12月29日にNHK BSプレミアムで放送された【黒蜥蜴-BLACK LIZARD-】のネタバレと感想、ロケ地などをまとめました。
何度となくドラマ化や舞台化された、江戸川乱歩の【黒蜥蜴】を明智小五郎役に永山絢斗、緑川婦人にりょうを迎えてリメイクしました。その内容はとんでもなくぶっ飛んだ内容でした。
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】の基本情報
- 放送局：NHK BSプレミアム、NHK BS4K
- 放送日：
- NHK BSプレミアム：2019年12月29日（日）21時～23時
- NHK BS4K：2020年2月8日（土）19時～21時
- 原作：江戸川乱歩『黒蜥蜴』
- 脚本：長津晴子、林海象
- 音楽：サキタハヂメ
- 演出：林海象
- 制作統括：中村高志、髙木敬太、髙橋練
- プロデューサー：大西文二
- 制作：NHKエンタープライズ
- 製作：NHK、東映
- 公式HP
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のキャスト
- 黒蜥蜴／緑川婦人（りょう）
表の顔は高級ホテルのオーナー。その正体は怪盗・黒蜥蜴 - 明智小五郎（永山絢斗）
自称、世界一の名探偵 - 岩瀬早苗／葉子（福本莉子）
大富豪の娘。年の離れた父から溺愛されている - 小林芳雄（佐久間由衣）
「小林少年」の名で知られる明智の助手 - 雨宮潤一（吉村界人）
黒蜥蜴の忠実な部下 - 真田信人（佐野岳）
中村の部下の刑事 - マリア（大鶴美仁音）
人間型AI - 北村（市川知宏）
黒蜥蜴の部下で研究室で解析をしている - 怪人二十面相（松尾貴史）
明智が追っている怪盗 - 松公（堀内正美）
黒蜥蜴の部下 - 房子（月船さらら）
黒蜥蜴の部下 - 天馬博士（風間トオル）
黒蜥蜴や早苗の出生の秘密を知るキーマン - 中村部長（佐野史郎）
岩瀬早苗の身辺警護を担う警視庁の刑事 - 岩瀬庄兵衛（中村梅雀）
宝石のコレクターとして知られる大富豪
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のあらすじ
ハッキングやサイバーセキュリティーをかいくぐるハイテク犯罪が当たり前の近未来。探偵・明智小五郎（永山絢斗）は大富豪・岩瀬庄兵衛（中村梅雀）から誘拐予告された娘・早苗（福本莉子）の身辺警護を依頼される。立ちはだかるのは高価な宝石を巧妙な贋作とすりかえる謎の怪盗・黒蜥蜴。早苗をかくまうと名乗り出たホテルオーナー・緑川婦人（りょう）こそ黒蜥蜴と見破り誘拐を防ぐが、ホテル全体に仕掛けられたトリックに阻まれ、取り逃がしてしまう。しかしその時、怪盗と名探偵は密かに恋に落ちていた。早苗を「人間椅子」のトリックで奪われながらも黒蜥蜴を追い詰めていく明智はやがて黒蜥蜴の悲しい過去と驚くべき正体を知る。謎が謎を呼び、禁断の恋にゆれながら、鑑賞者のいない黒蜥蜴の秘密の美術館で怪盗と名探偵は最後の対決を繰り広げる。勝者は果たして誰か。
公式HPより
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のネタバレ
- 早苗の帰国パーティーを開き、赤いルビーを披露するが偽物と擦りかえられていた。騒ぎになる中、黒蜥蜴からの予告があり、午前0時に早苗を連れ去るという。岩瀬は明智を呼ぶよう言う。
- 呼ばれた明智はホテルに向かう。岩瀬はホテルオーナーの緑川夫人の好意で、早苗をさらわれないように特別に厳重な部屋にかくまう。
- 時間になるまでの間、明智と緑川夫人でポーカーをしながら話をする。共にイカサマなポーカーをしているうちに予告時間になる。扉を開けてみるとそこには早苗の姿がなかった。
- 明智は早苗はこの部屋にいると言うと、部屋自体が動き出し隣の部屋に早苗はいた。見破った明智は緑川夫人が黒蜥蜴であることを告げると、部屋が今度は上に動き出して黒蜥蜴は逃げてしまう。
