作業服でお馴染みの「ワークマン」ですが、最近は「ワークマンプラス」といった一般向けに特化した店舗を展開しています。同じ市場で争う、フランスから上陸した「デカトロン」を迎え撃つ秘策は果たして何か?
「ガイアの夜明け」概要
「ガイアの夜明け」はテレビ東京系で毎週火曜22時~放送中です。
経済やそれにまつわる企業などの情報を、主に取り扱っているドキュメンタリー番組です。
出演者
- 案内人:江口洋介
- ナレーション:杉本哲太
ワークマンとは?
- 1980年 群馬県伊勢崎市に1号店を出店
- 社員約300名
- 売上高919億円(2019年3月期見込み)
- 国内店舗数 837店舗(4月2日現在)
作業服の最大手の店で、手袋だけでも250種類。10組で\178の軍手は300万セット売り上げています。
ユニクロが国内店舗数825店舗(2月末現在)で、ワークマンはそれに並び837店舗展開しています。
デカトロンとは?
- 1976年 フランスで創業
- 51の国と地域で1500店舗以上展開している、スポーツ・アウトドアブランド
- 売上高1兆4000億円
アジアでは既に中国・韓国・タイなどで出店されています。
2年間ネット販売でテストし、満を持して出店しました。
デカトロンネットショップ
日本のスポーツ用品市場は、世界3番目の市場といわれています。
黒船襲来
兵庫県 阪急西宮ガーデンズ。
3月29日「デカトロン」が上陸。全てのスポーツ用品が揃う平成最後の黒船といわれています。
バックパック \390 10年間の保証つき
色・デザインがよい、値段のわりにしっかりしている。というお客さんの感想が。
店舗の特徴として、商品を実際に試せる展示スペースがあります。
今回出店した店舗では30種目以上のスポーツを取り扱い、その全てがオリジナル商品となっています。
アウトドア商品にも力を入れていて、大ヒットした2秒で開くテントなどもあります。
ポップアップテント \11900
設営が大変なテントが、簡単にできます。
さらに機能性を売りにした商品も。
UVカットジャケット \3590
レインジャケット \1890
開発から販売まで一括で行っているので、コストが低く抑えられています。
今後日本各地に展開を予定しています。
ワークマンの商品はなぜ安い?
海外製のアウトドアブランドの商品は高機能ですが高額です。
そこでワークマンは「日本の気候に特化」することに徹します。南極や北極に行くわけでもないので、そこまでの性能はなくても良いものを作ります。
他にも大きなモデルチェンジや、クリアランスセールはしないので、在庫をそのまま生かせます。
イージス透湿防水防寒スーツ上下組 \6800
元々雨の日作業する人向けに出したものでしたが、口コミやSNSを通じてバイカー向けに大ヒット。
綿カブリヤッケ \1900
溶接工の人向けの作業服をヒントに開発した、防火性のあるパーカーをアウトドア商品として販売。
ファングリップシューズ \1900
元は飲食店の厨房で使われていた靴を、一般向けにオシャレなデザインに変更して発売。
子育て中のママや妊婦を中心にSNSで話題になり、15万足を売り上げました。
どの商品も耐久性があって高機能なワークマンの商品です。
ワークマンが狙う市場
ワークマンは高機能で低価格な市場を狙っています。実はその市場はどこも手をつけていませんでした。
そこにはワークマンの試算では4000億円もの需要があると予想しています。
2018年9月にワークマンプラスの1号店をオープンしました。
予想を上回る大盛況で今後さらに100店舗を目指すそうです。
日経トレンディ2019年ヒット予測
1位に輝いたのは「ワークマンプラス」と「デカトロン」です。
アウトドア、スポーツブランドは安い物が意外とありません。
ワークマンがこの市場に気づき、東京五輪もあってデカトロンも上陸してきました。
この2社以外、現在のところ付け入る隙がありません。
ワークマンの秘策
デカトロンをどう迎え撃つか、ワークマンで緊急会議が始まりました。
デカトロンの商品を購入し研究すると、価格の安さに付け加えて洗練されたデザインのものでした。どうやって対抗するか?ワークマンの導き出した答えは、同じ西宮に店舗を出店することでした。
デカトロン1号店からわずか約3kmの距離に、デカトロンより8日早い3月21日にオープンすることにします。
鍵を握る2人の男
店舗開発担当の鈴木俊輔さんは、今回の西宮出店を急遽任されました。
そして、商品開発担当の中野登仁さんは、あの大ヒット商品イージスの開発を手がけた人です。
共に2003年入社の同期の2人が、この16年間ワークマンの快進撃を共に牽引してきました。
本来8月に発売しようとしていた、撥水デニムを前倒しで販売することにします。
このデニムはナイロンに使われていた撥水加工を、デニム生地で可能にしました。
なんとポケットに水を入れても漏れません。
一方、店舗開発担当の鈴木さんは、既存のワークマンプラスを視察しに行きます。
あまりの人気にレジに並んでいる客と、商品を見ている客で混雑しています。
ワークマンプラスは5割以上が女性客。なのに女性向けの商品があまりありません。
その後、台湾にあるデカトロンを視察。十分に確保されたスペースで、商品の魅力を客に向けてアピールしていました。
問題発生
2019年1月 中国・大連
商品開発担当の中野さん、撥水デニムを作っている現地の工場を見に行きます。
作られたデニムをはいてみると、なぜか一回りサイズが小さかったのです。
仕様書通りに作られているのになぜでしょう?
