3月13日にNHKで放送された愛知発地域ドラマ【黄色い煉瓦~フランク・ロイド・ライトを騙した男~】72分拡大版のネタバレと感想をまとめました。
主役の安田顕さんが熱演し、非常にドラマチックな内容となっています。帝国ホテルの旧本館の見事な建築の裏にある真実とは?
BSのほうで先んじて11月に放送されましたが、そのときは59分版でした。今回地上波で放送するにあたり、72分の拡大版として放送されました。
【黄色い煉瓦】のキャストとスタッフ
- 久田吉之助…安田顕
- 牧口銀司郎…佐野岳
- 伊奈長太郎…小林豊(BOYS AND MEN)
- 久田きん…石橋けい
- 久田國定… 佐藤仁音
- フランク・ロイド・ライト…ダニエル・カール
- 久田吉蔵…団時朗
- 職人・哲さん…渡辺哲
- 寺内信一…平田満
- 佳野久美…村上佳菜子
- 高木明仁…杉浦太陽
- 編集長…東根作寿英
- 永田有…大黒柚姫(TEAM SHACHI)
- 作…新云隅子
- 音楽…林ゆうき、池田善哉、深見有沙
- 演出…勅使河原亜紀夫
- 制作統括…三鬼一希
- 制作・著作…NHK名古屋放送局
【黄色い煉瓦】のあらすじ
今からおよそ100年前。世界的建築家フランク・ロイド・ライトは、旧帝国ホテルの設計にあたり、外壁を赤い煉瓦ではなく“黄色い煉瓦”で飾ることを求めた。当時の日本で黄色い煉瓦を焼くことのできた職人は愛知県・常滑(とこなめ)の久田吉之助しかおらず、ホテル側は協力を求めた。
しかし、久田の右腕は病気で失われていた…。久田吉之助には、「周囲の人を殴り倒すような荒くれもの」、「建築家のフランク・ロイド・ライトを騙して金を巻き上げた」などの逸話が残っている…。いったいどのような生き方をした人物だったのか、現代の女性ライターが、建築陶器の町・常滑を舞台に、伝説の職人の真実を探っていく―。
公式HPより
【黄色い煉瓦】のネタバレ
- フリーライターの久美は、名古屋の出版社から久田吉之助について書いて欲しいと依頼を受ける
- 調べに常滑の職人に聞くが分からず、岐阜県羽鳥市に子孫がいると聞かされる
- 行った先は吉之助の孫の家だったが既に亡くなっており、姪が書いたという手記を渡される
職人の道へ進む
- 吉之助は家業の船問屋を継がずに家を出て行く。そこで職人の哲さんと出会い、黄色い煉瓦の話を聞く
- 黄色い煉瓦を作れば日本でたった一人の職人になれる、吉之助は張り切って土を探しては焼いた
- だが、黄色い土を焼いても黄色い煉瓦はできなかった
黄色い煉瓦が完成
- 未だ作れないままの吉之助は土を採取に向かう。そこにあった土を掘り返し口に入れてみる
- 土はやけに歯にくっつくえらい粘り気のあるものだった。その土を使って焼いてみるとやっと黄色い煉瓦ができた
- 職人の伊奈長太郎に作り方は教えられないけど、それでもいいなら一緒にやらないかと誘った
- 久田は焼き物で精巧なトンボを作ったりもする高い技術力を持っていた
- やがて黄色い煉瓦は愛知から京都・大阪を中心に評判を呼んだ
- 吉之助は工場も作り職人も雇い大量に黄色い煉瓦を作り始める
- しかし、倒れてしまい病院に運ばれてしまう
- 糖尿病が悪化した結果、右腕を切り落とすことになってしまった
- 心配した父が見舞いに来て、今後職人としてやっていけるのかを問う
- 吉之助は自分にしかできないことをやると言って、父の世話にはならずに追い返した
- だが、片腕をなくしたせいで仕事をなくし、工場も倒産してしまう
- それから3年後、帝国ホテルの煉瓦の話が舞い込んだ
帝国ホテルの仕事を請け負う
- 妻のきんはできなかったらどうするのかと心配するが、吉之助はやる気満々だった
- 工場を再び稼動させるが職人がなかなか集まらない。納期にだいぶ遅れをとっていた
- 長男の國定にも手伝いをさせるが、うまくいかないせいで吉之助は追い払う
- 帝国ホテルの牧口がやってきて様子を確認する。進みが遅いため寺内を連れてくる。寺内は有田焼を極めた人物であった
- 牧口は寺内に工場を仕切らせようとするが、吉之助は反対して指示に従ってもらうよう告げる
- 寺内もまた吉之助のように土を食べ、その粘り気の具合を確かめていた
- 黄色い煉瓦の仕上げは秘中の秘で、息子でも工場を継ぐまでは教えられないと吉之助は言う
- 一人残っていたところ、再び吉之助は倒れてしまう
裏切りにあう
- 吉之助が倒れたことで煉瓦の製造に遅れが出るのを危惧し、帝国ホテル側が画策し始める
- 吉之助の病状は悪く、このままでは残りの手足も切断することになると言われる
- 息子の國定に土の支払いをするから、支払い先を教えて欲しいと聞き出す
