【相棒シーズン23】8話「瞳の中のあなた」のネタバレと感想をまとめています。
亀山が視覚障害者の女性と伴走していると、突如何者かに襲われる。幸い大事には至らなかったが、犯人はそのまま逃げてしまう。2年前に起きたある殺人事件が、関係があるのではないかと右京は考え……。
【相棒23】8話のあらすじ
早朝の公園を亀山薫(寺脇康文)は視覚障害者の三郷藍里(森マリア)と伴走していた。突如物陰から現れた男が、ナイフを持って襲い掛かり亀山は負傷してしまう。幸い大事には至らなかったが、男はそのまま逃走してしまった。
藍里は犯人の狙いは本当に亀山だったのかと心配していた。その理由は、2年前に起きたある殺人事件にあった。
偶然通りがかった家から叫び声を聞いた藍里は、急いでその家へと向かう。すると出てきた犯人と鉢合わせになり、藍里は階段から転落してしまう。その結果、彼女は失明してしまった。
藍里は手術を受ける予定があり、手術を受けることで目が見えるようになるという。その情報を聞きつけた犯人の仕業ではないかと心配していた。
話を聞いた杉下右京(水谷豊)は、2年前の事件が確かに関係がある可能性があると思い、捜査を開始すると意外なことが分かり……。
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【相棒23】8話の見逃し配信
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【相棒23】8話のネタバレ要約
野瀬が自首しに行くと言うのを聞いた木浪は、野瀬を殺すつもりで間違えて亀山を襲った。
2年前、妹の手術費用が必要だった野瀬は、木浪に誘われて尾澤家に泥棒に向かう。その時、藍里と遭遇して彼女を失明させてしまった。
金は手にしたものの妹は亡くなってしまい、自殺をしようとしていた藍里を見つけて彼女を助ける。そして罪滅ぼしから、彼女に金銭的な支援をした。
木浪は元々尾澤家の隣人である、坪倉から話を持ちかけられて泥棒計画を立てていた。木浪に野瀬を殺すよう脅された坪倉は、逆に木浪を殺害した。
【相棒23】8話の詳細なネタバレ
亀山刺される
亀山薫(寺脇康文)は早朝の公園で、伴走者として視覚障害者の三郷藍里(森マリア)とともにランニングをしていた。朝の澄んだ空気の中、軽快に走る二人。しかし、その平和な時間は突然の襲撃によって破られた。背後から現れた男が亀山に襲いかかり、鋭い刃物で腹を刺してきた。藍里がとっさに持っていた警報を鳴らすと、男は驚いて逃げていった。
その日のうちに杉下右京(水谷豊)が亀山の見舞いに訪れると、そこには美和子(鈴木砂羽)と藍里もいた。幸いなことに傷は浅く、亀山は入院の必要もなく話ができる状態だった。亀山は伴走倶楽部というボランティアグループに参加し、藍里とともにその朝の6時から走っていたことを右京に説明した。
襲撃の詳細について亀山が語り始める。犯人はナイフを左手に持っていたことから、左利きの可能性が高いという。そして藍里も重要な観察を提供した。「女の人かもしれません」と彼女は言った。襲撃の際に、マニキュアの除光液の匂いがしたからだという。しかし、亀山は体格が男性的だったことを指摘し、犯人は男性である可能性が高いと主張した。
その場に野瀬匠(レイニ)という伴走倶楽部のメンバーが現れ、藍里を送っていくことになった。その際、藍里が心配そうに亀山を見て言った。「犯人の狙いは本当に亀山さんだったんでしょうか?」その言葉には、事件の背後に隠された謎が漂っていた。
2年前の事件
現場では警察が丹念に検証を進めていたが、目撃者もおらず、防犯カメラにも犯人の姿は映っていなかった。一課の面々も到着し、捜査は手詰まりの様相を見せていた。
