WOWOWのオリジナルドラマ【1972 渚の螢火】1話のネタバレと感想をまとめています。
本土復帰間近の沖縄で、100万ドルが強奪される事件が発生する。琉球警察・本土復帰特別対策室の班長である真栄田太一は、極秘裏に現金を取り戻すよう上層部から命じられるが……。
【1972 渚の螢火】1話のあらすじ
連続ドラマW #1972渚の螢火
— WOWOWオリジナルドラマ (@drama_wowow) October 18, 2025
明日午後10:00放送・配信スタート🔥
第一話 戦果アギヤー
本土復帰を間近に控えた沖縄。
100万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ消息を絶つ。極秘捜査を任された琉球警察・真栄田(#高橋一生)たちは強奪犯を追い始める―https://t.co/ZgPND0HRw6#WOWOW #青木崇高 pic.twitter.com/W7masyRduL
日米間で沖縄返還協定が調印され、1972年5月15日に沖縄は日本復帰が決定された。本土復帰間近の沖縄で、100万ドルが強奪される事件が発生する。琉球警察・本土復帰特別対策室の班長である真栄田太一(高橋一生)は、極秘裏に現金を取り戻すよう上層部から命じられた。
対策室のメンバーは真栄田以外に室長の玉城泰栄(小林薫)しかおらず、人手を補うため新たに与那覇清徳(青木崇高)と比嘉雄二(広田亮平)、そして事務員の新里愛子(清島千楓)が加わった。
沖縄から本土の大学に行った真栄田を与那覇は快く思っておらず、度々衝突をする。事件の捜査でも足並みが揃わず、与那覇は真栄田の言うことをきかずに勝手にコザへ行って聞き込みを始める。
その結果、浮かび上がってきたのは“宮里ギャング”と呼ばれる若者たちで……。
2話→
【1972 渚の螢火】1話のネタバレ
大阪からなぜ宮里たちは戻って来たのか?100万ドルを運ぶ情報を誰から得たのか?真栄田が考えていると、与那覇は真栄田を挑発し続ける。ずっと耐えていた真栄田だったが、堪忍袋の緒が切れて胸倉を掴む。それでも与那覇が引かずに“裏切り者”と罵ると、真栄田はついに与那覇を殴る。与那覇はその場を去り、残った真栄田に玉城は静かに酒を注いだ。
その頃、宮里たちは一緒に強奪をした米兵のビルと揉めていた。ビルは宮里たちを侮辱するような言葉を投げつけ、ついにキレた宮里はビルに襲い掛かる。そして目隠しをして崖まで連れてくると、迷うことなくビルの頭を銃で打ち抜いて殺害した。
戦果アギヤー
1945年の敗戦後、米軍によって民間人収容所が設けられ、地元の人々はその中での生活を強いられた。食料も資材も乏しい環境のなか、米軍の物資――いわゆる“戦果”を盗み出す者たちが現れ、彼らは“戦果アギヤー”と呼ばれた。
ある日、少年がリヤカーを引いて収容所に現れ、米軍から盗んできた物資を人々に分け与えていた。そこへ突然、敗残兵の一団が現れ、物資を奪っていく。老人がその兵の一人に「うちなーんちゅか?」と問いかけると、上官らしき人物が怒り、老人の殺害を部下に命じた。
銃剣で突き刺された老人に人々は悲鳴を上げ、混乱の中で少年は兵士に飛びかかるが、返り討ちに遭う。少年が倒れながらその兵士の顔を見て「曹長殿?」と声をかけると、兵士は驚いた表情を見せた。やがて騒ぎを聞きつけた米兵が駆けつけ、敗残兵たちは逃走した。
