第3話「裁判官の資質」は、事件そのものよりも安堂という裁判官の内面が深く掘り下げられる回でした。物語は完結せず、裁判も次回へと持ち越されます。
運送会社の労務死亡事故をめぐる裁判は、「過重労働か、個人の過失か」という構図から、告発を封じるためのスラップ訴訟へと一気に姿を変えていきます。
そして同時に、安堂は自らの発達障害という特性を“隠したまま裁くこと”に限界を感じ始めていました。
※本記事はドラマ【テミスの不確かな法廷】第3話「裁判官の資質」のネタバレ解説です。
第1話・第2話の内容は以下で整理しています。
結論
第3話の本質は、「正しさ」と「隠蔽」は同時に成立しないという点にあります。
- 事件の真実は、力によって覆い隠されようとしている
- 裁判官・安堂自身もまた、自分の特性を隠して裁こうとしている
この二重構造が、物語全体を不穏に揺らし始めました。
登場人物(第3話)
レギュラー
- 安堂清春(松山ケンイチ):裁判官。発達障害を抱える裁判官
- 小野崎乃亜(鳴海唯):弁護士。今回は当事者ではない
- 穂積英子(山本未來):原告代理人
- 結城英俊(小木茂光):最高検察庁の次長検事。安堂の父(第3話で判明)
ゲスト
- 四宮絵里(伊東蒼):大学生。佐久間の娘(原告)
- 佐久間義之(清水伸):事故を起こし死亡したドライバー
- 八御見幸雄(川瀬陽太):八御見運送 社長
- 鳴子貴久(安井順平):被告代理人。大手法律事務所在籍
- 富樫和人(森岡龍):元八御見運送ドライバー
- 加賀美雄一郎(長谷川朝晴):全国物流産業機構COO。
今回の事件の整理
- 起きたこと:運送会社のドライバーが事故を起こし、本人と通行人が死亡。
事故は過重労働によるものではないかとして、娘・四宮絵里が会社を提訴。 - 原告:四宮絵里
- 被告:八御見幸雄(八御見運送)
- 争点:事故の原因は過重労働か、それともドライバー個人の過失か
第3話の争点
この回で争点は二層構造になります。
①労務管理の実態
- 法改正後も本当に過重労働はなかったのか
- 記録は改ざんされていないのか
②告発を潰す構造
- 内部告発者が姿を消す
- 原告に対する8000万円の反訴
→ 明らかな萎縮狙い=スラップ訴訟
前回の法廷整理については、
▶ 第2話ネタバレ解説|目撃証言が崩れた理由
で詳しくまとめています。
法廷メモ(整理)
原告側の主張
- 過重労働が事故を招いた
- 人員不足なのに荷量は変わっていない
- 記録改ざんの可能性が高い
被告側の主張
- 法改正後は労働時間を遵守
- 事故は佐久間個人の問題
- 副業・前科・私生活を理由に責任転嫁
争点のズレ
- 「会社の構造」vs「個人の属性」
証拠(強い順)
- 労働実態と荷量の矛盾
- ドラレコ映像
- 内部告発者の存在(未証言)
今日出た新情報
- 佐久間の副業
- 窃盗の前科
- 原告への8000万円反訴
時系列(ネタバレあり)
① 過去と現在が交差する冒頭
安堂はグループカウンセリングで、職場にカミングアウトしていない自分と向き合う。
「僕はできないんです」
という言葉は、この回全体を象徴している。
② 法廷での違和感
「企業努力とは何ですか?」安堂の問いに、法廷は沈黙する。
誰も具体的に説明できない“努力”。そこに、この裁判の歪みがあった。
③ 富樫との会話
「法律は武器です。使い方次第で、あなたを守ってくれます」
安堂のこの言葉は、かつて自分を救った法律観そのものだった。
④ すべてが崩れた瞬間
忘れ物。その結果、内部告発者は姿を消し、裁判は一気に不利な局面へと追い込まれていく。
原告への反訴。安堂の“特性”が、結果的に事件を悪化させてしまった。
⑤ 父・結城との再会
「僕には裁判官は向いていません。辞めるべきなんだと思います。そう思いませんか?お父さん」
ここで初めて、安堂は「父」と向き合った。
なぜ安堂は、ここまで強く葛藤しているのか
