【相棒シーズン23】12話「細かいことが気になる患者」のネタバレと感想をまとめています。
入院した病院にやってきたコンサルタントの怪しさに右京はすぐに気付き、病院から亀山に指示をして捜査を開始する。病院を守ることはできるのか?今シーズン現時点で一番面白い回です。
【相棒23】12話のあらすじ
脳波の数値が異常ということで、しばらく検査入院することになった杉下右京(水谷豊)は、病院にやってきた怪しげなコンサルタントたちに目が留まる。そこで見舞いにやってきた亀山薫(寺脇康文)に、彼らの様子を探るよう頼んだ。
やがて病院の院長である寺田昌巳(山口粧太)が、コンサルタントと契約を結ぶ。彼らは次第に病院を乗っ取り始めた。
右京は彼らから病院を守るため、病院にいながら亀山や伊丹憲一(川原和久)、角田六郎(山西惇)らと一緒に彼らを追い詰めていくが……。
【相棒23】12話の見逃し配信
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【相棒23】12話のネタバレ要約
右京たちの捜査により、コンサルタント会社の社員たちが、病院買収のためにした犯罪行為を見つける。
証拠を突きつけても余裕のライリーに右京は、亀山が山奥の小屋で大金を見つけたという話をする。それはライリーがかつて住んでいた家で、そこに金を隠していた。
法的には誰の土地でも家でもないため、持ち主なら名乗り出ればいいが、その場合は警察の捜査を受けることになると右京から言われ、ライリーはとうとう観念した。
【相棒23】12話の詳細なネタバレ
右京が入院!?
杉下右京(水谷豊)の脳波は異常だった。その刻みは他人と比べてあまりにも細かく、数値が常態化していることが疑われた。医師の寺田昌巳(山口粧太)はその珍しさに驚き、しばらく検査入院をする必要があると告げる。しかし、右京自身は平然としていた。
実は杉並武蔵病院には深刻な問題があった。経営状態は悪化の一途をたどり、院長は外部の助けを求める形で「83(エイトスリー)コンサルティング」の人間たちを呼び寄せた。この病院の院長、寺田昌巳はかつて脳神経外科の研究者だったが、父から病院の経営を引き継いだものの、その手腕には自信がないと打ち明ける。
やってきたコンサルタントの一人、岡村直人(飯山裕太)は寺田と面会し、これまで何度も病院を立て直してきた実績を語った。ここに来る以前、コンサルタントチーム内では別の話し合いが進行していた。岡村は「手頃な病院を見つけた」と報告し、代表のライリー・櫻井(岩谷健司)は「ハニーです」と笑みを浮かべながら答えた。その表情には、不気味な自信が宿っていた。
そんな中、入院生活を送る右京は、持ち前の優雅さを発揮していた。彼は病院内で患者たちに紅茶を振る舞い、その銘柄「ハニーブッシュティー」の由来や味わいについて語った。その穏やかな姿は病院の空気を和らげ、多くの患者たちに小さな癒やしをもたらしていた。
一方で、83コンサルティングの計画は着々と進んでいた。ライリーの指示のもと、高橋理沙(橘さり)は飯窪郡治(三田村賢二)という男に演技を指導していた。有澤一郎(内村遥)は小道具として高級腕時計を用意し、ライリーは現場に現れてこう言った。「開幕です。ファーストステージ、夢を与える」その言葉には、計算し尽くされた冷徹さが込められていた。
ライリーは院長の寺田と向き合い、コンサル料が支払えないと弱音を吐く彼に対して、新たな提案を持ちかけた。それは、飯窪郡治を「白鳥弘二」という名のエンジェル投資家として紹介することだった。白鳥を名乗る飯窪は、自分の資産を地域医療の再生に役立てたいと語る。しかし、その話しぶりにはどこか不自然さが漂い、同じセリフを何度も繰り返す彼に寺田は少し違和感を覚えた。それでも、ライリーがその場を巧妙に取り繕うことで、寺田の疑念は一時的に押し流されてしまった。
怪しいコンサルタントたち
右京の病院に、小出茉梨(森口瑤子)が見舞いに訪れた。彼女の穏やかな笑顔に右京は感謝を述べながら、入院生活について軽く話を交わす。その時、ぼやきながらラウンジに飯窪郡治が入ってきた。水を飲もうとするが、ディスペンサーが空になっていることに気づく。代わりに茉梨はアイスティーを淹れ、飯窪に手渡した。
