第4話「週刊 元恋人を作る」
言えない現実
ホビーウィークリーから等身大パーツを毎号マガジンでお届け。創刊号は599円という雑誌が発売された。大学では「元カレにアンドロイドを作られたらぞっとする」と話題になっていた。
ななみ(高橋ひかる)は彼氏の写真を見せてと友人に言われるが、「写真が嫌いなんだよね」と言ってごまかしていた。実は彼女は3週間前に彼氏に振られていた。
一枚も写真がなかったため、元彼氏を想像で作るためにホビーウィークリーに申し込んだ。大谷(竹財輝之助)との出会いは学生起業のセミナーで、彼が講師としてやってきたのがきっかけだった。
翌朝、『週刊元恋人を作る』第1号が届いた。創刊号のパーツは眼球2つで、次週は歯だった。目を見たななみは、「あの日恋に落ちた瞳だ」と感動したが、以降毎号6980円することにショックを受けた。
そこでななみはお金を稼ぐためにバイトを始めた。スマホのロック画面には、花に眼球を乗せた写真が設定されていた。「彼をまた感じるためだから」と自分に言い聞かせ、昼は宅配デリバリー、夜は警備員のバイトをした。
組み立てが不安な人向けに、組み立て代行サービスもあった。ななみは「でも、時間は止まったまま。もう会えないなら作るしかない」と決意し、毎号欠かさずにパーツを揃えた。
友人のあいり(富田鈴花)にネイルに誘われるが、ななみは「起業準備にお金が必要なんだ」と言って断った。
自己嫌悪
やがて、ななみは大谷の上半身だけを完成させた。ななみが大谷の頬に触れると、大谷の声で「ななみちゃん」と言ってくれた。ななみは嬉しくなり、大谷に抱きついた。その後、二人でペアルックの写真を撮ったりして遊んだ。
次号からは下半身のパーツが届く予定で、特定の付属品はついていないらしいと知り、ななみは勝手に照れた。大谷は「一緒にいるだけで幸せ」と言ってくれたが、ななみは本当はもっと親密なことをしてほしいと思っていた。
ななみは大谷に話しかけながら、「もっと知りたいし、触りたい。それが恋人同士っぽいなって」と言った。「今思うと、いつも私ばっかり好きって言ってたな…」と話すななみ。
ある日、配達リクエストが入り、そこはよく大谷と行ったカフェだった。ななみが配達に行くと、大谷が友人と現れる。友人が「大谷、女子大生たぶらかせてセミナー通わせてんの?」と尋ねると、大谷は「この前の子がガチ恋っぽくなったからやめたんだ。意味ないメッセージとか、毎日大量に送られてくるし」とぼやいた。
「学生に手出すとかまじないわ」と言う友人に、大谷は「夢見させてやったんだよ」と語った。それを聞いたななみは急いで店を出て、駆けだした。「大谷さんは、思い出よりおじさんで、思い出より胡散臭くて、私は本当に…バカみたい」と涙を流した。
ドラマの結末
あいりから心配するメッセージが届いたが、ななみは無視していた。すると、あいりは家に訪ねてきた。「ケーキあるよ」との声に、ななみは家にあいりを招き入れた。
「大学も何日も来ないし、既読もつかないから心配したんだ」と言うあいり。「なんかあった?」という言葉に、ななみは上半身だけできた大谷を見せた。それを見たあいりは思わず口を開けて驚いた。
「振られて、というかよく考えたら、付き合ってたのかもよくわかんなくて」と話すななみ。「ななみちゃん」と話す大谷を見て笑い出すあいり。ななみが大谷の首を引っこ抜こうとすると、あいりが「ちょっと待って」と止めた。いくらしたのかと聞かれ、ななみは「25万円した」と答えた。
「もったいないから私にちょうだい」と言うあいり。家に飾るのだという。電飾や花やらでゴテゴテに盛られた大谷を「斬新なルームライト」とあいりは紹介した。「あいりってさ、天才」とななみは笑った。
「私は何があっても味方だぞ」とあいり。ななみは頷いてから泣いた。「これ見てさ、笑いしか出ない日がいつか来るから」とあいりが言うと、「それまであいり、捨てないでいてくれる?」と尋ねた。「え、おしゃれだしよくない?」とあいりは約束した。
その後、大谷から「俺通信」がななみの元に届く。既読無視をしているのにどういうことかと不思議に思うあいり。「なんだかんだ惜しくなったんじゃないの?俺のこと大好きなななみちゃんって、まだ思ってんでしょ」とあいりが言うが、ななみは「すっかり吹っ切れた」と答えた。
「まあ、男の恋は名前をつけて保存。女は上書き保存って言うから。次いこう次」とあいりは励ました。その頃、大谷はななみの写真を元に、元恋人を注文していた。
感想とまとめ
シュール系の話です。この話だけ他の話に比べて短めです。
いわゆるデアゴスティーニやアシェットのような、毎週パーツが届いて組み立てる系の雑誌で、元恋人が作れるというものです。なぜか作るのは元恋人という設定で、理想の恋人とかではありません。
ななみはふられたことを友人にいえなくて、嘘をつくために作り始めます。しかし相手が自分のことを好いていなかったことが分かり、自分の愚かさに気付きました。その後友人に慰めてもらって吹っ切れますが、なぜか大谷はななみを作り始めました。なぜ自ら振った相手のアンドロイドを作ろうと思うのか?不思議な大谷です。
あいりの「男の恋は名前をつけて保存。女は上書き保存って言うから」というセリフに、全てが詰め込まれている話でした。
【世にも奇妙な物語’24夏の特別編】の総評
今回はシュール系2話、ホラー系2話の構成でした。前回に続きどの話も見ていて面白い当たりの回です。
1話目の『追憶の洋館』はホラー系で登場人物の共通点が分かった瞬間、最後に自分も同じ目に遭って終わるという、救いの無い終わり方をします。世にも奇妙な物語っぽいバッドエンドです。
2話目の『友引村』もホラー系で、奇妙な因習の残った村にやってきた部外者が酷い目に遭う話です。ただあの世に連れて行かれるのではなく、魂が入れ替わってしまうというのが面白い話です。こちらもバッドエンドです。
3話目の『人類の宝』はシュール系の話で、最初は自由を求めていたのに、いざぬるま湯に浸かるとそれが心地よくなって抜けれなくなります。なんでも過剰になると、やがて駆逐されてしまうという、価値の逆転が起きる話でした。この話もバッドエンドです。
4話目の『週刊元恋人を作る』もシュール系の話です。最初は友達に見栄を張って彼氏の写真を見せようと思い、アンドロイドを作り始めますが、結局自分がバカだったと気付いて友達に救われます。この話だけハッピーエンディングっぽくまとめますが、最後は元彼が自分を作り始めてブラックに落とします。
個人的に面白かったのは『友引村』です。何度も見たような設定ですが、やっぱり古い風習系の話は面白くて好きです。
次回は恐らく秋に放送されるのではないかと思います。