WOWOWのドラマ【黒鳥の湖】が最終回を迎えました。すべての謎が明らかになり、誰が罪に問われるのかがわかります。犯行の動機や登場人物がどうなったのかについてまとめています。
【黒鳥の湖】最終回のあらすじ
財前彰太(藤木直人)は田部井専務(板尾創路)の事件について、大黒(財前直見)に話を聞きに行く。彼女は犯行を認めるも、漆黒の切り裂き魔のことや叔父殺害については何も知らなかった。
彰太はその後、警察の岸本(飯田基祐)らに18年前にあったことを問われる。とうとう叔父を犯人に仕立てあげたことをを告白した。もし犯人が彰太の報告書を元に犯行に及んだとしたら、罪に問われるという状況だった。
比佐子(中島ひろ子)と会って彰太は話すうちに、漆黒の切り裂き魔とは谷岡総一郎(酒向芳)の創作だったのかを考える。ふと思い出したのは以前、谷岡がやっていた同人誌のことだった。そこで比佐子と2人で久慈に会いに行き、“漆黒の切り裂き魔”について書かれた小説がないか探す。
やがて投稿作品の中に“漆黒の切り裂き魔”の事件と同じような内容のものが発見される。一方、岸本も漆黒の切り裂き魔が誰なのか、ある確信を得た。2人が行き着いた犯人とは……。
【黒鳥の湖】最終回のネタバレ
各事件の犯人と動機について簡単にまとめています。
漆黒の切り裂き魔
若院こと平井啓司(三宅健)
動機
幼少期に母親(財前直見)が自分を放って家政婦の仕事に行ってしまい、寂しさを感じていた啓司は後を追う。仕事先の家で母と雇い主が裸で抱き合っている姿を見てしまう。その時、激しくショックと嫌悪を覚えた啓司は、女性に対して異常な性癖を抱いてしまい実行に移した。
逮捕までの流れ
谷岡が編纂していた同人誌に送られた小説の内容が、漆黒の切り裂き魔の事件内容と同じだったと彰太が気づいた。同時に刑事の岸本も寺に行った時に見たスマホが、女性がさらわれた際に防犯カメラに映っていたものと同じだと気づく。
2人で寺に行って若院を探すと、爪を剥がされた際の女性の叫び声が響く。監禁場所がそれでわかり、踏み込んだ岸本らによって逮捕された。
出島文雄殺害犯
権田穣(大澄賢也)
動機
出島(宅麻伸)の元で働いていた権田は、奴隷のような扱いを受け虐げられていた。彰太の計画を知った八木(杉本哲太)が現れて「今なら殺害しても罪に問われない」と言われて殺害した。
逮捕までの流れ
八木がアリバイを証言したため、早々と権田が容疑者から外れたことを彰太は思い出す。彰太は岸本らを待機させた状態で権田と2人で話をし、出島を殺害したのは自分だと認める。自由になるチャンスを与えてくれたと恩を感じていた権田は、彰太の偽の報告書が殺害の動機だったとは言わず、八木にそそのかされて起こしたものだと言って自首した。
田部井克則突き落とし犯
大黒こと平井(旧姓清水)皐月(財前直見)
動機
彰太から会社を追われた事情を聞いた大黒は、田部井を罰しようと思って階段から突き落とした。
【黒鳥の湖】最終回の詳細
皐月の正体
大黒様こと清水皐月という女性は、正義感が強いあまりに倫理観が歪んでしまった女性でした。18年前、谷岡と一緒に何をしたのか?彰太が話を聞きに行きます。
皐月はある家で家政婦をしていた時、奈苗の話を聞いてその男に罰を与えたいと思いました。その時に出会ったのが谷岡です。しかし、谷岡は当初、病に冒され塞ぎこみがちの生気がない人物でした。“究極のお節介家政婦”である皐月は、生気を取り戻すために言葉で励ますだけでなく、体まで捧げて関係を結びます。
皐月が「娘同然の女性が被害にあったから復讐して欲しい」と奈苗の話を谷岡にすると、彼は怒りによって生気を取り戻します。それで谷岡は奈苗を襲った人物を捜索しに彰太のいる興信所に頼んだのです。
しかし、谷岡が亡くなった後、皐月は自分の歪んだ正義感に共感してくれる人がいなくなり嫌気が差します。そうして出会ったのが寺の住職でした。