「入院患者の方ですか?」と右京が問いかけると、飯窪は自信ありげに「資産家ですよ」と答える。その言葉に右京はふと興味を示し、彼が身につけている時計を見せてもらうことにした。飯窪が時計を外し、右京がそれをじっくり観察していると、そこにライリー・櫻井たちコンサルタントの一行が現れた。
ライリーは軽やかな口調で「私たちがこの病院の再建を任された者です」と名乗り、自身の母方がイギリス出身であることをさりげなく話に盛り込んだ。さらにスタッフたちを紹介しつつ、右京に親しげに話しかける。しかし、右京の鋭い観察力は既に彼らに注がれていた。「皆さん、南国へ社員旅行に行かれたのですか?」と尋ねたのだ。肌が日焼けしていることに気づいていたのだ。
さらに、右京は有澤の腕を見ながらこう指摘した。「その日焼けの跡、大きな時計をつけていた形跡ですね。しかし、それは今あなた方が持っているような時計ではない」続けて右京は、時計の時刻が日本のタイムゾーンとずれていると指摘し、飯窪に返却した。
「皆さん、旅行には一緒に行かれたのですか?」右京の問いに、飯窪は「いいえ」と答えたが、ライリーが「同行してもらいました」と訂正した。右京はなおも探りを入れる。「腕時計の日焼け跡がないのはどうしてでしょう?」ライリーは涼しい顔で「彼は部屋で過ごすのが好きなんです」と説明したが、その場の空気は微妙にざわついた。
やりとりを見守っていた茉梨が、話の流れに困惑している様子を見せると、「こういう人なんです、すみません」と軽く場を収めた。しかし、去り際に右京はライリーに一つだけ問いかけた。「あなたは旅行には行かなかったのですか?」ライリーは「社員のための旅行ですから、私は参加していません」と答えた。
その直後、亀山夫妻が病室に現れた。右京は亀山薫(寺脇康文)に「一つお願いをしてもいいですか?」と声をかける。そのお願いとは、ライリーたちを尾行し、彼らの会社の実態を突き止めることだった。
亀山は任務を遂行し、ライリーたちが向かった先を追い詰めた。そして、そのビルに「83コンサルティング」という会社が存在していることを確認した。電話でその報告を受けた右京は「実態があるようですね。そのまま見張りを続けてください」と冷静に指示を下した。
この段階で右京は確信を深めつつあった。ライリーたちの行動には明らかに何かが隠されている。そしてその隠された真実が、病院の再建計画の裏にある陰謀を浮き彫りにする鍵になると考えたのだった。
進むステージ
飯窪郡治は、高橋理沙から報酬として20万円を受け取ると、ビルから出てきた。その様子を尾行していた亀山は、飯窪の服装が先ほどまでとまるで別人のように変わっていることに気づき、すぐに右京に報告した。
その後、飯窪は居酒屋に直行した。右京は警察であることを伏せて接触するよう亀山に指示し、亀山はさっそく行動を開始した。飯窪が座ったカウンター席の近くに腰を下ろし、自然な流れで声をかける。飯窪が「一杯奢らせてもらいますよ」と封筒から金をちらりと見せると、亀山はすっかりその気になり、おごりを受け入れた。
後に右京のもとへ戻った亀山は、「どう見ても資産家には見えませんでした」と報告した。さらに、飯窪が住んでいるのは安アパートだったことも明かした。その話を聞いた右京は、詐欺の可能性を感じ取り、さらに調査を進めることを決意する。
一方、美和子(鈴木砂羽)には「83コンサルティング」の法人登記を調べてもらっていた。ホームページも一見怪しいところはなく、むしろ完璧に見える。「逆に、全部本当ってことはあるのかしら」と疑問を呈する美和子に対し、右京は静かに答えた。「本当と嘘を巧みに混ぜることで、何が真実で何が偽りかわからなくなります。思った以上に巧妙な相手なのかもしれませんねぇ」
その頃、寺田院長はコンサルたちと電子契約書を締結し、その完了を有澤がライリーに報告していた。契約を確認したライリーは、例のごとく「ハニーです」と呟き、満足げな表情を浮かべた。そして次の段階、セカンドステージ「金を与える」へと進むことを宣言した。
