今回で最終回の白い巨塔は、控訴した裁判の行方と病気になった財前の最期の話でした。主に里見と財前の友情を描いた流れになっており、全5回放送する関係上、どうしても駆け足な展開になってしまっていました。最終回をどうまとめたのか?
白い巨塔概要
5月22日から5夜連続で放送する「白い巨塔」はテレビ朝日系列で21時より放送されています。野心家の医師財前と対照的な医師里見を通して描かれる、金や権力といった欲望が渦巻く医療の世界を描いたドラマとなっています。
キャスト
- 財前五郎(岡田准一)
- 里見脩二(松山ケンイチ)
- 花森ケイ子(沢尻エリカ)
- 東貞蔵(寺尾聰)
- 鵜飼裕次(松重豊)
- 大河内恒夫(岸部一徳)
- 柳原雅博(満島真之介)
- 佃友弘(八嶋智人)
- 金井達夫(長谷川朝晴)
- 安西太郎 (尾上寛之)
- 亀山君子(美村里江)
- 野坂奈津美(市川実日子)
- 財前又一(小林薫)
- 財前杏子(夏帆)
- 黒川キヌ(市毛良枝)
- 里見三知代 (徳永えり)
- 里見好彦 (鳥越壮真)
- 東政子(高島礼子)
- 東佐枝子(飯豊まりえ)
- 鵜飼典江(浅田美代子)
- 船尾徹(椎名桔平)
- 佐々木庸平(柳葉敏郎)
- 佐々木よし江(岸本加世子)
- 佐々木庸一(向井康二)
- 関口徹(斎藤工)
- 国平幸一郎(山崎育三郎)
- 岩田重吉 (岩松了)
- 鍋島貫治(山田純大)
スタッフ
- 【原作】山崎豊子『白い巨塔』(新潮文庫刊)
- 【企画協力】野上孝子、一般社団法人山崎豊子著作権管理法人、新潮社
- 【脚本】羽原大介、本村拓哉、小円真
- 【監督】鶴橋康夫、常廣丈太
- 【音楽】兼松衆
- 【チーフプロデューサー】五十嵐文郎
- 【エグゼクティブプロデューサー】内山聖子
- 【プロデューサー】船津浩一、秦祐子
5話ゲスト
- 河野正徳 (矢島健一)
- 安田太一(六平直政)
- 裁判長(モロ師岡)
- 工場長 (笑福亭鶴光)
前回はこちら
あらすじ
医療裁判で勝訴した財前五郎(岡田准一)と浪速大学病院だが、控訴審を控えているにも関わらず、世界外科連盟の理事に立候補するという財前に、病理学科の教授・大河内恒夫(岸部一徳)ら周囲は、あきれ顔…。
一方、控訴審の証人を探し求め、病院関係者を訪ねてまわる弁護士の関口徹(斎藤工)だが、ことごとく財前に根回しされていて、証言してくれる人が見つからない。前回の裁判で、医師としての信念を貫いて財前と大学に不利な証言をしたため、浪速大学医学部を辞し、来月から関西がんセンターで研究を続ける道を選んだ里見脩二(松山ケンイチ)と、現近畿労災病院院長・東貞蔵(寺尾聰)の娘で里見を慕う東佐枝子(飯豊まりえ)は、関口に協力することを決意する。
関口と佐枝子は元看護師で真実を知る亀山君子(美村里江)に証人になってくれるよう頼みに行くが、妊娠中の君子を心配する夫・亀山富治に追い返されてしまう。
一方の財前と義父・財前又一(小林薫)は、外堀から埋めようと、富治の工場へ。しかし金にものを言わせて自分たちに都合の良い証言をさせようとする卑劣なやり方に富治は激昂。その話を聞いた君子は裁判で証言する決意を固める。
そして、ついに控訴審が開廷。良心の呵責にさいなまれながらもウソをつき続ける柳原雅博(満島真之介)だが、予想もしなかった財前のひどい裏切りに打ちひしがれてしまう。この財前の裏切りにより、裁判は混迷を極めることに…!
そうして迎えた結審の日―。裁判所を出た財前は、大勢の記者に囲まれる中、突然倒れてしまう……!