その後、右京は亀山に案内してもらい、藍里が勤める花屋を訪ねた。店長の井手口精一(ドロンズ石本)と話をする中で、藍里について尋ねると、店長は「あの事件のことですかね?」と問い返した。その言葉に右京は興味を抱く。
それは「墨田区専業主婦撲殺強盗被疑事件」のことだった。右京は捜査資料に目を通し、事件の詳細を確認する。
事件は二年前の夏に起きたもので、藍里は唯一の目撃者だった。当時大学生だった藍里は、家庭教師のアルバイトから帰宅する途中、尾澤宅から聞こえた叫び声に気づき駆けつけた。
そこで犯人と鉢合わせしてしまう。犯人に腕を掴まれた藍里は、なんとか振りほどいて逃げ出したものの、その反動で階段から転落。眼鏡が割れて顔に大怪我を負い、それが原因で失明してしまった。
藍里は隣人の坪倉善孝(有福正志)に助けられ、駆けつけた警察官が家の中で尾澤和歌子(山﨑千惠子)の遺体を発見。現場には犯人のコンタクトレンズが残されていたが、前歴者データにはヒットせず、事件は未解決のまま今に至っていた。
右京と亀山は藍里のもとを訪ね、話を聞くことにした。藍里は明後日、目の手術を受ける予定だという。その手術で視力が回復する可能性があり、「犯人が私を狙ったのではないか」と心配していた。手術のことを知るのは、職場の人間と伴走倶楽部のメンバーだけだという。
右京は部屋の中にあった現金書留の封筒に目を留めた。依頼主欄には「服部道彦」と書かれていたが、住所は記載されていなかった。その人物について尋ねると、藍里は「命の恩人です」と答えた。
以前、彼女が踏切に飛び込んで命を絶とうとしたとき、服部が間一髪でそれを止めたのだという。それ以来、服部は毎月お金を送ってくれるようになったのだと話した。そのエピソードに、右京は深い感慨を覚えつつも、服部という人物の背景に関心を寄せた。
同時期にあった横領事件
右京たちは二年前の事件現場となった尾澤家を訪れ、夫の尾澤勝臣(まいど豊)と話をした。勝臣は事件当時、墨川区役所の会計課で課長補佐を務めており、事件当日は旅行の予定だったが、急遽中止したと語った。その理由は、同じ会計課の課長が突如自殺したためだった。
勝臣によれば、当時区役所では会計課の職員が公金を使い込んでいるという内部告発があり、世間を賑わせていた。その犯人が課長であり、自責の念から命を絶ったのだという。
捜査二課が調査を進めた結果、課長が約2億8000万円を横領していたことが判明したが、そのうち5000万円の行方が分からないままだった。
また事件当日、尾澤家に押し入った犯人は何も持ち去らずに逃走していた。これについて勝臣は「私に聞かれても分からない。早く犯人を捕まえてくれ。あの時、壁に落書きされた時点で見回りを強化していれば、妻は殺されずに済んだかもしれない」と悔しさを滲ませた。
彼は事件の一週間前、自宅の壁に「税金泥棒」と落書きされたと話し、隣家も同じ被害に遭ったため、塗替え費用を立て替えたとも語った。
勝臣との話を終え、家の外に出た右京は亀山に向かって「このお宅を覗き見て、金の存在を知ることができたとしたらどうでしょう?」と疑問を投げかけた。
そして、亀山が「あの時の匂い、ペンキだったのかも」と呟くと、右京は塗装に関する事実に思い至る。除光液の匂いのもとであるアセトンは、塗装に使用されるトルエンと似た化学物質であり、事件に塗装作業が関係している可能性が浮上した。
「二つの家を塗装していた人物が犯人だったとしたら?」と右京は推理を深め、事件の背後に潜む新たな手がかりを追う決意を固めた。
被疑者死亡
坪倉の家を訪れた右京たちは、壁に書かれた「税金泥棒」の落書きについて話を聞いた。坪倉は「うちは何の関係もないのに、うちの壁にも書かれたんです」と憤慨した様子だった。