同年9月、現在の嘉手納基地において降伏調印式が行われ、沖縄戦は正式に終結した。1951年にはサンフランシスコ講和条約が調印され、翌52年の発効により日本は独立を回復したものの、沖縄は引き続きアメリカの統治下に置かれ、日本本土から切り離された。
1971年6月、日米間で沖縄返還協定が締結され、翌72年1月には日本復帰が同年5月15日と発表された。アメリカ統治から27年、沖縄には新たな時代の風が吹き荒れようとしていた。
対策室発足
1972年4月3日、本土復帰を間近に控えた沖縄の街には、デモ隊のシュプレヒコールが響き渡っていた。警察本部では、真栄田太一(高橋一生)が偽造通貨に関する報告を行っていたが、琉球警察の幹部たちは冷ややかな視線を向け、皮肉を交えた言葉を投げかけていた。翌月にはドルと円の交換が行われる予定であり、その混乱に乗じて偽造通貨が流入する可能性があるというのが真栄田の警告だった。
本土の人々は円に慣れ親しんでいるため偽物を見分けやすいが、沖縄の住民は日本円に不慣れであり、稚拙な偽札でも騙される恐れがある。真栄田は、琉球警察でさえ判別を誤る可能性があると指摘したうえで、もし偽ドル札を誤ってアメリカ側に引き渡せば、外交問題に発展し、FBIが介入する事態にもなりかねないと危惧した。しかし発言のたびに反感が高まり、野次が飛び交う。見かねた喜屋武幸勇(ベンガル)が「質問は一人ずつ」と注意を促したが、場の空気は冷えたままだった。
その緊張を和らげたのは、遅れて会場に現れた玉城泰栄(小林薫)だった。彼は「対策室への協力をお願いしたい」と頭を下げて訴えた。玉城の頼みともあり、反発していた刑事たちも次第に口をつぐみ、真栄田の言葉に耳を傾けた。会合が終わると、玉城は真栄田に「よくやった」と労いの言葉をかけ、真栄田は深く頭を下げて感謝の意を示した。
その直後、喜屋武のもとに殺人事件発生の報告が入る。先に現場へ向かっていた与那覇清徳(青木崇高)からの連絡によれば、アパートの一室で女性が腹を刺され、すでに死亡していたという。被害者はAサインバーで働く大島人の女性で、首を絞められたうえ腹を刺されていた。刑事の一人が「アメリカ人の仕業に違いない」と口にした瞬間、与那覇はその胸ぐらを掴み、「全力で犯人挙ぎんど」と怒気を含んだ声で言い放った。
屈辱の日
1972年4月26日早朝、円・ドル交換のための現金540億円を積んだ大型トラックが、東京の日銀本店を出発した。警察庁と海上保安庁による厳重な警備体制のもと、大井ふ頭へと到着した現金は、輸送艦「おおすみ」と「しれとこ」に積み込まれ、沖縄へ向けて出港した。
同じ頃、真栄田は妻・真弓(北香那)とともにレストランで食事をしていた。店内のテレビでは、大規模なデモの映像が流れており、真栄田は「今日は沖縄では“屈辱の日”と呼ばれている」と口にした。1952年のこの日、サンフランシスコ講和条約が発効し、日本は主権を回復した。しかし、沖縄だけはアメリカの占領下に置かれたままであり、その日を人々は“屈辱の日”と呼んだのだ。真栄田は続けて、「“返還”という言葉は、返してもらうという意味だ。けれど俺たちにとっては、“復帰”なんだ」と静かに語った。
帰りの車の中で、真弓は窓の外を見つめながら「私、ここがアメリカだろうと日本だろうが、どっちでもいいって思っている。だって太一さんは太一さんだし、私は私だもん」と微笑んだ。真栄田はその言葉に穏やかに頷き、「生まれてくる子も、僕たちも、正真正銘の日本人だよ」と優しく答えた。
成り上がり
