今回の「ガイアの夜明け」はクラウドファンディングを使って、新商品を発売する話です。クラウドファンディングのサイト「MAKUAKE」で、商品を発売していく様子がわかります。小さな会社だけでなく、大企業も参加しているクラウドファンディング。一体どんなものが売られているのか?見ていってみましょう。
「ガイアの夜明け」概要
「ガイアの夜明け」はテレビ東京系で毎週火曜22時~放送中です。
経済やそれにまつわる企業などの情報を、主に取り扱っているドキュメンタリー番組です。
出演者
- 案内人:江口洋介
- ナレーション:杉本哲太
クラウドファンディングとは?
そもそもクラウドファンディグとは、どういったものでしょうか?怪しい投資詐欺のようにも聞こえます。投資した場合、どういった恩恵があるのか、調べてみました。
クラウドファンディングは防災や市民ジャーナリズム、ファンによるアーティストの支援、社会・政治運動、ベンチャー企業への出資、映画、フリーソフトウェアの開発、発明品の開発、科学研究 、個人・事業会社・プロジェクトへの貸付など、幅広い分野への出資に活用されている。(中略)
wikipediaより
クラウドファンディングは資金提供者に対するリターン(見返り)の形態によって下記の3類型に大別される。
金銭的リターンのない「寄付型」
金銭リターンが伴う「投資型」
プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」
様々な商品や会社など、自分が「支援したい」と思うものにお金を払うようです。その結果、完全寄付タイプと金銭が貰えるタイプや、商品が届くといったものがあるようです。ふるさと納税とかに近い感じですね。
私も個人的にやったことがあります。商品が届くタイプのもので、一般では発売しない受注専用商品という感じでした。
やってみた感想としましては、ちゃんと商品も届きましたし、進捗状況とかもこまめにメールで連絡がありました。不安な要素は一切なく、届いた商品も店頭で販売できる品質で、パッケージも凝っていたものでした。
一点当たりの価格が高めな設定のものが多いですが、早めに申し込むと安く手に入ったりするものもあります。大量生産するわけではないので、価格設定は仕方がないとは思います。しかし、誰も持っていない最新の商品が手に入るという喜びがあります。しかも、満足できる出来のものだったらなおさらです。
MAKUAKEとは?
2013年に設立された、サイバーエージェント社がやっているクラウドファンディングとなります。
https://www.makuake.com/
今回の取材では、こちらの創業者の一人である木内文昭さんが、取材に対応しています。
商品化された物
では実際にどのような商品が、クラウドファンディングで商品化されたのでしょうか?番組で紹介していたものは以下のものです。
猫用やすり
こちらの商品は広島の町工場が募って、目標金額30万円のところ、283万円集まりました。その後も要望があり、現在は3780円で販売しています。
折りたたみ式電動バイク
こちらの商品は和歌山の中小企業が募って、目標金額300万円のところ、1億3000万集まり、限定1000台で販売されました。
小さな町工場や中小企業が、技術はあるのに販売するために資金がない。そういった部分をクラウドファンディングで補ってできた商品だと思います。
しかし、最近は大企業が参入してきているようです。大企業なら資金に困ることはないのでは?
実は大企業ならではの問題があって、商品化できないものがあったのです。
大企業ゆえの悩み
MAKUAKEのセミナーには大企業の人が参加しています。なぜなら、大企業ならではの悩みがあってです。
「会議が多い、決裁者が多い、プロジェクトが立ち上がる前から反対される、前例がないものに積極的ではない」などが主な理由です。
そこでMAKUAKEでは大企業専門の「MIS(マクアケ・インキュベーション・スタジオ)」というものがあります。 そこでは、企業にある技術や企画を製品化させていきます。
そう、枯れた技術の水平思考をするのです。
枯れた技術の水平思考とは?
