第1話「追憶の洋館」のネタバレ
謎の4人
雨霧梢(若村麻由美)は滝に来ていた。スマホを確認しているとき、足を踏み外し山道を滑落し、頭を木に打ち付けて気を失った。次に目を覚ましたとき、彼女は見知らぬ洋館にいた。足はけがをしていたが、すでに処置されていた。部屋の壁にかかった絵をどこかで見たことがあるような気がして、梢はそれを見つめていた。
部屋の中で転んだとき、その音を聞きつけた青年(ジェシー)が松葉杖を持って入ってきて、彼女を助けた。「あなたは?」と梢が尋ねると、青年は「僕たちが手当てしてここに連れてきたんです」と答えた。梢が「僕たち」と言うので他にもいるのかと尋ねると、一階のダイニングに和装マダム(山野海)、老人(山田明郷)、女子高生(池田朱那)の3人いた。
梢が助けてくれたことに感謝すると、青年は「雨霧さんはこちらへ」と座るよう促した。しかし、梢は自分がそんな名前ではないと否定すると、女子高生が「何言ってるの?雨霧梢さんでしょ?」と驚いた。梢は自分が何者なのかを思い出せず、答えることができなかった。
座っている人たちの服装は皆、季節感が異なっていた。梢が「みんなは家族なのか」と尋ねると、違うという返事が返ってきた。名前を聞き出そうとするが、逆に和装のマダムに「あなたこそ何者なのか」と尋ねられる。梢は何も思い出せずにいた。
食事の途中で和装のマダムは「そろそろみたい」と言って立ち上がり、部屋に戻って行った。梢が「どこへ行くのか」と不思議に思い尋ねると、ただ部屋に戻るだけだと言われた。自分の名前や職業は思い出せないのに、親に言った一番嫌なセリフだけは思い出せる梢だった。
自室に戻った梢は、青年からノートを渡された。彼は「何か思い出したことや気付いたことがあったら、これに書いてみてはどうか」と提案した。梢は素直にノートを受け取り、早速「何も思い出せない」と記した。
扉の向こう側には何が?
ある晩、梢は夢にうなされて目を覚ました。何人もの人に見つめられているような、不気味な夢だった。翌日、青年に包帯を替えてもらいながら、夢のこともノートに記すよう勧められた。
その後、バルコニーで青年が絵を描いているのを見かけた梢は、「この人…どこかで見たことがある」と感じ始めた。画材に「星野明」と書かれているのを見て、彼に名前を確認した。星野はそれを認めたが、会ったことがあるか尋ねると、笑うだけで「そのうち徐々に思い出せますよ」と言うだけだった。
それからも梢の頭の中には、いつか見た星野の光景が浮かんだ。星野明が自分に親しげな態度を見せていたため、梢は思い切って彼に「自分の恋人ではないか」と尋ねてみた。しかし、星野はそれを否定し、「会ったことがない」と言った。ただし、「ある意味ではそれ以上かもしれません。最も近くて最も遠い存在です」と意味深な言葉を残した。
どういう意味なのか、なぜ教えてくれないのかと詰め寄る梢に対して、星野は「あなた自身が思い出す必要があるんです」と答えを避けた。そして、急に「部屋に戻らないといけない」と言って立ち上がった。梢が追いかけようとすると、星野は「ついて来てはだめです。答えはじゅうぶんに時間をかけて、ご自身で見つけてください」と告げ、部屋に消えた。
その後、ドアの隙間からは水が流れ出てきた。
彼らの正体
ある日、女子高生が「あ~、また戻んないと」と言いながら部屋に向かった。梢はその後を追い、部屋を覗くと、頭から血を流した女子高生が見えた。思わず叫び、おののく梢。しかし、再び扉から女子高生が現れ、笑い飛ばした。
梢は思い出してはいけないことを思い出そうとしているのではないかと感じつつも、好奇心が止められなかった。再び扉を開けて部屋の中に入ると、ハートとトランプの絵がかかり、血のついたハンマーが置かれていた。ハンマーを手にした瞬間、梢の頭に映像が浮かんだ。それは、女子高生がハンマーで殴られて殺されるシーンだった。
別の部屋に行くと、黒電話が置かれ、唇と口紅の絵がかかっていた。電話の受話器を持ち上げると、和服の女性の首を受話器のコードで締める映像が見えてきた。また別の部屋には、狼と猟銃の絵がかかっていた。机の上に置かれていた猟銃を手に取ると、老人を射殺するシーンが見えてきた。
さらに別の部屋には、水の張ったバスタブがあった。水に触れた途端、星野の頭を押して殺害する場面が浮かんだ。慌てて外に出た梢を、4人が待ち構えていた。彼らは「何を思い出したのか聞かせてほしい」と言い、テーブルに座って話を始めた。
「あなたたちはすでにこの世にはいない。なぜなら、私が殺したからです」と梢は告白した。彼らの生活にストーカーのように付きまとい、殺害したと話した。どうやって殺されたのか、4人それぞれが聞いてくる。
女子高生は金槌で撲殺し、和服の女性は古い電話のコードで後ろから首を締め、老人は猟銃で撃ち、星野はバスタブで溺死させた。梢が一人ずつの殺害方法を話すたびに、目の前にいる彼らが死体に変わっていった。