琉米経済交流会の会場には、玉城と真栄田の姿があった。玉城は酒に酔いながら、真栄田に「面白い話を2つ仕入れてきた」と耳打ちした。そのうちの1つは、贈収賄事件に発展しかねないという内容だった。
そこへ、ジャック・シンスケ・イケザワ(城田優)が姿を現し、真栄田に声をかけてきた。彼は上官の通訳として同行しているという。イケザワは本土復帰後も引き続き沖縄に駐留する予定だと告げ、真栄田と握手を交わした。「また何かあればよろしく」と言葉を残し、去っていった。
その直後、会場の空気が一変する。工場主の男が突然、川平興業の社長・川平朝雄(沢村一樹)の前にひざまずき、「社長、助けてください」と叫びながら土下座をした。川平はかつて立法議員の収賄疑惑を調べた際にも名前が浮上した人物であり、現在は実業家として多方面に事業を展開している。玉城は真栄田に向かって「川平という男は、戦果アギヤーとして成り上がったクチさ」と低くつぶやいた。
戦後、米軍の物資を奪い取って回った命知らずとして知られ、一部では英雄視されていたが、近年では米軍による土地接収の裏で、地元住民の土地を奪っているという噂もあった。玉城はグラスを傾けながら、「日本とアメリカをその時々で使い分ける。そういう男さ、川平というやつは」と言い残した。
対立
与那覇は苛立ちを隠せないまま本部長室へ乗り込み、娼婦殺し事件の捜査本部を解散するという決定に激しく抗議した。事件は所轄による継続捜査へと移行することになったという。与那覇は拳を握りしめ、「またアメリカーか」と怒声を上げた。さらに「由美子ちゃん事件と同じじゃないか」と、かつて米兵が関与した性暴力事件を持ち出して詰め寄った。
しかし本部長の座間味喜福(藤木志ぃさー)は静かに首を振り、「米軍からの横槍ではない」とだけ答えた。与那覇が「じゃあ内地か?」と問い詰めても、本部長は沈黙を貫いた。やがて喜屋武に「もう帰れ」と冷たく言い放たれ、与那覇は憤然と部屋を後にした。
廊下を歩いていた与那覇は、トイレで真栄田と鉢合わせた。彼を見るなり、与那覇は顔を歪め、「なんでここにいる」と吐き捨てるように言った。そして怒りに任せて、「ないちゃーじらーしたちゃつは、沖縄から出てけ!」と罵声を浴びせた。真栄田は何も言い返さず、静かに背を向けてその場を去った。
強奪事件発生
琉球銀行の行員である西銘()は多額の現金を手に銀行を出た。同行していた運転手の平良()とともに本店へ向かう途中、彼らの車は米軍による検問に遭遇する。平良が車を停めると、米兵が無言のまま降車を命じた。西銘が事情を説明している最中、別の兵士が背後座席からアタッシュケースを奪い取る。平良が無線に手を伸ばした瞬間、銃声が響いた。米兵は発砲後、そのまま逃走した。
一方、署内では翁長()と宮城()が「アメリカの言いなりじゃないか」と憤りをあらわにしていた。そこへ玉城が現れ、沈んだ空気のなかに加わる。真栄田は「娼婦殺しの捜査本部を畳んだからだろう」と推測し、玉城も「どうせ米軍の横槍だろう」とぼやいた。
ほどなくして、新里愛子(清島千楓)が部署を訪ねてきた。自己紹介が済んだ頃、喜屋武が現れ、対策室に全員を呼び出した。室内の緊張は、一層高まっていった。
極秘任務
対策室に呼び出された真栄田と玉城が足を踏み入れると、そこには琉球政府の知念官房長()と琉球中央銀行の仲宗根副総裁(肥後克広)が待っていた。知念は深刻な表情で報告を始める。午後7時前、琉球中央銀行が現金輸送中の車両が行方を絶ったというのだ。積載されていたのは100万ドル、日本円でおよそ3億6000万円に相当する金額だった。