公式HPより
白い巨塔2019 視聴率
平均視聴率:13.04%
話数 | 放送日 | 視聴率 |
---|---|---|
1話 | 5/22 | 12.5% |
2話 | 5/23 | 11.8% |
3話 | 5/24 | 12.2% |
4話 | 5/25 | 13.5% |
5話 | 5/26 | 15.2% |
その他の番組はこちら
感想
ほんの数十分前まで里見と対立しあっていたのに、その10分後には具合が悪くなって助けて欲しいと泣きつくような展開になってしまうのは、全て5回で収めなければならないという事情があるので仕方ないのでしょうが、財前がちょっとしたヤバい奴のように見えてしまいます。しかし、それぞれに向けて別れを財前は言っていき、最期の時間を過ごしていきます。登場人物一人一人をもう少し丁寧に掘り下げられていれば、この最期ももっと感動的になったのではと思いました。
裁判の行方
控訴した裁判に新たな証人が証言に立ちますが、あまり良い展開になってくれません。しかしずっと偽証をしていた柳原がブチ切れて、風向きが変わります。
亀山君子の証言
- 柳原はPET検査を財前に進言してた
- 財前は検査を必要ないと言った
- 術後に財前は患者を一回も診ていない
- 家族に頼まれても柳原は財前は忙しいから診れないと断っていた
- 柳原は財前を呼びにいったがやっぱり来なかった
- 第一外科の先生は医師としてとるべき処置をしなかった
- 財前のことは苦手
柳原の証言
- 一審の証言に変わりはない
財前の証言
- 嘘はついていない
- 家族が診察を望んでいるとは知らなかった
- 柳原に対応するよう言ってある
- 全ての責任は柳原にある
- 自分のミスは柳原に患者を託したこと
ここで柳原がブチ切れて「嘘だ!全部嘘です!財前教授は嘘をついている!」と傍聴席から叫びます。そこで関口は控訴人側の証人として申請します。もちろん被告人側は後日にしろと抗います。そこで裁判官に判断が委ねられ、ただちに柳原は証言をすることを許されます。
再び柳原の証言
- 君子が証言した通り
- PET撮影が必要だと財前に伝えたが、必要ないといわれた
- 手術中に肝臓に異変があったが財前は放置
- 医局での出世を考えて偽証してたが、財前が責任押し付けてきたので真実を話す気になった
- 改ざんしたカルテの原本が証拠
- 財前がミスを隠すため改ざんを命じた
改ざん前のカルテでは「肝に腫大あり。表面に癒合性の白色斑認めるも、教授の指示により対応せず」ですが、改ざん後は「肝には軽度の肥大認めるも、観察の範囲内で特記すべき異常なし」と書き換えます。
判決
原判決を取り消す。
ドラマ内セリフから引用
被控訴人らは控訴人佐々木よし江・佐々木庸一に対し各自8000万円及びこれに対する支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人財前五郎は、佐々木庸平の肝臓に異常が認められたにもかかわらず、これに全く注意を傾けず里見医師柳原医師の進言を無視。佐々木さんを死に至らしめた事は医師としての注意義務違反である。
死後肝臓の異常は不可抗力であったと周囲に思わせるために、柳原医師にカルテの改ざんを命じた事は当裁判所として、その倫理的・社会的責任を厳しく追及すべきと考え、冒頭のごとき判決に至ったものである。
財前のその後
財前はその後倒れ、膵臓がんであることが発覚します。因果応報とでもいいますか、自分が殺した佐々木庸平と同じ病です。しかし、浪速大学の面々は財前に病気のことを隠します。そこで財前は里見のところへ行って検査をし、里見は財前に病気のことを伝えます。そして、恩師である東に執刀を願います。
かつて因縁があった東はその願いを叶えるべく手術をします。ですが、既に腹膜に転移していて、閉じることになります。それから内科的治療を里見がしますが、快方には向かわずに脳梗塞を起こし、財前はうなされながら生涯を終えます。最後に臨終を告げたのは、東でした。そして里見が最後手紙を見ます。
自らの死体をもって、癌の早期発見並びに進行癌の治療の一石として、役立たせて頂きたい。膵臓癌は現在もなお難治性癌であるが、病態の解明がその克服の端緒に繋がることを信じる。私の場合は癌に伴う血栓症が致命的な合併症を起こしたが、逆にこれを標的として、早期診断や治療につなげることも不可能ではないと愚考する。