彼女が寺に来て分かったことは、自分のしてきたことは因果応報の手伝いだったということです。因果がうまく回らずに理不尽が起きている場所に、手を加えて世の中を整えているのだと。
だから、田部井のことも理不尽だと思って突き落としたのです。ですが、叔父の出島文雄殺害には関与していません。なぜなら谷岡の死後、奈苗の話は立ち消えになってしまったからでした。
皐月の罪
若院を探しに彰太たちが寺に踏み込んだ時、住職は体調が悪くて部屋から出てこないのではなく、すでに死んでいたのです。ミイラのようになった住職を、皐月はできるだけ劣化しないようにか冷やしていたのでした。
寺に来た皐月は寺の住職といい仲になり、息子を僧侶にしようとします。しかし、住職は反対します。なぜなら、息子は修行を途中で逃げ出してしまったからです。だから僧籍は与えられないと断る住職ですが、皐月は当然納得がいきません。
そこで皐月は住職を殺害して勝手に息子を僧侶にします。皐月いわく殺したとは言わず「休ませてあげたの」と説明しました。
漆黒の切り裂き魔の正体
比佐子に漆黒の切り裂き魔なんて名前、小説とかに出てきそうなありふれた名前だと言われて彰太は気づきます。以前、久慈が言っていた谷岡も関わっていた同人誌のことを。谷岡は奈苗に危害を加えた犯人を捜索するのに脚色をしたに違いない。その参考にしたのが、きっと同人誌の中の小説にあると。
久慈のところに行ってようやく“漆黒の切り裂き魔”の記述と、事件と似た内容が書かれている小説を見つけます。ただし、これは掲載されなかったボツ原稿でした。なぜ谷岡がこれを掲載しなかったのか、それには理由があります。谷岡の選評を引用します。
これはおよそ小説の体をなしていない。君の、醜悪な性癖の発露に過ぎない。作品の評論以前に。
このような酷い、おぞましい性癖は決して表に出すべきものではない。
その小説の投稿をした人物の名前は、清水哲司とありました。清水皐月の息子であり、現在は平井哲司こと若院でした。
谷岡は同人誌に掲載は見送りますが、この小説からアイデアをもらい脚色した話を興信所にしたのです。
歪んだ理由
若院がなぜ漆黒の切り裂き魔になってしまったのか?その理由は幼少期の体験にありました。
清水皐月は家政婦として働きながら、息子を女手一つで育てます。仕事の時間になると化粧をして、赤いマニキュアを塗り勤め先へ向かいます。息子が母親にテストでいい点数を取ったと言って見せても、大して関心もなく適当にあしらい一人で留守番をするよう言って出かけます。
自分を見てくれない母に寂しさを覚えたのか、息子は母親の勤め先の家へこっそりと向かいます。家の外から見た様子は、雇い主と母親が裸で抱き合い関係を結んでいる姿でした。
ショックを受けた息子は自宅に戻るなり、母と一緒に写った写真の母の顔をマジックで黒く塗りつぶします。やがて母親が自宅に戻り、赤いマニキュアをした手で頭を撫でようとすると、彼は嫌悪して振り払いました。
赤いマニュキアを塗った女性をさらい、剥がした爪を送りつけたのはその時の嫌悪からでした。1人目の被害者が殺されてしまったのは、彼女が助かりたいがために「何でもするから」といって懇願し、赤い爪の手で触れてきたからです。怒った若院は思わず彼女の首を絞めて殺したのです。
社会的地位=僧籍を得た若院が、再び性欲を爆発させて犯行に及んだのです。
出島文雄殺害の真相
では叔父殺害犯は誰なのか?彰太は八木を疑いますが、八木には明確なアリバイがあって不可能だと警察は言います。そのアリバイという言葉をきっかけに思い出し、彰太は権田と2人で話をします。当時、権田は八木のアリバイ証言があったため、容疑者から早くに外れていました。
