今回の東京二十三区女は板橋区の女の話でした。板橋区にある“縁切榎”と呼ばれる場所にまつわる、過去と現在を結ぶ恐怖の真相とは?
東京二十三区女概要
WOWOWプライムで4月12日から毎週金曜の0時より放送されています。東京の裏側にある様々な話を、各区ごとに解き明かしていくことで、想像を絶する恐怖に襲われてしまうホラーミステリードラマになっています。
キャスト
- 原田璃々子(島崎遥香)
- 島野仁(岡山天音)
スタッフ
監督・脚本・原作:長江俊和
第5話ゲスト
- 中山美穂
- 小木成光
- マフィア梶田
- 浅川悠
- 細田梨太
- 米村莉子
前回はこちら
あらすじ
“縁切榎”は、縁切の効力がある榎(えのき)として古来より板橋本町の一角に祭られている。夫(小木成光)の不倫を疑った薫(中山美穂)は夫を尾行し、夫が縁切榎を訪れ、暗号のような文字の絵馬を残し去っていく姿を見てしまう。実は、薫にとって縁切榎は“縁”のある場所であり、困惑と疑念が増幅していく。絵馬の暗号に秘められた驚愕の真実と、薫に憑依したものの恐るべき正体が明らかになる衝撃の結末とは!?
公式HPより引用
ネタバレ
感想
最初本当に夫がなぜ別れたいのか、全くわからない話でしたが、最後の最後にわかる事実にビックリしました。薫が悪いわけではないでしょうが、弟にはそこに強い思いがあったので、こうなってしまったのかもしれません。
もらい子殺し
かつて日本で起きていた実際にあった事件です。日本では第二次世界大戦後まで刑法で堕胎は違法とされ、人工中絶も合法化されていなかったというのが前提にあります。その当時、不倫の子や父親不明の私生児は、当然産むしかないので割といました。ましてや、不倫の子の場合、姦通罪で逮捕される可能性もありました。その上、現代のように豊かでなく、貧しい人が多い社会だったので、既に子供が多くいる家では養うのも難しかったようです。
そういった様々な事情が重なり、育てることのできない新生児をある程度の養育費をつけて、里子に出すということがよくあったようです。そうなると、社会全体が貧しいので、これをビジネスにする者が現れてきました。それが、ドラマの中でも語られている、金品だけもらったら子供を殺害してしまうに繋がります。
では実際、どのような事件があったのか、いくつか記載します。
佐賀もらい子殺人事件(1905年発覚)
1902年に佐賀市在住の40代の夫婦が、金目当てで生後6ヶ月の女児を引き取るも1年後に餓死させる。ところが医師が自然死と死亡診断書に書いてしまうので、事件が発覚せずに終わった。これに味をしめた夫婦が、近隣各県から行商人の女と一緒になって、子供を10円~25円で引き取り、次々と殺害して埋めてしまう。そのなかには生き埋めにされた新生児もいた。
夫婦はその後逮捕され、自供では60人より少ない程度と自供する。1910年に夫婦に死刑、行商人の女に懲役12年の刑が確定する。その後夫婦は1913年に死刑が執行され、事件発覚後、夫婦の行いに激怒した住民たちが夫婦の家を破壊したという。
愛知もらい子殺人事件(1913年発覚)
1898年頃から愛知郡在住の40代女性が、私生児を40円~50円で引き取るも次々と殺害する。女は発覚を恐れて2~3人殺したら、住居を変える用意周到さだった。そして日露戦争で未亡人となった女性の子供を主に狙っていた。1913年頃には他の女性2人も加わり、200人ほど殺害していた。子供を預けた芸妓が子供に会おうとしても会わせてくれず、警察に相談したところ事件が発覚。3人は1915年に死刑が執行された。
なお同時期に名古屋市熱田界隈で、50代の女性ら10人によって32人のもらい子殺しも発覚。同年に滋賀県愛知郡の60代男性ら3名が共謀して9年前からもらい子殺人をしていたことも発覚した。
板橋もらい子殺し事件(1930年発覚)