しかし そうした治療開発を里見先生と共に、自らの手で成し得なかったのは痛恨であり、自ら癌治療の第一線にある者が早期発見できず、手術不能の癌で死すことを恥じ、浪速大学病院第一外科の名誉を傷つけてしまったことを深くお詫び申し上げます。
里見。
こうして虚しく死を待つだけになっても、君と共に病に苦しむ人々を治療し、その生命を紡ぐ医師として人生を全うできたことを、誇りに思う。
里見 ありがとう。いつか、またきっと。
財前五郎
ドラマ内文面から引用
まとめますと
- 自らを病理解剖の検体にしてくれ
- 治療開発を里見先生と共にできなかったのは痛恨
- がん治療の第一線にある自分が早期発見できずにがんで死ぬのは恥
- 浪速大学病院第一外科の名誉を傷つけたことをお詫びする
- 里見への感謝
といった内容の手紙を、麻痺して不自由な手で書き記します。非常に感動的なシーンなのですが、裁判はどうするのかと思ってしまいました。その後の裁判についてきっと、最後にテロップか何かで入るのか、そう思って最後まで目を離さず見ていましたが、何もありませんでした。上告しないのか?判決確定と考えていいのか?はっきりして欲しかったです。
原作では最高裁への上告理由書を残しています。裁判やる気満々だったわけです。
それぞれのその後
- 里見→関西がんセンターに勤務
- 柳原→お見合いした女性と一緒に、無医村である高知の診療所へ
- 佐枝子→具体的にはわからないが、広い世界を見てくることに。里見への別れを告げる
- ケイ子→杏子のはからいで財前の見舞いに行き、最後の別れをする
- キヌ→財前から直接電話をもらうも、自らの意思で一度も見舞わず
その他気になったこと
- 怒る亀山は鞄を蹴っ飛ばす
- 隠れる柳原の姿が見えてる
- 財前暴れて枕の羽まみれ
- そしてベッドから落ちる
- 里見の肩に担がれて屋上に行く財前
結局今回の白い巨塔はどうだったのか?
まず、全5回で放送しているので、全20回以上で放送した田宮版や唐沢版ドラマ作品に比べて、内容が薄くなってしまいます。反面「短時間でわかる白い巨塔」という利点もあります。
良かった点
- 短時間で長編小説「白い巨塔」の内容がわかる
- 一応お金はかけている
- 場違いなテンションの又一が面白かった
悪かった点
- やっぱり内容が薄く感じる
- 駆け足で進んでいく展開
- 結局どこに一番焦点を当てたかったのかわかりにくい
キャストについても賛否が起きるのはわかります。特に問題になるのは財前についてだと思います。しかし、全くダメだったのかといえばそうでもなかったです。岡田さん演じる財前は、ドヤり感は十分出ていました。
確かに医者に見えないとか、身長のことで微妙に思うのもわかります。高身長の鵜飼、大河内、里見、関口をもはやあえて配役しているのではないかとすら思います。しかし、岡田さん演じる財前は、自らの存在感で打開しようと努力しているのは伝わってきました。
よって、個人的には配役については“これも一つの白い巨塔”と思って視聴したので、あまり気にしませんでした。
ドラマの補足
腹膜播種(ふくまくはしゅ)とは?
東先生が手術をしたものの、この状態だったために閉じます。劇中では、がん細胞が膵臓だけでなく、バラバラと散らばって腹膜に転移していると言っていました。どんな状態なのでしょうか?
播種とは、種がまかれるように体の中にバラバラと腫瘍(がん)が広がることです。がん細胞が臓器の壁を突き破って、腹膜に広がることを腹膜播種といいます。
腹膜播種:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
臓器の壁を突き破るなんて聞くと、すごい状態なのではないかと思います。財前は腫瘍が飛び散っていたため、手の施しようがなかったようです。
まとめ
なんだかんだ言っても白い巨塔は視聴率が取れるようです。最近のドラマは30%とか超えることが稀なので、15%取れればいいほうです。キャストに賛否両論が毎回起きる作品ではありますが、“視聴率”という部分だけ注目したなら“成功”でした。全5話中、個人的には2話目が面白かったです。小林さんの又一が見れて嬉しかったです。