今回の悪党~加害者追跡調査~は、過去に弟が犯罪を起こしてしまった姉が依頼人です。母親が末期がんということで、弟を連れてきて欲しいという依頼内容となります。なぜ母親は弟と会いたいのか?被害者家族だけでなく、加害者家族の苦しみを今回の話では描いていました。
悪党~加害者追跡調査~概要
WOWOWプライムで5月12日より毎週日曜22時に放送しています。元警官の主人公が退職後に探偵となり、依頼を受けて犯罪加害者の現在を調査し報告をします。主人公自身も犯罪被害者遺族であり、調査をする内に様々な葛藤に直面していくストーリーです。
キャスト
- 佐伯修一(東出昌大)
- はるか(新川優愛)
- 坂上洋一(青柳 翔)
- 遠藤りさ(蓮佛美沙子)
- 前畑紀子(山口紗弥加)
- 早見剛(寛一郎)
- 松原弥生(篠原ゆき子)
- 松原文彦(中島 歩)
- 細谷博文(渡辺いっけい)
- 田所健二(三浦誠己)
- 寺田正志(山中 崇)
- 榎木和也(波岡一喜)
- 鈴本茂樹(柄本 明)
- 染谷久美子(板谷由夏)
- 佐伯敏夫(益岡 徹)
- 木暮正人(松重 豊)
スタッフ
- 【監督】瀬々敬久
- 【脚本】鈴木謙一
- 【原作】薬丸岳「悪党」
- 【音楽】大間々昂
3話ゲスト
篠原ゆき子・ 中島歩
前回はこちら
あらすじ
新たな依頼人・弥生(篠原ゆき子)から末期がんである母の最後の望みで弟の文彦(中島歩)を捜してほしいと頼まれた佐伯。家族をどん底に突き落とした前科者の文彦を弥生がおぞましく思う一方で、文彦は自分を見捨てた弥生のことを恨んでいた。仕事としての調査を進めながら己の境遇を反芻する佐伯は、憤懣やるかたないまま自身の仇にさらに接近するため、はるかに身分を明かし本格的に田所の調査に協力してもらうことに。
公式HPより引用
ネタバレ
感想
今回の話は主に加害者家族の話になります。被害者家族に比べて加害者家族を題材にする話は、共感を得られにくいせいかあまりありません。しかし犯罪というものは、加害者当人だけでなく関係者全ての人生を狂わせるものであると、加害者家族側からも描くことでよくわかります。話としては“許す”話となっています。
弟・文彦が起こした事件は?
姉・弥生が15年間絶縁していたというきっかけになる事件とは、いったいどういったものだったのか?
- 静岡県沼津市で発生した強盗殺人事件
- 当時16歳の男子高校2年生2人と、当時17歳のアルバイト作業員2人が逮捕
- 被害者にバイクで近付きバッグをひったくりする手法
- しかし被害者が抵抗したためバイクが転倒する
- その後、逃げようとした被害者を怒って持っていた警棒で殴打
- 頭から血を流して死亡
この結果、文彦は12年の刑期を満期で出所。出所後職を転々として、金の無心を親戚や知人にしていた。その間、姉と母親は必死に働いていました。その母親が末期がんなので、見舞いに行ってやって欲しいという依頼です。
許す基準は何か?
許すか許さないかの話が頻繁に出てくる物語のため、佐伯の気持ちや加害者と被害者、双方の気持ちが所々に入り混じってきます。
現在の坂上に対して
- 悪党はどうなったら許されるんだ?
- りさとは荷物になりたくないから別れた
- やっぱり許して欲しいとは思っていない
- 細谷はこれで満足なのか?許せるのか?
- 細谷の依頼を受けた時点で、佐伯の返事は決まっていただろう
- 佐伯は悪党に対する怒りでいっぱい
- お前も姉を殺した奴らを許さないだろう?