しかし、この契約について右京は疑念を抱いていた。寺田院長に「契約をしてしまったのですか?」と問いかけると、院長は「何か問題があるのですか?」と驚きを見せた。さらに、看護師の中澤良子(林田麻里)も「もっと慎重に判断するかと思っていました」と言葉を漏らした。すでに1000万円が振り込まれているから安心だと自信を見せる院長に、右京の表情は変わらなかった。
一方、ライリーたちは院長からのお礼の電話を受け、「これで私たちを信頼するだろう」と笑顔を交わしていた。そして、サードステージ「仲間を与える」として次の計画を進めることをライリーは語る。「理事を増やすべきです。我々の会社から理事を出します。給料はうちが負担しますからご心配なく」その言葉には、さらなる罠が隠されているようだった。
中澤はその計画を右京に伝えた。「院長は仲間ができたと喜んでいます」と話す中澤を前に、亀山は思わず「本当に大丈夫なんですか?」と心配そうな声を漏らした。
乗っ取り完了
ライリーたちがいる部屋に、右京と亀山が姿を見せた。右京はいつもの丁寧な口調で「一つ質問してもよろしいですか?」と切り出した。そして理事会の構成について淡々と述べ始める。「現在、理事は全部で7名。そのうち元からの理事は3名で、残りの4名はあなた方の会社のスタッフですね。つまり、理事会で多数決を取る場合、あなた方の意見が必ず通る計算になります。極端な話、院長を理事長から解任することも可能というわけです」
その言葉に寺田院長の表情が凍りついた。しかしライリーは冷静に微笑み、「私たちは仲間です。そんな心配はいりませんよ」と優しい声で寺田を安心させる。寺田はその言葉を真に受け、安堵の表情を浮かべた。
場の空気が少し和らいだところで、右京は話題を変えるように「ところで」と言い出した。「ライリーさんが着ているスーツ、イギリスの老舗メーカーのものですね。先日も同じブランドのスーツをお召しでしたが」ライリーは誇らしげに「ええ、スーツはここのだと決めています」と答えた。それを聞いた右京は軽く頷き、「素敵な趣味だなと思っただけです」と微笑んだ。
ライリーたちが去った後、亀山は寺田院長が完全に彼らを信じ切っていることに危機感を抱いていた。「大丈夫なんですかね、本当に」と心配する亀山に対し、右京は静かに言った。「人は自分だけはだまされるわけがないという、バイアスがかかるものです」
その後、右京はライリーのスーツについてさらに調査を進めることを亀山に依頼した。「あのスーツは、『素晴らしき嘘つき野郎』という古い映画で、主人公の詐欺師が着ていたものと同じなんです」右京の説明に、亀山は思わず吹き出した。「まんまじゃないですか」と。調査の結果、あのスーツを扱っているのは都内の老舗テーラー1店舗だけであることが判明した。さらに、ライリーはその店の上客であり、支払いは常に現金で行っているという。右京はその事実を聞き、静かに考えを巡らせた。
その頃、ライリーたちは次の計画を進めていた。高橋理沙は新たに医師役を演じるキャストを手配し、準備を整えていた。ライリーは「ハニーです」と満足そうに呟き、「ファイナルステージに進みましょう」と宣言した。
寺田院長のもとに現れたライリーたちは、医師の土居と名乗る小林圭介(管勇毅)を紹介した。そしてその場で理事会を開くと言い出し、小林を理事長として推薦することを提案した。寺田が驚く間もなく、理事会は迅速に進み、寺田院長は理事長の座を解任されてしまった。
動揺した寺田はすぐに右京を訪ねて状況を説明した。「理事と院長のポストには残っていますが……」と話す寺田に、右京は冷静に指摘する。「つまり経営権を失ったということですね。これで彼らは病院を売却し、現金に換えることも可能になったわけです」
さらに右京は、自分が警察であることが病院内で知られていないかを確認した。寺田は「杉下さんは私の個人的な研究対象として入院していることになっています。院長の私と看護師長の中澤以外には知られていません」と答えた。右京は「患者としてこの病院に残ります」と告げ、外の調査は亀山に一任することを決めた。