その後、壁の塗替えを依頼した塗装会社について尋ねると、「セブン塗装というところです」と教えられた。
セブン塗装を訪ねた右京たちは、代表の園田典彦(J.K.Goodman)に話を聞いた。施工報告書を確認すると、「その仕事は木浪が担当していました」との回答が得られた。さらに調べを進めると、職人の木浪凌大(藤井アキト)が左利きであることが判明する。
次に木浪の家を訪れた右京と亀山。しかし応答がなく、電話をかけると室内から着信音が聞こえてきた。不安に駆られた二人が中に入ると、異臭が漂い、木浪が練炭自殺をしているのを発見した。木浪のカバンの中にはナイフが入っていた。
一課の面々も駆けつけ、現場の検証が始まった。部屋にあったボストンバッグを見た右京は、それが2年前の事件で藍里が証言したものと一致していることに気付く。
さらに、木浪の遺体には首の後ろにやけどの痕があり、それがスタンガンを押し付けられた痕だと分かった。「自殺を装って殺されたのでしょう」と亀山が推測した。
検証の結果、2年前の事件現場に残されていた犯人のコンタクトレンズと木浪のDNAが一致した。また、木浪の家にあったナイフからは、亀山の血液が検出される。
右京は「2年前、尾澤和歌子さんを殺した人物と、亀山君を襲った人物は木浪でしょう。そして、木浪を自殺に見せかけて殺害した犯人もまた、2年前の事件と深く関係しているようです」と推理を展開する。
人違いの可能性
警察一課では、尾澤勝臣が取り調べを受けていた。木浪のカバンの中から発見された帯封の切れ端には、勝臣の指紋が付着していたことが証拠となった。
伊丹賢一(川原和久)は問い詰めた。「2年前、本当は家に隠していた金を盗まれていたんじゃないですか?横領した金だから、盗まれたなんて言えなかった。そして、妻を殺した犯人が木浪だと知り、復讐を果たしたんじゃないですか?」
勝臣はついに真相を語った。2年前、横領した金を自宅に隠していたところ、木浪がそれを狙って侵入。金を盗む過程で、木浪は和歌子を殺害し、その場に居合わせた藍里に顔を見られた。藍里が手術で視力を取り戻す前に、木浪は襲撃を企てたと亀山が分析する。
右京はさらに深掘りする。「公園での襲撃に、少し不可解な点があります。木浪は藍里さんにナイフを向けるのではなく、まず体当たりをしました。そしてその後、ナイフは藍里さんではなく亀山君に向けられた。木浪は亀山君を野瀬さんだと勘違いして襲ったのではないでしょうか?」
その時、土師太(松嶋亮太)がやってきて、木浪のスマホから発見された写真を見せた。それは藍里が伴走者と共に走っている姿を盗撮したものだった。
右京は写真を見て推測する。「木浪は公園を事前に下見して、襲撃しやすい場所を探していたのでしょう。しかし、なぜ野瀬さんを狙ったのでしょうか?彼と木浪には何かしらのつながりがあるのかもしれません」
事件の全貌が少しずつ明らかになる中、新たな疑問が浮かび上がってきた。木浪の狙いとその背景に潜む謎は、さらに捜査の手を進める必要があることを示していた。
特別な思い
右京と亀山は野瀬に木浪との関係を尋ねたが、彼は「知らない」と冷たく答えた。その態度にわずかな違和感を覚えながらも、深追いはしなかった。すると、藍里が2人に話したいことがあると右京たちを呼び止めた。
一方、警察では尾澤勝臣の取り調べが続いていた。彼は「私じゃないんだ…」と小声でつぶやいた。課長の犯行に見せかけて5000万円を横領したことは認めたものの、木浪を殺害したことについては「私じゃない」と繰り返すだけだった。
その夜、右京と亀山は藍里と再び話をした。右京は野瀬が服部道彦である可能性を指摘した。「伝票の文字と封筒の筆跡が似ていました。そして藍里さんも気づいているのではありませんか?」と右京が問いかけると、藍里は少し戸惑いながらも頷いた。
