2019年11月3日からNHKBSプレミアミアム枠で始まった【歪んだ波紋】の第1話は、誤報ならぬ“虚報”を出してしまったせいで、被害者遺族を苦しませてしまいます。なぜそんなことが起きてしまったのか?
ドラマ【歪んだ波紋】1話のあらすじ
新神奈川日報の記者の沢村政彦(松田龍平)はひき逃げ事件の犯人が、被害者の妻である敦子(小芝風花)ではないかという記事を出す。
ファクトジャーナルの三反園(松山ケンイチ)は、新神奈川日報に一面で掲載された記事が誤報である、というネット記事を出す。政彦は三反園に電話をすると、誤報どころか虚報の可能性もあるといわれる。
自分の書いたひき逃げの記事も怪しいのではないか、疑念を抱いた政彦は神奈川中央警察署の井田(山口馬木也)に話を聞きに行く。すると、ひき逃げの記事は誤報だといわれてしまう。
記事のネタ元は桐野(筒井道隆)からで、中島(勝村政信)も結果さえ良ければいいというスタンスで記事を出していた。
取り返しのつかないことをしてしまった政彦は、敦子に謝罪をしに行くが……。
ドラマ【歪んだ波紋】1話のネタバレ
- 政彦の父の17回忌の法要に、父の同僚である垣内と相賀がやってくる。遅れて桐野も顔を出した
- ひき逃げ事件の車ではないかという写真が読者から寄せられる。政彦が被害者家族である森本敦子の所へ話を聞きに行く
- 敦子は事件以来、憔悴している様子だった。そんな敦子に政彦は車の写真を見せ、敦子も同じ車に乗るということを聞く。敦子はショックを受け、何も言わずに立ち去る
- 敦子が否定しなかったため、中島は記事を出すことにする。そして、車の写真も載った記事が出る。その日の新聞の一面は経営コンサルタントの山崎が市長選に出馬というものだった
- ファクトジャーナルの三反園は、山崎の出馬は誤報ではないかというネット記事を出す
- それを見た政彦は三反園に連絡すると、誤報どころか虚報の可能性もあるという
- 中島に確認を取りに行くと、結果が同じなら誤報ではないという。政彦は自分のひき逃げの記事についても疑念を抱く
- 相賀の所へ行って話を聞きに行く政彦、偶然垣内も居合わせてプロジェクトIJの話をする。そのメンバーに桐野がいることを伝えると表情が曇る
- 政彦は神奈川中央警察署の副署長である井田の所に話を聞きに行く。記事は誤報だと言われ、実は車種が違うことを暗に教えられる
- そのことを中島に話すと、桐野がネタ元であること、そして政彦なら疑いもしないから扱いやすいと言っていたことを聞かされる
- 政彦は桐野に食ってかかるが、何も桐野から言葉はなかった。桐野と中島はこの件が元で会社をクビになる
- 政彦は三反園と会って話をし、一度世に出してしまった誤報は永遠にネット上に残ると、やってしまったことの重大さを指摘される
- 政彦は敦子に誤報のことを謝罪に向かうが、訂正記事のあまりの小ささを見た敦子は、「こんなことで…」と言い許すつもりはなかった
- 子供の特別授業の講師で政彦は新聞記者という職業について語る。「もし間違ったらどうするの?」という子供の質問に、政彦は「一生背負っていくしかない」と答えを出す
- 相賀の元に一本の電話が入り病院へ向かう。そこに政彦もやってきて聞かされた話は垣内が自殺をしたという話だった
ドラマ【歪んだ波紋】1話の感想
初回のため登場人物の紹介が主となります。その中で起きた誤報が何を意味するのか?現時点ではなぜ桐野がそんなことをしたのか、そういった説明はありません。ただ、政彦の父である一平の時から続く、何か因縁めいたものが見え隠れします。
また、冒頭で“メイクニュース”というサイトが出てきます。そこはどうやら“虚報”の作り方などを指南しているようなことを中島が言っていました。誰が運営しているのか?人物が出て来ますが顔は映りません。
記事一つ出すにも裏取りを繰り返し、これで間違いないとなってから記事に出す。政彦は子供の学校でそう言っていたにも関わらず、何となく言われるままに記事を書いて出してしまいました。そんな政彦だから桐野は彼に書かせたということも知って怒ります。
また、垣内と相賀も桐野のことを何か知っているようで、今後その時のことが回想シーンで出てくると思います。謎の部分が初回なので多く、まだまだ分からないことだらけです。
話としてはシリアスな話なのですが、中島がアイドルを応援したり、政彦の家庭のシーンで和む部分もありました。