- 明智は10年前に起きた唯一の未解決事件の話をする。かつてシンバイオテックスという会社が、裏でクローン人間を作っていた。そこの研究者の天馬博士から依頼を受けたが、研究所は爆発してなくなり天馬博士も行方知らずになっていた。
- 明智は早苗そっくりの葉子という娘に会って、協力を求める。
- その頃、岩瀬家では早苗のために買ったソファを運送会社が運んでくる。早苗がそこに座ると座面が回転し、ソファの中に閉じ込められてしまう。そのソファを傷があったという名目で、再び運送会社が運び出して行く
- 家に戻った岩瀬はそんな家具は頼んでいないといい、そこに黒蜥蜴から連絡が入る。エジプトの星という宝石を持って来たら早苗を返すという内容だった
- 指定された場所に向かった岩瀬は現れた黒蜥蜴に宝石を渡す。早苗のいる場所へ一緒に向かおうとしたところ、明智が岩瀬に変装していることを黒蜥蜴は見破る。そして再び逃げられてしまうのだった。
- 後をつけると黒蜥蜴たちは港から潜水艦に乗っていこうとしていた。明智は急いで海に飛び込んで追いかける。
- 小林は早苗と一緒にいた。実は連れ去られたのは、早苗にそっくりの葉子だった。葉子を見て自分の存在に違和感を覚えていた早苗は、何者なのかを知りたいという気持ちと、葉子を危険な目にあわせていることに罪悪感があった。連れて行って欲しいと反対する小林を説得し後を追いかけることにした。
- 食事を差し入れに来た部下を見て黒蜥蜴は、またも明智の変装だと見破る。れいのソファに座った明智はそのまま閉じ込められてしまう。そしてソファごと部下に命じて海に投げ捨ててしまう。
- 目的地の無人島についた黒蜥蜴たちはさっそく部下に命じて、エジプトの星の中にあるデータの解析を始める。
- 黒蜥蜴は早苗の身代わりだと知らず葉子を連れて話をする。シンバイオテックスでしていた研究内容がクローン技術であること、岩瀬が金を出して亡くなった一人娘のクローンを作っていたこと、そして早苗が誕生したことを。
- 早苗を解析することで自分達も完璧な人間になれる、黒蜥蜴たちの仲間はみな、研究所で作られた欠陥クローンだった
- しかし、早苗だと思っていた娘は葉子であると分かる。そこで捕らえた天馬博士に解析コードとパスワードを脅して吐かせるが、宝石にはゲノム編集データが入っているのではなく、岩瀬の不正の事実が隠されていた
- 天馬博士だと思っていた人物は実は明智で、天馬博士はすでに死んでいるといい、博士から手紙を渡されているという。
- そこに岩瀬が自ら兵を雇って乗り込んでくる。研究員たちが殺されていく中、黒蜥蜴の仲間が助けに向かう。不利な状況になったところに元々岩瀬を追っていた警察が駆けつけ応戦する
- 兵を引き連れた岩瀬が黒蜥蜴と明智を追い詰める。そこに小林が早苗とやってきて止めようとする。しかし、岩瀬は早苗以外は皆殺しだと言って攻撃する
- すると警察がやってきて、兵との銃撃戦は次第に警察が有利になる。逃げ出す岩瀬を待ち伏せていた葉子が殺そうとするが早苗がそれを止める。そこに中村がやってきて岩瀬を逮捕した
- 黒蜥蜴は施設を爆破すべくスイッチを入れる。後を追って来た明智が彼女を連れ出し施設から出たところ、瀕死の部下の潤一が明智に向かい発砲する。黒蜥蜴は明智をかばい撃たれてしまう。
- 既に細胞も死滅し始めている黒蜥蜴は死を悟り、明智に静かな場所へ連れて行って欲しいと願う。明智は彼女を連れて腕に抱いたまま、絶命するのを悲しげに見守った。
欠陥クローンだったため、完璧な人間になりたかった。完璧なクローンである早苗を解析し、エジプトの星にあるデータが欲しかった。
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】の感想
好き嫌いがハッキリ分かれそうな内容です。何度もリメイクされている上、舞台化もされているので、乱歩作品の中でも思い入れが強い人もいる作品だと思います。今回のリメイクは話の内容や配役含め、苦手な人は苦手でしょう。