任天堂で数々のヒット商品を生み出した、故・横井軍平氏のモノづくりにおける哲学です。
枯れた技術:すでに一般で広まっている最先端の技術ではない、コストが安く作れる技術
水平思考:これまで使われていた使いかたではなく、別の使い道を考えてみる
「枯れた技術の水平思考」とは、すでに一般に広まっているコストがかからない技術を、別の使い方をして新たな商品を生み出すということになります。
詳しくは横井軍平氏の本がありますので、そちらをご覧ください。良書です。
横井軍平ゲーム館 「世界の任天堂」を築いた発想力 (ちくま文庫) [ 横井軍平 ] |
実際にMISで作ったもの
シャープ:液晶材料の研究で培った技術で出来た蓄冷材料→日本酒専用バッグ
富士通:回路・小型化の技術→スマホで撮影した画像に、採寸データを反映するメジャー
キングジム:電子ペーパーディスプレイ→リマインダー付きの電子メモ帳
ライオン:歯ブラシ→口の中から表情筋にアプローチする美容機器
大企業が元々持っている技術を、MAKUAKEが手伝って商品化したものです。
商品の品質は大企業が作っているので、間違いない品々となっています。
クラウドファンディグとは、こういった商品を一般販売する前、もしくは一般販売がないものを、手に入れることができる仕組みとなっています。
近々公開されるプロジェクト
カセットテープを作っていたマクセルが、リッチフォームというプラスチックの成型技術を使い、何か新たな商品が生み出せないかと考えています。
そこでMAKUAKEの木内氏が提案したのが、電子レンジでローストビーフが作れる器です。
このリッチフォームという素材は、プラスチックの内部に窒素などを注入して膨らませます。軽さと耐久性があるだけでなく、保温性の高い素材だったのです。
そこで、MAKUAKEではなぜか人気のある「肉」という商品に合わせ、開発を進めたそうです。
募集の具体的な日付はいっていませんでしたが、今後も開発を続けていくようです。
そしてもう一つは、LIXILが進めているシャワーの水が泡になるという商品です。
どうやら外部にボディソープの液体をセットし、それを水と一緒に噴射する技術のようです。
消火器メーカーのモリタなどと協力して開発したようです。本当に消火器の泡みたいに噴射されていました。
こちらの商品は3月27日から募集が始まり、1台4万3千円で目標金額は430万円だそうです。
東洋紡の挑戦
創業137年を誇る紡績会社の東洋紡は、社員1万人を超える大企業です。案内人の江口さんが会社を訪問し、社員の方に商品の紹介をして貰います。
現在紳士服のはるやまで展開中の「ストレス対策スーツ」や、新幹線の座席に使用されているクッション、ヴィダーインゼリーの外袋のフィルム素材など、目にしたことはあるけど、東洋紡の名前はどこにも表記されていない商品ばかりです。
いわゆる企業向け(BtoB)の会社です。その東洋紡がなんと一般消費者向け(BtoC)で初めて商品を作りたい、というのがMAKUAKEに依頼した理由でした。
企画をしたことがない?
そこで早速MAKUAKEの木内さんが、東洋紡の社内で一般消費者向けの製品開発をする参加希望者を募り、プロジェクトの概要を説明します。
しかし一般消費者向けに商品を作ったことのない、企業ならではの問題が起きます。
それは「企画をどう立てたらいいのか?」という質問でした。
東洋紡という会社は、そもそも企画を立てたこともなく、社内には商品企画部もありませんでした。
リケジョの熱い思い
心配していた木内さんですが、説明会の後、定員を超えるが集まりました。そこで、さらに数ヶ月から4ヶ月で作れる商品を何か作るという、高いハードルを設置します。
そこには説明会で質問をした、小松さんという研究をしている女性がいました。彼女は国立の理系の大学を卒業後、金融機関の会社に入りますが、研究をしたいという夢を諦めきれず退社します。そして、東洋紡に再就職をした、いわゆるリケジョだったのです。
そんな研究畑の小松さんが、なぜ一般消費者向けの商品開発に参加したのでしょうか?