琉球中央銀行では、日本復帰後の円・ドル交換に備え、沖縄本島各地から那覇本店へドルを輸送していた。そのうちの一台が何者かに襲撃された。午後6時過ぎ、名護支店を行員とドライバーの2名で出発し、30分後に定期連絡が入ったが、その直後に無線が途絶。琉銀はすぐさま琉球警察へ通報した。
現場に急行した石川南署の刑事たちは、車両と負傷したドライバーを発見したが、積まれていた現金はすべて奪われており、同乗していた行員の行方は不明だった。なお、警備員の同伴は人員不足のためなかったという。
知念は「これは単なる強盗事件ではない」と声を荒らげた。円とドルの交換は、新生沖縄の幕開けを象徴する国家規模の事業であり、それが奪われたとなれば琉球政府の信用は地に落ちる。さらに仲宗根は、日本政府が極秘裏に沖縄にあるドル資金を、アメリカへ引き渡す密約を交わしていたことを明かした。もしこの事件が外部に漏れれば、即座にアメリカの耳に入り、日米間の外交問題に発展しかねない。
喜屋武は「この件は琉球警察内でも極秘として扱う。日本政府にも報告しない」と断言した。そして、復帰まで残された18日のうちに犯人を特定し、奪われた100万ドルを回収せよと命じた。真栄田は「無茶だ」と口にしたが、喜屋武は「何のためにこの特別対策室があると思っている」と一喝した。真栄田は「本土復帰に関わる事案は、すべて我々が担当する」と応じるしかなかった。重苦しい沈黙の中、喜屋武は「その期待に応えろ」と告げ、部屋を後にした。残された真栄田と玉城は、互いに顔を見合わせ、困惑の色を隠せなかった。
被害者に聞き込み
玉城はすぐさま琉球銀行名護支店へ向かい、事件の裏取りを開始した。まもなく、新たな応援要員として与那覇が現れる。玉城が呼んだらしく、その姿を見た真栄田の表情は一瞬で固まった。確執を引きずる2人の間に重い沈黙が流れるが、そこへ新里が到着し、空気を和らげた。「詳しい話は車の中で」と真栄田は告げ、3人は車に乗り込んだ。
現場に着くと、石川南署の比嘉雄二(広田亮平)が待っていた。彼は「喜屋武刑事部長から、このまま特別対策室に正式に入るよう言われた」と報告する。真栄田たちは、負傷したドライバー・平良から事情を聴いた。
平良によると、当日、西銘が名護支店に現れ、自分を送迎係に指名した。市内の得意先を数軒回った後、業務終了間際になって那覇本店への現金輸送を命じられ、車を出したという。こうした臨時の運搬は以前にも何度か行われていた。
道中、この地点で米兵による検問に遭遇した。英語が分からず会話の内容は理解できなかったが、遅れそうだと感じて本店へ無線連絡を取ろうとしたところ、米兵が突然騒ぎ出した。やがて一人の兵が威嚇射撃し、別の兵が平良の頭を銃床で殴りつけた。混乱のなかで、西銘は連れ去られたという。
平良は頭を押さえながら続けた。「今思えば、本当に米兵だったのか…」と。殴られた直後、黒人の男は英語を一切話さず、うちなーぐち(沖縄方言)を使っていたという。さらに、別の方向からは関西弁も聞こえた。与那覇は「関西に出稼ぎに行ったやつらかもしれん。うちなーぐちを話す黒人といえば、混血児だろう」と推測し、「コザのあしばー(遊び場)を洗えば一発で分かる」と刑事課への照会を提案した。
だが真栄田は「極秘捜査だ。コザに照会はできない」と制止する。しかし与那覇は聞く耳を持たず、比嘉を連れて独断でコザへ向かった。