まず、話が近未来設定です。さらにクローンの話が出てきます。ちょっと何を言っているのか分からないでしょうが、今回はそういうリメイクとなっています。もうこの時点で話が結構ぶっ飛んでいるのですが、現在の地上波では放送できなさそうな演出もあります。
ある意味、“異形”という江戸川乱歩っぽい部分もあります。アメコミのX-MENなどを思わせるような悲しい部分もある話です。そのため、明智の恋愛要素は前面に出てきません。
林海象さんの脚本かつ演出なので、監督作の「濱マイクシリーズ」的要素が所々入ってきたりします。まるで一枚の写真のような非常にスタイリッシュなシーンや音楽もオシャレです。
悪い部分としては少々安っぽい演出があります。これは予算的な部分なのかワザとなのかが判断がつきづらいです。なぜなら、一番盛り上がるはずのラストシーンの演出が結構トホホです。感動のシーンなのに背景が気になります。その分、アクションシーンに予算を割いたとしか思えないぐらい、アクションに力が入っています。
物語の根幹となるシンバイオテックスと天馬博士の詳細と、登場人物のその後の話について掘り下げます。
ネタバレの詳細となります。未見の方はご注意ください。
シンバイオテックスとは？
表向きは製薬会社ですが裏でクローン技術の研究をしていました。10年前になくなってしまい、そこの研究者が天馬博士です。主に何をしていたかまとめました。
- 事故で亡くなった岩瀬の一人娘のクローンを作る研究をしていた
- 岩瀬がそのために資金提供をしていた
- 娘の遺伝子を完璧に継いだものができるまで、何度も失敗を繰り返していた
- 失敗したクローンは欠陥クローンと呼ばれて廃棄
- 廃棄方法は生きたまま焼却される
- 早苗ができると今度はそれで商売しようと岩瀬は考えていた
この欠陥クローンが盗賊団のメンバーとなります。焼却手前で反抗し、施設から逃げ出した人たちで構成されています。
娘に似ていないから欠陥というわけでもなく、様々な理由で欠陥があります。
- 寿命が短い
- 細胞が死滅してしまう
- 死滅を抑制するために薬で制御している
- 特殊能力が備わっている人もいる
一番の欠陥部分は寿命が短いことです。人間と同じ時間を生きることができません。細胞が壊れて段々黒ずんできてしまうため、それを抑制するために注射で薬を投与する必要があります。
しかし、特殊な能力がある人もいます。弾で撃たれても平気な人や、波動で倒したりガードできる人や、俊敏な動きができる人もいます。ちょっとX-MENっぽいです。
そうしてやっとできたのが早苗でした。早苗は完璧なクローンであり、人間と同じ寿命を生きることができます。早苗に似ている葉子は残念ながら容姿は似てますが、欠陥クローンなため長い寿命は生きれません。
天馬博士とは？
シンバイオテックスの研究者だった天馬博士ですが、そういう目的でクローンを作っているとは知らなかったそうです。そのためか10年前に明智に依頼をし、この問題を解決しようと考えていたようです。
- 天馬英九郎（51歳）
- シンバイオテックス開発部
- 分子生物学博士
- 2004年 桐生院大学 生物学部卒業
- 2007年 桐生院大学 大学院卒業
- 同年 アンブレラ製薬入社
- 2012年 同社遺伝子研究実績で遺伝子工学において先見的な評価を得る
- 2017年 シンバイオテックス入社
クローン研究会に所属 開発部として活動
アンブレラ製薬とかT-ウィルスでも作っていたのか？そんな博士です。しかし、岩瀬の目的に気づいたのか明智に依頼をします。その時に自ら施設を爆破し、幼い葉子を明智に託して行方不明になってしまいます。その後、会ったのか明智に手紙を託して亡くなったようです。
この手紙の内容はどういうものだったのか？「我が子供たちへ」と書かれた封筒に入っていました。