ライリーたちは会社で次のように話していた。「ファイナルステージ『全て奪う』、完了です」その言葉通り、彼らの目的は病院の資産を現金に換えることだけだった。その計画は着実に進行していたが、右京の目は既にその裏を見据え始めていた。
集結
亀山は角田六郎(山西惇)課長と一課の伊丹憲一(川原和久)、芹沢慶二(山中崇史)、出雲麗音(篠原ゆき子)の3人を病院に連れてきた。右京は彼らに事の経緯を詳しく説明し、詐欺師たちの巧妙な手口を明らかにした。話を聞いた角田課長は「いやぁ、これは本当に巧妙だな」と感心しつつも、「安楽椅子探偵気取りかよ?」と右京に軽口を叩いた。
右京は落ち着いた口調で説明を続けた。「やるべきことは2つあります。この病院を取り戻すこと。そして、過去の詐欺行為までさかのぼり、彼らを詐欺罪で逮捕し、立件することです」その説明に伊丹は「捜査は難航するんじゃないですか?」と疑問を投げかけたが、右京はすでに手を打っていた。「捜査二課にも協力を依頼しましたので、ご安心を」
その後、右京は看護師長の中澤と協力し、岡村に挨拶をしたいと申し出た。面会の際、右京は「リスボン宣言をご存じですか?」と岡村に問いかけた。岡村が首をかしげる様子を見て、右京は丁寧に説明を加えた。「患者には病院に対して提言や相談を行う権利がある、という内容です」その一言で岡村は表情を引き締めざるを得なくなった。
さらに、右京の提案で新しい理事長が患者たちの前で、スピーチをする機会が設けられた。その場で右京は、理事長のプロフィールを手に取りながら質問を始めた。「これまで病理学の研究をされていたとのことですが、どうして突然、病院経営に携わるようになったのですか?」理事長はそれらしい返答をし、何とかその場を切り抜けようとした。
しかし、右京は畳みかけるように続けた。「ところで、前に勤務されていた病院の近くにとても美味しい天丼屋があったのですが、ご存じですか?」理事長は一瞬驚きつつも、「ああ、あの天丼屋さんですね」と答えた。しかし、右京は冷静に追及する。「先生が勤務されていた10年前には、その店は既に閉店していましたが」
その瞬間、場の空気が一変した。理事長が口ごもる中、高橋理沙が割って入り、「それ以前に非常勤で通っていたので」と助け舟を出した。しかし、右京はさらに鋭く切り込む。「そのような記載はどこにもありませんね」理沙は動揺を隠しつつ、「主要な経歴しか載せていないので」と苦し紛れに答えた。
理事長と理沙の言葉に小さな亀裂が生じた瞬間、右京の推理は新たな段階に進んだ。詐欺師たちの巧妙な偽装の背後に潜む真実は、少しずつ浮き彫りになろうとしていた。病院を取り戻すため、そして彼らの詐欺行為を暴くため、右京と亀山の捜査は続いていく。
偽医者
麗音は、理事長として名乗っている医師の土居健人が実際にはその人物ではなく、本名が小林圭介であることを右京に報告した。麗音によれば、本物の土居健人は病気で医師としてのキャリアを絶たれており、小林たちは実在する医師の名前に目をつけ、彼の名前を利用して身分を偽装していた可能性が高いという。
さらに麗音は、小林圭介の理事としての経歴を調べた結果、彼が関与した病院は全てライリーが担当してきた病院ばかりであることを突き止めた。表面上は在籍の記録が確認できたものの、実際にその病院に聞き込みを行うと、小林に勤務実態がなかったことが明らかになった。「内部に入り込んだ病院なら、データの改ざんも容易だったでしょうねぇ」と右京は冷静に推測した。
さらに右京は続けた。「小林圭介は医師を装い、患者から診療代を受け取っています。これで詐欺罪は成立しましたね」その言葉に亀山も頷き、「これでやつらの犯罪の一端が掴めました」と応じた。ただし、捜査二課が小林を張り込んでいることから、今はまだ泳がせる方針が取られた。
その後、伊丹から新たな報告がもたらされた。「コンサル会社から病院に振り込まれた1000万円について調べたところ、ライリー本人が数回に分けて会社の口座に現金を入金し、その資金を病院の口座に振り込んでいたことが分かりました」さらに、コンサル会社の口座の残高はほとんどなく、必要な時にライリーが個人的に入金する形で成り立っていたという。