今回はひき逃げ事件の誤報の内容とその後の処分についてと、“メイクニュース”というものについて掘り下げます。
ネタバレの詳細となります、未見の方はご注意ください。
ひき逃げ事件の誤報の内容
政彦が出してしまった誤報とはいったいどういうものだったのか?元々起きた事件と合わせて紹介します。
ひき逃げ事件の内容
まずはドラマ内で出た記事を引用します。
神奈川区でひき逃げ【歩行者の男性死亡】ワンボックスカーの目撃情報
4日21時47分ごろ、横浜市神奈川区湊南町付近の市道で、男性が倒れているのを通行人が発見し、110番通報した。男性は市内の病院に救急搬送されたが、約1時間後に肺挫傷などで死亡が確認された。
神奈川中央署によると、被害者の男性は市内在住の森本道夫さん(32)で、職業は板前。職場の料亭から帰宅時に起きた事故だった。現場は以前から交通事故が多発している三叉路で周辺は民家が並ぶ。森本さんは歩いている最中に一般車両にはねられたと考えられる。
署は約2時間にわたって周辺5署の管内に緊急配備を敷き逃走した車を捜索したが、現在まで発見には至っておらず、引き続き車両の特定を急ぐとともに、現場周辺の防犯カメラに不審な車両が映っていないか慎重に捜査を進めている。
新神奈川日報の周辺住民への聞き込みで、現場近くに住む女性から「大きな音がしたので驚いて外に出たら、ワンボックスカーが走り去るところだった」との目撃証言が得られており、同署は不審車両として調査を進める方針だ。
敦子の夫である道夫がはねられて死亡したという内容です。ひいた車は逃走し、犯人は未だに不明という状況です。
この時近所に聞き込みをしたのが政彦だったので、今回の誤報も政彦が担当しました。では、その誤報はどういった内容なのか?こちらも記事を引用します。
神奈川区のひき逃げ事件【逃走の容疑車両が浮上】被害者宅にも同色のワンボックスカー
9月4日発生した横浜市神奈川区湊南町のひき逃げ事件。現場となった三叉路は以前から事故多発地点として危険視されていた。神奈川中央署では引き続き捜査が行われている。捜査線上に黒のワンボックスカーが浮上していることが新神奈川日報の取材により、判明した。被害者宅で同型同色の車両を所有していたことがわかり、被害者の妻に取材をした。
中略
新神奈川日報が入手した情報によると、生前森本さんは同色のワンボックスカーに乗っており、近隣住民によると、愛車は夫婦2人で運転していたという。
取材に対し被害者の妻は事件当日の森本さんの様子について「普段から水道水を好まず、ミネラルウォーターを飲んでいた。私が買い忘れてしまったので帰宅途中にスーパーに寄るところだった。夜遅くまでやっているスーパーに行くため、いつもと違う道で帰っていた」と語った。
署は、引き続き容疑者逮捕に向け捜査にまい進すると回答した。
まるで妻が夫に買い物に行かせてひき殺したように見えます。妻への取材についても随分と省かれて悪意を感じさせます。実際の取材ではこうでした。
- ミネラルウォーターをいつもは宅配で頼んでるけど頼み忘れた
- 深夜に開いているスーパーに寄って来てと頼んだ
- 当日の朝、カゼをひいて寝込んでいた
- 夫から声をかけられたのはそれが最後の言葉となってしまった
- 自分がそんなことを頼まなければよかった
奥さんが具合が悪かったこと、そして酷く後悔していること、悲しみに暮れていること、それらを一切省いての記事です。意図的です。
また、この夫婦のことについて後に、三反園や副署長の井田から聞かされます。
- 妻は妊娠している
- 夫は勤めていた料亭をやめて独立するところだった
- 店舗を出す場所も借りて改装をやっている最中だった
- 旦那が借りた金を奥さん一人で背負うことになった
- 仕事を探さねばならないのに記事のせいで中々見つからない
身重の状態で多大な借金、仕事に行こうと探しているなんてだけでも大変なのに、記事のせいで“疑惑の妻”となってしまい仕事が見つからないそうです。お腹の子供が大丈夫なのか、心配になります。これには三反園も怒っていました。
その後、紙面で訂正記事を出します。
訂正して、おわびします
11日付社会21面「横浜市神奈川区湊南町で発生した死亡ひき逃げ事件」の記事で、逃走した車両が被害者遺族の所有する車両と同一であるかのような誤解を与える表現がありました。また、逃走した車両の色は黒ではなくシルバーでした。関係者にお詫びするとともに、記事を訂正します。