- 土を入手したホテルは新たな工場を設立し、寺内にそっちで焼かせようと考えた
- それを知った吉之助は怒り、牧口と口論になり殴ってしまう
- その後、契約は破棄となり、寺内は牧口の工場へと移る
- 土のことを知っていたのは國定が告げたからだとわかり、吉之助は怒る
- 國定は職人になんかならないと言い、船に乗って海運の仕事をすると告げた
- 再び牧口が工場にやってきて、今まで焼いた煉瓦を持って行き、職人たちもスカウトする
- 長太郎もホテルの工場へ行き、職人は誰もいなくなってしまった
久美の記事
- 久美は取材や資料を見た結果、吉之助は詐欺師ではなかったと知る
- しかし、書いた記事を編集長につき返されてしまう
- 理由は吉之助が詐欺師という題材で頼んでいるのに、そう書かれていなかったからだ
- 高木が新たに集めた資料を久美に渡し、もう一度まとめ直してみたらどうかと助言する
黄色い煉瓦が焼けない
- 帝国ホテルの煉瓦製作所で寺内が焼いてみるが、何度焼いても黄色い煉瓦はできなかった
- そのほとんどは鉄錆色で、なぜ同じ土でも焼けないのか分からないでいた
- 有田焼と同じ焼き方をすれば黄色い煉瓦はできると思っていたが、そうではなかった
- 吉之助に頼んでみたらどうかと長太郎が言うが、寺内にも職人としてのプライドがあった
- 吉之助がホテルの窯へやってくる。医者がいうにはもう長くないということだった
- 長太郎は吉之助が窯を塞いだ壁を叩いて壊そうとするのを止めようとする
- だが、煙をもっと出して息を吸わせないとあの色にはならないと吉之助は言う
- 一部が壊れて煙がもくもくと出てき始めると、今度は長太郎に石炭をもっと入れろと命じる
- 牧口がやってきて止めようとするが、寺内がそれを制して吉之助の好きにさせる
- 煙を塞がずに窯の中を高温にする。それが黄色い煉瓦の秘密だった
物語のラスト
- 焼きあがった煉瓦は黄色い煉瓦だった。寺内はそれを見て吉之助の煉瓦だと言う
- そして長太郎に後を任せて自らは製作所を辞めた
- 長太郎は帝国ホテル煉瓦製作所の技術顧問となり、250万個の黄色い煉瓦を焼いた
- 帝国ホテル旧本館は大正12年(1923年)に完成した
- 吉之助は窯を壊した翌年、41歳で亡くなった
【黄色い煉瓦】の感想
安田顕さんの熱演が光る作品でした。実在の人物、久田吉之助という人物がどういった人物だったのか?それがこのドラマで分かります。
41歳という短い生涯を駆け抜けた吉之助、黄色い煉瓦は自分だと言います。当時日本で唯一作れたのが吉之助で、その秘密は門外不出だったようです。
このドラマのサブタイトルは“フランク・ロイド・ライトを騙した男”というものですが、むしろ“吉之助の技術を盗んだホテル”の話です。煉瓦を入手したいがために、吉之助の息子から土の入手先を聞き出すという裏切り行為をします。
しかし、同じ土を作っても黄色には焼けません。吉之助は自らの余命を察し、“自分=黄色い煉瓦”という生きた証を残すため、焼き方を長太郎に教えます。その長太郎は伊奈製陶(のちのINAX、現在LIXIL)を作る人物です。
今回の地域ドラマは非常にエンターテイメント性がありました。久田吉之助という人物自体が面白い人物だったということもありますが、安田顕さんの演技に熱が入っていて引き込まれるものがありました。
【黄色い煉瓦】に出てきた施設
ドラマ内で出て来た現在吉之助の作品に触れられる施設をまとめました。
明治村
旧帝国ホテル本館
名和昆虫博物館
とんぼの置物
長楽館
【黄色い煉瓦】のまとめ
詐欺師、片腕を父親に刀で切り落とされた、そんなエピソードがあった吉之助でしたが、実際はホテル側が引き上げてしまい、片腕になったのは糖尿病が原因でした。
黄色い煉瓦を日本で初めて焼いたというだけでなく、職人としての技術力も非常に高い人物だったことも分かります。しかし、病に冒されて片腕を切り落とし、その後も病状は悪化するばかりで余命宣告されます。
そこからの吉之助は鬼気迫るものがありました。黄色い煉瓦を自分の分身と思い、これを残すことで“自分”という存在を世間が忘れないように焼きます。安田顕さんの迫真の演技が、吉之助という男の狂気染みたものを表現します。
番組の最後にテロップで、『窯を壊した翌年、久田吉之助は41歳で亡くなった。それから100年経ち、ようやく職人として評価されようとしている。』と入ります。彼が評価されることは、すなわち帝国ホテルのやり方が汚いものだったと明るみになることを意味します。
一人の優れた職人の技術を盗用して焼いた黄色い煉瓦。かたや評価されるどころか詐欺師扱いされ、かたや自分の手柄のように誇っている。ぜひとも正当な評価をしてもらいたいものです。