権田は出島に代々やっていた家業を奪われ、奴隷のような扱いを受けていました。そこに彰太の計画を知った八木が偵察ついでにやってきます。権田が出島を憎んでいることを知り、「今なら出島文雄を殺しても罪に問われることはない」とたきつけます。
この話に権田は彰太がくれたチャンスだと、人生を変えるきっかけをくれたと思いました。出島を殺害後、彰太に恩を覚えていた権田は彼のために尽くします。
待たせていた警察に自首する手前、権田は彰太に言いました。「八木にそそのかされて自分が起こした事件です。あなたはもう十分苦しんだ。これからは自分の自由な人生を」と。彰太が罪に問われないよう、報告書が原因でやったとは言わないという誓いです。
ドラマの結末
すべての事件が解決した彰太は、妻と一緒に話をします。大黒に頼っていた自分を反省する妻に彰太は「少しずつ取り戻していこう。あのときの幸せな時間を」と言います。妻は「取り戻せるかしら?」と、今は手元を離れた娘のことを思い出します。
最近娘から来た手紙には「気持ちの整理はまだつかないけど、また必ず連絡します」とありました。牧場で働くことで自分を見つめ直し、母や父、家族のことも色々考えていたのです。
彰太と妻は2人で娘のいる牧場へ向かいます。外に子どもたちといた娘に声をかけようとする彰太ですが、妻はもう少し見ていようと止めます。娘は子どもたちにバレエを教え、そして一緒に草原で踊っていました。
登場人物のその後
その後どうなったのか、わかった人たちについて記します。
- 財前彰太:叔父殺害の罪には問われず
- 財前由布子:狂言誘拐の罪で逮捕はされず
- 大黒:逮捕はされるものの、現実を受け入れることを心が拒絶
- 若院:すべての罪を認めたため、何らかの刑に問われる
- 八木之典:由布子への脅迫の罪で立件予定
- 権田穣:出島文雄殺害容疑で逮捕
- 田部井克則:事故後寝たきりの状態
寺の2人について現時点ではどんな罪に問われるのかは不明です。大黒は恐らく田部井の件と住職殺害の件で立件するのかもしれません。若院は恐らく最初の1人を殺害した罪と、2人目を監禁した罪に問われるのでしょう。
財前夫妻に関してはまったく罪に問われないようで、2人で娘に会いに行くところで物語が終わります。
権田は出島文雄殺害の件で逮捕されますが、何気に結構悪者な八木は現時点では、由布子脅迫の罪だけのようです。権田の証言次第では殺人教唆に問われる可能性もありそうです。
【黒鳥の湖】最終回のまとめと感想
異常性癖の若き住職と歪んだ倫理観を持つ母親が逮捕され、腹心だった人物が叔父殺害の罪で逮捕されました。
ちなみに18年前には漆黒の切り裂き魔はいません。すべて若院が投稿した小説からアイデアをもらった谷岡の脚色でした。それを信じた彰太が邪魔な叔父の死を願い、偽の報告書を書きます。その偽の報告書を盗み見た八木が、権田に吹き込んで叔父を殺害させました。
では、あの偽の報告書は誰が見たのか?谷岡は報告書が届く前に亡くなっていたので、家族の誰かが見たけど無視しただけだったのか?そこについては特に答えが示されないで終わります。
ドラマ全体の感想としては、主人公も隠し事があるため、もやもやしながら話が進みます。また、叔父殺害と漆黒の切り裂き魔の犯人が別々なので、真相に行き着くまで話が二転三転します。さらに18年前と現在が入り組むため、話が複雑に入り組んできます。
“因果”という部分が物語の柱にあるため、登場人物一人一人に報いが訪れます。彰太や由布子も例外なく、娘も巻き込んで報いを受けました。この物語は登場人物のほとんどが、大なり小なり脛に傷がある人物です。清廉潔白な人物が事件を解決するような話が好きな人には、あまりオススメできない話です。
目の前の人物を見て寄り添い、言葉を聞いて反応する。つい後回しにした結果、後で報いとなってやってくる。“たった今”を生きることが後の幸せに繋がる、と考えさせられる話でした。