姉の仇の寺田と田所が酷い目にあうことと、はるかとの別れによって佐伯の気持ちに変化が出てきます。今までは怒りの感情に囚われていた佐伯ですが、父親との会話によって少しずつ前を向こうと考え始めます。しかし、所長は佐伯に依頼をします。その依頼内容は……
悪党~加害者追跡調査~概要
WOWOWプライムで5月12日より毎週日曜22時に放送しています。元警官の主人公が退職後に探偵となり、依頼を受けて犯罪加害者の現在を調査し報告をします。主人公自身も犯罪被害者遺族であり、調査をする内に様々な葛藤に直面していくストーリーです。
キャスト
- 佐伯修一(東出昌大)
- はるか(新川優愛)
- 坂上洋一(青柳 翔)
- 遠藤りさ(蓮佛美沙子)
- 前畑紀子(山口紗弥加)
- 早見剛(寛一郎)
- 松原弥生(篠原ゆき子)
- 松原文彦(中島 歩)
- 細谷博文(渡辺いっけい)
- 田所健二(三浦誠己)
- 寺田正志(山中 崇)
- 榎木和也(波岡一喜)
- 鈴本茂樹(柄本 明)
- 染谷久美子(板谷由夏)
- 佐伯敏夫(益岡 徹)
- 木暮正人(松重 豊)
スタッフ
- 【監督】瀬々敬久
- 【脚本】鈴木謙一
- 【原作】薬丸岳「悪党」
- 【音楽】大間々昂
前回はこちら
あらすじ
暴行により重傷を負った冬美(はるかの本名)。佐伯は深く後悔し、かえって冬美を愛するようになるが、冬美にも殺された姉に重なる厳しい過去があったことを知る。怒りをひきずったままでは人を幸せにできない。そんな思いを抱え一時帰郷した佐伯は再会した父(益岡徹)から思わぬ言葉を掛けられる。田所と寺田の緊張関係は破滅的な展開を迎えるが、木暮から残る主犯格・榎木の消息を知らされた佐伯は最後の試練に向き合うことに。
公式HPより引用
ネタバレ
感想
怒りの感情は自分だけでなく、周りにいる人も不幸にするといった感じで、今回の「悪党」は始まります。直接的な被害者であるはるかは逃げることを選択し、間接的な被害者家族である佐伯は過去に固執します。この2人の関係の変化が、佐伯を少し前に向かわせますが、所長はちゃんと向き合わせようとします。
この荒療治にも似た所長の作戦は果たして良い方向に行くのか?最終回へ向かって進む話は、最後どうやってまとまるのか?そんなことが気になる今回の話でした。
はるかの過去
はるかこと冬美は佐伯のためを思ってか、自分の境遇と重ねてか無茶をした結果、救急車で運ばれるような怪我をしてしまいます。なぜはるかはそんな危ない橋を渡ったのか?それははるかの過去に関係がありました。
- 高1の時、母親の再婚相手にレイプされた
- その後も2人きりになると、時々求められた
- 母親に相談したくとも「悲しむのはお母さんだ」と男に言われて相談できなかった
- 逃げるように家出をした
- ある日突然彼氏から一方的に別れを告げられる
- ネットにはるかと父親の裸の写真が掲載されていたせいだった
- 怒った父親が写真をネットに晒した
- 学校でもバイト先でも遠巻きにされる
- 家族友人と連絡を絶ち、顔も整形して別人になる
ネットに写真が流出したことで、はるかは折角見つけた居場所も奪われてしまいます。はるかは父親を訴えたりはせず“家出”することで逃げました。離れた場所にいても結果的に逃げられませんでした。
過去にこういったことがあったせいで、はるかは佐伯の姉に共感をしたのだと思います。「そんなものがある限り、お姉さんは何度も何度も殺されるんだよ」と言います。佐伯への愛情だけで動いたわけではなかったのです。
今度は佐伯の家で同棲するという居場所を見つけたはずだったはるかですが、出て行ってしまいます。そんな佐伯を見て染谷は「過去を引きずるあなたには、彼女を幸せにはできないと思う」と言います。この別れもあって佐伯に少し心境の変化が現れます。
寺田と田所の関係の終わり
佐伯の姉の事件に関わっている男は3人で、寺田、田所、榎木の3人です。そのうちの寺田と田所は今も関わっていました。その2人の関係に終わりが来ます。
- 寺田は一応仕事はしているが、田所を脅して金をせびる
- 田所はラーメン屋を経営し、婚約者もいる
- 婚約者の家は金持ちで、ラーメン屋のチェーン展開の支援をしてくれる
- 警察沙汰を起こす寺田が迷惑
- 寺田は悪びれずに相変わらず絡んでくる
- 田所は寺田を海外に追いやろうとするが拒まれる
- 田所、寺田を殺害する
2時間ドラマのような動機で殺されます。出所後田所は自らの努力でラーメン屋を繁盛させますが、寺田は大して働かず田所に寄生するばかりです。悪い仲間と縁を切ることができないのは、過去にやらかしたせいです。そして、いざ自分が成功し金持ちの娘と結婚できそうになると、本当に寺田が邪魔になり殺害してしまいます。
ですが、殺し方もずさんで、死体の処理も適当です。これではすぐに足がつくだろうに、もう少しうまくやれななかったのでしょうか。寺田も寺田で困った時に無心を願うならともかく、完全に寄生して生きていこうとします。悪党は悪党のままというよりも、過去の罪がいつまでもついて回った結果です。
罪を犯すということは、未来も手放すということになります。そこから立ち直るには普通の人生を歩んでいる人よりも、遥かに難易度が高いです。
佐伯の選択
次回で最終回になりますが、佐伯は最後どういう選択をするのか?それがこの物語の全てだと思います。そこで今までの回を振り返り、佐伯の心の動きを追ってみます。
話数 | 対象者 | 心の動き |
---|---|---|
1話 | 坂上洋一 | 許さない |
2話 | 前畑紀子 | 許す |
3話 | 中島歩 | 許す |
4話 | 久保田篤史 | 許さない |
5話 | なし | 許さない |
確実に許した話は2、3話目となります。逆に絶対許さなかったのは1話目です。4話と5話は許す方向かなと思っていたら、最後に所長が煽って許さないとなります。こうみると、所長は佐伯がちゃんと向き合って許す選択をするならともかく、その時の気持ちだけで許そうとすることを妨害します。
なぜなら、その時の気分に流されて気持ちを抑えたとしても、またきっかけがあれば怒りの感情に囚われる可能性があるからです。最終回で怒り過ぎて我を忘れて殺害する可能性もありますが、それさえ乗り越えられればきっと前を向けるかもしれません。
最終的に許さなかった場合は刑務所、許した場合は犯罪者にならずに生活することになります。許す許さない以外の選択肢としては、向き合わずに逃げるという選択がありますが、それは恐らく所長がいるのでないかなと思います。この逃げるという選択の定義として、忘れるも逃げるですし、辛くて自殺も逃げるに含まれます。逆に逃げるのだったら、今までの話はいったい何だったのか。それはそれで、衝撃です。
まとめ
いよいよ次回で最終回となります。犯罪加害者や被害者、被害者遺族に加害者遺族、加害者の弁護士なども登場し、それぞれの視点から物語が描かれてきた「悪党~加害者追跡調査~」は、様々なことを考えさせてくれました。佐伯の選択はどういうものなのか、最終回を楽しみして視聴したいと思います。