- だから人を憎むことで佐伯は生きている
- この状態で満足いかないなら、きっちり殺せよ
- ま、佐伯には無理だろうけど
車椅子状態な坂上は時折佐伯に絡んできます。自分がこんな状態になったことで、色々考える時間でもできたのか、とにかく佐伯に絡んできます。基本的に他責をします。ある意味、死ぬのではなく半身不随という状態で良かった気がします。死にたくても死ねない、だからといって健常者の時と違って不自由、苦しみながら生きるという罰です。
もちろんそんな坂上を見て、佐伯は許しもしないし、好きに言わせておきます。
現在の田所に対して
- 金さえあれば女を抱けると思っている
- 女を下に見ているせいで、はるかに嫌がられている
- 仕事を終えると呑気に飲んでる
- 自宅に戻るのは朝帰り
- 社長令嬢と結婚するらしい
- はるかに愛人契約の話をしてくる
ラーメン屋が繁盛しているのか、キャバクラによく飲みに行ってます。社長令嬢と結婚するらしいのですが、はるかに愛人にならないかと持ちかけます。姉を殺した犯人という時点で佐伯の許すハードルは高いのですが、こんな調子では当然許せるわけもありません。
坂上も田所も加害者が適当に生きていて、ちゃっかり恋人がいて、金にも困っていないという幸せを満喫しています。では相手が不幸なら許せるのか?それは今回の文彦が不幸な状態でしたが、佐伯は怒りを感じていました。さらに坂上は半身不随という不幸になりますが、やっぱり佐伯は許せません。
よって、少なくとも加害者が反省もせずにのうのうと生きている、そういった状態を佐伯は許せないのだと思います。
これは以前同じWOWOWで放送されていた、ダイイング・アイでもそうですが、許す許さないで言ったら一生許しません。しかし、加害者側の誰一人も反省もせず、無責任に生きていることに被害者は憤りを感じました。“賠償金を払う・刑期を終える=罪を償った”ではないことを、加害者側に知ってもらいたいものです。
また加害者家族については、犯罪に巻き込まれてしまったという意味では一緒ですが、被害者と違って失ったものは“命”ではありません。いうなれば“可能性や未来”が失われます。犯罪とは誰も幸福にならないものだと改めて思いました。犯罪に手を染める前に、失うことの恐怖をよく考えたいものです。
ダイイング・アイはこちら
ドラマの補足
更生保護施設とは?
犯罪をした人や非行のある少年の中には,頼ることのできる人がいなかったり,生活環境に恵まれなかったり,あるいは,本人に社会生活上の問題があるなどの理由で,すぐに自立更生ができない人がいます。
引用元:法務省:更生保護施設とは
更生保護施設は,こうした人たちを一定の期間保護して,その円滑な社会復帰を助け,再犯を防止するという重要な役割を担っています。
今回のドラマの場合、文彦は身元引き受けを拒否されていたので、満期までいて出所します。実家に戻れなかったせいか、本人の問題かどちらかわかりませんがこの施設に行ったようです。
更生保護施設の役割
- 生活基盤の提供
- 社会復帰のための指導や援助
- 自立に向けた指導や援助
- 薬物・アルコール依存症者などへの専門的処遇
などを行っています。
平成30年6月現在全国に103施設あり、内訳は男子施設88、女子施設7、男女施設8となります。定員は男子成人1879人(78.8%)、女子成人134人(5.6%)、男子少年321人(13.5%)、女子少年51人(2.1%)となっています。主に男子が多く、少年より成人が多いです。
まとめ
前回に引き続き今回も“許す”回でした。ここ最近、川崎殺傷事件などもあり、改めて犯罪者、被害者、被害者家族、犯罪者家族のことがネットやマスコミなどで取り上げられています。この「悪党」という作品はフィクションではありますが、当事者の擬似的な体験や思考を覗き見ることができます。“犯罪”とはどういうものなのか、そしてそれに巻き込まれるとどうなるのかを考えさせてくれます。