「はい、声がそっくりなんです。そして、伴走してくれたときの腕の感触も同じでした。でも、それを口にするのが怖くて…あの店で働けるようになったのも、野瀬さんのお陰なんです」
藍里は野瀬が服部であることを確信しつつも、その正体を黙っている理由を察していた。「きっと事情があるんだと思いました。だから、確かめようとはしなかったんです」
その夜、右京と亀山は美和子と共に「こてまり」で話をした。美和子は野瀬の行動についてこう語った。「野瀬さんが正体を明かさないのは、優しさだと思います」
右京は杯に手を伸ばしながら、「見返りを求めず、藍里さんを純粋に支えたいということでしょうかね」と静かに語った。そして、事件の解決に向けて思考を巡らせ続けた。
小出茉梨(森口瑤子)もそれに頷いた。「藍里さんが野瀬さんに特別な思いを抱いているように、野瀬さんもきっと彼女に特別な思いがあるんじゃないかしら」と。彼女の勘はまるで2人の奥に潜む感情まで、既に見抜いているようだった。
2人の接点
手術当日、藍里は店長と野瀬に見送られながら病院へと向かった。右京と亀山はその場に現れ、野瀬に聞きたいことがあると告げる。そして、二人を助けたあの踏切の現場へと向かい、右京が静かに尋ねた。「藍里さんを助けたのは、あなたですね?」
野瀬はしらを切るように「覚えていません」と答えたが、亀山はその態度を見逃さなかった。「藍里さんは気づいていますよ。あなたがあの時の命の恩人だって」
右京はさらに問いかけた。「なぜその時、あの踏切にいたんですか?そして、どうして彼女を支え続けているんです?」
野瀬はしばらく沈黙した後、口を開いた。「許せなかったんです。ただそれだけです。助ける少し前に、妹が病気で亡くなりました。21歳でした。妹は生きたくても生きられなかったのに、藍里さんは自分で命を絶とうとしていた。それがどうしても許せなかった」
亀山は続けた。「それでも、彼女を助けた後も支え続ける理由は?」野瀬は視線をそらし、「行きがかり上、なんとなくですよ」とぼそりと言った。
右京はさらに掘り下げた。「妹さんが入院していた病院はどこですか?」「聖洋病院です」とだけ答えると、野瀬は足早にその場を去った。
右京はその答えにピンときた表情を浮かべ、「これで野瀬さんと木浪の接点が見つかりました」と亀山に告げた。木浪の部屋にあった2年前の卓上カレンダー、それが聖洋病院のものだったことを思い出していた。
再びセブン塗装を訪れた右京と亀山は、園田に話を聞く。そこで聖洋病院の塗装工事に木浪が関わっていたことが判明した。
部署に戻ると、亀山が病院での聞き込み結果を報告した。「野瀬さんの妹さんは重い心臓病を患っていて、海外での移植手術に一縷の望みをかけていたそうです。同じ時期に野瀬さんと木浪が聖洋病院に出入りしていたことは確かです」
右京は考えを巡らせながら、藍里が事件当日に撮影された腕の写真を取り出した。そこには爪で引っかかれたような傷跡が残っていた。「木浪は左利きです。この傷がつくのは不自然ですし、塗装職人の木浪は爪を短く切っていました」
亀山は驚きながらも、「でも、犯行現場に残されたDNAは木浪と一致していましたよ?」と反論する。右京は静かに答えた。「考えられる可能性は一つしかありません」
事件の真相
病院のロビーで待つ野瀬に、右京と亀山が静かに近づいた。「お話を伺えますか?」と右京が声をかけると、野瀬は一瞬身構えたが、冷静を装って答えた。「何のことですか?」「木浪は公園であなたを殺そうとしていたんですね?」と右京が続けた。
「木浪なんて知りませんよ」と野瀬が否定すると、亀山が一歩前に出た。「聖洋病院で知り合ったんじゃないですか?」野瀬は無言のまま視線をそらす。