彼女の所属している部署は研究開発部署で、基礎研究や開発研究を主にやっています。
自分の携わったものが、商品になるところを最初から見てみたい。というのが彼女の動機でした。
初めての商品企画
小松さんが早速自社の素材を使って商品企画を始めます。研究部署にいただけあって、素材の特徴や品質には自信があります。送り出す商品は「犬用の防寒着」です。
自宅でも犬を数匹飼っている小松さん。飼っている犬の中に寒がりの犬がいました。その犬は冬場はコタツの中に入って出てきません。
身近な悩みから自社の良質な素材を使い、悩みを解消できたらというのが今回の商品の企画となったわけです。
東洋紡独自のニット「ウォームニット」という生地で作ることに決めます。大手スポーツブランドにも採用されている、撥水加工もされている高機能の繊維です。
東洋紡には様々な計測器があります。それで調べてみたところ、一般的なニットとウォームニットでは温かさで4度の差がありました。
消費者の心に響くのか?
悩んでいたところ、ターゲットユーザーに直接聞いてみたらどうか?という提案をされます。
しかし、全く知らない人に話を聞くことに抵抗を感じる社員たち。ためらってしまいます。
ところがある日、会社の近所を犬を連れて歩いていた人に突撃インタビューをします。
東洋紡の名前を出すと、安心して話を聞いて貰えました。開発している商品の説明をし、いくらぐらいなら購入するか?などきいていきます。そこで手応えを感じた小松さん、次々ときいて回ります。
結果、高機能な商品を欲している人たちがいるということがわかりました。
その後、商品の試作品が作られ、防寒・撥水に加えて抗菌作用の機能も盛り込みました。
聞き込みを元に、部屋用が4500円で室外用は5500円で値段設定しました。
自宅の犬に着せてみたところ、寒さを感じず外で走り回りました。
社内プレゼンの日
東洋紡の名前で募集するクラウドファンディング、社長や役員のオーケーが出ないものは採用されません。
まずはビジネスリュック、そして新幹線に使用されている素材を使った、抱きかかえクッションなどがプレゼンされていきます。
いよいよ、小松さんの番です。
東洋紡だからこそできる、ペットウェアの説明です。高機能を前面に押し出してプレゼンします。
すると役員の一人に「飼い主は見た目重視で、機能なんてどうでもいいんじゃないか?」といわれます。
そこに社長が割って入ります。
「犬が好きだからこそ、そういったことが気になる人もいる」と援護してくれます。
社長はなんと愛犬家だったのです。
審査結果、6チーム中4チームの商品が合格しました。
小松さんのチームが先頭を切って募集開始します。
東洋紡初の一般消費者向け製品、果たして?
クラウドファンディングの結果
小松さんの商品は「HUGLABO」という名前で募集されています。
既に目標金額はクリアされ、商品化が決定しました。テレビで放送された影響でしょうか?凄いです。
気になる方はリンクを貼っておきますので、よかったらご覧下さい。
感想
元々物作りには自信があった企業や中小企業、町工場など、日本には大小問わずに技術が埋もれています。
それをいかに活用するか?新技術ばかりに目が行きがちですが、既にあるものを別の使い方をするという発想力が成功に導きました。
東洋紡のように素晴らしい技術があるのに、固定の企業にしか使われていない素材など、こういったものはますます今後、色々なものに活用されていく気がします。
素材を作っている会社だけでなく、高い技術力がある会社など、今までやってきたことが全て生かされるといいですね。
そして、そういった会社に勤めている人たちに、ちゃんと利益が還元されれば、物作りをする人たちも沢山増えてくると思います。
思ったのですが、本来素材の一番の利点を知っているのは、それを開発した研究員です。
もっと現場の人たちの声に耳を傾けていけば、思いもよらない使い道が出て来るかもしれません。