クローン製造のことは私の頭の中にしかない。そして、唯一の成功例である早苗は、珍しい遺伝子ゆえに普通のゲノム配列ではない。だから、彼女の細胞は誰とも合わないのだ。彼女を分析しても君たちは完璧にはなれない。君たちは君たちの命を精一杯生きてくれ。
すまない。すべての責任は私にある。許してくれ。
エジプトの星にゲノム編集のデータがあるかと思ったらそこにはなく、代わりにシンバイオテックスと岩瀬の犯罪記録が入っていました。黒蜥蜴たちの完璧な人間になる夢がここで崩れ去ります。
登場人物たちのその後
出てきた人たちがどうなったのか？分かった部分についてまとめました。
- 緑川夫人：部下の潤一に撃たれ明智の腕の中で絶命
- 早苗：家を出て外の世界を見に行く
- 葉子：早苗の家で生き残ったメンバーと何かを企む
- 岩瀬：署内の留置所で心臓発作を起こして死亡
- 明智：緑川夫人の死で感傷に浸っていたが、小林が来て20面相を追いに向かう
- 潤一：銃撃戦で負った傷が原因で死亡
- 房子：葉子と合流
- 北村：葉子と合流
- 松公：葉子と合流
黒蜥蜴が死んだ後、それを継ぐのが葉子といった感じの終わり方です。
実際何かするのかしないのか分かりませんが、彼らの居場所でもあった研究所やアジトはなくなってしまいます。異形である彼らが人間社会に溶け込み改心して働くとも思えず、今後も第二の黒蜥蜴として暗躍しそうな雰囲気です。
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のロケ地
茨城県でのロケが多いです。『カメラを止めるな！』で一躍有名になった、あの浄水場なども登場します。分かった範囲で記載しています。
パークスガーデンプレイス
葉子が表にいた教会
公式HP
霞ヶ浦浄化センター
シンバイオテックス内部
公式HP
レイノルズハウス
岩瀬邸
公式HP
埼玉環境科学国際センター
黒蜥蜴の研究所
公式HP
旧芦山浄水場
天馬博士が囚われていた場所
公式HP
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のその他気になったこと
- この歳で18歳の娘がいることを照れる岩瀬
- ジュエルリングのような宝石
- アメ車で登場する明智
- 小黒蜥蜴もいる
- ポーカーというよりマジック
- ステューピッドが口癖なマリア
- ポンポコ運送という名の運送屋
- マリアはスリープモードになると顔が閉まる
- パスワードは“RAMPO”
- 岩瀬の妙なコスプレ感
- 妙な花も咲いている研究施設
- いつか恋をしてみたいAIマリア
NHKBSドラマ【黒蜥蜴】のまとめ
原作をそのまま焼き直したリメイクを求める人には、完全に苦手な内容になっています。また、配役も黒蜥蜴役といえば三輪明宏さんの印象が強くありますし、明智役も気になる人は気になるでしょう。
では、完全に駄作なのか？個人的にはこれはこれでアリだと思いました。
その理由の1つとして、“異形”という部分がクローズアップされます。劇中では身体的特徴がある人が何人か登場します。そのため、乱歩の作品によくある秘められたものを覗き見るような感覚がありました。
それと同時にこの人たちが出演することで、“欠陥”なんてものはないと、強く訴えてくる演出だと自分は受け取りました。しかし、現在の地上波では放送できない理由にもなりそうな演出です。
本来“美”がメインテーマとなるこの作品を、生まれた人に欠陥なんてない＝そのままで美だという、逆説的なアプローチをした作品ではないかと感じました。
また、配役では早苗と葉子の二役を演じた福本莉子さんが、それぞれまったく別人の演技をします。早苗のような透明感がある役柄が多そうな彼女ですが、葉子のようなスレた役やアクションシーンもよかったです。今後もっとドラマで見る機会が増えそうな予感です。
あなたはそのままで完璧だ。人はこの世に生まれただけで完璧なんだ。誰にも否定する権利はない。