板橋の岩の坂地区でもらい子が1年間で41人殺害された疑惑が起こる。この地区の長屋の住民は、古くから上流階級の子供をもらい、子殺しをしていた者がいるとみられる。容姿の優れた女児、体力のある男児は育てて、遊女や炭坑夫として売るということもしていた。わずかな期間で不審死を遂げる新生児も多かったが、犯罪として実証はほとんどされなかったという。
川俣初太郎もらい子殺人事件(1933年)
東京目黒在住の33歳の男が「子供やりたし」の広告を見てはその産婆の元に行き、何十円かの養育費を受け取った後に殺害していた。5年で25人を殺害していたが、その多くは主人が女中に産ませた子や、働くために子供を手放した女性の子供だったという。男は後に死刑となった。
寿産院事件(1948年)
食べ物を与えず世話をせず、病気になっても治療しないというやり方で、1947年からの一年間で預かった112人の子供のうち、85人を死亡させた。これらの子供の大部分は私生児で、預かり料は最高8400円で1947年だけで90万円を荒稼ぎしていた。院長の女とその夫、助手の女が殺人罪で起訴され、1948年に院長の女に懲役8年、夫に懲役4年、助手の女には無罪の判決が出た。
アメリア・ダイアー事件(1896年)
19世紀末のイギリスで400人以上の子供を殺害。生活に困窮している未婚女性の子供を手数料を取って引き取り、その後殺害してテムズ川に遺棄していた。単独犯の殺人としてイギリス最大の事件といわれる。
参考出典:wikipedia
どの事件も人の弱みにつけ込み、様々な事情があって手放した子供に、せめてもの良心としてつけた金を奪って殺害するという極めて悪質な事件です。大体の事件が主犯が死刑になっていますが、寿産院の事件は死んだ子供の数の割には甘い判決です。ちなみにこの寿産院の事件は、相棒17の「倫敦からの刺客」で出て来るもらい子殺人の話のモデルです。
今年で2019年となりますが、70年前ぐらいまでこんな事件があったのだと驚きでした。また、堕胎などが合法になったのも、終戦後というのも意外でした。今では何でも当たり前にあり、安全も保障されている日本ですが、振り返ってみるとまだそんなに時間は経っていないことがわかりました。
縁切榎について
劇中でも島野が説明していた通り、板橋区の本町にあります。行った事のある人ならわかると思いますが、不自然なぐらいそこにあります。周りが道路整備されようが、決して切ることのない榎の木といった感じです。時々こういったなぜ切らなかったのだろうと思うような、形で残されている木があったりします。そこだけ妙に出てたりするので、何かしらの理由があって残されているのだと思います。
縁切榎では劇中でもいっていたように、名前などを書く事が他の絵馬を見てもあります。このご時世、特定されやしないのか?そんな不安もあると思いますが、悪い縁を断ち切りたい人はそれだけ本気だということなのでしょう。さすがに住所はどうかと思いますが、中には書いている人もいます。
落語の題材
また、落語の題材にもなっていて、タイプの違う二人の女性のどちらを選ぼうかと悩む男の話です。しかしどちらかを選ぶことが出来ず、知り合いに相談をします。すると縁切り榎のことを教えられ、榎の木の樹皮を剥いで飲ませれば縁が切れるといいます。それを二人に飲ませたらいいという知人に、二人とも縁が切れたらどうすると男は返します。より思いが強いほうにはきっと効果が薄いから大丈夫といわれ、さっそく縁切り榎の皮を削りに向かいます。すると、そこで二人の女性と鉢合わせた男は、他の女との縁を切らせるために願掛けにきたのだろうと問います。すると女たちは二人で口を揃えて、「いいえ、あなたとの縁を切りに来ました」と答えるオチとなっています。
まとめ
今回の話は過去のもらい子殺しの話に絡めた縁切榎の話となっていました。劇中で年老いた薫の役は、特殊メイクをした中山美穂さんご本人なのでしょうか?詳細が公式サイトにも乗っていたのかったのでわかりませんが、エンドロールで該当しそうな役者さんの名前が出てこなかったのでそう思いました。次回で東京二十三区女は最終回となります。主人公は璃々子の話になるので、どう終わるのか楽しみです。