工員の技術は問題はありませんでした。ではどこに原因が?
そこで、デニムの「洗い」をやっている工場へと向かいます。
仕上がったデニムは予想以上の縮みが発生していました。横が5%縦が3%も縮んでいたのです。
さっそく洗いの時間と温度の調整を指示します。果たして結果は?
次の日の朝、大連の青空市場は氷点下10度という寒さの中、市場の人たちは働いていました。
その姿を見た中野さん、ワークマンの原点の、働く人たちの快適さを追求したいと改めて思います。
洗いの工場に再び行き、指示をし直したデニムは納得の出来でした。
「今持っている最高の武器を持って戦場に出るだけ」と中野さんも自信を深めます。
課題がまだあった
2019年2月12日 展示会
冷却ファンが入った空調ベストなど、数々の新製品が紹介されています。
その中でも特に注目を集めたのが、あの撥水デニムです。
4D超撥水ストレッチパンツ \2900
40回の洗濯試験をクリア。
しかし販売方法に課題がありました。
ただ吊るしているだけでは、この撥水機能がわかりません。売り場でどう表現するかは、店舗開発の鈴木さんにかかっています。
デカトロンを包囲せよ
今までの吉幾三さんの歌の「作業服」というイメージから一変するため、 まずは新しいCMの撮影をします。
さらに関西エリア102店舗が対象で、店舗をリニューアルし、ワークマンプラスを前面に押し出します。
果たしてうまくいくのでしょうか?
ワークマンプラス開店
3月21日 兵庫県 西宮 ららぽーと甲子園
ワークマンプラスが関西初出店しました。
10時の開店と同時に入場制限がかかるほどの盛況です。目標売上げは150万。店舗の視察をしレジ前を、従来の1.5倍の通路拡大しました。また、女性向け商品の売上げもオープン2日で、1号店が26万円に対し甲子園店は135万円でした。
あの撥水デニムのアピールはどうなったでしょうか?
店の一番目につく位置にディスプレイされていました。水が周りに飛ばないようにアクリル板で囲み、ホースからデニムに水がかかるようになっています。
行列で待っているお客さんの目にもよく留まり、店内に入ってからの購入に繋がっています。
バイク乗りや子育て中のお父さんなど、目標の30本を大幅に超える77本売れました。
そしてこの日の売上げは460万円でした。
兜の緒を締める
初日は予想以上の客の入りと売上げを計上しました。しかし、2人は決して喜びに浸ってばかりはいませんでした。
鈴木さんのコメント
「アパレルでは素人同然。継続的に売るにはどうしたらいいのかを考えていかないと。1年後にはなくなってるなんてこともある。常に危機感を持っている」
中野さんのコメント
「今後成長するために、ワークマンだから何ができるかが大事。ワークマン好きだと思ってもらえる商品を作っていかないと」
強力なライバル出現で、今後その真価が問われます。
感想
ワークマンといえば「作業服」という時代は、とっくに終わっていました。
ワークマンプラスという新たな店舗で、日本発信の高機能で安価な商品が、どんどん拡がっていくのは良いことです。
しかし、従来のお客さんである「労働する人」を置いていってしまっては、本末転倒となります。
あくまで「労働する人向け」に作られた商品を、改良して一般消費者へ販売するということが大事だと思いました。
新規に一般向けの商品開発をするよりも、労働者向け→一般向けという流れでやっていくことが大切です。
開発費を労働者向けで幾らか回収できれば、一般向けに発売する時にはもっと安い値段で販売できます。
よって、結果的にコスト削減へと繋がるのです。
そこが他のアパレルと違う、ワークマンの強みです。
これを勘違いして、一般向けのみの商品開発を多発したり、一般販売向けの店舗のみにすると、元々あった労働者向けの枠を別の会社に取られかねません。