その姿を見て耐えられなくなった梢は、「もうやめて!やめて!」と叫び、取り乱した。部屋を出ようとするが、鍵がかかっていて出られない。その時、星野が「あなたのような華奢な女性が僕をバスタブで窒息させることができると思う?みんなの人生につきまとうことができるだろうか?他人の幼児の頃のことまで知っているなんておかしい」と問いかけた。
「ちゃんと思い出して。あなたが生んだ、みんなのこと」と星野に言われ、梢は考え始めた。
真相
場面は変わり、自室で記者(水田萌木)に「思い出深いキャラは誰ですか?」と聞かれるシーンになる。梢は「『水見が丘の殺人』で登場した星野明かな」と答えた。「自分の子供みたいに情が湧いてたから、殺される展開を書くのは辛かった」と語る梢。記者に「たくさんの作品でたくさんのキャラを書いてきたが、覚えているものなのか?」と聞かれると、「自分の作品はやたら人が死ぬので、いちいち覚えてられない」と答えた。
その後、新省出版の森本礼一(清水伸)から電話にメッセージが入る。原稿がいつ上がるのかの催促だった。梢は行き詰まり、タイトルも未定のまま白紙だった。気分転換に滝へ行くと、スマホに森本からの催促が入った。
突然、星野の声が響く。「何度も殺されるんです。僕ら被害者は。作品を読まれるたびに、殺しのシーンを読まれるたびに。何度も何度も死ななくてはならないんです」とぼやく星野。「簡単に生み出して簡単に殺しちゃって。私達だけじゃない。被害者はまだまだ、まだまだいる」と和服の女性が続ける。
「人を楽しませるために、私、何人殺したんだろう?」と頭の中で考える梢に、星野は「いいですねえ、そのセリフ。残しておきましょう」と言い、梢が書いていたあのノートに文字が書き込まれる。「あんた、立派に最後の作品を書き上げた」と老人が言った。
何がなんだかわからない梢に、星野は「あなたも僕らのように、作品の登場人物になるんです」と告げた。そして、星野は梢の首に手をかけて締め始めた。
ドラマの結末
波多野悟(神田聖司)は「雨霧が事故で亡くなってしまうなんて」と追悼特集を見ながらつぶやいた。森本によると、梢は行き詰まるとパワースポットに行く習慣があったが、1人で行くのは危ないと注意していたという。結局、梢は滑落して頭を打ち付けて死んだようだった。
梢の最後の小説『追憶の洋館』の表紙には、彼女がいた部屋にかかっていた絵が描かれていた。それは、自分が書いた被害者たちに襲われる小説家の話で、雨霧自身がモデルだったのかもしれなかった。森本には気になることがあった。雨霧の最後の原稿は珍しくメールで届いたというが、その送信時間が警察から聞いた死亡推定時刻より後だったのだ。メールのエラーなのか何なのか分からないと森本は言った。
梢の珠玉の4作品を厳選したページには、各部屋にかかっていた絵が表紙になった小説が掲載されていた。和服女性は『愛の表裏』、女子高生は『トリック・テイキングの法則』、老人は『散弾の咆哮』、星野は『水見が丘の殺人』という本の登場人物だった。
モニターに映し出された、最後の文はこう書かれていた。
4人の拍手は、私が受ける最後の賞賛なのだと、どこかで予感してしまう。予感をまた確信に変えるかのように、一歩、また一歩と彼らは私との距離を詰めてくる。
「あなたも僕らのように、作品の登場人物になるんです。繰り返し読まれる、作品の一部に」
星野が両手を伸ばしてくる。
その姿は、口づけをしようと恋人に手を伸ばす、かつて私が執筆した作品のイメージと重なった。
しかし、氷のように冷たいその手が包みこんだのは、私の首だった。
そこで理解した。
私もまた、終わりのない苦痛を受け入れ続けるのだろう。
恐怖はあっても、不満は言えない。
それこそが、彼らが求める罰なのだから。
追憶の洋館で、私は彼らの一員になった。
「追憶の洋館」完
その画面を梢は満足げに笑って見つめていた。
感想とまとめ
ホラーな話です。最初は何も分からない梢が、次第に記憶を取り戻していきます。登場人物たちはみな接点がなさそうな人たちで、彼らがどういう関連性があるのかと不思議に思います。
彼らは時々部屋に辟易としながら戻り、覗き見ると死体になっていました。そのショックからか、梢はやっと彼らが何者か思い出しました。生み出してきた作品の登場人物だったのです。
そして彼らに梢は作品の中に閉じ込められてしまいます。オチでまるで梢が死んでから、誰かが書いて送ったようなセリフが入ります。あの世で梢が書いたのか、それとも誰かが梢を殺した後に書いたのか?最後に梢が画面を見て満足げにしているので、あの世で梢が書いたのかも?と思わせて終わります。
彼らに殺されたとも思えますが、実は梢はもうネタがなくて、行き詰ったから自分の死を小説にした。とも考えられそうな話でした。