この報告を聞いた右京は「つまり、あの資産家は全く関与していないということですね。すべてはライリーが演出したものだったと」と結論づけた。そして、金の流れをさらに詳しく調べるため、亀山に追加調査を依頼した。
ライリーたちの詐欺の構図が次第に明らかになる中、右京たちは冷静に彼らの行動を見極めつつ、さらなる証拠を手に入れるために動き続けていた。騙された人々を救い出し、この病院を取り戻すため、最後の追い込みが始まろうとしていた。
反社との関わり
角田課長と亀山は、ある空き家へと足を運んだ。その空き家の所有者は「白鳥弘二」という78歳の人物であることが判明していたが、役所の記録によれば本人は長い間音信不通の状態だという。現場に到着すると、角田課長はふと南京錠に目を留めた。「これ、新品だな……」と呟き、怪しげな雰囲気を感じ取る。鍵を壊し、亀山とともに中へ入ると、彼らが目にしたのは物置の中に隠された大量の拳銃だった。「暴力団絡みかもしれんな」と課長は眉間に皺を寄せながら呟いた。
その後、亀山は白鳥になりすましていた飯窪に接触するため、以前彼と会った居酒屋へ足を運んだ。「ちょっと話があるんだけどな」と声をかけ、倉庫から違法なものが見つかったことを伝えると、飯窪は動揺した様子で口を開いた。「全部ライリーたちの指示だよ……」その証言を聞いた亀山はすぐに右京に報告した。「その人は重要な証人になりますねぇ」と右京は静かに言った。
一方、角田課長は倉庫に隠されていた武器が、広域指定暴力団「武輝会(ぶこうかい)」と関連している可能性が高いと判断していた。右京が「ライリーたちとその暴力団が関係している可能性は?」と尋ねると、新たな情報が明らかになった。コンサル会社の弁護士、有澤が弁護士特権を利用して警察署や拘置所にいる暴力団関係者と頻繁に接触していることが確認されたのだ。
「つまり、有澤は暴力団関係者から犯罪に利用できる情報を、収集している可能性が高いということですかねぇ」と右京は考察を深めた。それに対し、角田課長は詐欺で得た金が暴力団にも流れていると推測した。「課長の出番ですね」と右京が冗談めかして言うと、課長は力強く宣言した。「武輝会の資金源は叩き潰す!」
その日の夕方、右京は病院の屋上で紅茶を飲んでいた。穏やかな風が吹く中、入院患者の八木かよ(今本洋子)が現れ、「一緒に飲んでいいかい?」と声をかけた。右京が笑顔で頷くと、かよは手にした紅茶を一口すすりながら話し始めた。「この病院で生まれてさ、ここで夫を見送ったんだよ。今はここで、ぼんやりと思い出して過ごしてる。まあ、もうすぐ全部曖昧になって、そのうち死ぬんだろうけどね」
彼女の口調にはどこか達観した穏やかさがあった。「誰だっていずれは死ぬ身だろう、あんただって。私は死ぬならここで死にたいんだよ。なくならないだろう?」右京は彼女を見つめ、穏やかに微笑みながら答えた。「大丈夫。約束します」その言葉には、彼が今取り組んでいるすべての戦いが、この病院を守るためであるという決意が込められていた。
ライリーたちの計画が徐々に暴かれていく中で、右京の静かで揺るぎない信念がさらに強く輝いていた。病院を取り戻す戦いは、今まさにクライマックスへと向かおうとしていた。
コンサルの正体
高橋理沙はかつて劇団員だった。しかし、経済的に困窮し、役者としての道を諦めざるを得ない状況に追い込まれていた。そんな彼女を拾い上げたのがライリーだった。麗音の調べによれば、理沙は役者時代の人脈を生かし、詐欺計画でのなりすまし役のキャスティングや演技指導を担当しているという。
岡村直人については、学生時代に立ち上げたベンチャー企業で仲間に裏切られ、全財産を失った過去があった。その絶望の中で彼を引き上げたのもライリーだった。「ウェブ周りの工作は岡村の担当でしょうね」と芹沢は推測する。
有澤一郎は正真正銘の弁護士で、学生時代の成績も優秀だったらしい。しかし、彼の人生もまた順風満帆ではなかった。伊丹の調査によれば、有澤はネグレクトの被害者で、学費の面倒を見たのは親ではなく、「あしながおじさん」と呼ぶ人物だったという。「その『あしながおじさん』がライリーですね?」と右京が尋ねると、伊丹も頷いた。「そういうことでしょうね」