右京は藍里の腕に残された傷について語り出した。「藍里さんの腕に残っていた傷は、犯人が一人ではないことを示しています。左利きの木浪が藍里さんの右腕を掴んだとするなら、傷は右腕の外側につきません。さらに、木浪のような塗装職人は爪を短く切っています。つまり、あの傷をつけたのは木浪ではありません」
亀山が付け加えた。「藍里さんの腕を掴んだのは、右利きの人物です」右京は視線を鋭くし、静かに告げた。「木浪には共犯者がいました。それは、野瀬さん。あなたです」
その言葉に野瀬の顔が一瞬強張り、やがて観念したように口を開いた。「…妹の手術のために金が必要だったんです。親戚や知り合いに頼れるだけ頼りましたが、まったく集まりませんでした。そんなとき、木浪に誘われたんです。横領された金だから、盗んでも表沙汰にはならない、と」
野瀬は木浪が仲間を探していた理由を話し始めた。「木浪はきっと、金のためなら何でもするような人間を探していたんだと思います。自分と薄い関係性の人間を選んで」
野瀬と木浪は尾澤家が旅行に出かけるタイミングを狙い、家に侵入した。木浪は野瀬に外で見張りをするよう指示したが、中で和歌子に見つかり、乱闘が始まった。
「叫び声を聞いて、僕は慌てて家に入りました」と野瀬は振り返る。「木浪が瓶で殴りかかろうとした瞬間、やめろ!と言ったんですが、間に合いませんでした」
和歌子が倒れた後、木浪は「さっさと逃げるぞ」と野瀬にカバンを押しつけた。野瀬が家を出たその瞬間、藍里と鉢合わせする。野瀬は咄嗟に藍里の腕を掴むが、藍里が振り払った拍子に階段から転落し、負傷してしまった。
殺人犯は別人?
野瀬は静かに語り始めた。「金は約束通り手に入りました。でも、その直後に妹が亡くなりました。…納骨が終わったら自首しようと思っていました。でも、あの日藍里さんの存在を知ったんです。支援者のブログに、彼女が失明したと書かれていて…どうしても気になって調べてしまったんです」
その言葉に右京が頷き、「そこで彼女のことを見に行ったのですね」と促すと、野瀬は続けた。「藍里さんの姿を見たとき、妹と重なって見えたんです。そして、藍里さんが自殺しようとしているのを見かけて…死なせちゃいけない、そう思ったら体が動いていました」
亀山は感慨深げに、「それで彼女を助けて支えるようになったのか」とつぶやくと、野瀬はうなずいた。「花屋で働くようになったのも、藍里さんのためでした。手術が成功して目が見えるようになるまで、近くで見守ろうと。でも、もし手術が成功しなかったら…ずっと支えるつもりでした」
右京は冷静に問いかけた。「では木浪が手術のことを知ったのは、どうしてでしょう?」野瀬の顔が曇る。「あいつはどこからか嗅ぎつけたんでしょう。そして公園で、どうして藍里さんと働いてるんだって詰め寄られました。目が見えるようになったら、お前の正体がバレるって」
「そこでどう答えたんですか?」と右京。「自首するって言いました。2年前のこと、自分が一人でやったことにするって。でも木浪は納得しなかった。『お前の言うことなんか信用できるか』って」
野瀬は視線を落としながら続けた。「だから、木浪は俺を殺そうとした。でも、俺じゃない。木浪を殺したのは…俺じゃないんです」
右京は静かに頷き、柔らかい口調で言った。「分かっています。木浪を殺害した犯人には、すでに目星がついています。そして…あなた以外にも、木浪には共犯者がいたんですよ」
その言葉に野瀬の目が驚きに見開かれる。右京と亀山は、そのまま視線を交わし、次の行動を決めた。
【相棒23】8話の結末