その頃、現場を調べていた愛子が薬莢を発見し、真栄田に手渡した。真栄田が平良に「男はどこに向けて撃った?」と尋ねると、「地面に向けていた」と答える。真栄田が足元の土を掘り返すと、そこには潰れた弾丸が埋まっていた。
手がかり
与那覇と比嘉はコザのクラブに足を踏み入れた。店内は煙と音楽に包まれ、酔客の笑い声が響いていた。2人は店の奥にいた与座()を見つけ、テーブルへと近づく。トイレに連れ込むと与那覇は低い声で「英語ができる黒人の混血、それから関西に行ってたあしばーのことを話せ」と詰め寄った。与座が黙り込むと、与那覇は苛立ちを募らせ、拳で腹を殴りつける。「誰なんだ!」と怒鳴ると、苦しみながら与座は「宮里たちだ」と白状した。
一方その頃、車内ではビル()が宮里武男(嘉島陸)たちを侮辱するような言葉を吐いていた。挑発的な態度に耐えかねた宮里は、怒りを爆発させ、ビルの顔面に拳を叩き込んだ。車内は一瞬で修羅場と化し、緊張が走った。
その頃、真栄田は愛子が見つけた薬莢と潰れた弾丸を手に、鑑識課を訪れていた。「この件、内密に調べてもらえないか」と頼むと、担当官()は渋い顔をした。だが「泰栄さんがよろしく頼むと言っていた」というと、鑑識官は観念したようにため息をつき、「分かった、やってみる」と引き受けた。
ギャング団
真栄田は玉城の家を訪ね、仏間に飾られた妻・静江()の遺影の前で静かに手を合わせた。かつて二課に所属していた頃、何かと助けてくれた彼女への感謝と哀悼の念を込めて目を閉じる。「二課の頃もしょっちゅう世話になったよ」と、懐かしむように呟いた。
ほどなくして、与那覇と比嘉、そして愛子が戻ってきた。5人は食卓を囲み、遅い夕食を取りながら情報を共有することにした。比嘉が「どうして玉城さんの家で話すんですか?」と不思議そうに尋ねると、与那覇は苦笑しながら「閑古鳥の鳴く対策室が夜遅くまで灯りつけてたら、本部詰めの記者に勘付かれるだろ」と答えた。
それぞれが手にした成果を報告し合う。名護支店を調べた玉城の話では、当日の現金輸送について知っていたのは店長と連れ去られた次長の西銘だけで、他の職員は誰も知らなかったという。
一方、与那覇は「宮里ギャングって聞いたことないか?」と切り出した。玉城が眉をひそめながら「沖縄中のヤクザ者から狙われてるって噂の連中だ」と続け、コザ署の同僚から入手したという数枚の写真を机の上に広げた。
リーダー格の宮里武男は、かつてコザ界隈で米兵を襲撃して“米兵狩り”で名を馳せた男だった。仲間の又吉キヨシ()は空手の達人で、喧嘩だけでなく道場破りとしても悪名を轟かせた。ドライバーを務めていた照屋ジョー()は娼婦と黒人兵の間に生まれた混血児で、英語に堪能。稲嶺()は鍵開けとスリや窃盗の名人で、知花()は女をたらしこませたら右に出る者はいないといわれていた。
彼らは幼い頃からコザで兄弟のように育ち、やがて「宮里ギャング」と呼ばれるようになった。第二次沖縄抗争の際には、泡瀬派に属して複数の敵対組織を壊滅寸前まで追い込み、その後は関西へ逃れて身を隠したという。そんな奴らが、また沖縄に戻ってきた。
一触即発
真栄田は、宮里たちがなぜ危険を承知で沖縄に戻ってきたのか、その理由を考えていた。比嘉が「金が尽きたんじゃないですか?」と口にすると、与那覇が首を振る。「あいつらは関西の暴力団に客分として迎えられてた。金に困るような連中じゃない」と断言した。
もし今回の100万ドル強奪が彼らの仕業なら、その情報をどこから掴んだのかが問題だった。真栄田は、関西に潜伏していた頃の宮里たちの動向を、警視庁時代の同期に探ってもらおうと考えた。さらに琉銀関係者の事情聴取を進め、関係者の身辺も洗うと話す。