「なるほど、あいつらにはあいつらなりの絆があるってことか」と亀山が言葉を漏らす。しかし、右京はすぐに言葉を引き締めた。「だからといって同情の余地はありません。この病院に対する詐欺の証拠はだいぶ揃ってきました。そして過去にライリーたちが関わった乗っ取り事件についても、全て罪に問いたいところですねぇ」
一方、その頃のライリーはホームレスたちに酒を振る舞い、一緒に飲んでいた。その光景を見かけた亀山が右京に報告する。「ライリー、弱い人間には妙に優しいところがあるみたいです」その言葉を聞いた右京は少し微笑み、「情に厚すぎるのが君の悪い癖。とはいえ、おかげで貴重な情報が得られました」と答えた。
そして右京は最後のピースを見つけるため、亀山に新たな調査を依頼した。「どうやら全てを明らかにするためには、もう少しだけ足を運んでいただく必要がありそうですね」右京の言葉には、事件の全貌がいよいよ見えてきたという確信が込められていた。ライリーたちの真実と罪を暴き出す瞬間が、確実に近づいているのだった。
詐欺師と直接対決
ライリーたちが病院に姿を現した。不動産会社が病院を買い取りたいと言っている、と寺田院長に話すライリー。寺田は即座に反対するが、ライリーは冷静な口調で説得を始めた。「院長、ご自身の苦手な経営から解放され、研究職に戻られたほうが幸せなのではありませんか?」その言葉に寺田は一瞬迷いの表情を浮かべるが、信じきれない様子で視線を逸らした。
その瞬間、理事会での決議が始まろうとしていた。緊張が高まる中、スーツに着替えた右京が現れた。「決議に異議があります」と毅然とした声が響く。ライリーはすぐに「患者に議決権はありませんよ」と切り返すが、右京は静かに応じた。「患者としてではなく、警察官としてここにいるのです」その瞬間、部屋の空気が凍りついたように静まり返る。さらに、角田課長や一課の伊丹ら三人が入ってきて、場は完全に封じられた。
一方で亀山は、四峰駐在所を訪れ、情報を集めていた。「山の中の小屋について、何か知っていることはありますか?」彼の鋭い質問が次の手掛かりを探る。
理事会では、ライリーはすべての取引が合法的であると主張していた。しかし、右京は冷静に反論する。「取引の際に虚偽の情報を提供していた場合、それは詐欺に該当します」ライリーは「人聞きが悪いですね」と嘲るが、右京は一歩も引かず、「往生際が悪いですね」と静かに言い返した。そして、右京はまず小林圭介を詐欺の容疑で逮捕すると告げる。
その言葉に小林は動揺し始め、高橋理沙と口論を始めた。その様子を見た麗音がすかさず口を挟む。「あなた方の関係についてはすでに調べがついています」次に、芹沢が岡村直人を病院データ偽造の容疑で逮捕すると発表した。「私は社命に従っただけだ!」と叫ぶ岡村だったが、芹沢は冷たく応じた。「その話は後でゆっくり聞かせてもらいます」
さらに、角田課長は有澤一郎に向かって「話を聞かせてもらおうか」と声をかける。有澤は「私はクライアントのために文書を作成しただけです。違法性はありません」と主張するが、角田課長は言葉を止めない。「あなたと暴力団との関係について、色々証拠が上がっているんだが」それに対して有澤は「黙秘権を行使します」と冷静に答えた。
その場の光景を見た伊丹が呆れたように言い放つ。「とんだ茶番劇集団だな。どいつもこいつも責任をなすりつけ合いやがって」右京はその言葉に応じるように、「お互いに騙した、騙されたと主張することで、捜査を撹乱するつもりなのでしょう」と述べた。そして、右京はライリーに向き直り、皮肉たっぷりに「よく教育が行き届いていますね、ライリーさん」と感心したように言った。
ライリーは逃げる素振りも見せず、聴取に応じる意向を示した。その余裕を見せる態度に、右京はすぐに理由を見抜く。「詐欺で10年服役することになったとしても、十分な資産を隠していればこその余裕ですねぇ」その言葉にライリーは微笑み、何も答えなかった。
その頃、亀山は山奥の小屋に向かい、調査を進めていた。古びた床板を慎重に外すと、そこには隠された大量の現金が姿を現した。その瞬間、亀山はこれが最後のピースだと確信した。これでライリーたちの全貌が暴かれ、彼らの詐欺計画は完全に崩れ去ろうとしていた。