非常に小さい記事で下の方にあるだけです。こんな“てへペロ”な謝罪を載せられても納得いかないでしょう。敦子は直ちに新神奈川日報を訴えるべきです。得た賠償金で借りた金の返済の足しにしたほうがいいです。
同日に出た経営コンサルタントの山崎宣明が市長選に出馬という記事も、実は根拠があまりありませんでした。ですが、こちらは最終的に山崎は出馬します。よって、結果的には誤報でなくなります。
その後の処分
こんな誤報を出した記者や責任者はどうなったのか?それぞれの処分です。
- 桐野弘:解雇
- 中島有一郎:解雇
- 安田隆局次長:補佐に降格
- 沢村政彦:3日の停職
桐野と中島は新聞社をクビになります。その全ての責任者である安田局次長は降格となり、政彦は3日の停職処分です。
この処分に関して三反園は吊り合っていないと言います。なぜなら、記事は誤報だったとしても永遠にネットで残るからです。以前、同じNHKで放送されていた【デジタルタトゥー】というドラマでも、そういった問題について放送していました。
クビになった桐野と中島がこのままの状態なのか?もしかすると、メイクニュースの記者として活動するのか?今後の動向が気になります。
メイクニュースとは何か?
番組冒頭で出てくるサイトなのですが、まだまだ詳細は明らかになっていません。ドラマの鍵を握りそうな雰囲気なので、今回少し分かったことを紹介します。
真実は作られる
歴史が勝者によって作られるように
人は信じたいものを信じる
「真実」のその先を見たい人のための羅針盤
それが、メイクニュース
メイクニュースのコンセプトなのか、そんな文章が出てきます。フェイクニュースは虚報なので、メイクニュースは作報なのかとにかく“真実”を作るようです。
ドラマ内で中島が本当っぽく記事を作るための指南をするサイトがあって、というようなことを言います。それが恐らくこのメイクニュースなのだと思われます。なぜ、中島は真実を作る必要があったのか?それは“プロジェクトIJ”というものがあったからです。
プロジェクトIJとは?
- 調査報道に特化した特別班
- 全国紙にはないような視点を入れるのが目的
- メンバーは中島と桐野
起きた事件をただ報道するのではなく、取材調査をして報道するのが目的らしいです。中島は医療過誤の報道を以前して以来、目立った成果が出ていなかったので焦っていました。その結果、メイクニュースに辿り着き、ないなら作っちゃえとなったのか?
どうやら、桐野という人物が怪しく、政彦の父一平の時にも何かやらかした感じがします。それで、大手新聞社から地方紙に来たのか?今後も動向が気になります。
この話を相賀にした時、彼は政彦にこう告げます。
知らなくていいことは知らないほうがいい。そのほうが生き方としては楽だ。でも記者は違う。見たくないものでも、それが真実なら正面から見なくちゃいけない。君のお父さんが言っていた「浅瀬にとどまるな」って言葉、俺はそう理解している。
真実は時に残酷なものです。知らないほうが良かったなんてことも多々あります。しかし、記者というのはそれを伝えるのが仕事です。見たくないから見ないでは済まないですし、浅い記事だけを上げても意味がないのでしょう。
ドラマ【歪んだ波紋】1話のその他気になったこと
- ノリノリでアイドルに声援を送る中島
- 待ち合わせの合図に新聞を見せる政彦
- 運転したがる犬 わんわんカーなる動画
- 結果的に子供をダシに使う政彦
- ちゃっかりカレーを食べていく彰
- 特別授業の子供の質問が辛らつ
ドラマ【歪んだ波紋】1話のまとめ
あまり良い方向に話が進まなさそうな展開で始まります。
何となく記者をしていたような政彦がやらかして、初めて記者の責任の重さに気付きます。今後、敦子はどうなってしまうのか?和解する時が来るのか、それとも悲しい展開になるのか気になります。
また、桐野は何の目的があるのか、今後どうなっていくのか。相賀と政彦、そして三反園がメイクニュースを追って真相を暴くという展開になるのか?こちらも気になります。
現在、WOWOWのほうでも記者の話である【トップリーグ】を放送しており、こちらも真実を前にして苦しむ内容となっています。ここ最近、報道ものがドラマで取り上げられています。
誤報や虚報、報道が人生を狂わせてしまう。重い話ではありますが、非常に考えさせられる内容となっています。
次回は11月10日放送予定です。