すると与那覇が鼻で笑い、「結局、琉銀のこと調べたいだけだろ。沖縄の情報を集めて内地に尻尾振ってるんじゃないのか」と噛みついた。さらに「コザの娼婦殺しだって、お前が帰ってきたから米軍以外の横槍が入ったんだ」と言い出し、挑発をやめなかった。話は次第に学生時代にまで遡り、「内地に向いていい子ぶってる裏切り者」と罵声を浴びせた。
その瞬間、真栄田の表情が一変した。怒りを抑えきれず立ち上がり、与那覇の胸ぐらを掴んだ。「ふざけるな!お前に沖縄の、日本の何がわかる!」と叫ぶ。その声は震えていた。与那覇も一歩も引かず、「沖縄はずっと捨て石にされてきた。戦争の頃から何も変わっちゃいねぇ!」と反論した。そして冷たく付け加えた。「お前は八重山にいたから分からんのだろ。ここがどれだけ地獄だったかを」
その言葉を聞いた瞬間、真栄田は反射的に拳を振るった。与那覇の頬に鈍い音が響き、静寂が落ちた。「地獄だったさ!八重山も!」真栄田は声を張り上げ、震える拳を握りしめた。
与那覇はゆっくりと立ち上がり、乱れた襟を正すと、「一応、感情はあるんだな」と皮肉を残して部屋を出ていった。沈黙が残る中、玉城は何も言わず、真栄田の前に酒を注いだ。
【1972 渚の螢火】1話の結末
ライカム――琉球米軍司令部。イケザワは誰かと電話で話す。琉球政府に対し国務省が圧力をかけ、その男を他国へ逃がしたという噂が流れていると語るイケザワ。相手は「何を考えているのか分からないが、あの男から目を離すな」とだけ言い残した。電話を切るとイケザワは、なぜあの男がこの時期にと考え込んだ。
一方、宮里たちの手はさらに血臭くなっていった。目隠しされたビルを連れ、彼らは崖へ向かった。宮里が銃を握り、仲間がビルを跪かせる。大阪から戻ってきた宮里は吐き捨てるように言った。「わんはやっぱり沖縄が好きだ。だけどよ……わったー島は未だに汚されてるさ。アメリカーにも日本にも」そして頭に銃口を突きつけ、「これからわったーの本当の戦争さ。全員たっくるさんとよ!」と叫び、引き金を引いた。ビルはその場で息絶え、仲間たちは遺体を片付けた。
沖縄の本土復帰まで、残りはあと17日だった。
【1972 渚の螢火】1話のまとめと感想
沖縄に戻って来たギャング団が100万ドルを強奪し、真栄田たちがそれを極秘裏に追うという話でした。
第1話から話がギュウギュウに詰め込まれています。まず、どういう状況の沖縄の話なのか分かるように、敗戦後から本土復帰直前まで描かれました。返還ではなく復帰だという真栄田のセリフに、思わずハッとさせられます。さらに沖縄の人にとっては“屈辱の日”だったという、サンフランシスコ講和条約の発効。沖縄に暮らしたことのない人には決して分からない心情なのだろうと、改めて気付かされます。
また、英語だけでなく沖縄の方言も分からないため、共に字幕が欲しいのですが、沖縄の方言については字幕はありません。言っている内容を詳しく知りたい場合は、自分で調べる必要があります。
本土復帰直前の混沌とした状況と沖縄という場所が、本来だったらありえないことも起きそうな、不穏な空気を漂わせています。宮里ギャングはなんのために金を盗んだのか?そして川平はどう物語に絡むのか?今後の展開が気になります。
誰も血を流さずに終わるとも思えず、誰が最後まで生き残るのかも気になるところです。そして時代の闇に葬られ、全てなかったことになるのか?終わり方にも注目しています。
2話→