ライリーの過去
亀山からの連絡を受けた右京は、病院の理事会に参加していたライリーに向かって静かに口を開いた。「僕の相棒が偶然、あなたと同じスーツの趣味を持つ、とある詐欺師を見つけました」その言葉に、ライリーはわずかに眉を動かし、表情を引き締めた。
以前、亀山がホームレスに話を聞いていた時のことだった。そのホームレスは酒臭い息を吐きながら、自分の過去を得意げに語り始めた。「昔は俺も羽振りがよかったんだ。名前はスマイリー。宇宙考古学の博士さ」その言葉を聞いた亀山は、どこかで聞いたことがあるような違和感を抱いた。
「そのスマイリー博士というのは、かつて『スマイリー博士』と呼ばれたロマンス詐欺師のことですね。本名は田中誠。博士なんて肩書は全くの嘘。ただの日本人詐欺師に過ぎません」右京は静かに説明を続けた。「彼は全盛期にはあなたと同じスーツを着こなし、嘘に嘘を重ねていました。しかし、結局は刑務所に入り、出所後も軽犯罪を重ね、今では住所不定。人を騙し、自分は他人よりも賢いと思い込んでいた詐欺師の末路とでもいいましょうか」右京の声には、皮肉とも思える冷たい響きが含まれていた。
「こういうタイプの犯罪者には特徴がありましてね。過去の自慢話をしたがるんです。スマイリー博士も例に漏れず、自らの武勇伝を饒舌に語っていたそうです。その中で、特に興味深いエピソードがありました」
右京は語り始めた。「ある日、食い逃げをしようとして店主に噛みついた子供がいたそうです。スマイリー博士はその場で代金を払うと申し出て、その子供に食べ物を与えた。さらに札束を出し、『これを貸してあげよう』と言ったそうです。その少年は『僕には返せません』と答えた。しかしスマイリー博士はこう言ったのです。『君には返せない。しかし、君が別人になったとしたら?』」
右京の言葉に、ライリーは微動だにせず、じっと聞いていた。「スマイリー博士は郷里の温泉街に戻った際、ある少年と出会いました。その少年には親もなく、家もなく、名前すらありませんでした。彼はその少年を引き取り、詐欺師として育て上げたそうです」
ライリーは冷たく笑い、「それが自分だと?そんなもの、何の証拠もないでしょう」と切り返した。しかし、右京は動じることなく答えた。「僕もあなたの過去には興味はありません。ただ興味があるのは、山奥にあったというその少年の住処だけです」
さらに右京は続けた。「あなたの社員たちは病院乗っ取り詐欺が成功した後、海外旅行に行きました。しかし、あなたはその時同行せず、郷里に戻っていた。目撃証言も上がっています」ライリーの表情がわずかに険しくなる。
「もちろん、関係ないというなら、それでも構いませんよ?」右京は微笑みながらそう告げた。部屋には静寂が流れ、ライリーの返答を待つ空気が張り詰めていた。その中で、右京の言葉は鋭く、そして確実にライリーの防御を崩そうとしていた。
事件の真相
亀山は山小屋から札束を抱えて出てくると、そのまま四峰駐在所へと向かった。駐在所の警官に札束を見せながら状況を説明すると、警官は冷静にこう言った。「あの山小屋は私有地ではないので、拾得物として扱われます。つまり、誰も名乗り出なければ、拾得者であるあなたのものになりますね」
その一言に、亀山は冗談めかして笑った。「じゃあ、この大金、俺のもんってことでいいのかな?」
その頃、右京は病院の理事会で冷静に語り始めた。「たまたま僕の相棒が、大金を拾ったそうです」ライリーは微動だにせず、右京の言葉を静かに聞いていた。「法的には、あの土地も小屋も誰の所有物でもありません。ですが、もしそれがあなたのお金であれば、持ち主として名乗り出ることができます。その場合、警察が差し押さえて出どころについて捜査することになりますが」
その瞬間、ライリーは言葉を失い、表情にはわずかな動揺が浮かんだ。その様子を見た角田課長が声を低めて言った。「ライリー、もう詰んだんだよ」
右京は一拍の沈黙を置いてから、静かに最後の質問を投げかけた。「山奥とはいえ、セキュリティーの全くない場所に、なぜあれほどの大金を隠したのですか?」
