとした。

その瞬間、鉄平は強く叫んだ。「悔しくないか?俺は悔しい。悔しかった」

リナは立ち止まる。鉄平は言葉を続けた。「父ちゃんも兄ちゃんも毎日真っ黒になって、炭を掘ってる。海の…海の底より下の、地底の底で。だけどそれは、誰かに踏みつけられるためじゃない

彼の声は震えていたが、決意が込められていた。鉄平は、かつて電車で話していた時のことを思い出しながら、「この端島で、リナさんがあんな風に踏みつけられて、俺は悔しかった。リナさん、人生変えたくないか?ここから、変えたくないか?」と告げた。

リナは驚いたように鉄平を見つめ、その言葉に心が揺れ動くのを感じた。

現代――玲央は酔いつぶれて、地面に倒れていた。彼は酒に飲まれ、ふらふらになっていたが、そこにいづみが現れた。いづみは玲央のそばに腰を下ろし、優しく声をかけた。

「玲央、人生変えたくないか?ここから、変えたくないか?」

いづみの言葉は、まるで鉄平がリナにかけたものと同じように、玲央の心の深い部分に響いた。その言葉は、今までの生き方を振り返り、これからを考えるきっかけを与えるものだった。

魂の歌

賢将は息を切らしながら炭鉱長の元へ駆け込むと、炭鉱長に耳打ちをした。それを聞いた炭鉱長は落ち着いた様子で頷き、「三島さん、あちらから参りましょうか」と言い、三島を連れてその場を後にした。

その頃、鉄平は屋上に上がり、集まっていた人々に向かって大きな声で呼びかけた。「みんな、ちょっとお願いがあるんだ!」と。彼の声に応じて、住民たちが次第に集まってきた。

一方、百合子は映画館で何かを急いで片付けていた。階段を下駄を履いてカツカツと降りてくるのは、きれいな着物をまとったリナだった。彼女はこれからの特別な瞬間に備えていた。

鉄平が遠くから合図を送ると、リナは深呼吸して心を落ち着け、ついに歌い出した。それは「端島音頭」だった。リナの美しい歌声が響き渡る中、住民たちは手を叩きながらその音頭に耳を傾けていた。音楽に合わせて踊り、足を踏み鳴らすその姿は、まるで地響きを引き起こすかのようだった。

「お見送りに歌手を用意しました」と、鉄平は炭鉱長に向かって伝えた。住民たちの歓声と共に演奏も始まり、リナが歌う姿に鉄平は目を奪われていた。彼女の堂々とした歌声に心を打たれ、彼女の存在が光り輝いて見えた。

リナが歌い終えると、鉄平はすかさず彼女を街のみんなに紹介し、「今年の盆踊りで歌ってもらおう」といい、住民たちからの拍手が鳴り響く。すぐにその場にいる炭鉱長にも許可を取った。

その後、鉄平は三島の元へ行き、「彼女は職員クラブの女給です」と伝えた。三島は、すれ違いざまにリナを一瞥し、静かに頭を下げた。リナもそれに応じて軽く会釈をした。三島は島民を味方につけたリナを、認めざるをえなかった。

賢将はその様子を見ていたが、ふと決意を固めたように口を開いた。「決めた。他の部門じゃなくて端島に希望を出す。ここで働く」その言葉に、百合子は微笑みながら「そうなると思った」と笑った。

その頃、鉄平とリナが話している姿を、朝子はどこか気になる様子で遠くからじっと見つめていた。彼女の胸には、複雑な感情が揺れていた。

スポンサーリンク

【海に眠るダイヤモンド】1話の結末

銀太がついに見つかった。坑内で倒れていた彼は、意識を失っていたが、やがてゆっくりと息を吹き返した。彼を救い出した一平たちは、急いで地上へと戻った。

地上に戻った一平は、金太を見つめながら静かに語り出した。「いいか、俺達炭鉱夫は力を合わせてヤマと戦うんだ。安心して背中を任せられるやつとじゃなきゃ、一緒にヤマには入れねえ。もう勝手すんじぇねぞ」

その言葉に金太も真剣に耳を傾けた。進平は場を和ませるように、金太の尻を軽く蹴飛ばし、金太は笑いながら「いっぱい奢らせてください」と答えた。それを聞いて皆は笑い、喜びが広がった。

そこに鉄平がやってきた。彼は父、一平に向かって強い決意を込めて言った。「俺は、端島で働く。ここから、端島をもっとよくしたい。日本中に知れ渡るぐらいに。俺の大切な故郷なんだって、うん、胸張って言いたい。俺はそのために帰ってきた

一平はじっと鉄平を見つめた。その表情には、何か言いたげな思いがあったが、何も言わずにその場を後にした

その後、リナと鉄平が話をしていた。リナが「練習、いっちょん足らんかった」と言うのを聞いて、鉄平は驚いたように「福岡の人?」と尋ねた。

リナは少し照れたように微笑みながら、「ヅカガールじゃないんよ。進駐軍のクラブで歌ってたの」と真実を打ち明けた。

それを聞いた鉄平は、大きな笑顔で「よかさ!かっこよかった!」と喜びの声を上げた。リナの隠していた過去も、鉄平にとっては何の問題にもならなかった。

「端島へ、ようこそ」と改めて言葉をかける鉄平に、リナも笑顔を返した。その瞬間、リナは自分がついに新しい居場所を見つけたと感じた

2話→

スポンサーリンク

【海に眠るダイヤモンド】1話のまとめと感想

島出身の鉄平は何とかして端島を誇れるようにするため、島就職したという話でした。

冒頭の漂う小船に乗っていたのは、恐らくリナだと思います。自分の子なのか、それとも誰かの子なのか、赤子と一緒に島を離れました。そしていづみの忘れられない人というのは鉄平で、いづみ=リナなのではないかと思わせます。さらに連れていた子は鉄平の子で、その孫が玲央と思わせる雰囲気です。

と、1話からそう思わせますが、そんな簡単な話とも思えないので、いくつかもう少し複雑な部分がありそうです。例えば、子供はリナの子供ではなく別の女性の子とか。そんな感じです。

また、最初から不穏な空気がありまして、父親の一平や兄の進平が亡くなるかは分かりませんが、鉱員の人たちの死亡フラグが早くも立っています。その話がいつかはやってくると思うと、何とも憂鬱な気分にはなります。

端島での生活シーンがお金をかけて再現されているので、見ていて楽しいドラマです。

【海に眠るダイヤモンド】1話のいいセリフ

人生変えたくないか?ここから、変えたくないか?

2話→

タイトルとURLをコピーしました