亀山からの電話を終えた伊丹は「犯人は2人組だったと聞いた。あなた犯人は1人だと言ってたけどどういうこと?」と坪倉に迫る。木浪を殺害した坪倉が、自宅の物置に隠していたスタンガンを押収され、ついに口を割ったのだ。
「殺されて当然だ、あんな男」坪倉の言葉は怒りに満ちていた。彼は木浪と共謀し、尾澤夫妻を狙ったと認めた。
発端は、坪倉が隣家の尾澤宅を覗き見た時だった。和室の床下に札束が隠されているのを偶然目撃した坪倉は、塗装工事で家を訪れていた木浪に、ギャンブルで負け続けていたため話を持ちかける。そして木浪は「金を盗もう」と案の定乗り気になった。
だが、犯行当日、計画は予想外の展開を迎えた。尾澤夫妻が旅行をキャンセルし、和歌子が自宅に残っていたこと。そして木浪が和歌子を殺害したこと。さらには、藍里が事件現場で野瀬と顔を合わせてしまったこと。これらの誤算が、事態を大きく狂わせていった。
坪倉は木浪が野瀬を殺すことに失敗した後、自分に「今度はお前がなんとかしろ」と殺害を押し付けてきたことに激怒し、ついに木浪を殺害したのだった。「あいつさえいなければ…」坪倉のぼやきは、自己憐憫と怒りが混ざり合っていた。
数日後、手術を終えた藍里と右京、亀山が対面した。手術は成功し、藍里は新しい希望を手に入れたように見えた。そこに現れたのは野瀬だった。しかし、藍里の反応は意外なものだった。顔を強張らせた彼女は、野瀬を指差し、「この人です、この人が犯人です!亀山さん、捕まえてください!」と叫んだ。亀山と右京は何も言わず、渋い表情で立ち尽くしていた。
その場で涙を流しながら、「よかった、よかった…」とつぶやく野瀬。藍里はその声を聞き、震えるような声で「なんで、なんでですか…」と何度も問いかけた。
後日、藍里は右京と亀山と再び公園で会った。目が見えるようになった彼女は、伴走者としての活動を再開し、もう一度学校の先生を目指すことを決意していた。しかし、その目には複雑な感情が宿っていた。
「でも、野瀬さんのことは許せません。私に優しくしてくれたのは、ただの罪滅ぼしだった。そんなの身勝手すぎます…許せません。……そうやって憎もうとしたけど、結局駄目でした…」藍里の言葉には、憎しみとも許しともつかない感情が滲んでいた。
亀山は優しく言った。「無理に憎まなくてもいいんじゃないかな」右京も穏やかに語りかけた。「藍里さんが野瀬さんから受け取ったものを、すべて否定しなくてもいいと思いますよ」
藍里はしばらく考え込んだ後、深々と礼をして、「ありがとうございました」と言い残し、伴走の活動へと向かっていった。その背中には、新たな人生を歩み始める決意が感じられた。
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【相棒23】8話のまとめと感想
失明した原因になった人物が、実は自分を支え続けていた人物だったという話でした。
話自体はどこかで聞いたことのあるような話ですが、事件が一転二転するので最後まで犯人は分かりづらくなっています。
誰が悪いのかと言えば、みんなそれぞれ悪いです。金を横領した勝臣も悪いですし、木浪をたきつけた坪倉も悪いです。そして和歌子を殺した木浪も悪いですし、藍里を失明させた野瀬も悪いです。中でも殺人までしている木浪と坪倉の2人は、人間性にも問題ありそうです。
野瀬は強盗の手伝いをしたにも関わらず、結局妹は亡くなってしまいました。そこで藍里と出会い、罪滅ぼしを始めます。藍里に渡していたお金は、もしかしたら強盗して得たお金だったのか?だとしたら藍里も微妙な気分になりそうです。
悪いことをしたから良いことをするのではなく、良いことができなくても悪いことはしない勇気を持ちたいものです。
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