安堂の葛藤は、単なる「仕事の失敗」や「裁判の行き詰まり」ではありません。
それはもっと根深く、自分という存在そのものが、裁く側に立ってよいのかという問いに直結しています。
安堂は発達障害という特性を抱えながら、「感情に左右されず、明確なルールで判断できる」という理由で、裁判官という職を選びました。
法律は誰にとっても同じで、曖昧さがない。
だからこそ、自分にも扱える“社会のルール”だと信じてきたのです。
しかし第3話で、安堂はその前提が崩れていく瞬間を何度も突きつけられます。
- 一度に複数のことが起きると対応できない
- 忘れ物をする
- 冗談や含みを理解できず、言葉をそのまま受け取ってしまう
これらは安堂にとって「いつものこと」ですが、今回はそれが事件の流れを変えてしまったという現実として返ってきました。
内部告発者は消え、原告は8000万円という圧力をかけられ、穂積からは「あなたがやらかさなければ」と責められる。
安堂が本当に苦しんでいるのは、「特性があること」そのものではありません。
その特性を隠したまま裁いてきた自分自身が、誰かを守れなかったのではないかという疑念です。
さらに追い打ちをかけるのが、父・結城の存在でした。
結城はかつて、
「発達障害の君に裁かれる人はどう思うか」
「本気なら、自分の特性は隠したほうがいい」
と助言しました。
その言葉は差別ではなく、現実を知っているがゆえの忠告だったのかもしれません。
そして安堂は、その助言に従うことで裁判官になり、同時に“本当の自分を否定し続ける”道を選んできたとも言えます。
だからこそ、第3話終盤で安堂は結城にこう問いかけます。
「僕が被告人なら、発達障害の自分に裁かれたくない」
「僕には裁判官は向いていません。辞めるべきなんだと思います」
これは弱音ではありません。
裁く資格とは何かを、真正面から考えた末の言葉です。
安堂の葛藤は、「カミングアウトするか、しないか」という選択を超えて、隠したまま正義を語ることはできるのかという、非常に重いテーマへと踏み込んでいます。
この問いに、物語はまだ答えを出していません。次回へ続きます。
安堂の葛藤は、第1話から一貫して描かれてきた「裁く側の資格」というテーマの延長線上にあります。
初回で描かれた裁判官忌避の構造は、
▶ 第1話ネタバレ解説|裁かれる側が裁判官を拒める意味
を読むと、より立体的に見えてきます。
刺さったセリフ
「法を信じてみるのも、悪くないです」
誰も守ってくれないという富樫に、安堂がかけた言葉です。
これがきっかけで、富樫は安堵に告発をしようとしました。
「オンラインじゃなくて、オフラインでこそ見えるものがある」
何でもオンラインシステム化される世の中に対し、門倉が放った言葉です。
スマホで何でも調べるのが当たり前の今、思わずはっとさせられる言葉でした。
「僕は普通を装っています。でも、普通ではありません」
安堂がやらかして謝罪をした後、一人立ち尽くしてつぶやきます。
自分のことを話したい、でも話せない。安藤の葛藤が伝わる言葉でした。
伏線・違和感リスト(回収待ち)
- 加賀美の存在
- 大手法律事務所が被告代理人である理由
- 内部告発者・萩原の行方
- 富樫が狙われた本当の理由
未回収の謎(次回へ)
- 本当の事故原因は何か
- 裁判の行方
- 安堂はカミングアウトするのか、それとも辞めるのか
まとめ
第3話は、裁判の勝ち負けよりも、「裁く側の資格」を問う回でした。
事件と同じように、安堂自身も“隠されてきた真実”を抱えています。
次回、その隠蔽構造はどこまで崩れるのか。そして、安堂はどんな選択をするのか。
裁判の行方以上に、安堂が「隠したまま裁くこと」を続けるのか、それとも何かを失う覚悟で向き合うのか。
その選択こそが、次回の最大の焦点になりそうです。
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