ライリーは目を細め、少し微笑みながら問い返した。「なぜだと思いますか?」
右京は答えた。「あなたは見捨てられた存在でした。だからこそあえて、少年時代のすみかに金を隠した。そこは誰も見向きもしなかった場所だから。自己陶酔と破壊衝動に駆られたある意味、とてもロマンチックな行為といえるでしょう。しかし、それは頭の良さとは真逆の資質です。そもそも、本当に頭のいい人間は……詐欺師にはなりません」
右京の冷静な言葉に、ライリーは天を仰いだ。その瞬間、彼の記憶は子供の頃へと遡っていた。あの山奥の小屋で、一人膝を抱え、同じように天を仰いでいた少年時代。彼の胸には、かつての孤独が再び蘇った。
ライリーは深く息をつき、静かに頭を下げた。そして全員に向かってこう言った。「申し訳ない。ハニーな時間は終わり。終幕です」その言葉とともに、捜査員たちに連れられて部屋を出ていった。
右京はライリーの背中をじっと見つめながら、その足取りが消えていくのを最後まで見届けた。その姿には、どこか哀愁が漂いながらも、終わりの幕引きを確かに感じさせる静けさがあった。物語は幕を閉じ、山奥の小屋に隠された過去もまた、静かに消えていったのだった。
【相棒23】12話の結末
後日、病院は再び平穏を取り戻していた。寺田院長や看護師長の中澤、そして患者たちが右京に集まり、感謝の言葉を口々に述べた。「おかげで病院を取り戻すことができました。本当にありがとうございました」寺田の目には安堵の涙が浮かんでいた。
その時、入院患者のかよが、何かを思いついたように声を上げた。「提案があるんだけどさ、私の遺産を病院に譲るよ。他の地主たちにも声をかけてるから、ちゃんとした専門家をつけて、この病院を守るんだよ」その言葉に寺田は涙を流しながら、「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます!」と何度も感謝を伝えた。中澤も、そんな寺田に向かって「院長、頑張るんですよ」と励ました。
一方、右京自身も、自分に関する重要な知らせを受け取った。異常だとされていた彼の脳波は、実は右京にとっては普通の状態であることが確定したのだ。その結果を聞いた右京は微笑み、いつもの穏やかな表情を見せた。
その後、ライリーが右京と亀山を呼び寄せ、静かに頼みごとを持ちかけた。「たまにでいいので、スマイリーのおっちゃんの様子を見に行ってほしいんです。金を渡そうとしても、受け取らないんですよ。プライドが高くてね……」しかし、亀山は申し訳なさそうに言葉を返した。「それがね……田中誠さん、先日路上で亡くなったそうですよ」
その言葉を聞いたライリーは、一瞬肩を落とし、小さく呟いた。「冬は越せなかったんだ……」
しばらく沈黙が続いた後、ライリーは穏やかな声で続けた。「せっかく来てくれたんで、話を聞いてくれませんか?捜査二課の刑事たちは、あなたに比べると質問が大雑把なんですよ。どうせなら、細部までちゃんと語りたいんです。『素晴らしき嘘つき野郎』の物語をね」
右京は柔らかな微笑みを浮かべながら答えた。「構いませんよ。どんな些細な罪も見逃さないように、僕達が取り調べましょう」その言葉には、ライリーへのわずかな哀れみとともに、犯罪者を逃さないという右京らしい毅然とした決意が滲んでいた。
【相棒23】12話のまとめと感想
病院を乗っ取ろうとした詐欺師たちを、右京さんの推理と的確な指示で逮捕したという話でした。
今シーズンはこれを越える話が出てこないのではないかと思えるぐらい、1時間でぎゅっとまとまった見事な回です。
色々なオマージュが含まれていまして、右京さんが安楽椅子探偵だったり、ライリーたちが『地面師たち』だったり、スマイリー博士はクヒオ大佐だったり、『素晴らしき詐欺野郎』も個人的には『スティング』あたりのイメージなのかなと思って見ていました。
オマージュもこうしてうまく組み合わせれば、既存の話を超える見事な話になるという見本のような回です。この話は2時間で見たかったとしみじみ思います。何度も夕方の放送で再放送されそうな予感です。
1シーズンに1話ぐらい飛びぬけて面白い回があるので、相棒を見るのはやはり楽しいです。